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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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異世界の情報 中級編

「また派手なデビューだな、Bクラスだって?」


ウォルフはそう言うと嫌そうな顔で俺が奢った酒を煽った。


「1ヶ月もしない内に追い抜かれそうだな、俺は」


ウォルフはそう言うとギルドの中を見回す。


宴会会場の食堂は死屍累々といった様相になっており、俺達はギルドの屋内で飲み直していた。


「この街のギルドは比較的規模が小さいんだ。領内では王都から最も離れた都市でよ。馬車で1日程度の場所に伯爵様のお膝元であるセレンニアもあるからな。この街にはAクラスの冒険者はいねぇし、Bクラスも数人程度が居たり居なかったりってなもんだ」


「依頼が少ないのか? 冒険者が少ないなら魔物の被害が増えて依頼も増えそうだが」


「辺境だからな。大きな街は少ないし他は小さな村だから金が無い。金が無いから依頼も出せない。だが冒険者が少ないから年に1回くらいは魔物が森から氾濫する。領主が金を払ってギルドに依頼する。ギルドに払う金やら道や橋の修理やらで領主もあんまり金は無い。だから、領主が持つ騎士団は少数精鋭…つまり田舎まで手が回らない」


「悪循環だな」


ウォルフの丁寧な説明を一言で評すると、ウォルフは溜め息混じりに顔をあげた。


「だからな、お前らには出来たらこの街の専属冒険者になって欲しいわけだ。ギルドはあんまり公に特定の冒険者を優遇出来ない。まあ、内緒で優遇はするんだが、あまりあからさまなことをするのは他の冒険者の反感を買うしな。だから、お前に出された特権のギルドの持つ情報一部開示はかなり優遇されている証拠だな」


ウォルフはそう言って訳知り顔で笑ったが、まさか俺が自分で交渉した結果だとは思うまい。


今回のオーク討伐は緊急依頼扱いで依頼料を払うと、金貨か大金貨になると言われたからだ。


つまり、日本円にして1000万円である。


即物的な冒険者が1000万円を棒に振って情報を求めるとは思うまい。


「そうだな。まあ、流石に資料の貸出はさせて貰えなかったから明日くらいから情報を仕入れるとしよう」


俺がそう言うとウォルフは笑って俺の肩を叩いた。


「お前さんはどう考えても育ちが良さそうだからな! 俺なんてのが情報とか見れるって言われても何を見ていいかも分かんねぇよ。はっはっは!」


ウォルフはそう言って一頻り笑うと、ふと周囲を見回した。


「そういやぁ、お仲間の美男美女はどうした?」


「あいつらは街を見回ってる。この街は初めてだからな。買い出しとか色々だな」


俺がそう言うとウォルフは眉根を寄せた。


「おいおい、大丈夫かよ? エルフと獣人ってのはここら辺じゃ珍しいんだぜ。ガランとかの北東部とかは多いらしいが…」


「あいつらをどうにか出来る奴がいるのか?」


ウォルフの神妙な顔つきに、俺は純粋な興味としてそう聞き返した。


すると、ウォルフはキョトンと目を丸くし、思い出したように腹を抱えて笑った。


「そりゃあいねぇわ! わっはっはっは!」





帰路についた俺達は、地上から気付かれないであろう遥か上空を飛びながら話し合っていた。


「殿、あの街の武具は初心者用のものばかりですな」


「大将。飯はまあまあだったが肉焼いたみたいな簡単なもんばっかりだ。米はなかったな」


「マスター。奴隷は販売されてなかった。でも一部の宿屋と食堂、鍜治屋などに奴隷がいた」


「ふむ、お疲れ。まあ、他の冒険者を見た感じだと装備も大したことがなかったからな。王都か、もしくはドワーフの国とかに期待するとしようか」


冒険者になって軽く異世界の情報を仕入れるつもりだったが、想定外なほど上手く行った。


なにせ、初心者として登録されるはずの冒険者初日にいきなりBクラスだ。そして、オークの素材を売り払って得た金額はオーク亜種一体につき金貨1枚。


通常のオークだと銀貨数枚から大銀貨1枚が相場だそうだから亜種は10倍にもなる計算だ。まあ、ギルド側からすると見たことが無いくらい良い状態の素材だったらしいから色も多分についているだろうが。



ちなみにオークナイトとジェネラルは売っていない。なので冒険者達に譲渡した43体を除いて、41体のオークを売り払い、金貨41枚分を1日で稼いだことになる。


つまり、4000万円ほど1日で稼いだ計算になる。


普通はウォルフが連れてきたように何十人で依頼を達成し、報酬を山分けするのだろう。


今回のオークの群れをウォルフが連れて来た冒険者で割ると、1人頭100万円から200万円ほどまで報酬は落ちるわけだから、あながち冒険者もボロ儲けといった職業ではないようだ。


「ん? そういえば、今日見た冒険者の中に魔術士は何人いた?」


俺がそう聞くと、3人は同時に首を傾げた。


「拙者は見ておりません。あ、刀を持つ者は3人いました」


「2人見たね。2人ともおじさんだったけど」


「杖3。指輪型2」


3人はそれぞれそう答えて俺を見た。俺は最後のサニーの言葉を聞いて思案する。


「魔術士は少ないみたいだな。オーソドックスな剣士タイプが一番多く見えたが、魔術的な刻印入りの装備は見当たらなかった」


俺がそう言うと、セディアが腕を組む。


「う〜ん、パーティのバランス的には魔術士1人いると対応力が段違いだけどね。雑魚が大量な時とかは魔術士がいないと体力的にしんどいよ」


「物理的な打撃や斬撃に強いモンスターがいても厄介です。拙者にも斬れない奴はいますから」


セディアとサイノスがそう考察すると、それに比例してサニーの薄い胸が前面に出てくる。


「属性をすぐ変えられるから一部の龍や思念体、ガス系モンスターにも強い」


サニーは鼻息も荒く俺にそう言った。どうやら調子に乗っているようだ。まあ、接近戦や魔力減衰系の罠に弱いなどというデメリットは言わないでおいてやろう。


「単純に魔術士の人口が少ないのか、魔術学校のような教育機関で学ばなければ習得が困難なのか。後は、エルフが魔術士として優秀過ぎて他の種族でわざわざ魔術士を目指すのは厳しい…なんてのが考えられるかな?」


魔術士の商品価値を考えるのは流石にゲーム感覚すぎるだろうか。


俺が頭を捻っていると、サイノスが地上を指差した。


「殿、もう城に着きます」


「よっしゃ、風呂行こう! 大将、一緒に入るかい?」


「マスターのお尻は私が洗う」


「何言ってんだ、お前」


夕陽の赤い光を背景に背負う我らがジーアイ城の姿を眺めながら、俺達は城の正門前に着地した。


「お帰りなさいませ、マイロード」


「ただいま、ディオン」


俺はすぐに出迎えの挨拶をくれたディオンに挨拶を返した。こいつはいつも門の付近にいるのだろうか。


ディオンは俺達を順番に眺めると、そっと執事服の胸元から白いハンカチを取り出して自らの鼻を覆った。


「マイロード、大変個性的な体臭が漂っております。是非ともお風呂に入る前に、近くの川に飛び込んで来てくださるとメイド職の者達の鼻の安全が確保されることでしょう」


「体臭はおかしいだろ、体臭は。今日はオーク狩りをしてきたんだよ」


ディオンの丁寧な暴言に俺が苦笑しながらそう言うとディオンは優雅な動作で腰を折った。


「おお、それは申し訳ありません。マイロード。では体臭の件は保留に致しましょう。ところで、マイロード。辺りにマイロードの壊滅的な口臭が拡散しつつありますが」


「口臭じゃねぇよ」



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