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ゲームだからといって楽しめるとは限らない~Star of Rest and the Adventure事件まとめ 作者:電気スナーク

アーティ編

33/33

end

 ――VRオンラインゲーム『Starスター ofオブ Restレスト andアンド the Adventureアドベンチャー』の技術者、電子ドラッグ取締法違反の容疑で逮捕。
 当オンラインゲームは、サービスの一時停止を――

「……ふむ」

 俺はホログラム端末でウェブニュースを読みながら、紅茶を一口啜る。
 ――うん、いい香りだ。よく分からんが、おそらく高級な茶葉だろう。台所にあったものを適当に拝借してきたのだが、これは当たりだったな。

 顔無し野郎も無事に捕まったようでなによりだ。――SRA内での事件について他にも調べている奴がいたので、そちらに接触をとって仕事を任せてみたのだが、思いのほかうまくいったようだ。
 チート行為を証明するスクリーンショットが手元にあったのも、犯人特定に大きく役立った。――あんなアバターの属性を書き換えるなんて、関係者じゃなければ不可能だからな……。

 木製の高そうな椅子から立ち上がって、部屋を見回す。
 一人で寝るには少々大きいサイズのベッドに、ネコだかカバだか判別のつかない形状のぬいぐるみ。壁掛け時計の時刻は六時十分を指している。――広い部屋だ。大きな窓から、朝の日差しが部屋を包み込んでいる。

 壁際の大きな姿見の前に立って、身だしなみをチェックする。
 鏡には、高校の制服を着た黒髪の少女が立っている。――ゲームのアバターでもないのに、ずいぶんと整った容姿だ。……しかし、量産型アイドルみたいで、少々パンチに欠けるような気もする。

「うーむ……」

 スカートを少し巻いて、丈を短くしてみる。――膝がでるくらいに……いや、もう少し攻めてみるか。
 ――太ももが見えるくらいの長さに調節して、俺は大きく頷いた。

「よし!」

 その途端、まるで急にモニターの電源を引っこ抜いたかのように、ブツンと視界が暗転した。




 ――銀色のストレートヘアーで、全体的に白い見た目の幼女が俺の内蔵カメラを覗き込んでいる。
 いつもはまん丸の蒼と碧の瞳は、今は鋭く細められており、なんだかご機嫌ななめといった様子だ。……寝起きだからだろうか?

「……ルシくん、なにをしているのかな?」
『いや、お前が起きないから、代わりに学校へ行ってやろうと思って?』

 うん、ただの親切心だ。――それに、俺も学校の友人たちに会いたいし。
 特にあの探偵もどきと可愛いクラスメイトがどうなったのかは非常に気になる。SRAは一時休止だし、下手をすれば外で会ったりしかねないからな。
 ――というか、こいつは何十年もここで一人きりなんかじゃなかった。普通に女子高生として学校に通っていやがった。……中身ババアのくせにズルい(チートだ)ぞ。

「……僕の体を使うときはちゃんと許可をとってからって言ったよね?」
『とったぞ? 行ってくるぞって言ったら、お前は”うん”って答えたぞ!』

 証拠に、録音しておいた音声データを流してやる。……寝ぼけたアーティが、”うーん……にゃー”と寝言を言っている音声が流れたので、慌てて止める。――再生するファイルを間違えたようだ。

「……ルシくん、今日は学校は休もうか――きみのメンテナンスをしなくちゃならない。腕だとか録音機能だとか、その不必要な機能を取り外さなくちゃ」
『あー、船からの命令で、掃除に行かなくちゃならなくなった。メンテナンスはまた今度な!』

 いやー、朝から掃除とかこの船はロボット遣いが荒いなー。

 急いで部屋から離脱しようとする俺をアーティが両手でがしっと掴んで捕獲する。

『やめろこの機能は必要なものだ!』
「今日という今日は許さない!」

 逃げようともがくが、いかんせんこの(ボディ)はパワーが足りない。キャスターが空回りする。

『周りにはバレてないんだからいいじゃないか、外に出られなかったら一日中掃除してるしかできないんだぞ!』
「今まで話したこともない子から、いきなり”あれ? 今日はスカート短くしてこなかったの?”と訊かれた僕の気持ちがきみに分かるか!?」

 くそう、こうなったら! ――二本のアームを動かしてアーティをくすぐり、その隙に脱出する。

『俺のおかげで新しい友達ができたんじゃないか、感謝しろ』
「……分解してやる!」

 なんだか恐ろしいことを言いながら追いかけてくる幼女アーティ。
 まあすぐに掴まってしまうだろうが、分解まではされないだろう……されないよな?

 俺はアーティから逃げながら、真っ黒い丸窓の外をちらりと見やった。

 ――いつかこの”宇宙船”は何処かの星へ辿り着くのだろうか? それともやっぱりこのままなのだろうか。

 リアルだろうがヴァーチャルだろうが、毎日は変わったり、変わらなかったりしながら過ぎていく。
 泣いたり、笑ったり――そうやって今いる自分の場所が”現実”と呼べるものだと、俺は思うことにした。

 
 ……ちなみに学校は遅刻した。



 end

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