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ゲームだからといって楽しめるとは限らない~Star of Rest and the Adventure事件まとめ 作者:電気スナーク

アーティ編

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「ど、どうなのかね! 撮影したのならば今すぐデータを削除して欲しいのだが!」
「ど、どどどどういう事なんです!? あとこの人とはどういう関係なのですか!?」

 うわ、アーティはともかくなぜかクロノラまで食い気味に詰め寄ってきた。ちょ、近いって、暑苦しい!
 とりあえず手で顔を押さえつけて距離をとる。男だったらぶん殴ってるぞマジで。

「こらっ! 離れろって! ……あのなぁ僕っ娘、俺がお前のパンツのSSなんぞ本当に撮れるわけがないだろうが。ジョークだ、ジョーク」
「そ、そうか……いやまて、ならばなぜパンツの色を知っている!?」
「ん? それはあれだ。VRゲームの装備なんだし下着もセットだろうが、その服」
「う……そうだな。……ああ、本当にびっくりしたぞ」

 ふむ、そうか。下着もセットなのか。いらん知識が増えてしまったが、まあ落ち着いたようでなによりだ。
 しかし執事服娘(クロノラ)の方がまだ突進してきやがる。マジカルとはいえ『ファイター』だけあって無駄にSTR(ストレングス)が高い。

「ぞのひどはだべなんですかっ!?」
「やめろクロ助、俺の手に口をつけたまま喋るな!」

 気持ち悪いので手首のスナップをきかせて思いっきり突き放す。
 VRだからよだれとか付く心配はないが、現実リアルでやられたら多分キレるぞ。

「ぷはっ! その人は誰なんですか!?」
「なぜ俺に訊く? 目の前にいるんだから本人に自己紹介してもらえ」
「そういうことではなくてですねっ!」

 いや、そういうことだろうが。というかいつまで頭から湯気のエモーションを吹いてるんだこいつ……どうやって出しているのだろうか? 自分でやりたいとは思わんが宴会芸に使えそうだ。

「……なあルシくん。考えたのだが、きみが女性専用装備の下着の色を把握しているというのはやはりおかしくないかね?」

 む? 黒パン僕っ娘め、気付かなくていいことに気付きやがったな。
 というかちゃんと呼び出しに応じた時点で掲示板にSSを公開される心配はないのだから、もう気にしなくていいだろうに。
 大事なのはパンツSSなんぞよりカニバリスキューケンのドロップアイテムなんだが。

「そんなことはどうでもいい。アイテムを返してくれ」
「ぅ……む。まあきみがどんな趣味をもっていようと僕には関係ないことだが、ああでも決して似合わないとかではなく――」
「やかましい! 変な妄想を膨らませるな」

 なにを言っているんだこいつは……いい加減めんどうになってきた。周囲の視線も集まってきているし、早くドロップアイテムを回収して二人とも立ち去ってもらおう。

「おい、いい加減ドロップアイテムを返せ! そして二人とも――」
「あの! はじめまして! 私はクロノラと申します! あなたはゴールドスターさんのなんなのですか!?」

 俺の台詞を遮っていきなり自己紹介を始めるクロノラ。……そういえば自己紹介しろって言ったっけか。あとで他の場所ですればいいだろうに、空気の読めんやつだ。

「……ふむ? 初めまして、僕はアーティ。なんなのかと言われても……ルシくんとはただパーティを組んだだけの関係だが?」
「え!?」

 アーティの方はたった今クロノラの存在に気づいたみたいな反応だった。どうやらよっぽど自らの下着SS(生写真)大公開が心配だったのだろう。
 そして再び目を見開いて首振り人形をやりだすクロノラ。なんなんだお前は……。

「なあ、交流を深めるのはよそでやってくれないか? 早くドロップアイテムを――」
「ごごごごゴールドスターさんっ!」
「……俺はそんな迫力のある名前ではないな」
「どういうことなんですかっ! さっき誰ともパーティを組まないって!」
「そうか、訂正しよう。お前とは組まない。よし解決したな? なら回れ右してゴーホームだ、帰れ帰れ。あ、剣の代金は置いていけよ?」
「ひどいっ!?」

 叫びながら掴みかかってこようとするクロノラをひょいと避ける。
 まさかいきなり襲い掛かってくるとは、パーティ組もう作戦が失敗したから直接攻撃に切り替えたのだろうか? まったく、ひどいのはお前の企んでいる暗殺計画の方だろう。罠だと分かっていてパーティを組んでやるほど俺はお人好しではない。
 さらに襲い掛かってこようとするクロノラを回避していると、アーティが思案気な表情で横から話しかけてきた。

「なあルシくん、もしかしてなんだが、見たところその女性に付きまとわれて困っているのではないかね?」
「ああそうだ! というかいい加減ドロップアイテムを返してくれ!」
「……ふむ。忙しそうだからここに置いておこう」

 そう言ってレジャーシートの上にボウリング玉くらいの大きさの卵と黄色い羽を置くアーティ。
 俺はクロノラの掴み攻撃を回避しながら、素早くそれを拾い上げてインベントリに放り込み、振り向きざまに顔面アイアンクロ―で再び動きを止めてやる。「ぅぅぅ……」と涙声で唸るクロノラ。泣くほど悔しいのかよ、恐ろしい女だな。

「さて、あこぎな商売でもしてクレームを付けられている最中なのかと思って見ないフリをしていたが、そういうことならば僕がその女性をなんとかしてやろう」
「うちは高品質で良心価格だ! ……なんの礼もするつもりはないが頼めるか?」
「なに、こちらこそ今回のお礼だ。気にしなくていい」

 にやりと笑って答える僕っ娘(アーティ)。おお、ちゃんと助けてやった礼の事も考えていたのか。よし、早くこいつをどっかに連れていってくれ。
 アーティはクロノラの襟首を後ろから掴むと、俺から引きはがそうと……だめだな、完全にSTR()負けしている。

「ぐぬっ……おい女、見ての通りルシくんは僕に用があるんだ。さっさと離れたまえ!」

 ……もうその用事もなくなったのだが黙っておこう。どうやら言葉での攻撃に切り替えたようだ。

「なんですかっ!? ただのパーティメンバーなのでしょう、私の方が彼に大事な用があるのですっ!」
「ただのパーティすら組んでもらえない者がなにを言うかね? それにルシくんはあれだ……僕に惚れろとまで言ったぞ?」
「なっ!?」

 またも首振り人形と化すクロノラ。……なんだか火に油を注いでいるだけのような気がするんだが。あと”惚れろ”とまでは言っていない。許可しただけだ。
 頭から湯気を出す首振り人形(クロノラ)は、やがて油が切れたのかぎぎぎっと音がしそうな動きで首振りを止めると、なにを思ったか白い手袋を装備解除してアーティに投げつけた。

「ぐぬぬ……け、決闘です!」
「ほう、決闘?」

 ぱさりとアーティ―の頭の上に乗っかる白手袋。にやにやと笑いながらあごを上げてクロノラに見下すような視線を送るアーティ。
 今気づいたがこいつ意外と性格悪いな、絶対楽しんでやがる。しかし手袋を乗せたままだからなんだかアホっぽい。

「そうです! どちらが彼の(つるぎ)に相応しいか、決闘で決めるのです!」
「…………あー、ルシくん?」
「……なんだ?」
「彼女はきみに【投擲】されたいようなのだが、絶叫マシンマニアとかなのかね?」
「知るか。さっきは【分解】されたいとか言ってたぞ……」
「……ふむ」

 あごに手を当てて思考にふけるアーティ。癖なのだろうか。まあ決闘でもなんでもいいので二人とも早くこの場を離れて欲しい。いい加減周囲の視線が痛い。
 やがてアーティは考える僕っ娘ポーズを解くと、とんでもないことを言い出した。

「ではこうしよう。僕が勝ったらきみは大人しく立ち去る。きみが勝ったらこのパーティに入れてやろう」
「分かりました!」
「は!? おいちょっと待て!」
「決まりだな。闘技場に移動しよう」
「はい!」

 俺の抗議の言葉も聞かず、さっさと街外れの闘技場へと向かって歩き出す二人。
 もう放っておいて見えなくなってからパーティ解散しておきたいのだが、なぜか周囲の視線が俺にプレッシャーをかけてきている気がする。……と、誰かに肩を叩かれた。

「早く行けよ。それと次からは噴水前でやってくれ。またここでいちゃついてたら俺達がお前を闘技場に誘うぞ」

 振り返ると10人ほどのマッチョな男性プレイヤーが、なぜか俺を取り囲んで睨みつけていた。

 ――ドロップアイテムを取り返したかっただけなのに、俺がなにをしたというのだ……。
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