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ゲームだからといって楽しめるとは限らない~Star of Rest and the Adventure事件まとめ 作者:電気スナーク

わんちゃん編

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 なんとも言えない気持ちでリミの奴を半眼で睨みつけていると、カナデは事情を察してくれたのか少しすまなそうな表情で俺の肩をぽんと叩いた。

「うーん、わんぱらっちは何も知らないで連れてこられたって感じだったのね。コトリが懐いてるって事は、ほんとに下心とかないの?」
「いや、そんなものあるわけがないだろう……」
「その割には、服とか買わせてるのね」

「クレクレ君は嫌われるわよ」とのカナデの言に、俺は「うっ」と言葉を詰まらせた。
 下心と言っても色々ある。新参者が先輩プレイヤーに装備品などをねだる行為は度が過ぎると嫌われやすいが、今度はそっちの意味にとられたようだ。
 しかし、渋い顔をしている俺を見たカナデは何故か安堵したようにクスリと笑った。

「……なーんてね。まあ、コトリだけ呼び出しって聞いたときは心配したけど、そういうのじゃなくて良かったわ。この子、無自覚にガード緩いから心配だったのよね」
「…………ゆるく、ない」

 カナデに頭を無抵抗に小突かれながら、コトリが眠そうな声で反論する。……確かにガードしていないな。

「でもまあ、抱き着くとか”あーん”とかまではさすがにやらないわよ? どうやって口説いたのか興味あるわねー?」
「おい、”あーん”ってなんだ」
「そりゃもう、カップルのやるあれでしょ? 周りで見てる方はいたたまれない気持ちになるやつ。さっきやろうとしてたじゃない」
「……してないだろう」

 なんだかゲーム内なのに頭が痛くなってきた……。とにかくもうこの話題は終わりのはずだ、話を切り替えよう。

「それで、ただ通りがかったってのは嘘なんだろ? 暇ならレベル上げに付き合ってくれ。そっちの下心なら確かにあるぞ」
「あら、やっぱりバレた?」

 ペロリと舌を出してみせるカナデ。本当はそれほどレベル上げに興味はないのだが、そちらが目的だと思ってもらっておいた方が俺にとって都合がいい。
 それに調査をするにしても、キャラクターの強化をしておくに越したことはない。

 ――おそらくだが、今回の依頼人の目的は電子ドラッグの存在を”確かめる”事ではなく、その存在の”噂を流す”事なんじゃないだろうかと俺は思っている。
 その目的に沿う形で動くにせよそうしないにせよ、キャラクターの”レベル”が必要になる場面は多いだろう。

「うん、まあ心配で見にきたのもあるけどね。……あたしも暇なのは認めるわよ。それで、昨日と同じ場所でいいの?」
「いや、北の方も行ってみたいな。どんなモンスターがいるんだ?」

 北というキーワードにカナデはぴくりと反応したが、俺の服装を見て「あー、それなら大丈夫か」と納得したように頷いた。そういえば、北は薄着だと継続ダメージがあるんだったか。

「うーん、雪男とかいるけど、あれ火属性通らなくなってからおいしくないのよね。……あ、でもリミっちいるなら”氷の洞窟”とかいいかも。リミっちの【詠唱魔法】でストックしてる”呪文”って、雷中心だったかしら?」
「そうだよー。火と雷かなー、あと毒ー」
「……毒って、効果薄いからやめといたほうがいいわよ……そういえばわんぱらっちのスキル構成は?」

 ……ん? そういえば問われてから思い出したが、初期の【観察】以外に取得していなかったな。
 ステータスウィンドウを呼び出してスキルを確認するふりをしながら、とりあえず目についたものを適当に取っておく事にする。――【リロード】か、火縄銃の弾を込めるのは面倒だったしこれでいいだろう。あとは、【クイックドロウ】なんかが格好良さげかもしれない。

「俺は【観察】と【リロード】それに【クイックドロウ】だな」
「……それって【観察】は遠距離物理クラスには最初からあるけど、残り二つは”短銃”のスキルよね? 武器まで買ってもらったの?」
「いや、火縄銃のままだが?」

 俺がそう答えると、カナデは何故か可哀そうなものを見るような目をした。

「あのね、【リロード】っていうのはインベントリの中に入れてる弾薬アイテムをあらかじめ登録しておいて、それをメニューを開かずに取り出せるってスキルよ? ”アーチャー”にも似たようなスキルがあるけど、あたしは矢筒を指定してるわ」
「便利そうじゃないか」
「……わんぱらっち、弾一発だけ手元に呼び出してもたいして手間の省略にならないわよ。弾倉のある銃で使うのが普通なの」

 なるほど、確かに今の状態ではあまり意味がないスキルだったかもしれない。弾をインベントリから取り出すところより、それを込める作業に手間どっていたのであるからして。

「それとから【クイックドロウ】は”ソードマン”の【居合い】みたいに、鞘から――わんぱらっちの場合はホルスターかしらね。そこから抜き撃ちするときに、AGI(敏捷)と武器の最低攻撃力にプラス補正がかかるの」
「……便利そうじゃないか?」
「わんぱらっち、火縄銃を腰にさして抜き撃ちするのかしら?」
「……しないな」

 どうやら、スキル選択を誤ったらしい。
 未だにスキルを習得していないことであまりやる気がないのがバレるんじゃないかと思ったのだが、失敗だったようだ。

「ていうか、今目の前でこっそりスキル取得してたでしょ。どうして相談しないのよ?」
「いや、呆れられるかと思って?」
「じゅうぶん呆れたわよ」

 しかも呆れられてしまったらしい。それもこれも、俺のめんどうな愛銃が原因なのだ。このニクイやつめ。
 とはいえ【リロード】が弾込め作業を自動でやってくれるスキルでないのは残念だが、昨日さんざんやったのだしそのうち慣れてくるだろうとは思う。手間はかかるが火縄銃の威力は高めに設定されているようだし、実はこれを使い続ける事に文句はなかったりする。

「とにかく、そのスキル構成だと武器は買い換えた方がいいわね。”ガンナー”の中でも近接戦闘寄りのスキル構成よ、それ。ちょうど2対2で分けられるわね」

 ……どうやら愛銃とはここでお別れのようだ。にしても経費がかかって仕方がないな、依頼主には悪いが今回はあまり目立たないように動いて、しばらくはSRAを拠点に仕事をするのもありかもしれない。
 リミも気に入ってはいるようだし、そもそも何度も引っ越したくてしているわけではないのだ。

「そうか、分かった。なら俺とコトリが前衛で、後衛2人て事になるのか。武器買う金は……リミ、あるのか?」
「あるけどあんまり強いの買えないよ?」
「…………わたし、が」
「コトリ、あんまり甘やかしちゃだめよ。わんぱらっち、貸しといてあげるから返しなさいよ?」
「そうか、悪い。必ず返そう。 それと、服のお礼もそのうちきっとする」
「ならよし」

 回復薬の買い出しはすでに済んでいるようなので、どこかプレイヤーの露店でちょうどいい銃があるか探しながら北ゲートまで移動する事にする。
 ”フレンドリーガーデン”の掲示板で、度々北での狩りをおこなっていたパーティーは『Quartetカルテット』なのだろうと俺は考えているのだが、別のパーティーである可能性もある。
 なんにせよ、行ってみて二人の反応を見れば分かる事もあるだろう。と、俺は楽観的に考えることにした。デート(?)でいじられ過ぎてボケていたのかもしれない。

 ――このときの俺は忘れていたのだ。どうして自分が『Starスター ofオブ Restレスト andアンド the Adventureアドベンチャー』で、遠距離攻撃職を選んだのかを。
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