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スライムになった私は母親らしいです 作者:Yuyu*@栃木好
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01 人生が終わってスライム生がはじまった

「…………」

 無言のまま手につけられた手枷の鎖が引っ張られる方向に私は進んでいた。
 少し顔を上に向けると、ご主人様がいる。
 私をストレスのはけ口として暴力やいろいろなことしてくる、私を奴隷どころか道具としか見ていないご主人様がいる。

「はっはっは! こんなダンジョンでなぜ行方不明者がでるか理解できないねぇ!」
「本当にその通りですな~」

 貴族の次男として生まれたご主人様は、とにかく甘やかされて生きてきた。その結果、自意識過剰で自己中で、奴隷や人の上に立っていないと気がすまない、そんな人間に育ってしまっている。
 私がそんなご主人様に買われたのは、私の国が戦争で負けて捕まり奴隷として売りに出されてすぐのことだった。
 金髪で小さく反抗したとしても負けることがなさそうな私を、ご主人様は買ったのだ。
 それから数年たった今は、家を継ぐのはご主人様のお兄様で決定していることもあって、冒険者の真似事なんかをしている。今はその一環で、酒場で煽られてダンジョンまで連れてこられている。一緒にいるのは、落ちこぼれの神官で、ご主人様に媚を売り続けている人だ。
 なんで、こんな人に神様は加護の力を与えているかと考えたこともあったけど、数年たっても成長しないところを見ると、踊らされているだけのかわいそうな人なのかも。

「うん? おい、みろ指輪が落ちてるぞ!」

 ダンジョンの道中で、ご主人様はそんな風に警戒もなく大きな声を上げて地面に落ちていた指輪を拾い上げる。

「これは、魔法のアイテムか? 力を感じるぞ!」
「お待ち下さい。たしかにその指輪からは力を感じますが、同時に呪いも付与されているようですぞ」
「そうなのか? どれ、それなら、こいつにつけよう!」

 ご主人様はそういうと、私の手を強引に掴んで指輪をはめます。私はもう抵抗しても無駄と思っているので、指輪をはめられました。
 指輪がハマると体の中に何か得体の知れないものが入ってくる感覚に陥ります。

「んぅ……」
「本当みたいだな! それなら、こんなものはいらんが……こいつにつけておこう。面白い!」
「そうですなぁ。では先へと進みましょうぞぉ!」

 そこから更に先に連れてかれる。指輪から入ってくる何かも収まって、どうにか普通に歩けるようになった時だった。

「な、なんだこいつぅ!?」

 前を歩いていたご主人様がそんな風に叫び出す。

「ぁ、わああああぁぁ!!」

 そして神官はその何かを見るやいなやその場で泡を吹いて気絶した。
 ご主人様はといえば、私の鎖を強引にひっぱったとおもえば、私を盾にするように前に押し出してきます。
 そのときに初めて私は目の前にでてきて、ご主人様たちを恐怖に導いたものを見ました――とてつもなく大きなスライムを。

「こ、これぐらいにしかつかえんのだ! 囮になっていろ!」

 そうは言われても、手枷がついてて動きにくいですし、魔力とかも封じられてしまってなにもできることなんてないのに。
 目の前のスライムは私に向かって動いてきた時、私は死の恐怖よりも、やっと死んでこの世界から開放される――そんな風に思った。
 そのままゆっくりとスライムに飲み込まれて、呼吸ができなくなり、意識が暗闇に落ちていった。

 ***

 意識が戻ると、私は何処かで横に倒れている。
 奴隷とはいえ布切れくらいは着ていたはずだけど、今は体も床に触れている感触がある。
 ゆっくりと体を起こそうとすると、手と足がなくなっていることに気がつく。

 ――死んで魂だけになったのかも。

 私はそんなふうに思ったけれど、目を開くと暗闇でダンジョンの小部屋みたいな雰囲気の場所に見える。
 そして頭のなかに響くように声が聞こえてきた。

『起きたか』

 私は答えようとしたけど声が出ない。

『色々と混乱しているかもしれぬが、まずは意識するのじゃ。自分の体を』

 言われたとおりにしてみると、両手の感覚が戻る。目は暗闇の中に慣れてきて、目の前に私を飲み込んだはずのスライムがいるのが見える。

「……夢?」
『残念ながら現実じゃ。誠に勝手で申し訳ないのじゃが、お主をわしらの同族にさせてもらった』
「同族……?」
『そうじゃ。自分の下半身を見てみるといい』

 私は今座っていると思ったけど、足の感覚はなく下を見てみると、そこに足はなくスライムのような液体があるだけだった。

「……やっぱり夢? あ、でも聞いたことあるかも」

 ご主人様がいやいやと勉強している横で、図鑑を見ていた時にスライムなどの一部の魔物が魔族や人間を同族に変質させるものがいるとか。
 自分の上半身も液体とつながるようにできてる。不思議な感覚で、動かそうとしてみると、その液体であり私の体が自由に動かせる。

「でも、なんで? ダンジョンにきた冒険者なんて殺すのが普通のはずなんじゃ……?」
『わしらはあまり外に出ずにダンジョンでのんびりと過ごしていければいいと思っているのじゃ。じゃが、最近メスのスライムが生まれんでな。王となる世継ぎが作れなかったのじゃ。じゃから、強引じゃが、魔力の相性が良かったお主をスライムにさせてもらった。あと、申し訳ないのじゃが、すでに子供も産んでもらった』
「……私お母さんになったの?」
『ま、まあ一応そうなるのじゃが……お主がつけていた魔力の品も混じってしまって、少し特殊な同族になってしまったようでの、本当に申し訳ないのじゃ』
「死ねたと思ってたから、気にしなくていいよ……これから私ってどうなるの?」
『お主はスライムの中でも人化の術が使えるようじゃから、ここからでて外で暮らすもなにをするのも自由じゃ』
「そう……」

 でも、奴隷の契約魔法もつけられて――。

「そういえば、私が一緒にいた人は?」
『神官のほうはダンジョン内に住み着いていたオークにどこかへ連れ去られて追ったわ。もう一人の方は――』

 どこが顔かわからないけど、大きなスライムさんは横の方を見るような仕草をして、そっちを見る。
 そこにはご主人様が着ていた服を着ている女の子がいる。

『お主の子供で時期の王に気に入られての。性別まで変えられてしまっておる』
「そうなんだ……」
「お、おい。おれを助けろ!」

 私に気づいたご主人様は甲高くなった声でそう言ってくる。
 いつもだったら契約魔法のせいで逆らうと、背中に激痛が走るんだけど――なんともない。

『お主は同族化するときに死んだからのう。呪いの類や様々な契約のたぐいはすべて破棄されておるぞ』
「親切にありがとう……魔物にもいい人……人? いるってしれてよかった。私、外で暮らしていくよ」
『ダンジョンの出口までは案内させよう』

 大きなスライムさんがそう言うと、私みたいに肌色になったりはしていないけど、人の形をとってるスライムが手招きしてくれる。

「あ、まて、助け――あああああっ!」

 元・ご主人様はもしかするとこれからお姫様としてここで過ごしていくのかも。でも、どうせ自分の家じゃいつまでも一番上に立てないから冒険者になったんだし、よかったのかも。神官は知らない。
 案内されるままについていくと、ダンジョンの外にはすぐにでれた。
 光の下に出てきて改めて体を元と同じみたいに作るけど……服なくなっちゃったな。
 そうしていると、スライムの子が服を持ってきてくれる。地面にスライムの体で『このダンジョンで散った女冒険者の服。着てっていいよ』と書いてくれる。
 お言葉に甘えて私はそれを着る。少しサイズが大きくて肩が少しでたところでひっかかるし、袖も指が出てるだけになるけど……布切れよりはいっか。
 一緒に入っていた鏡を見てみると変わらず金髪だったけど、両目ともに青だったけれど、右目だけが紫色の目になっている。これは、たしか人化してる魔物の特徴だったかな。

「はぁ……たしか、あっちに小さい国があったはず」

 私は他の人に気力を感じられないといわれそうな声をだして、気合を入れてから記憶を頼りに歩き出す。
 奴隷からスライムになった私の人生、どうしていこうかな。
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