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ヘッチャラ王子と、かわいいお人形

作者:かに
 ある小さな国のお話です。
 その国には王子さまが一人と、お姫さまが三人いました。三人のお姉さんと弟が一人のきょうだいです。
 一番目のお姉さんは、みんなからほめられたいと思っていました。
 二番目のお姉さんは、お金もちになりたいと思っていました。
 三番目のお姉さんは、すてきな男の子とあそびたいと思っていました。
 王子さまは、なにも考えていませんでした。

 三人のお姉さんは、王子さまにいじわるばかりしていました。

 一番目のお姉さんは、王子さまの悪口を言いふらしました。
 でも王子さまはヘッチャラです。みんなから悪口を言われても気にしません。

 二番目のお姉さんは、王子さまのお小づかいを取り上げました。
 でも王子さまはヘッチャラです。買いたい物がないのでこまりません。

 三番目のお姉さんは、王子さまに会いに来た女の子を追い返しました。
 でも王子さまはヘッチャラです。いつも一人で遊んでいるのでさびしくありません。

 どうしてお姉さんたちがいじわるばかりするのか、王子さまには、わかりません。わからなくてもヘッチャラでした。王子さまは、なにも考えていないからです。



 ある冬の日に王子さまは、さんぽに行きました。外は寒くても王子さまはヘッチャラです。
 なにも考えずに、まっすぐ歩きました。みずうみにつきました。

 みずうみには、とても大きくて真っ白な鳥がおよいでいました。王子さまはジッと白い鳥を見ました。
 白い鳥が王子さまに近づいてきました。
 白い鳥は黄色いくちばしでカゴをくわえていました。白い鳥がカゴをつきだすので、王子さまはカゴを受けとりました。

 カゴの中には、剣と女の子のお人形が入っていました。
 王子さまは剣をこしに、さげてみました。剣の長さは王子さまの体にぴったりです。まるで王子さまのために作られたようでした。
 王子さまは両手でお人形を抱えました。お人形はしなやかで長い髪をもち、目はぱっちりと大きくて、くちびるはキュッとしまっています。

 とっても、かわいい。
 王子さまは、お人形が大好きになりました。
 それは王子さまが初めて考えた気持ちでした。



 王子さまは、お人形をとても大切にしました。いつのときも、どこへ行くにも、いっしょです。
 ごはんを食べるときには、となりにすわらせていっしょに食べます。お人形は食べられないので、王子さまはごはんの味をおしえてあげました。
「これはおかずパイ。お魚やお肉をパリパリの生地でつつんで焼いたものだよ」
「これはクリームスープ。冬のお野菜がたっぷりで食べると体があたたまるよ」
 お人形はしゃべりません。王子さまはヘッチャラでした。いっしょにいるだけで楽しかったからです。

 さんぽにいくときもいっしょです。お人形は歩けないので王子さまは両手で抱えてつれていきます。
「今日は風が冷たいけど、お日さまがあたたかいよ」
「寒くても咲いているお花があるよ。とてもきれいだから見に行こう」
 お人形はしゃべりません。王子さまはヘッチャラでした。いっしょにいるだけで楽しかったからです。

 王子さまは、お人形といっしょにいると、とても楽しい気持ちになりました。
 今日は何をして遊ぼう。
 明日はどこに行こう。
 いろんなことを考えるようになりました。



 三人のお姉さんは面白くありません。王子さまが毎日とても楽しそうだからです。
 どうしたら王子さまを泣かせられるかをいっしょうけんめいに考えました。
 そうだ。
 王子さまが大切にしているあのお人形を取り上げてしまえばいい。
 三人のお姉さんは顔を見あわせて笑いました。



 ある朝、王子さまはお人形がなくなっていることに気づきました。同じベッドの同じまくらで寝ていたはずのお人形がいません。
 王子さまはパジャマのまま、こしに剣をさげると、はだしで部屋をとび出しました。

 王子さまは、お人形がどうしていなくなったのかを、いっしょうけんめいに考えました。
 昨日の夜に王子さまがねむるまでは、いっしょでした。
 お人形は一人ではうごけません。かってに部屋を出て行けません。もしかしたら、誰かが王子さまの部屋から持っていったのかもしれません。
 それは誰でしょう。王子さまに、そんなひどいことをするのは誰でしょう。
 王子さまは答えを見つけました。

 三人のお姉さんたちの部屋は、王子さまの部屋から一番遠いところにあります。
 王子さまはお姉さんたちの部屋をめざして走りました。走っても走っても、なかなかたどり着きません。はだしの足は冷たくなりました。
 お城の中はなんと広いのでしょう。

 やっと王子さまは、お姉さんたちの部屋に着きました。
 ドン! ドン!
 とびらを強くたたきましたが返事がありません。王子さまは、とびらを開けました。

 一番目のお姉さんがお人形の頭をむんずとつかみ、
 二番目のお姉さんがうでをひっぱって、
 三番目のお姉さんがハサミで切ろうとしていました。

「やめろー!」

 王子さまは、お姉さんたちに体当たりをしました。
 一番目と二番目のお姉さんがお人形さんをほうり投げました。
 三番目のお姉さんがもっているハサミに当たったあと床に落ちました。

 王子さまは、お人形をかばって床に転びました。
 その上からハサミがふり下ろされようとしています。
 王子さまは、体をおこして立てひざをつきました。
 こしから剣を外して両手で持ちました。
 ガシャン!
 剣でハサミを受け止めて、はじきとばしました。

 王子さまは怒っていました。
 今までは、どんなにいじわるをされてもヘッチャラでした。
 しかし、大切なものを傷つけられることは、とてもかなしいのです。

 また同じことをされたらどうしよう。
 王子さまは今までに何度もいじわるをされたことを思い出しました。
 王子さまはヘッチャラではありません。いろんなことを考えられるのです。

 王子さまは立ち上がりました。前に一歩ふみだしました。お姉さんたちにむかって剣をかまえます。
 三人のお姉さんは後ずさりました。

「それはお人形さん。しゃべらないわ。うごかないわ」
「お人形さんがそんなに大事なの?」
「お姉さんよりも大事なの?」
 お姉さんたちが言います。

「お人形さんじゃない。ぼくの大好きな女の子だ。傷つけるおまえたちは、僕のお姉さんじゃない!」

 王子さまが剣を頭の上にふりかざしたときです。
 お姉さんたちが大きくて低い声で笑い出しました。こんな笑い声は聞いたことがありません。

「ふはははは。よくぞ見やぶったな」

 王子さまは、おどろきました。
 三人のお姉さんから真っ黒な化けものがとびだしてきたのです。
 黒い化けものは、ずっと昔にお姉さんたちにとりつきました。王子さまにいじわるをして、お城から追い出そうとしました。この国をのっとるつもりだったのです。

 王子さまは剣をふり下ろしました。
 一番目のお姉さんにとりついた化けものを、たてに真っ二つに切りました。
 二番目のお姉さんにとりついた化けものを、よこに真っ二つに切りました。
 三番目のお姉さんにとりついた化けものを、ななめに真っ二つに切りました。

 王子さまにいじわるをしていた真っ黒な化けものは、ぜんぶ消えてなくなりました。
 もう王子さまにいじわるをするお姉さんはいません。



 王子さまは剣をおろしました。お人形を抱きおこしました。
 お人形の左うでを見ます。上のあたりが赤くにじんでいました。さっき三番目のお姉さんのハサミに当たってしまったのです。

「かわいそうに。ケガをしてしまった」

 王子さまは、傷のまわりをやさしくなでています。

「ありがとう」

 かわいい声でした。王子さまは、とってもおどろきました。お人形がしゃべったようにみえたのです。

「大丈夫。一人で立てるわ」

 お人形は王子さまの手から離れて立ち上がりました。
 もう、お人形はお人形ではありません。
 しなやかで長い髪はゆれて、大きい目はまばたきをし、くちびるを開いてほほえんでいます。かわいい声でお話もできます。
 お人形は、とってもかわいい女の子になっていました。
 王子さまは、もっとおどろいて、こしがぬけそうになりました。

「あなたがわたしに命をくれたのに、どうしておどろいているの?」
「ぼくがきみに命を?」
「わたしを大好きになってくれたから、わたしは、にんげんになれたの」

 女の子は王子さまに手をのばしました。王子さまは、女の子の手をしっかりとにぎりました。




 それからしばらくして、王子さまと女の子は二人で旅に出ることにしました。
 今ではとってもやさしい三人のお姉さんが、心配しています。

「本当に出て行ってしまうの?」
 一番目のお姉さんが言いました。

「うん。いろんなところに行って、いろんなものを見せてあげたいんだ」

「また化けものがでてきたらどうするの?」
 二番目のお姉さんが言いました。 

「そのときは大きな声でぼくを呼んで。どんなに遠くにいても、絶対に助けに行くから」

「からだに気をつけてね」
 三番目のお姉さんが言いました。

「大丈夫。二人いっしょだから」

 女の子は一人で歩けます。王子さまに抱えられなくても大丈夫です。
 王子さまはお城を出て旅をするために、王子さまをやめてしまいました。
 ヘッチャラ王子さまは、ただの男の子になりました。

 男の子と女の子は手をつないで、どこまでもいっしょに歩きます。
 春はもうすぐそこまできていました。

                            <おわり>
quare_black.gif      

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