†リガルド王国物語†〜Love&destiny〜(20/94)PDFで表示縦書き表示RDF


◆注意◆性描写が入っています。苦手な方は読まないことをお勧めいたします。
†リガルド王国物語†〜Love&destiny〜
作:AYAKA



第十八章 陵辱


 ――ギシッギシッ。男が動くたびに、ベッドが軋んで音を立てる。
 跨られた後も、ステラは精一杯の抵抗を試みた。力を込めて、上に乗っかる男をどうにかどかそうとしたのだ。
 ――こんな男にもてあそばれるくらいなら、いっそ死んだ方がマシ。
 どこかの清らかな修道女ならば、ここで舌のひとつでも噛み切って自害を選んだろうか。
 だが自分は違う。前言撤回。やっぱり、こんな最低な男の為に死ぬなんて絶対嫌だ。死んでたまるかクソ野朗。
 こうなれば、どこまででも抵抗し続けてやる。キスなんかしてみろ、その舌を噛み千切ってやる。汚いアレを見せたりしてみろ、ボコボコに蹴ったぐってやる。
 と、頭の中で暴言を吐こうにも、バタバタと脚を動かして暴れようにも、太股あたりに男の身体がのしかかっていてあまり意味をなさない。
 こうしている間にも、男の武骨な手によってステラの太股が左右に広げられてしまった。
 すかさず股を閉じようとしたが、それよりも早く男の腕が侵入し、それを阻止される。そして、太股の間に身体を滑り込ませた男は、嫌がるステラの反応を堪能するかのように、白くて綺麗な太股の内側をツゥー…と舐めた。
「や……だっ……!」
 ゾワゾワゾワ。と、何とも言えない悪寒が身体の芯を駆け抜ける。――気持ち悪い。吐き気がする。やめろ、触るな。
「や……ァあっ……」
 敏感な太股の裏を舐められるたびに、身体がビクビクとうずく。
 ゾクゾクと、今までに感じたことなどない感覚が背筋を駆け巡る。
「なんだァ。嫌がってるくせに、感じちゃってるじゃん」
「ちがっ、ん……ぁあ……」
 嫌なのに……嫌なはずなのに。
 途切れることなく与えられるこのゾクゾクする感覚に、逆らえずに反応してしまう。自分の唇から、自分のものとは到底思えないほどに凄く艶めいた声が、勝手に漏れてしまう。どうして?
「ね、気持ちいい?」
「……きもちく…っぁ……なんか、ない……っ」
「君がいくら抵抗しようとも、身体は素直なんだよ。もうあきらめなって……一緒に気持ちよくなろうじゃない」
 苛ついた。――誰が、お前のいいようにされるかよ。
 ステラは男を睨みつけると、その顔目掛けてつばを吐いた。そしてなんと、つばは見事に男の右目の下に命中したのである。
「ざまみろ」
 言った瞬間、ステラの頬を男が叩いた。いや、叩いたと言うよりも、殴った、の方が近いかもしれない。それは、アーヴィンの時とは比べ物にならない程の威力だった。
「あまり、僕を怒らせないでくれよ?」
 ――くやしい。悲しい。誰か助けて……怖い。
 男という生き物を、この時初めて恐ろしいと肌で感じた。頬に残るじんじんとした痛み。味わったこともない恐怖感に、いつの間にかステラの身体はガタガタと小刻みに震え、硬直していた。
 そんなことなどおかまいなしに男がニタリと微笑む。その手には、ギラリと光る銀色の小型ナイフ。
「――!」
 もしかして、このまま殺されるのか。そう思い、ステラはぎゅっと目をつむった。
 しかし、そうではなかった。そんなことよりも、もっと屈辱的なことが起こったのだ。
 ビリビリッという布が引き裂かれる音がステラの耳に入った。そう、服を、裂かれたのである。
 おかげで、小ぶりな胸が露わになってしまった。
 舐め尽すように男がステラに視線を這わせる。
「へぇ……。やっぱ小さいね」
 男は片手にすっぽり収まる小さな胸を、乱暴に揉みほぐす。
「うるっ……さい」
 永遠に忘れられないくらい、男ってモノを僕が君の体躯に刻んであげるからね。そうささやいて、楽しげに、そして不気味に微笑む男。
 一見とてもやさしそうな、それでいてアーヴィン似のこの男は、こんなにも餓えた狼だった。そんな狼にのこのこと捕まる自分は、さしずめ馬鹿な子羊。この後ガブリと丸呑みにされるに違いない。――ちくしょう。
(……アーヴィン、あたし……どうなるの)
 それまでこらえていた涙が、とうとうせきを切ったようにあふれだす。
 男の生温くざらついた舌が、ステラの小さな胸に吸いついた。そして、あろうことかカリッと頂に噛みついたのだ。
「あっ! 痛っ……」
 与えられた痛みに、ステラは顔を歪めた。しかし、男はそんな反応も楽しむように満足げ。いくら悲鳴をあげようとも、胸をいいようにされるだけであった。
 ぴちゃぴちゃというぬめった唾液の水音が、不本意ながらも自分の熱のこもった吐息が、古びた室内にひつように響いていく。
 徐々に、痛みは快感へと変わりつつあり、ステラは断続的に与えられるこの刺激に、あられもない声で喘ぐことしかできなかった。
 最初に暴れて体力を消耗したこともあり、抵抗の気力すらすでになくしたステラは、最後の抵抗として男から顔を背けて強く唇を噛み締め続けた。容赦なく与えられるこの嫌悪感の中に混じった快楽に、必死に耐えていたのだ。
 声だって、もう抑えきれていない。けれど、熱を含んだこの鳴き声を、こんな最低野朗なんかに捧げてたまるか。
 目尻から横に流れた涙はポタポタとシーツに落ちて、大きな大きな染みになっていく。
 これをいいことに、男の武骨な手がゆっくりと腰から太股まで滑り、ステラは瞳を閉じていよいよ覚悟した。
 ――あぁ……もう終わりだ。くやしい。あたしはこの男に……いいように玩具おもちゃにされる。
 途端にまぶたの内側に、アーヴィンのあのやさしげな笑顔が浮かんだ。
(アーヴィン……アーヴィン……アーヴィン)
 心の中で、愛しい人の名前を呼び続ける。せめてこの心だけは……守りぬこう。
 ステラは声を抑えるために顔の傍のシーツを強く噛み締めた。――絶対、放すものか。
 それによって呼吸がままらなくなったステラは、涙を流し続けながら身をよじる。
 苦しい。息が、でき、な…………
 だんだんと、意識がぼやけてきた。なにか、まるでふわふわした感覚がステラを包み込むかのよう。
 力、抜けよ。という少し苛ついた男の声と、カチャカチャッというベルトを外しているであろう音を最後に、ステラの意識は遠のいていった。



 時をさかのぼること少し前。
 アーヴィンはもう三度目になるであろう花屋の前に着いたが、やはりそこにステラらしき人物は見あたらなかった。
 ここにいないとすれば、いったいステラはどこにいるのだろうか。無事に宿に戻っているのならばそれが一番いいが。
 アーヴィンはため息をひとつ、色とりどりな花々の中に落とした。屈んで花を眺めていると、なんだか少し落ち着く気がする。
「なあお前たち。ステラがどこに行ったのか、教えておくれよ」
 ポツリ。アーヴィンは独り言のように、風に揺られて咲く花々に語りかけた。花が返事をすることなどありえないのだけれど。
 その代わりに、店の中から中年女性の声が掛かった。
「どうだい、綺麗な花だろ?」
 アーヴィンが顔を上げると、そこには薄桃色のエプロンに身を包んだ感じも体格もいい女性が、これまた愛想の良さそうな笑顔を浮かべて立っていた。
「あらやだ、お兄さん色男じゃないか。あんた、花が好きなのかい?」
 花屋の女性は、カラカラと笑う。
「そうだね、花は好きかな。僕の連れも花は大好きだからね」
 アーヴィンもにっこりと微笑んで見せた。内心はかなり焦っているが、ついつい愛想笑いをしてしまう。これも、穏やかで人の良いアーヴィンの性だろうか。
 そんなアーヴィンを見ていて、花屋の女性はふと、何かを思い出したように顎に手をあてた。
「そういやぁ、さっき可愛らしいお嬢ちゃんも、あんたと同じように花を眺めてたよ」
 あそこの壁に寄りかかってね。と、向かいの建物の壁を指して女性は言った。
 可愛らしいお嬢ちゃん。もしかしたら、と思いアーヴィンは訊ねてみる。
「その子、どんな子でした?」
「ここらじゃあまり見ない子だったよ。たしか蜂蜜色の髪が綺麗な子でねぇ……」
 でも、泣いてたんだよ。と女性は続けた。
 間違いない、ステラだ。
 そう確信したアーヴィンは、ステラのその後の行方を訪ねた。せめて、どの方角にいったかだけでも、かなりの収穫である。女性の話では、ステラがいたのは少し前とのことであったから、上手くいけば追いつけるかもしれない。
 ところが、そんなアーヴィンの思惑を打ち砕くように、女性の口から驚愕な返答がでた。
「ああ、その子なら人の良さそうなお兄さんに連れられて、そこの裏路地に入っていったよ」
「なんだって?!」
「彼女けっこう傷心してたみたいだしねぇ。変なこと、されてなきゃいいけど」
 花屋の女性は心配そうに裏路地を見つめていたが、アーヴィンにはそんな余裕など無かった。
 嫌な予感が胸をよぎる。ざわざわと、心臓がざわめきだして、妙な汗が体中から吹き出す感覚にみまわれた。
 ――ステラ!
 アーヴィンはさっと駆けだすと、薄暗い裏路地へと飛び込んでいった。
 ――頼む……無事でいておくれ。
 裏路地は高い建物の陰となり、陽当たりが悪いために不気味なほど静かで、そして肌寒かった。
 アーヴィンは迷路のように入り組んだ裏路地を、ステラを探して駆けずり回った。
 狭い暗がりを見つけては、心臓に悪い刺激を受けながら。もしやここで二人の行為が行われているのでは、そういった想像ばかりがアーヴィンの頭を支配し、その場所を確認してば安堵の息を吐いた。
 もう、どれだけの場所を探しただろうか。それでも、ステラは見つからない。
「ステラ……ステラ……ステラ……」
 頭がおかしくなりそうだ。ステラがいなくなっただけでこんなに取り乱すなんて。離れる前は考えもしなかった。
 早く見つけなければ。ステラが今もどこかで、見知らぬ男にその体を強姦されているのだとしたら……
 ――許せない。その男も、そしてステラを傷つけてしまった自分が何よりも許せない。
 アーヴィンは拳を握りしめ、苛立ちを横の壁に叩きつけた。
 その時。傍の廃屋の二階から、女特有のつんざくような、甲高い悲鳴が響いた。
「――!」
 この声は――
 考えるよりも早く動いていた。
 わなわなと怒りがこみ上げてくる。今の悲鳴で、ステラが何かしらの恥辱を受けているであろうことが嫌なほどに理解できた。
 ステラは心にいくつもの傷を、一生消えることの無い深い傷を、今まさに刻みつけられているのだ。
 頭に血が逆流していくのがわかった。怒りが、狂った濁流の如く飛沫をあげる。
「ステラァ!」
 アーヴィンは古びた階段を一気に駆け上がると、ひとつだけ閉まっていたドアを蹴破った。
「――っ!!」
 部屋に飛び込んだ瞬間、アーヴィンの視界に映った光景。それは――――
 男に覆いかぶさられたステラの姿。両腕を縛られ、服は無惨に裂かれ、顔の真横には唾液で濡れたクシャクシャのシーツが散っていた。
 ステラは、ほとんど気を失いかけていて……。うつろに天井を眺めながら、その瞳から大粒の涙を流していた。唇は赤く染まり、必死に噛んで耐えていたのか。
「こ……のっ」
 ――もう、頭の中は全部真っ黒。アーヴィンは腰の装飾銃を構え、そして男に向けて弾丸を撃った。
「あぎゃっ?!」
 放たれた弾丸は真っ直ぐに猛回転しながら飛び、男の狂った叫びと同時にその左耳を弾き飛ばした。
「うがっ、み、耳っ……耳がぁあああ!」
「次は殺す」
 アーヴィンの、怒りに満ちた低い声が通る。男は、ビクリと恐怖に顔をひきつらせ、ステラの上からどく。
 ボタボタと滴る紅い血液。耳を押さえたままの男は、怯えたようにアーヴィンを睨んだ後、ステラの服を裂いたであろうナイフをサッと掴んだ。
 そして、刃先をステラの喉元に突き付け、ニタリと不気味に笑む。
「……っ、撃つなよ。はぁ…銃を…はぁ、捨てろ」
 なんて姑息なのだ。アーヴィンは、銃を床に捨てて隅に蹴りやった。そして、両手を肩の上にかかげる。
「へへっ……、じゃあ、死にな」
 男がアーヴィンに向かってナイフを振りかざした刹那――再び部屋に銃声が轟いた。
 ゴロン。額に小さな丸い穴を空けた男が、ベッドに力無く倒れ込んだ。握っていたナイフは床に落ち、愛液まみれのシーツを血が紅く染めた。――男は、絶命したのである。アーヴィンの隠し持っていた、もうひとつの銃によって。
 アーヴィンは男の亡骸を隅に蹴りやると、そっとステラに近づいた。すると、ステラは既に気を失っており、余程泣きはらしたのだろう、涙の筋がその顔にはっきりと見えた。
「……ステラ……ごめんよ」
 反応のないステラの頬をそっと撫で、アーヴィンは切なげに、そして苦しげにつぶやいた。表情が、崩れる。
 ――守れなかった。
 アーヴィンは意識のないステラの手首を縛っていたムチをなるべく丁寧にほどいた。その細い手首に残るあざに、心が痛む。
 ビリビリに裂かれた服はもはや意味など成してはおらず、アーヴィンは上着のコートを脱ぐと、ステラにかけてゆっくりとその身体を抱きかかえた。
「……怖かったろ」
 もう、離したりはしない。同じ過ちは、繰り返さない。
 宿屋に戻る道。アーヴィンは、なるだけ表通りを避けた。
 そして、大切に抱きかかえたステラを守るように、ゆっくりと、ゆっくりと歩いて部屋に戻った。


前の内容はR15の範囲を超えているのではという意見をもらいましたので、本文を若干訂正させていただきました。気分を害された読者様、本当にすみませんでした!今後はこんなことの無いように気をつけていきます。
今回の章が酷かったぶん、次は甘めの雰囲気を心がけます!
ぜひ次も読んでください。











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