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どりーむパークのパンダさんはたいへんお疲れのようです。 作者:ちはや れいめい(千岩 黎明)
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シンディは見た!

 バレンタインを翌週に控えたある日の昼下がり。
 イシカワがエプロンを外して棚にしまう。

「それじゃあ僕は休憩してくるから、店番は任せたよ。コノエくん、シンバルくん」
「うっす。店長お疲れさまです」

 コノエがレジの合間にイシカワに挨拶する。
 イシカワはすけじゅーる帳を開いてにやけながら、休憩室に歩いていく。鼻唄まで歌っている。

(なんなのかしら。最近ずっとあんな調子よね。……まさか、イシカワに新しい春が来たのかしら)

 お嫁さんを亡くしてはや3年、60才間近で再婚?
 何度も今月のすけじゅーるを見てしまりない顔をしているのはデートの約束があるってところかしら。
 うふふふ。やだ、ちょっとワクワクするじゃない。
 そんなことを考えていると、ライオン堂にハナさんが現れた。
 ベルトが花飾りになっているトレンチコートの下に、どりーむパークのゆにふぉーむが見える。
 いつもならファッション誌のコーナーに直行するのに、今日は料理本の特設コーナーにいる。

(あら、珍しいじゃない)

 ビラ配りも一段落したからなにをしているのかそばに行く。
 ハナさんは『簡単チョコケーキの作り方』『彼の心はあなたのもの、絶品クッキー』『ガトーショコラの全て』等々、バレンタイン向けに入荷した雑誌をいくつも手に取りあーでもないこうでもないと唸っている。
 あたしに気づくと軽く笑った。

「あ、シンディちゃん。見た目がかわいくて味も最高で、安い材料で簡単に作れるお菓子の本ってないかな?」
(さすがに、そんな都合のいいものないわ)

 たまにお客様から同じことを聞かれるけど、手間いらずで美味しくて見た目がいい料理なんて、あたしに聞かれても困るわ。

「去年のバレンタインに、当時の彼氏にザッハトルテを作ったの。そしたらその日のうちに別れようって……。今年の彼にはもっとこうすごいものを贈らないとね」

 わからないわ。バレンタインにチョコをプレゼントして振られるってどういうことかしらん?
 ふつうの男なら恋人からの贈り物って喜ぶでしょ。
 あたしが首を捻ると、ハナさんがスマホを操作して見せてくれた。

「あったあった。ほらこれ。かなりの力作だったのに」
(う……)

 画像に写っていたのは、赤や緑の砂糖でI LOVE YOUとかかれたザッハトルテ(とおぼしき物体)だった。
 黒ずんだ泥団子を無理矢理ケーキの形に切り揃えて、シュガーペンと生クリームで派手に飾り付けた、という感じ。

(こ、これは、ちょっと……)

 見た目に不味そう。そしてたぶん焦げ具合からして味も不味かったのね。元カレに同情するわ。
 見た目はかわいいし気配り上手なのに、料理の腕はアレなのね。

「あーあ。愛情たっぷりで作ったのに何がいけなかったのかな」

 ハナさんはケーキの画像を見ながら、至極残念そうに呟いている。
 あたしは製菓本のコーナーをそっと離れ、すいーつ特集のグルメマップを持って戻る。

(悪いことは言わないわ。ハナさん。手作りあいより既製品よ)
「え、店で買ったのを贈るの? そんなの誰だってできるじゃない。愛が足りないって言われるんじゃないかしら」

 そのこだわりは捨てた方がいいわ。
 喋れるならそう声高に叫ぶのに。
 結局ハナさんは『本格派、ガトーショコラの作り方』を買っていった。
 せめて、バレンタインで彼氏の胃袋が無事なことを祈っておきましょうか。
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