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どりーむパークのパンダさんはたいへんお疲れのようです。 作者:ちはや れいめい(千岩 黎明)
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シンバル君、心の叫び

 皆さんごきげんよう。あたしはシンディ。
“ライオン堂”という本屋で働く健気でかわいい着ぐるみライオンなの。
 シンバルじゃないのかって? あんなの店長のイシカワが勝手に決めたのよ。あたしの意志じゃないわ。
 ほかの候補がグリーヴァだのヘルダルフだの、まったくかわいさのかけらもない名前なんだもの。
 だからシンディ、もしくはミネフヂコと呼んでほしいわ。

「シンバルくん。そのチラシくれよ」

 ライオン堂の前で今月入荷する本のリストを配布していたら、10才くらいの男の子があたしの足下にやってきた。

(シンバルくんじゃないわよ! こんな可憐な乙女を捕まえて、男と間違えないで欲しいわ!)

 小生意気なほほをつねってやりたい衝動に駆られるのを必死に我慢する。ばんそうこうを貼った手にチラシを渡すと、男の子はチラシを上から下まで見て目を大きくする。

「やりい! 1ピースの新刊来週発売だ! 買いにこなきゃ!」

 男の子はもう用済みとばかりにチラシを投げ捨て走り去る。

(ちょっと、なに捨ててんのよ! 信じらんない! 受け取ったなら持ち帰りなさいよ!)

 腕をぶんぶん振り回して呼び戻そうとするけど、しゃべって訴えることはできない。
 だってあたしは着ぐるみだから。
 梨の妖精さんならおしゃべりどころかダイビングまでできちゃうのに、不便で仕方ないわ。
 しぶしぶ捨てられたチラシを拾って、持っていた束の一番下に入れる。くしゃくしゃになっちゃったから、ほかのお客さまに渡すことができない。
 ほんと、あったまきちゃう。 

「おーいシンバルくん。今日はもちやのウサギさんが手伝ってくれることになったんだ。紹介するからこっちにおいで」

 雑誌コーナーでキャベツクラブを抱えたイシカワが、小さく手招きする。
 イシカワの後ろには、めがねをかけた三十路くらいの女性とピンクの着ぐるみウサギがいた。
 めがねの女性は軽く会釈してあいさつする。

 「はじめまして、シンバルくん。私はサト。おもちゃのもちやの店主よ。よろしく。この子はうさうさちゃん。仲良くしてあげてね」

 なんか仕事のできる女って感じでカッコいい。
 スマートで、動きもきびきびしている。
 サトさんが手のひらで隣にいたウサギーーうさうさを示す。
 うさうさはプリ○ュアの魔女っ子服を着て腕組みしていた。
 うちの本屋にもプリ○ュアの絵本が並ぶから、説明されなくても知っている。

(あああ超かわいいわ! あたしも着たい。ピンクのフリフリ! 腰の大きなリボンも原作に忠実なのね! ステキ!)

 あまりにかわいい服に、乙女心がうずく。なんてうらやましいの。
 お願いしたら貸してくれないかしら。
 うさうさの手を両手で掴んで感情の高ぶるままに振る。
 対するうさうさの視線は斜め下。どんより陰をしょっているように見える。こんなかわいい服なのに何が気に入らないのかしら。
 あたしなら喜んで、寝るときも着るわ。

「あ、うさうさたんだぁ! うさたん。だっこしてー」
「あたちもー」

 幼稚園の年少さんくらいの女の子が2人、うさうさに駆け寄る。ほほを上気させて嬉しそう。
 ちょっと逃げ腰のうさうさの頭に、ピコン! と赤いおもちゃのハンマーが当てられる。

「うさうさちゃん。仕事のときはシャキッとする! わかった?」

 うさうさはサトさんに叩かれた頭をさすりながら、小さな女の子をだっこする。
 見た目がプリチーで絵になるわ。
 羨ましい。あたしのところにも「シンディちゃん。だっこしてーっ」て来てくれないかしら。
 うさうさのところに来た背の低い方の女の子に手を差し伸べたら、みるみるうちに泣き出した。
 うさうさの足に抱きついてあたしを遠巻きに見る。

「ライオンさんはやー! うさたんがいいの!」

 ……好きで強もてライオンの着ぐるみに生まれたんじゃないのに。ひどいわ。グスン。
 こんなに懐かれても、うさうさはあまり嬉しくなさそう。



「実はうさうさのハートは男の子」とあたしが知るのは、1時間後のことだった。
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