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異世界車中泊物語【アウトランナーPHEV】 作者:芳賀 概夢

七泊目

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おあずけの刑に処された。

「ア~ウ~ト~~~さん♥」

「――なっ!?」

 目の前にいたのは、真っ白な布を巻いたミヤとアズだった。
 少し離れた松明に浮かびあがった2人の輪郭が、オレの心を鷲掴みにする。
 アズは青い髪を巻きあげ、タオルで巻いて、いつもと違う雰囲気を醸している。
 彼女はもうどんな髪型になってもかわいらしい。
 もうオレの中では、天使認定だ。
 それに対して、小悪魔認定はミヤである。
 暗闇なので今ひとつよくわからないが、布はかなり薄い気がする。
 なにしろ、ミヤの意外に迫力のある胸の形がしっかりとわかってしまう。
 十文字女史ほどではないが、欲情をそそる肢体だ、浴場だけに!

 ……って、女史のことを思いだしたら、意識がくだらない駄洒落に逃避してしまった。

「ななななっ、なに入ってきてるの!?」

「……そんなにたっぷり観察してから、驚かないでくださいよー」

「ち、ちげーよ! 呆気にとられてたんだよ!」

「ほんとーですかー?」

「つーか、なんで入ってきたんだ!?」

「そんなの決まってるじゃないですかー。温泉を楽しみに来たんですよー」

「…………」

 コクリコクリとうなずくアズ。
 彼女の表情には、ちょっとした緊張感と期待感が浮かんでいる。

「いやいやいや。アズのお父さんに見つかったら殺されるって!」

「あ、それなら大丈夫です。公認ですから」

「……へ?」

「神人で、しかもこの村を守ったアウトさんは婿に最適。アズのパパさんもアウトさんのタンカ切ったところを見て気に入ったみたいで、何が何でも婿になってもらえって」

 アズパパまでグルとは。

「それにぃ、ミヤたちもぉ、功労者♥ですよ。ねー、アズちゃん」

 仰るとおり、その通り。
 というか、今回の一連の事件で一番活躍したのは、まちがいなくこの2人だろう。

「だから、ミヤたちもご褒美に温泉をいただきに来たのでーす!」

 そう言うと、そそくさと桶代わりになっている小さなバケツで、お湯をくみ始める。

「つーか、オレが出てくるまで待てよ! 恥ずかしくないのか!?」

「いやいや、アウトさん。さすがに恥ずかしいですよー。でも、せっかくだから一緒に入らせてくださいよ」

――コクリコクリ

 アズにまで押されて、オレはため息をつく。

「それに、男の人はこういうシチュエーションも好きですよねー? 据え膳食わぬはつるっぱげですよー」

「つるっぱげじゃねーよ! 男の恥! つーか、好きだけど、時と場合によるぞ!」

 もちろん、オレだってミヤのことはかわいいと思っているわけで、こんな風にされたら我慢なんてするつもりはない。
 ちょうど人払いもしてあるんだから、この場で狼になることに抵抗感など皆無だ。
 だが、それはあくまで、ミヤと2人きりの場合だ。
 アズがいる前でそんなことできないし、ましてやアズを巻き込めない。
 何度も言うが、オレはロリコンじゃないし、アズにはまだこういうことは早いと思っている。
 教育上、よろしくない。
 そこだけはちゃんと常識があるつもりだ。

「失礼しまーす」

 オレが呻っている間に、体を流し終えたミヤとアズが湯船に入ってくる。
 オレは慌てて、頭の上に載せてあったタオルで股間を隠した。
 いや、マナー違反なことはわかっているが、アズに見せるのは法律違反に近い。
 湯船は15人ぐらいは入れる広さがある。
 だから、充分離れては入れるはずなのに、チャポンチャポンと水音を立てながら、2人はまるで当然とばかり、オレの左右に腰をおろした。

「……ヤバいって。もう少し離れてよ」

「えー。そう言いながら、アウトさんの視線が胸元に刺さるんですけど……」

 はい、ごめんなさい。
 さっきからタオルの上から顔をだしている、2つの膨らみが作る隙間にオレの目がすっかり吸いこまれてしまっています。
 だって、湯船に浮かんでフヨフヨと俺を誘うんだから仕方ないじゃないか!
 オレの首、完全に右向きですよ。

「だからヤバ――うおっ!?」

「…………!!」

 突然、左腕が包まれる感触に、オレは奇声を上げてしまう。
 見れば、アズが少し膨れた感じで、オレの左腕を全身で抱きかかえているじゃないか。

(ヤキモチ……かわいいなぁ、もう!)

 少しも興奮しないかと言えばウソになるが、それよりもそのかわいらしさに顔がにやけてしまう。
 大きくなればかなりの美人だが、今はまだやはりかわいらしさが優っている。
 うんうん。天使、マジ天使。

「おお! アズちゃん、やりますな! では、ミヤも……」

「え? …………ええええっ!?」

 なんとミヤまでオレの右腕を抱きかかえた。
 はまっている。
 超谷間にはまっている。
 つーか、これはヤバい。
 オレの股間がタオルを弾きとばしそうになる。

「ちょっ……ちょっと……これはさすがに……」

「まあまあ。いいじゃないですかぁ。がんばったアウトさんにご褒美ですよ-」

 横でまた、アズがコクリとうなずく。
 ご褒美は嬉しいが、もうかなり我慢の限界なんですが。
 そもそもこちらの世界に来る前から同棲生活で……ほら、ね? いろいろと男もあるわけですよ。

「アズちゃんもですけどね、ミヤも本当に見直したんですよ」

 そんなカチコチに固まったオレの事を無視して、ミヤが話し始める。

「こっちに来る前に車の中でも言いましたけど。ミヤはね、今までなんとなくアウトさんのこと気になっていたし、なんとなく好きだなーと思っていたんですよ。異世界ハーレムのおまけ付きだし、つきあってもいいかなーなんて」

「……偉そうだな」

「ふふん。ミヤとつきあえるなんて光栄なことなんですよー」

 オレの呆れ顔に、ミヤがものすごく嬉しそうに笑う。

「でもですね、今は『なんとなく』ではないんですよ! ミヤは……ミヤは、完全にアウトさんのこと好きになりました!」

「へっ?」

 思わず、オレは腕につかまったままてミヤを見る。
 顔が向きあう。
 そこには暗闇でもわかるぐらい、潤んだ瞳があった。
 今まで見たことがないミヤの表情に、オレは思わず固まってしまう。

「アウトさん……凄くかっこよかったです!」

「……い、いや、あれ……ハッタリかましただけじゃん」

「そうですよ。言うなれば武器も持たず裸で戦いを挑んだようなもんですよ!」

「……バカっぽいね」

「はい、バカです! でも、人のために命がけでアソコまでバカになれる人なんて、そうそういませんよ!」

「…………」

 その言葉が、オレをバカにしたものではないことは顔を見ればわかる。
 上気した頬に揺れる瞳は、完全にオレを受け入れている。
 たぶん、ここで彼女を抱きしめて襲っても、何も抵抗せずに受けとめてくれるだろう。
 しかし、そんなことはできない。
 左腕は、さっきよりもさらにギュッとロックされている。
 なんという生殺し状態だろうか。
 下手すれば、このままオレの大事なところが爆発するかもしれない。

「アウトさん……アズちゃんからの伝言です」

 オレが固まって2人を見ないように正面を凝視していると、ミヤが耳元でくすぐるような声をだした。
 よけい、オレのみが固まる。

「アウトさん……本当にありがとうございました」

 オレの両頬に柔らかい感触が伝わってくる。
 ああ、ああ……見なくてもわかる。
 2人の婚約者の熱い唇。

「――――!!!!!!」

 オレは我慢の限界で2人の間で立ちあがった。
 股間に撒いていたタオルは落としてしまっている。
 でも、もうそれどころではない。
 オレはそこから無言でお湯をかき分けるように走り、そして脱衣所に向かって走って逃げたのだ。


「……逃げましたね」

「…………」

「おや。アズちゃん。真っ赤か。……さては、しっかり見ちゃいましたね」

――コクリ

「うーん。あれはなかなか立派な無双勇者クラスですよ」

「――!?」

「まあ、ちょっとあれなので最初は――」

「ミヤちゃん! そんなこと教えちゃダメ!」

 脱衣所で聞き耳を立てていたオレは、思わずツッコミを入れる。

「……あ。聞かれてた。てへ♥」

 今はもう、ミヤがなにをしてもかわいく見える。
 つーか、これって何の修行だよ、クソ……。
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