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異世界車中泊物語【アウトランナーPHEV】 作者:芳賀 概夢

七泊目

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戦いに勝ったのだった。

「いや。伝説ではない」

 オレの「失敗」の文字を打ち消してくれたのは、また魔術師だった。
 もしかしたら、この魔術師こそ、オレの救世主かもしれない。
 ありがとう、無駄に頭のいい魔術師!

「神人は本当にいる。……先日のアンデッド大量討伐事件があっただろう」

 魔術師の言葉に、少し上目づかいをしてから筋肉バカが「おお!」と反応する。

「あれか。禁区であった、神人が関わったとかいう噂の。神人とその仲間数人で、アンデッドを5万ぐらい斃したとかいう眉唾物の……」

「本当だ」

「……あん?」

「あれは本当のことだ。私はその神人が戦うところを見ていたからな。今まで見たこともない力で、次々と斃していた。しかも、1体1体ではない。あるエリア内を1度の攻撃でまとめて葬っていた」

「……まじかよ」

(……まじかよ)

 オレも筋肉バカの言葉にハモるように心で呟く。
 5万って……5万体だよな?
 アンデッドモンスター5万体を斃しちゃったの?
 それ、とんでもなくね? それ、オレと同じ神人なの?
 なにそれ、まさにチートキャラって奴?
 そいつが仲間だったら、超助かるんだけど!

「ほほう。そうか。アイツ(・・・)と遇ったのか」

 ――って、思っていたら、なに言ってんだ、オレ!?
 とんでもないハッタリが口から飛び出てしまった。
 しかし、口に出したからにはもう止められない。

「……貴様、あの神人の知り合いか?」

「まあ、な。たぶん、それはオレの友人だ」

「…………」

「おっと。アイツの事を教えてくれと言われても教えられないぜ。簡単に情報を渡すわけにはいかないからな」

 つーか、ぶっちゃけ知らないから教えられないだけだけどな。

「…………」

 魔術師が顎に手を当てながら、こちらを睨む。
 おかしい。
 正面に立っているのに、不自然にも顔の鼻下から半分からがうかがえない。
 フードの陰になっているからと最初は思っていたが、正面から見るとまるでそこに闇がかかっているかのようだ。
 そしてその闇の中に光る赤い光が、こちらを突き刺すように見つめていた。

(ヤバいヤバいヤバい……ちびるちびる……怖いマジ怖い……)

 必死に耐えた。
 一世一代の大芝居だ。

「神人。名前を聞いておこうか?」

「……名前を聞くなら、自分から名のるのが礼儀だろう!」

 お芝居モードのままで、定番の台詞を言ってみる。
 別に名のってもいいんだけど……すまん。一度、言ってみたかったというのもある。

「神人の礼儀など知らんが……まあ、いいだろう。私はニンバス・クロニクル」

「ニッ……ニンバス・クロニクルだと!?」

 顔を顰め、うぐぐと呻るアズパパ。
 それに合わせるように、周りもざわめく。

「……なに? 有名人?」

 オレの質問にアズパパが、横で顔をひきつらせたままコクリとうなずいた。

「ある街をひとつ一夜で滅ぼしたことがあるそうだ……」

――ゴクリッ

 思わず喉が鳴る。
 なにそれ。強い上に凶悪なの?
 ってか、あのアズパパまでちょっとビビってませんか?
 計算外に強すぎたってこと?

「で?」

「……はい?」

 魔術師に声をかけられ、オレは少しうわずって応えてしまう。

「貴様の名前だ」

「あ、ああ。……アウト。神人のアウトだ」

「アウトか。憶えておこう」

 憶えなくていいです。いや、マジで。

「アウト、ここは貴様に免じて引いてやってもよい」

「ちょっと待てよ! やらないってのか!?」

 筋肉黙れ。魔術師様が引くと言っているだろうが。

「こいつが神人というのも、あの化物神人と仲間というのも……どうやら、本当らしい」

「……マジかよ?」

「その魔法生物の魔力の質……あの化物じみた神人と同じ臭いがする……」

 魔力って臭いあるの?
 いや、でも、なんか納得してくれている?
 理由はわからんけど。

「あの化物神人も敵に回したくないし、その魔法生物とやらもなにやら得体が知れない。……まあ、貴様自体はどうも大したことなさそうだが」

「…………」

 ぐーの音も出ない。

「ただし、こちらも帰路がある。3日分の美味い食料と水、酒。それを2人分。友好的な来客に土産を持たせるぐらいかまわんだろう?」

「…………」

 オレがアズパパに視線を送ると、アズパパは首肯する。

「ちょうど我が娘と、アウト様の婚姻の儀があり美味い料理もまだ残っている。すぐ用意させよう」

「ほう。結婚か。それはめでたいな。はれて、この村は神人と血縁を結んだ訳か」

「……そうだ。この村に害する者がいれば、このアウトランナーが地の果てまで追いかける。こいつ、速いから逃げるのは難しいぞ」

 今ひとつカッコイイ台詞は思い浮かばなかったが、できるかぎり威しをかけてみた。
 胸を少し張って、オレは魔術師を睨んでいる。
 虚勢を張ってはいるが、これでも覚悟は本物だ。

「…………」

 すると、魔術師は鼻で嗤ってから、両肩をヒクリと動かした。

「わかった、わかった。それもお前の名前と一緒に憶えておく」

 つーか、オレの名前は忘れてくれていいです。
 むしろ忘れてください、お願いします。

 とにかく、それで手打ちとなったのである。
 オレは戦いに勝った。
 つーか、虎の威を借る狐のハッタリだったけどね……。
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