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異世界車中泊物語【アウトランナーPHEV】 作者:芳賀 概夢

一泊目

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同乗させて……

 どうやら、キャラは左足首を捻挫しているようだった。

 と言っても、オレは医者じゃないのでよくわからないが、骨が折れたとか、ひびが入ったとかなら、多分こんなものでは済まないだろう。
 冷やした方が良さそうなので、とりあえずタオルを濡らして巻いてみた。
 それから、もう一枚のタオルを鋏で切って縛っている。
 タオルは、ぶ厚すぎて縛りにくい。
 というより、固定方法とかよくわからないから、なんどもやり直したせいで、かなり時間がかかってしまった。
 でも、文房具箱に入れておいた鋏があってよかったと思った。
 うん。今度からは、救急箱でも入れておいた方がいいかもしれない。
 俺はスマホを取りだして、車中泊グッズ購入予定のメモに「救急箱」を追記しておいた。

「ありがとう。でも、大げさ。ブーツ、履けない。これじゃ走りにくい」

「つーか、走るんじゃねーよ。腫れてるんだぞ!」

 荷室(ラゲッジルーム)に座ったまま、不恰好になった足をみて、キャラは頬をふくらます。
 彼女の脚は、非常に引きしまっていて、少し筋肉質だった。
 たぶん本気で走ったら、オレよりも速いだろう。
 だからと言って、さすがに踝がわからなくなりそうなぐらい腫れている足首で走れるわけがない。

「でも、このままじゃ間にあわない」

「つーか、もう夕方じゃん。このあたり、真っ暗で走れねーんじゃ?」

 周りは、すっかり赤らみ始めている。
 怪我をした足で、こんな薄闇の中を進むなんて危なくてしょうがない。

「だからこそ、急ぐ。この森、夜になると魔物がでる」

「えっ!? ……マジで?」

「マジ」

「つーか、それやばいよね?」

「やばい」

 オレは、思わず見回す。
 薄暗くなってきた林の中は非常に不気味だ。
 まばらにある木々の間から、ひょこっとゾンビが顔をだす……そんなことを想像してたら、気が気ではなくなってきた。
 とはいえ、どこか冷静な年下の女の子の前で、あたふたとするのは恥ずかしい。
 なんとか、平静を保とうとする。
 大丈夫なはずだ。
 オレは、男だ。

「ふ、ふ~~~ん……。や、やばいのかぁ……。と、ととところでさ。そ、そそ、そのなんだ……こう……逃げ道とか、ど、どっちかな~?」

 全然、平静を保てていない。

「この、かっこ悪い車で逃げるの?」

「かっこ悪い言うな! かっこいいだろ! こいつのいかつい顔!」

「……この開けた道、まっすぐ行けば林をでて、けっこう安全なはず」

「話を聞けよ! ……つーか、ここ、車で通れる!?」

「たぶん」

 そういうと、彼女はしゃがみこんだ。
 そして、地面の一部のくぼみを触る。

「うん。小型だけどフレイムドラゴンの足跡。たぶん、ここドラゴンロード。なら、この車の幅ぐらい問題ない」

 そのキャラの説明に、非常に嫌な予感がしたオレは少し韜晦(とうかい)してみる。

「……ドラゴンロードって、ジャッキーの映画じゃないよね?」

「なにそれ? ドラゴンロードは、ドラゴンがよく通る道」

「よ、よくお通りになられるんですか……」

「うん。フレイムドラゴンは夜行性。そろそろ獲物を求めて、この奥からここを通って出てくるはず」

「そ、そのフレイムドラゴン様は……ゾンビより怖い?」

「見つかったら、まず死ぬ」

「そ、そうか。……つーか、やっぱり、この車より大きいのかなぁ~?」

「でかい。だから、道幅は安心」

「別の意味で安心できねーよ!」

 すでに、メンツを気にしている場合ではない。
 もうすぐ日が暮れそうだ。
 だけど、逃げるにしてもナビは動かないし、そもそも動いても「魔物が出ない安全地帯はこちらです」などナビできるわけがない。
 そうなれば、頼るのは目の前にいるネコウサ娘しかいない。

「取引しようぜ」

「うん?」

 オレの言葉に、キャラがネコ耳をピクピクと動かし、クイッと首をかしげる。

「オレが車で運んでやるから、道案内してくれ」

「別に運んでもらわなくていい。キャラのが速いし」

「だって怪我してるじゃん! さすがにアウトランナーのが速いって!」

「あうと? よくわからないけど、道はデコボコで車輪がはまる」

「大丈夫! このぐらいなら余裕! つーか、4WDなめるな」

「……よん?」

「とにかく、大丈夫だから!」

「でも……。これ馬とかいないけど、蒸気とかいうので動く?」

「蒸気じゃなくて電気だ。つーか、蒸気機関あるんだ?」

「でんき? よくわからないけど蒸気とかうるさいから、ドラゴンが追いかけてくるかも」

「大丈夫! 電気はマジ静か! マジいける!」

「でも……」

「よーし、わかった! オレも男だ! 正直に言おう! ……怖いので、一緒に来てください!!!!」

 深々と、それはもう深々と頭をさげるオレ。
 オレの男らしい迫力(?)に、キャラがビクッと身を引く。

「わ、わかった……」

「よーし! 取引成立! オレの車に同乗させてやろう!」

「……アウト、いきなり偉そうだな」

「アウト? ……ああ。ちげーよ。アウトランナーは、この車の名前だ」

「ん? なら、オマエはオマエでいいか」

「待てや! 俺の名前はオマエじゃねーし!」

「じゃあ、名前は?」

「あ、うっ……お……【大前(おおまえ) 現人(あらと)】」

「なんだ、オマエじゃないか」

「ちげーよ! お・お・ま・え・だ!」

「そうか……【オマエ アウト】か」

「そんな『ダメだし』みたいな名前で呼ぶな!」
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