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異世界車中泊物語【アウトランナーPHEV】 作者:芳賀 概夢

六泊目

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それをミヤに相談した結果です。

 朝飯は、道の駅にあったコンビニで、パンを買ってきて二人でかじりついた。
 それからまた、二人でしばらく話した。

 アズの話では、アウトランナーに蓄えられていた魔力は空になっていた。
 それは予想通りだったが、アズは他にもいろいろと教えてくれた。

「人が集まるところには、やはり魔力が集まりやすくなります。そして、魔力は少しずつその場に滞留もします。アウト様からのお話を聞く限り、その場に集まった魔力をこのアウトランナーという車が吸収しているのだと思います。しかし、今はこのあたりの魔力が、異常に薄くなっています。アウトランナーが使ってしまったのでしょう」
「だから、同じところから異世界に行けないと言うことか」
「はい。たぶん、また何ヶ月も経てば同じように魔力がたまるのではないかと思いますが、具体的にはよくわかりません」
「でも、キャンプ場で寝たときは異世界に行けなかったんだけど、それは魔力が少なかったのかな」
「そうかもしれませんし、もしかしたら、そういうルールの(まじな)いなのかもしれません」
「ルール?」
「はい。(まじな)いは、儀式に則って行われます。儀式とは、決められた呪文や場所、時間、方角、その他の設定した決めごと、つまりルールのことなのです。術は、ルールにある条件を絞ったり、厳しくした方が大きな効果が得られます。条件を厳しくするということは、自分の自由や欲望などを削ること、つまり身を削ること。それが捧げ物的な効果、言い換えれば生け贄のようになり、効果を強くするのです」

 そのアズの説明は、どこかで聞いたことがある説明だった。
 というより、オレが前に予測したことにそっくりだ。
 魔法の知識なんてないのに、すごくないか、オレ!
 とにかく総括すれば異世界に行くにはいくつかの条件をクリアしなければならないと言うことだ。

「つーか、今から別の魔力がたまっているところに行けば、すぐにもどれるってことか?」
「……いえ。無理だと思います」

 アズは少し困った顔で首を振った。

「アウトランナーに施された魔術が休眠状態になっています」
「……え? なんでだ?」
「……たぶん、アウト様の為のリミッターだと思います。連続でこれだけの術を行使すれば、アウト様の体にも、それなりの負担がかかるのではないかと」
「…………」

 思い当たる節はある。
 たぶん、一週間か、もしくは五日間ぐらいのインターバルが必要と言うことだろう。
 条件をまとめるとこういうことだ。

・魔力が溜まっているであろう大規模な駐車場で、
・オレのアウトランナーを使い、
・車中泊し、
・その時の夢で呼ばれる必要がある(今のところ一〇〇パーセント?)。
・次回の【異世界転移(シフトチェンジ)】までに、五日程度のインターバルが必要。

 つまり、アズを帰すには約一週間後にP泊をすればいいわけだ。
 ならば、あとの問題は、その一週間をどう乗り切るかである。
 オレは家族と住んでいるため、アズを連れこむわけにはいかない。
 そんなことをすれば、家族から親子の縁を切られた後に通報されるのが関の山だろう。
 だからと言って、アズを一人でホテルに突っこんでおくことなんて出来ない。
 昼間の仕事中ぐらいならまだしも、夜まで一人きりなんてあり得ない。
 ならばオレも一緒にホテル暮らしをするべきだろうか。
 しかし、さすがに予算的にキツい。
 それから、他にも問題はある。
 アズの着替えをどうするかだ。
 俺がアズの下着を買いに行くのは、どうも犯罪くさくなりそうだ。
 娘ではおおきすぎるので「妹のを買いに来ました」風にしたらどうかと思ったが、それでも年齢的に妹萌えの変態にも思われかねない。

(ああ、くそ! つーか、オレって女友達なんていねーしなあ。しかも、こんな事話せる、女友達……なん……て…………いるわっ!)

 オレにはいる。
 というか、つい先日、友達になった。
 異世界の話をすでに信じてくれている女友達がいたのだ。
 しかも、電話番号もすでに交換済みだ。
 オレは七時ぐらいになるのを待って、一人で車を降りて外で電話をかけた。

「――はい、もしもーし! さっそく電話かけてくれとは感心ですよぉ!」

 電話の向こうから、聞き慣れた【神寺 宮】の声がオレの鼓膜を破ろうとした。
 酒を飲みながら、「ミヤちゃん」と気楽に呼べるようになり、楽しく異世界の話を唯一できた相手である。

「げ、元気たな、ミヤちゃんは……」
「もちろんです。おはようございます、大前さん。電話は嬉しいのですが、こんな朝早くからどうしたんですか?」

 そう聞かれて、オレはどう話そうか悩んでから、その悩み自体がばからしいことをすぐに悟った。
 彼女に嘘はつけないのだから、もうそのまま言えばいいだけだ。

「早朝からゴメンね。実はついさっき、異世界から戻ってきたのだけど」
「うっ……うらやましいです……」

 やはり彼女は、言ったことを疑わずに受け入れてくれる。
 だから、オレはそのまま話す。

「戻ってくる時に事故で、異世界の少女を連れてきてしまったんだ」
「……な……な……な…………なんですってえぇぇぇぇ!!!」

 電話の向こうで、尋常ならざる驚き方でミヤが叫んだ。
 だが、話が進まないのでオレは、何事もなかったように話を続けた。

「一〇才ぐらいの少女なんだけど、また異世界に行けるようになる来週まで面倒を見なければならないのだけど、下着の買い物などで困ってさ」
「……なるほど。い、異世界の幼女の下着の買い物……おまかせください! ミヤが面倒見ますよ!」

 ミヤは喜々として受けてくれた。
 それどころか、彼女は自ら提案してくれる。

「それよりも、その一週間、彼女をどうするつもりですか? 大前さんはご実家住まいですよね?」
「……うん。つーか、それも悩んでいるんだ」
「うんうん。それでしたら、ミヤの部屋で預かりますよ!」
「……え? いや、それはさすがに……」
「大丈夫です! ミヤのマンション、三LDKありますから!」
「ひ、広いな! 一人で三LDKなの!? なんでまた……」
「実はこのマンション、父の持ち物なんですよ。その部屋を一つ、借りちゃってるんです」
「ああ、なるほど。そうだったのか。……でも、確かに助かる話なんだけど、アズも一人で、知らない人の所に泊まるのはさすがに可哀想だし……」
「アズ? あの話してくれた、魔法を使う青い髪のきれいな幼女?」
「ああ。あの子なんだけど。さすがに心細がると思うから、せっかくだけど……」
「なら、大前さんもしばらく一緒に暮らしたら良いじゃないですか!」
「…………え?」

 オレはさすがに自分の耳を疑った。
 さらっとミヤはとんでもないことを言ってのけたのだ。

「部屋は余っていますから、アズちゃんと一緒に泊まりに来てくださいよ」
「いや、ちょっ……つーか、それはさすがに……」
「まあまあ。とにかく一度、ミヤんちに二人で来てくださいよ! それから作戦をいろいろと立てましょう!」

 とにかくミヤはノリノリだった。
 オレはそのノリに押されるまま、アウトランナーを教えてもらったミヤの自宅に向かわせたのである。
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