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異世界車中泊物語【アウトランナーPHEV】 作者:芳賀 概夢

五泊目

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また少女を拾い……

 ――金曜の夜。

 お楽しみの週末だ。
 今回、オレが来たのは、【道の駅まくらがの里こが】だ。
 茨城県の国道四号・春日部古河バイパス沿いにある道の駅の一つで、都内からそれほど遠くない。
 都内からなら余裕で日帰りできる距離ということも考えると、わざわざここで車中泊する理由は基本的にない。
 規模はそれなりに大きいが、この辺りならば普通と言えるかも知れない。
 普通車用駐車場は、手前と奥の2つのエリアで別れており、大型車のエリアは別にある。
 景観が特に良いというわけでもなく、近くの観光と言っても離れた所に大きな公園があるぐらいだ。
 さほど変わったところもない、ごく普通の道の駅である。

 しかし、オレは情報を調べて知っていた。
 どうやら、ここの飯は美味いらしいのだ。
 というわけで、今回の目的は飯である。
 メニューを調べたところ、食べてみたい食事は二種類あった。
 そこで夕飯と、翌日の朝ご飯を食べることにする。
 もちろん、夕飯のあとは異世界旅行の予定だ。
 今回もいろいろと準備はしてきたのだが、どういう所に行くかはわからない。
 そもそも、行けるのかどうかもわからない。
 だが、それもまたワクワク感に繋がるのだ。

 夕飯は道の駅内の地産地消フードコート「みやことほまれ」という店で食べる。
 目的のメニューの名は、「奥久慈ポークのぶた丼」。
 もう名前だけで美味そうである。
 見た目は、非常にシンプルだ。
 黒いどんぶりの上に、艶のある醤油タレで味付けされた豚のバラ肉。
 それがたっぷり重なって積んである。
 たちの悪い豚バラの豚丼などだと、薄い肉がちょっとと、あとタマネギでごまかしたような物もあるが、ここはそんなことがない。
 その量、なんと二〇〇グラム。
 バラ肉の豚丼としては、かなり多いだろう。
 下にいるご飯の姿がうかがえないぐらいだ。
 その上にたっぷりのネギ。
 添えてあるのは、洋ワサビ。
 シンプルイズベストな組合せである。

「いただきます。…………うほっ! つーか、甘い!」

 肉は柔らかく、バラ肉ながら脂っこい感じはあまりしない。
 むしろ、脂が甘い。
 味付けは甘塩っぱくなっているのだが、肉の脂の甘味をしっかりと感じることができる。
 そして、これを引き立ててくれるのが洋ワサビだ。
 これが非常にあう。
 運命の出会いだったのではないかと思うほど、この豚バラ肉にあうのだ。
 この組合せはすばらしい。
 洋ワサビの風味と辛みが、豚肉を口に運ぶのを止めさせない。

(美味い……これはいい! し、しかし……)

 そう。しかしなのだ。
 このぶだ丼には致命的な弱点があった。

(ご飯が……ご飯が足らん!)

 肉がたっぷりすぎて、ご飯が足らないのだ。
 まあ、ビールを買っておいて、余った肉をつまみにするという手もあるが、この味が求めるのはライス!
 思わず車に戻ってご飯を炊いてやろうかと思ったぐらいだ。
 調べたら大盛りもあったようなので、最初から大盛りにしておくべきだったと後悔した。

 しかし、これなら明日のカレーも期待できそうだ。
 その名は、「古河養鶏所のオムカレー」。
 ふわとろオムレツがのっかった、黒カレーである。
 これは是非とも喰わねばなるまい。
 他にもつくば鶏のカツとか唐揚げなどもあるようだが……やはりまずはカレーだろう。

(うむ。楽しみだなぁ……)

 もしこれで異世界に行けなくても、明日の朝の楽しみがある。
 これだけで、ここで車中泊しても後悔はしないだろう。


   ◆


 ……と思っていたが、しっかりと異世界転移(シフトチェンジ)していました。
 しかも、かなりヤバイです。
 今までで一番ヤバイです。
 かなりピンチです。

「つーか……一面、白銀の世界だし!」

 寒くて起きたら、周囲はけっこう積もった雪景色。
 ダウンジャケットとかの防寒設備は持ってきているものの、車の方はスタッドレスなんて履いてないし、チェーンも持ってきていない。
 これは非常にまずい。
 今まで雪などという天候に当たらなかったから油断をしていたが、考慮していなかったのは見積りが甘かった。
 とにかく、このままだとやばい。
 周囲は平原で何もない。
 こんなところで埋もれたらまず助からない。
 ドアを開けて地面を確認するも、まだぎりぎり車は走れそうである。
 雪を避けることができる、どこかに移動しなければならない。
 目をこらして周りをもう一度よく見てみると、ある方向に何か黒い影が見えた。
 どうやら岩山らしい。
 4WDのモードを悪路用に切り替え、オレはとりあえずそちらに向かってゆっくりと、ゆっくりと走りだす。
 パワーモードもとりあえずエコモードだ。
 これで、急加速しにくくなる。
 とにかく、なんとか雪を避けられるスペースを確保しなければならない。
 電気を発電するには、エンジンを動かさなければならない。
 しかし、それにはマフラーが雪に埋まらないようにしないといけないのだ。
 マフラーが埋まれば、排気ガスが逆流して室内に充満する。
 そうなればもちろん、お陀仏である。
 タイヤを怖々と滑らせながら、オレは雪を避けられる場所を求める。
 しばらく走ると、オレが壁のような岩肌がはっきりと見えてきた。
 そこに行けばなんとかなるとは限らないが、それでもそれしか今は思いつかない。
 一縷の望みをかけて、そちらに向かっていた。

(……ん?)

 その時、前の方の雪の上に黒い影が見えた。
 少し雪に埋まりながらも、地面からしっかりと黒く盛りあがっている。
 それを凝視した瞬間、ものすごく嫌な予感がピーンとした。
 ほぼ直感だった。
 オレは車を少し手前で止めると、ドアを開けて外に飛びだした。
 雪に濡れるのもお構いなしで、冷たさも忘れて、その黒い影の元に駆けよる。

(まさか……まさか……)

 何度か転びながらも、なんとか駆けよる。
 思った通り、それは黒い外套だった。
 そして、そこから横にはみ出ている青い髪と横顔。

「――アズ!」

 オレはまた、この美少女を拾うことになったのだ。
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※参考
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●道の駅まくらがの里こが
http://www.dynac-japan.com/michinoeki-koga/

●「道の駅まくらがの里こが」に行ってきた!
http://blog.guym.jp/2015/12/blog-post.html
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