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異世界車中泊物語【アウトランナーPHEV】 作者:芳賀 概夢

一泊目

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異世界に行っちゃいました。

 気がついたら、オレは東名高速道路に乗って、夕方ぐらいに足柄SA(サービスエリア)についていた。
 気がついたら……というのは、変な言い方なのだが、ここまでの道のりが思い出せないのだ。
 運転してきたことはまちがいないのだが、あの住職と話したあとの記憶が曖昧なのだ。
 それなのに住職が最後に言っていた、世迷い言のような言葉だけはしっかりと記憶に残っていた。

(つーか、シフターとか異界召喚士とか、あの住職はアニメの見過ぎなんじゃねーかね)

 などと考えるものの、オレの心のどこかに、それを笑えていない自分がいる。
 しかし、考えてもわからないことは、考えない方が精神的に楽だ。
 そういうわけで面倒なことを捨てておき、オレはとりあえず早めの夕飯を食うことにした。
 なにしろ、昼からあの騒動で飯を食っていないせいで腹ぺこである。
 オレは車から降りると、SA(サービスエリア)にしては珍しい2階建ての横長な建物を眺めた。

(ここなら、美味そうな物がいろいろありそうだしな……)

 足柄SA(サービスエリア)は、この辺りでは大きいサービスエリアで、前々から【P(駐車場)泊】するポイントとして、チェックしていた場所だ。
 前にも言ったが、【P(駐車場)泊】、または【車中泊】とは、車の中で寝泊まりする旅行方法だ。
 ホテル等に泊まらずに宿泊費を浮かせられるだけではなく、チェックイン・チェックアウトの時間にも縛られない。
 車で好きなところに行って、好きなスケジュールで旅を楽しむわけだ。
 ただし、駐車場で車中泊すると言っても、どこの駐車場でもいいわけではない。
 トイレがないとこまるのは元より、そもそも車中泊禁止の場所もあるので注意しなければならない。
 その点、高速道路のパーキングエリアやサービスエリア、また「道の駅」と言った施設は、車中泊に向いているところが多い。

 特に初心者にお薦めは、高速道路の観光的要素の高いサービスエリアだと思う。
 下手な駐車場で車中泊すると、防犯上の危険が高い場合があるからだ。
 一度、あまりに眠くて、とある公園でP泊しようとしたのだが、いきなり知らない男に窓を覗きこまれたことがあった。
 後で知ったのだが、車中泊している車から物を盗む事件なども結構あるらしい。

 その点で高速道路のサービスエリアは、ふらっと入ってこられる場所ではない。
 危険がないとは言わないが、人気のないそこらの駐車場で寝るよりはよっぽどいいはずだ。

 それから、大きめのサービスエリアには「ドッグラン」がある場所がけっこうあるが、そういうところは狙い目だと思う。
 オレも最近まで知らなかったのだが、犬の運動場たる「ドッグラン」があるところには、車中泊をする車が多く集まるのだ。
 ペットと旅行をしたいが、ペットが泊まれる施設は少ない。
 そこで車中泊を利用している人は多いというわけだ。

 実際、この足柄サービスエリアにも「ドッグラン」があり、キャンピングカーやP泊している車がたくさん見られた。
 やはり、同じ目的で来ている人が多いのは心強い。
 車を駐める時、オレも周りにその手の車が多いところを狙うことにしている。

 それから大きなサービスエリアでは、食事処も豊富になるので、いろいろと楽しめるという利点もある。
 だから、今回も飯はかなり悩んだ。
 あれも食べたいし、これも食べたい。

 でも、オレはなんとなく甘い物が食べたくなったので、とりあえず「鬼まんじゅう」というのを買ってみた。
 これは名古屋名物らしい。
 しかし、いくら東名高速道路とは言え、名古屋名物は早すぎるのではないだろうか。
 それはともかく、見た目が、なんともデコボコしている。
 店の人に聞いたら、砂糖と薄力粉の生地に、角切りのサツマイモを混ぜて蒸して作っているのだという。
 まったく関係ないのだろうけど、その形は浅間山の方にあった、鬼押し出しの岩を想像させた。
 甘さはそれほど強くなく食べやすい。
 サツマイモの甘味が、少し強くなったぐらいだ。
 ただ、けっこうお腹にたまってしまう。

 本当はわっぱ飯とかも食べてみたかったのだが、鬼まんじゅうを全部食べたら、とても入りそうになくなってしまった。
 しかたがなく、今回はあきらめた。
 わっぱ飯の「わっぱ」は、檜や杉製の薄板を曲げて作った円筒形弁当箱のことらしい。
 それにご飯を入れて、上に鮭とかいくらとかのせて蒸した郷土料理だ。
 ここのサービスエリアでは、しらすや桜エビがのった物がメニューにあった。
 うん。やはり食べたいので、気が向いたら明日の昼飯にでもしようと思う。

(まあ、もともとは新潟の郷土料理だから、無理してここで食べなくてもいいんだけどね……)

 それから、コンビニがあったので、朝飯用にとおにぎりを二つほど、あとはちょっと食べるようにロールパンの袋を二袋ほど買っておいた。
 あと水をペットボトルで三本追加。
 水さえあれば、すでに用意済みのコーヒーも飲めるし、ココアも飲めるし、みそ汁も飲めるし、カップラーメンも食べられる。
 これでしばらくは食事処がなくても困らないだろう。

 一通り買い物が終わり、オレは風呂に入ることにした。
 足柄SA(サービスエリア)は、この辺りでは珍しい風呂のある施設なのである。
 しかも、「あしがらの湯」という名前で、金時山が眺望できる展望風呂まであるらしい。
 シャワーがある施設は結構あるが、こんな風呂があるサービスエリアは少ない。
 このことも、足柄SA(サービスエリア)がP泊するのに人気である要因だった。
 ただし、お風呂は期待したほど大きくもなく、夜だったので眺望を楽しむ事もできなかった。

(つーか、風呂に入れただけマシだけどな……)

 飯も食ったし、汗も流してすっきりした。
 もうあとは、車で寝るだけだ。
 アウトランナーの駆動用バッテリーは、急速充電を済ませてある。
 これで寝る時に電気毛布を使っても、朝までバッテリーが切れることもないどころか、余裕で余るだろう。

 朝になれば、明日は富士山が見えるはずだ。
 それを見ながら、熱々のモーニングコーヒーで英気を養おう。
 考えただけでも、オレの気分が高揚する。
 明日は金曜日だけど、もちろん仕事になんて行かない。
 もう、あんな仕事なんてどうでもいい。
 それに今さらオレが出社しなくても、誰も困りはしないはずだ。
 だからオレは、しばらく旅をして力をためるんだ。
 気楽にP泊して、おいしい物を食べて、温泉に入って……そんな旅は、オレに力をくれる。
 そして十分たまったら、オレの力が発揮できる、オレにあった仕事を今度は探すことにしよう。
 そう考えながら、オレは眠りについた。


 ◆


 そして次に眼を覚ました時、オレはあの住職が言っていたことが世迷い言ではないと実感した。
 アウトランナーは、確かにオレに新しい景色を見せてくれたのだ。
 でもさすがに、ネコ耳ウサギ尻尾娘がカップラーメンを食べるシーンを目の前で観察することになるとは、夢にも思わなかったけどね……。
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※参考
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●足柄サービスエリア(下り)
http://sapa.c-nexco.co.jp/sapa?sapainfoid=4

●Guymがポチった!:「足柄SA」に行ってきた!
http://blog.guym.jp/2015/09/sa.html
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