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異世界車中泊物語【アウトランナーPHEV】 作者:芳賀 概夢

二泊目

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水浴びをして……

※前回投稿日:2015/12/14 23:00
 まずは、オレから水を浴びた。
 危険がないか確認するためだ。
 まあ、一応は大人だからな。
 レジャーシートを敷いて、その上に着替えを置いておく。
 もちろん、真っ裸だ。
 少女にオレの魅力的な裸体は目の毒なので、後ろを向いていてもらう。

(ウソっす。見られて恥ずかしいのはオレです……)

 ほとんど筋肉がついておらず、貧弱だ。
 好き好んでみるヤツなどいない体である。

(つーか、水がすんげーきれいだなぁ……)

 水面は少しだけ赤らんだ陽射しを返すも、底まで見えるぐらい澄んでいる。
 砂がサラサラと囁くように流れている。
 危険な生き物とかはいない……と思いたい。
 オレは足先から怖々と入ってみる。
 水は、ほどよく冷たい。

(うおっ! 気持ちいい!)

 こんな暑い中で水遊びするのは、やはり気持ちいい。
 しかも、真っ裸で開放的になり、砂漠のオアシスで水浴びするなんて滅多にできることではない。
 今なら、咎める者は誰もいない。
 それだけでも、贅沢な気がしていい気分だ。
 泉は、さほど深くはなかった。
 奥の方に行くと、少し足が届かなくなるぐらいか。
 泳ぐこともできるし、このまましばらく遊んでいたいところだが、早めにあがることにする。
 あまり遅くなると、日が陰ってしまう。
 彼女の沐浴が、寒くなってはかわいそうだ。
 汗と砂、そして余熱が流れたので、オレは少女と交代することにした。
 まず、石けんを渡す。
 キャンプ情報などをネットで調べて、石けんはあまり使うなということだったが、一応は「生物分解性自然素材」とか書いてあるのを手に入れてみた。
 実はP泊で石けんを使うことはあまりないのだが、異世界用に念のため持ってきていたのである。
 前回来た時に、何度か石けんが欲しいと思うことがあったのだ。

「…………」

 しかし、彼女は石けんを手にとっても、しばらく不思議そうに眺めていた。

「石けんだよ。つーか、石けんって知ってるか?」

 オレの言葉に、彼女はこくりと頷き腑に落ちた顔をしていた。
 加えて、タオルと着替えになりそうな物を渡してやる。
 彼女は受けとりながらも、困惑した顔でオレに瞳で尋ねる。
 たぶん、「使っていいの?」ということなのだろう。
 オレは大きくうなずき、親指と人差し指で丸を作ってみせる。
 すると、少女はやはり嬉しそうにうなずき、頭をさげる。
 まったく、小さいながら本当によくできた娘だ。
 オレなんて、この年になって初めて本気で人に頭をさげたぞ……って、自慢にならないが。

「…………」

 しかし、頭を上げた彼女は、どこかまだ申し訳なさそうに上目づかいする。
 なんだろうと一瞬、オレは迷ったがすぐに気がついた。

「ああ。安心しろって。オレはここに座って……」

 泉に背中を向けて、オレは椅子に座る。
 そして、タオルで目隠しだ。

「これでいいだろう?」

「…………」

 声はしないが、なんとなくまた頭をさげた気配がある。
 そして、レジャーシートのガサガサした音が聞こえる。
 当然ながら、子供用の着替えの用意などはない。
 そこでティーシャツとワイシャツを貸す。
 オレのワイシャツならば、膝近くまでは隠れるだろう。
 スカート代わりになると思う。
 これがもし少女ではなく、せめてキャラぐらいなら……いや、キャラでもまだ早熟だな。
 スタイルはいいが、ちょっと高校生ぐらいにそういうカッコをさせるのは犯罪くさい。
 どうせなら、うちの会社の人気ナンバーツーである、美人秘書様にぜひ着て欲しい。
 あのきつい横長の眼鏡をかけた、性格のキツそうな、絵に描いたようなキャリアウーマンが、風呂上がりにオレのだぼだぼワイシャツを着て、オレにしか見せない甘い表情をしながらベッドでオレを待つ……ああ、憧れだ。
 もちろん、そこに至るまでのシチュエーションも大切だ。

(そうだな……。あそこに行って、つーかあっちにも行って、食事して……どぅふゅふゅふゅふ……)

 思わず想像して顔がにやける。
 目隠ししているせいか、妄想がはかどり、二人のスイートな生活が頭の中で次々と展開されていく。
 もちろん、オレのようなダメ平社員が相手にされるわけがないのだが、妄想するのは勝手だろう。
 そう。妄想ならば、オレはハーレムを作れるし、金持ちになれるし、空さえも飛べる!
 オレは自由だ!

――ツンツン

 妄想暴走の最中、肩を突っつかれたので、目隠しの下を少しめくって覗いた。

「あ……終わったのか?」

「…………」

 覗いた隙間から見えたのは、下から見上げるグレーのジト目。
 まるでオレの妄想を責めているようだ。
 オレは慌てて自分の頬をかるく叩いて、垂れ下がった目尻と口元を引きしめる。
 そして目隠しを取りながら、いきなり言い訳。

「い、いや、違うんだ。つーか、覗いてニヤけていたわけでもな――」

 と、そこまで言ってから、オレは思わず息を呑んだ。
 目の前にいたのは、鮮やかな青い髪と、信じられないほど澄んだ真っ白い肌をした、恐ろしく可憐な美少女だったのだ。
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