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どうにかこうにかネピアを助けたルージュは元いた場所へ戻ったが、そこにヴェントの姿はなかった。
Fate of color
作:ミラ



第6章:「言、伝える白銀」


ルージュがネピアを助けにいってからいくらか時間が過ぎていた。
深い森の中ということもあって辺りは暗く、また、やけに静かだった。

「ここまで忍び込んできたのはあの女だけか?どうもおかしいな」

ルージュはあの女が1人でここまで来たことに疑問を感じていた。

「まぁいいか、今はヴェントを探すのが先だ。とりあえずシェルターまで行ってみるか」

ネピアを抱き起し来た道を戻り始めた。



出口に近づくと徐々に明るさが増した。

「やっぱりここにはいないか」

3人で走っていたあたりまで来たがヴェントの姿はどこにもなかった。

「ん・・・・」

ルージュの腕の上にいるネピアが動く。

「あれ?私―――」
「あ、気づいた?」
「ルージュ!―――ってどうして私がアナタの腕の上にいるのよ!それにその傷・・・」

ネピアは腕の上から飛び降りた。

「ん、気がついたならいい。ああ、これは・・・なんでもない。今は聞かないで。とりあえずヴェントを捜したいんだけど、来る?」
「なんでもないわけないでしょ!!・・・まぁ話したくないならいいわ。なにやらまたあのバカはどっかいっちゃったらしいし。まったく世話の焼けるヤツね」

どちらかというとそれはネピアの方だ。
ルージュは少し思った。

「・・・・ネピア?覚えてないの?」

何も覚えていない様子のネピアを見てルージュが言った。

「何を?私は―――あれ?何してたんだっけ」
「いや―――何もなかったよ。ちょっと休んでたら寝ちゃったんだよ」

ルージュは今は言わない方が面倒が減ると思い、真実を語らなかった。
雨はまだ降り続いている。
シェルターに近づくほどに、時間がたち、あたりは真っ暗になった。
2人はようやく街外れにあるシェルターに着いた。

「ここにいなかったら捜すのは絶望的だね。」
「そうね、でもバカだからいるかどうかわからないわ」

2人はシェルターの入り口へ少し踏み入りヴェントの名前を呼んだ。
中を見てみると人は1人もいない。

「やっぱり」

ルージュはため息をついた。

「でもおかしくない?ルージュ」

ネピアが尋ねた。

「・・・確かに、なんで生徒が1人もいないんだろう。学園から遠すぎるってわけでもないから誰か避難しててもいいはずなんだけど」
「だよね。ちょっと怖いわ。早くヴェントを探して隠れましょう」

2人はシェルターを後にした。


・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・


(ここはどこだ・・・ん?雨が降ってない?あんなに降っていたのに)

ロワ・エスカリエのほぼ全域で降っているはずの雨は"そこ"では降っていなかった。

「起きましたか?ヴェント君」

ヴェントの目の前には知らない顔の青年が立っていた。
髪はかなり長く白銀に輝き、年齢は・・・ヴェント達と同じくらいらしかった。
だがいくらか大人びている様子だ。
それ以上にミステリアスな雰囲気が強い。

「・・・誰・・だ?」

未だはっきりしない意識の中その青年に話しかけた。

「ワタシですか?ワタシは―――いや、今はやめておきましょう。楽しみは後に残しておくのがワタシの趣味でしてネ。」

「何を・・・」

そういってヴェントは起き上がろうとした。
が、体はその命令を受け付けなかった。

「!?」

ヴェントはむきになって力を入れる。
だが決して起き上がることはできなかった。

「あまり無理しない方がいいデスよ。それはワタシの能力ですからネ。そう簡単には解けません。少し話を聞いてくれるだけでいいんデスよ。そしたら元の場所へ戻して上げますから」
「話・・・だと?それにここは・・・」

これ以上やっても埒が明かないと悟ったヴェントはおとなしくなった。

「あらあら、随分とおとなしくなってしまいましたネ。オトモダチの前ではもっとおちゃらけたキャラでしたのに」
「おまえはなんだ!?何を知っている?」

ヴェントは学園での彼からは想像もつかないほど鋭い視線を白銀の髪の青年に向けた。

「お〜コワイコワイ。まぁまぁそんな怒らないで。もっと温和にお話しましょうよ。ねぇ・・・

―――ヴェント・ヴァン・シュヴァルツ君?」

その青年は楽しそうに口にした名前にヴェントは激しく反応した。

「おまえ!なんでその名を―――シュヴァルツの名を知っている!?」
「さぁ〜なんででしょうネ?まぁいいじゃないですか」
「よくない!!それを知っているのは極少数の者たちだけだ!会ったこともないようなお前が知るはずもない!」
「もう、うるさくなってきましたネ。とりあえず"今は"そんなことどうだっていいんデス。そうですネ、キミが"黒の子"と一緒の時にでもいいましょうかネ。アハハ―――」

高笑いをした青年はすぐに話を変えた。

「サ、時間もないんでそろそろ本題に行きましょうか」

その間もヴェントは周りに気を配っていたが、結局どこかわからなかった。
1つわかったのはその"部屋"らしき所には目の前の青年の他に2人、人がいることくらいだった。

「"ワタシたち"は1週間後にキミたちがいるロワ・エスカリエへ総攻撃を仕掛けます。今そっちにいるのは先遣隊ってヤツですかネ。その程度でへばってもらっては困るのデスが、まぁ大丈夫でしょう。このことをそっちの大将サンに伝えてもらいたのデスよ。キミにネ。」
「攻撃!?おまえらは・・・・」
「ん〜・・・説明するのはめんどくさいですネ。―――簡単に言うとキミたちの学園と似たような、そう、似たような集団ですかネ」
「似てるだと?・・・争いを引き起こすおまえらと一緒にするなよ。くだらない欲望のためにこんな―――」

すると青年はヴェントの言葉にピクっと反応し、さらにイラついた口調でヴェントの言葉を遮った。

「争いを起こすおまえら?くだらない欲望?―――そういうキミたちはワタシたちと何が違うというのデス?キミたちもワタシたちを制圧しようと準備をしていたじゃないですか。ワタシたちだって消されるのは御免デス。ワタシもこの集団のトップというわけではないからわかりませんが、ここで動かなければワタシたちが痛い目に会うということなのデスよ。どっちもどっちでしょう・・・話が過ぎましたネ。それでは―――御機嫌ヨウ、伝言よろしくお願いしますネ。あと"黒の子"にもよろしく伝えておいてください」
「待て!どうして俺なんだ!・・・」

しかしヴェントの言葉は届かず、そのままどこからともなく来る深い意識の波にのまれて行った。


・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・


「・・・・ト!・・・ヴェント!」

ルージュが呼ぶ声が聞こえる。

「おまえは・・・あれ?ルージュ?」
「そうだよ!オレ以外にだれがいるんだよ」
「いや、あの鬼女が―――グヘッ!」

ヴェントは起きて早々また気絶しそうになった。

「鬼女ってどこにいるのかしらね?ルージュ?」
「う、うん、そうだね」

(白い髪のヤツがいない・・・なんだったんだ)

ヴェントは多少混乱していた。

「それにしてもどこいったかと思ったよ。シェルターにもいないからどうしようかって話してたらいきなり目の前からヴェントが・・・」
「そうそう、ホント目を見張ったわよ」
「え、いきなり現れたの?」
「うん、たぶん。」
「たぶん?」

2人とも何やら困惑した様子である。

「いや、正確にはヴェントが"現れた時"の記憶?というのかな、それがないんだよ。なんかしっくりこない感じ」
「―――んな無茶苦茶な」
「"色を知る前"までならそうだったけど、今は予想がつくわね。あり得ないことが起こる、それならつまり"そういうこと"でしょ?」

ネピアが言った。

「だね」

それに2人とも同意した。
それからヴェントは2人にすぐ前まで見ていたことを話した。


―――――。


「そんな馬鹿な。」
「アンタ変なところ頭打ったんじゃないの?ただでさえバカなのに」
「うるさい。とにかく俺が出てくる時に"色"らしき能力があったんだから言うべきだ」

3人は少し話し合った末、校長にそれを伝えに行くことにした。

「はぁ、結構めんどくさそうだね」
「しょうがないでしょルージュ。少し頑張りなさい」
「あらあら、さっき攫われてたやつがよくもまぁ・・・」

そこでとっさにルージュはヴェントの口を手で押さえ、言葉を遮った。
そして小さな声で言った。

「ネピアは覚えてないらしいからそのままにしておくべきだよ。それを知ったらどんな事になるかわからない」

ヴェントはそれに少し頷いた。

「ねぇ、今のなに?」
「いや、なんでもない。頭撃ったからちょっとおかしいんだよヴェントは」

それに対してヴェントは、

「おい、もっと良い言い訳ないのかよ」
「いいじゃないか、自然で」
「ぐっ」

コソコソと話している2人を横目にネピアは歩き始めた。

「ほら2人ともひそひそ話してないでさっさといくわよ」
「敵はおそらく、"いる"からね」

ルージュは2人に言った。
が、必ずやり遂げなければならないことができた2人はしっかりうなずいて歩を進めた。




学園側により濃く、黒い雲が横たわる。







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