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Fate of color
作:ミラ



第33章:「雇われた鬼たち」


ルージュの走っている道にすでに街人の姿はほとんど見えない。
いったいあれほどの人ゴミがどこに消えたのかと疑うほどに彼らの対応は速かった。
一方、騎士団はルージュを血眼になって探し回り、馬の蹄を鳴らしていた。
家と家の間、その隙間に息を殺しながらルージュは潜んでいた。

(いったい何人いるんだ)

思った以上に騎士の人数は多かった。
さすがに"騎士団"ということはあって、戦闘能力は低くはない。
未だルージュの敵ではなかったにしろ、大人数で集られたら分が悪い。
それは承知でいた。
一瞬隙間から馬の茶色い毛が見える。
その瞬間にルージュは凄まじい瞬発力で隙間から身を乗り出し、ブリューナクで上の人間を撃ち落とす。
そんなことを繰り返していた。

(ヴェント達は・・・)

時間も経った。
ルージュは胸中で残していった3人を気遣い始める。
実際彼らが騎士に見つかったら勝ち目は薄い。
それはわかっていたが、ああするしか手段が残されていなかった。
だからなおさらルージュは焦っていた。
隙間から顔を出し、周りの様子を伺う、先ほど殺した騎士以外そこには誰もいなかった。

(よし)

決断しすぐに行動に移すルージュ。
周りの人の気配はない。
ただただ機械がこすれあい、きしむ音だけが空にこだましている。
そこをルージュは駆けて行った。

(もうすぐだ)

だが、彼らが隠れているはずの路地へ着くかと思った瞬間"それ"は訪れた。
確かに人の気配はなかった。
なのに一瞬にしてある気配が現れた。
騎士とも違う。
なおさら一般人なんかではない。


ゾクッとルージュの肩が上がった。


ルージュの背中に悪寒が走った。
瞬時に立ち止まり、振り向く。
眼前に広がるは家々。

(どこだ・・・見られてる!)

特に高くそびえたつ真四角の塔。
外壁が透明な素材でできているため中身の構造がよく見える。
無数の歯車が見事にかみ合ってその天辺に備え付けられた大きな時計を動かしていることは一目瞭然だった。
その天辺の時計台、そこに黒い影が見えた。


ヒュンッ!


その存在を確かめた瞬間にルージュの頬を何かが掠める。
頬の皮は切れ、血が噴き出した。

(殺気・・・)

まずいと感じたルージュは咄嗟に近場の隙間に身を投げた。

(ばかなっ・・・オレが・・・目視できない?)

あの悪魔との戦闘以来ルージュの眼は異常な能力を発揮し始めていた。
視力、動体視力、その他諸々、はるかに高度な目視能力を発揮し始めていたのだ。
以前にもその兆候は見られていたが、あの時顕著に発現した。
その時からこの眼が人間とは一線を画す生物の眼なのではないかと感じ始めていた。
無意識の中で話しかけてきた誰かがいったように、オレは普通の人間とは違う何かを持っている。
それに気付いた矢先、今の黒い影。

(どこだ)

額からは汗がにじみ出る。
自分が得体のしれない、それも自分より強力かもしれない何かに追われていると思った瞬間に恐怖が生まれる。




(後ろだ!!)




手元のブリューナクが警告を発した。
ルージュは振り向くより速く身を低くし、前方に倒れこんだ。
言われてから振り向いたんじゃ攻撃を避けられるわけがない。
日頃鍛え上げられた状況判断能力が功を奏し、刃物は頭の上をかすめた。

「なかなかやる」
「誰だっ!」
「誰でしょう」

体を起こしながら振り向いたがそこには何もない。
勘づいたように家と家の間からすべり出たルージュ。
そこにはさっきの黒い影が立っていた。
いまやその姿は日の光であらわになっている。
ローブのような黒装束に身を包み、顔には妙な模様を刻みこんでいる。
手もすべて装束の中に隠れていてどんな武器えものを持っているかすらわからなかった。
だがその雰囲気でルージュはあることに気づく。
昔の"職業柄"、よく知っている職の者だ。
突き刺さるような殺気を常に出し続けている。



「"殺し屋ヒッター"か」



その正体を見破ったことに、黒装束の殺し屋は笑い声で答えた。

「知っているのか?これは驚いた。君も"こっちの"人間か」
「ああ、"それ専門"じゃないがな」
「より楽しくなってきた。さぁ、やろうじゃないか」

その瞬間、殺し屋の腕が装束の下から現れ、指にはさんだ3本の短剣をルージュに向かって投げた。
それを避けるルージュ。
だが飛びのいた方向からもう3本短剣が飛んできた。

「くっ!」

身を捻り、後方転回しながら避ける。



「チェックメイト」



だがあろうことか、もう3本の短剣がルージュめがけて飛んできた。
明らかにルージュの動くだろう軌跡を読みつくしている。
そう、まるでこちらがどう動くか知り尽くしているのような攻撃だった。
誘導されるように立ち位置を変えていくルージュ。
その3回目の攻撃が避けようもないほど正確に飛んできた。
チェス盤上で最も聞きたくない言葉を発せられながら、首をひねって飛んでくる短剣を見た。

(まだ・・・避けられるっ!)

後方に宙返りしながらルージュは大きく足を開いた。
開いた右足で3本のうちの1本を蹴る。
さらにもう2本を着地した瞬間に手でキャッチした。

「お〜素晴らしい」

殺し屋は手をぱちぱちと叩きながら言った。
汗を流すルージュ。
その両手から血が流れ出た。

「でも刃を素手で止めるなんて危ないことするね〜」
「よく喋るヒッターだな」

(今回はやばそうだ)
(いいじゃないか、こちらとしても燃える)
(私も使うんでしょ?)

ルージュの呼びかけに応答を返した2丁の拳銃。

(もちろん)

窮地の中でにやっと笑顔をこぼした。
それを見た殺し屋が言う。

「君はやっぱりこっちの人間だ。楽しんでるでしょ?」

カチっと音を立てながらリボルバーに弾丸を装填するルージュ。
実弾を何発入れたかはわからないが、すべて入れ終えたところで顔をあげ、言った。

「ああ、楽しくて仕方がない」

ダンッ、地面をものすごい力で蹴った。
その瞬発的な速さに殺し屋は一瞬目を見張り、すぐに後退した。

「逃がすかよ」

間合いを計った殺し屋だったが、ルージュが露わにした殺気で判断を鈍らせたようだった。
ブオンッと真横から飛んでくるルージュの足が何よりの証明だった。

「何ッ!」



ドゴゥ!



凄まじい音と共に殺し屋のガードは吹き飛び、残った威力は身に降りかかった。

「ぐぁっ」

横にすっ飛んだ殺し屋は黒装束の下から数本の短剣を落としながら家の周りに張り巡らされている金属の壁に激突した。



ババン!



起き上がる暇もなく、ルージュの撃った弾丸が頬を掠めていく。
悪態をつきながら立ち上がる殺し屋、指の間に4本の短剣を挟み、ルージュに突っ込んでいった。

「殺すッ!」
「やってみろ」

手のひらを上に向けて手招きをするルージュ。
片足を上げながら顔に笑みを浮かべていた。







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