偉大な狂人エアヴァルト・シアンの「過去への予言書」
―――史上、秘史、最も偉大で、最も狂人と謳われたエアヴァルト・シアンの「過去への予言書」のある1節より・・・
―――神は7人存在し、各々は色を司る。
世界を"始める"前に7人は話し合いをし、7人のうち4人は世界に自分の土地を持つこととなった。
南の土地には"赤の神"が居座り、東には"黄の神"が住むことに。
さらに北には"青の神"が、そして西には"緑の神"が自らの場所を所有することになった。
残りの3人の神は、"黒の神""白の神""透の神"。
この3人の神は自分の"土地"を作らなかった。
その代り、どの土地へも立ち入る権利を有し、彼らは自然を見守った。
ある日"透の神"が他の6人の兄弟に向けてあることを提案した。
「今のこの世界には動きというものがない。非常に退屈だ。どうだろう、世界を創造した我ら7人の兄弟で自分の"民"を持ってみないか。民を育て、そしてこの世界に動きと活気を満たすのだ」
「それはいい考えだ兄弟よ。私は賛成しよう」
"緑の神"が同意を示した。
続いて"赤の神""青の神""黄の神"がやはりそれに同意した。
彼らは自分達の土地に、自らの"民"を住まわせることに決めた。
すると"透の神"がさらにこう言った。
「私は兄弟の"民"が共に暮らし、共に関わることができるように4つの土地の中間に"国"を作ろう」
盛り上がる5人。
しかしそれに断固反対している神がいた。
"黒の神"と"白の神"である。
"黒の神"は5人の兄弟に言った。
「我ら兄弟にこれ以上の命は与えられておらぬ。アカシックは我ら7人に"世界を作れ"とだけ命じなさった。これ以上のことはアカシックの命に背くことになる」
"白の神"の言い分もそうだった。
だが5人の兄弟はその忠告を無理やり押し切り、ついに民を創造した。
彼等は自らの民がすぐに判別できるように各々の力を分け与えた。
これが"色術"の始まりである。
それから幾千年が経った。
黒と白の神はその間にどこかに消えていった。
それを多少気にする神もいたが、結局彼らの関心はすべて自分の民に捧げられた。
だが、思いもしないある時、彼らの民に異変が起こった。
最も早くその異常に気づいたのは緑の神であった。
彼はすぐさま他の民を持つ4人の神につたえた。
「兄弟よ!我が民が消滅し始めた!これはいかなることぞ!」
青の神も即座に答えた。
「我が民も消えているが故、何者かが我らの民を消しているのではないか。調べられよ」
「その必要はない」
緑と青の神の会話中に入り込んできたのはなんと、あのどこかに消えていた黒の神であった。
「おお兄弟よ。原因がわかるのか?」
「ああ、よくわかるとも。原因はお主らである。兄弟よ」
「なんと!何を申すか」
「よく見てみるが良い。この世界の言葉で言うなら・・・"殺し合っている"のは兄弟らの民である。
5人の神は注意深く民を調べ始めた。
そして気づいた。
黒の神が言うことが真実であるということが。
そしてその戦は黒の神によって"終焉へ向かう戦争"と名付けられた。
「兄弟たちよ。これでわかったか?意思に背いたお主らは間違いを犯した。民達は我らが作った世界を壊しかねない。さあ、どうするのだ」
5人の民は混乱した。
しかしそれは透の神が放った一言で収まった。
言うならば悪化したのだ。
「静まられよ。黒の兄弟が言うことが真実というのは重々理解した。ならばどうするか。簡単なことである。我らの民の"どれか"が勝利すればよいのだ」
「!!」
黒の神は心底驚き、そして落胆した。
「もう、救いようがないことは甚だ真である。私は理解した。これ以上の話は無駄であるということに。もってお主らはそのまま苦しむがよい。私は終にお主らを信じず。お主らが私が言うことに気付かないのならば、然らば―――止めて見せよう。世界の歴には"終焉"と名付けよ。最も世界にふさわしい名である」
そういうと黒の神はまたどこかへ姿を消した。
しかし二度と姿を見せなかった。
黒の神の忠告は虚しくも過ぎ去り、各々の民による戦争が本格的にはじまった。
その時をもって、世界の歴は"テルミニュス・イラ"と名付けられた。
意味は"終焉へ向かう暦"である。
その名がつけられた時にはすでに民は他の民と混ざり、"混合色"なるものが生まれていた。
今の時代に4原色以上の色が存在する理由である。
しかしその中で、"色"というそれぞれの神が与えた力は徐々に消えていった。
理由は単純である。
民は"色術"を使える民を優先して殺していったのだ。
彼らは1人でさえ凄まじい力を発する。
それを身をもって知った民たちは他国の色術者を真っ先に殺しに行ったのだ。
よって"色術を持たない民"が"増えて"いった。
そう、そこで初めて生まれたわけではない。
"色術を持たない民"は"透の神"の民としてずっと存在していたのだ。
その様子をずっと見ていた黒の神はついに決心をした。
"自らの民"を作る決心を。
しかし、彼が創造したのはたった1人であった。
彼は直接、自らの手で大事に大事にその1人を造り上げた。
"彼"が抱える苦難の宿命を知っていた黒の神―――といってもその宿命は黒の神自身が与えるのだが―――はその彼に様々な力を与えた。
ほかの神が数万の民を作ったのに対して黒の神はただ1人。
彼にすべてを捧ぐことで他の民では到達しえない領域に彼を押し上げたのだ。
そして"黒の神"の力を分け与え、世界に放った。
そして、時を同じくして世界のどこかに"白"を持った民が現れた。
彼ら2人は同じように作られたが各々が持つ宿命はまるで違うものだった。 |