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Fate of color
作:ミラ



第11章:「旅路」


「あつい暑い熱い!」
「馬鹿みたいに口あけてないでしっかり手綱を握ってなさい。それにしても暑いわ」
「ネピアさん、彼は馬鹿なんですから"みたいに"はいらないですよ。あ〜暑い」
「もう突っ込むのやめようよセレ。暑いんだから。知ってる?黒って熱を吸収―――」

4人は国境を越え、フラム・ガルフの北端部を馬で走っていた。
いつの間にかロワ・エスカリエにいたときより太陽は大きくなり、草もほとんど生えていない荒野が現れ始めた。
一面赤褐色である。

「早く中心都市に着かないかな。熱い」
「もう喋りたくないから少し黙ってて」

一行はとにかく暑さから逃げたい一心で荒野の中を進み続けた。

―――「そろそろ日が暮れますね。食料はありますか?夕食の準備をしなければ」
「そうだな。とりあえず休めるところを探そう。何か障害物が周りにあったほうがいいな。冷え込みを遮れるところが・・・」

ルージュはあたりを見回した。
かすかに西の方に緑が見える。
一目散に方向を変え、西に向かったのはヴェントだった。
馬の腹を蹴る回数も増える。

「ちょっとヴェント!急ぎすぎよ!」

ネピアの声も虚しくヴェントは走って行った。

「世話の焼ける―――」

3人もヴェントの後を追いかけた。
オアシスと言えるほどたいそうなものかどうかは判断しかねるが、そこには幸運なことに水が張っていた。
どちらかというと疎林だが荒野に比べればかなり居心地の良いところだった。
3人は馬を木につなぐと水を飲み始めた。
もちろんルージュの馬、ブリューナクは繋がずともどこにもいかないことが知れていたのでそのままだったが。

「は〜。明日もこんな暑いのかな?」
「昼はおそらくね。朝に出れば少しは楽かもしれないよ」

料理にからっきし能力を持たないルージュとヴェントは座りながら話していた。
すこし離れたところではセレとネピアが腕を奮っている。

「それにしてもセレは器用なのね。助かるわ」
「いえいえ、ネピアさんこそなかなかの腕前ですね。持ってきた食材もまだ残しておいた方がいいでしょう。いずれ食料も自分たちで調達しなければならないのですから、面倒を減らすためにできるだけ節約していくに越したことはないですから」

2人は手をせっせと動かしながら今後のことを話し合っていた。

「そうね。後どれくらいで街につくのかしら?」
「そうですね、どんなに馬が速いといっても最低であと4日ですかね。さすがに国は広いですから。でももう少し行けば暑さは和らぐでしょう」
「4日かぁ〜。まぁしょうがないわね。ん?暑さが和らぐって・・・何で?」
「ここの地質は非常に栄養素に乏しい物ですが、中心部に近づくにつれて肥沃な土壌に変わるのです。ここの国の人、つまり"フラム人"もこの気候にの中で長年生きてますからね。それなりに暮らしを良くする術を持っているということです。まだここまではその土壌は来ていませんが、その成果が表れている場所なら森があるはずなんです」
「へぇ〜セレって色々な事を知っているのね!」
「まったくだ」
「うまそうだ」

料理の匂いに釣られてルージュとヴェントはいつの間にか2人のところにきていた。

「あなた達、早く戻りなさい」

ネピアの喝にしょうがなく戻る2人。
馬たちも腹を空かせているようだ、立ったり座ったり、そわそわしている。

・・・・・・

「さぁ、できたわよ」

4人は近くに落ちていた大きな丸太を椅子代わりに食べ物を腹に詰め込んだ。

「料理が上手いんだね、2人とも」

ルージュが頬張りながら絶賛した。

「いや〜毒が入っているかもよ?」

そう言っているヴェントも口に含んでいた。

「あら、私の馬があなたの分もほしいっていっているわ。さ、ヴェントよこしなさい」



4人での食事は次の日も似たような物だった。



3日目、4人はしばらく南へ進んでいたが、ようやくセレの言う"森"が見え始めていた。
今までの褐色の大地とはまったく違う、深緑の森が広がっていた。
森の内側からは涼しい風が吹いている。

「やっと着いた・・・」
「それにしてもここから街までずっと森なのかい?セレ」

ルージュが訊ねた。

「ほぼそれに違いないですが、正確には一歩手前ですかね。彼ら自身は森に住んでいません。「炎の国」に住んでいるというだけあってフラム人はジメジメしたところをあまり好まないんです。私たちと同じように熱すぎるのも苦手なようですが」
「へぇ〜。そうなんだ」

3人はいつもセレの知識に感心していた。
ヴェントがその博識な理由を訊ねた。

「それにしてもどうしてセレはそんなに色んな事を知っているんだ?」
「私は本を読んだりして、世界の知識を勉強するのが趣味なんですよ。ただそれだけの事です」
「ヴェントにはできないね」

そう言いながらルージュは後ろから2人を追い抜いて行った。

「どこへ?」

セレが問う。

「ちょっと様子を見に。"斥候"ってやつさ。1人だけど」
「気をつけて」

ルージュは一度うなずくと、馬に話しかけた。

「さぁいくぞ、ブリューナク。全速力だ」

待っていたといわんばかりに鼻をならすブリューナク、少し体を震わすと数秒後には凄まじいスピードで大地を疾走していた。
ブリューナクの上でルージュが言った。

「"魔の槍"の呼び名に違わぬスピードだな」

(まぁな)

走ることに夢中なのか、今のブリューナクは口数が少なかった。
思った以上のスピードだったためルージュは3人よりはるかに早く森についた。
2日前に休んだ疎林とは違って、ここの森は熱帯林のようだった。
高くそびえ立つ木々、その太い体には無数のツタや葉が絡まっている。
時々樹木の間から顔を出す太陽の光が奥に行くほどに薄くなっていった。
手前にあった褐色の大地とは気候が全く異なっていた。
温度まで激変するため多少の予防は必要らしい。
今のままの服装でいたら風邪を引くぐらいの気温である。
また、他にも服を変えなければならない原因がブリューナクの10歩先にうごめいていた。

「あれは・・・」

目を凝らすルージュ。
その先には無数の虫が動いていた。
蚊のようだが少し違う。

「なんだあれは?」

ルージュは見知らぬ虫を目の前にブリューナクに聞いた。

(あれは"蚊バエ"ってやつだ。誰がつけたのか、わかりやすいようにヤツらの特徴は名前そのものだ)

「それはどうにも厄介だな。おまえはアレに刺されたいか?」

(勘弁願うぜ)

ブリューナクは嫌そうな視線を向けた。

「なるほど、そういうことか。それじゃぁ別の道へ行こうか」

前方の蚊バエらしき虫の前を横切り、1人と1頭は西側の道へ反れた。
こちら側には何もないらしい。誰かが何度も通ったようだ、道ができている。
ご丁寧に馬に乗っていると頭に当たりそうなツタまできれいに切ってあった。

「こっちが普通の道ってわけね」

ルージュはそこから少し進み、危険がないことを確認すると、3人が先ほどの場所へ行かないうちに道案内をするため、来た道を戻り始めた。



「あ、ルージュが戻ってきたわ」

3人はちょうど森にさしかかるところだった。

「どうでした?」

セレが情報を求めた。

「このまま進むとあんまりいい物は見れないよ。少し西側に反れたほうがいい」

3人はうなずくと方向を変えた。

「いったい何を見たんだ?」

ヴェントが興味深く訊ねた。

「ネピアが見たら失神するかもしれないもの」
「え、何それ?」

その話を聞いていたネピアが言った。

「聞かない方がいいよ」
「?」

そう言っている内に4人は先ほどルージュが通った踏み慣らされている道へと到着した。

「結構森が深いですね」
「オレが行ったところまでなら危険はないはずだ。どうする?もう暗いし、一夜明けてから出発するかい?」

ルージュの提案は料理係の2人が却下した。

「もう、食材が少ないの。街へ行って補充するか、森の中で食べれる物を見つけるか」

「前者は時間はかかりますが危険はありません。後者はすぐ実行可能ですがもし変なものを食べたらどうなるか―――」
「断固後者で」

ヴェントからは予想していた答えが即座に返ってきた。

「だと思ったよ。問題はどうやって食べれるものかを判断するかだな」

すると、3人は尊敬の眼差しでセレを見た。

「・・・はいはい、大丈夫ですよ。私が判別しましょう」
「よっしゃぁぁぁ!そうと決まればさっさと探しに行くぞ!」

ヴェントは喜びの声をあげると真っ先に森の中へ馬を走らせていった。







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