これは、残暑も過ぎ、涼しくなった時期の、とある小学校での、出来事、
…ある晩、私は犬の散歩をしていました、
犬の散歩は日課であり、私はいつもの道を歩いていました、
暫く歩いた後、母校であるM小に差し掛かりました、
いつもならばM小の前の道路を通るのですが、今日は何の気まぐれが…
昔から不気味だった裏道を通り始めました…
表なら少ないながらも車も通りますが、
裏道は、森と小学校の間に通っており、街灯もなく、暗い道が数百メートル続いています、
とても不気味です…
私は…さっさと通り過ぎようと早足で歩き過ぎようとしましたが、ふと、右の小学校を見てみました…
そこは、祝日だったからでしょうか、
それとも最初からやっていないのでしょうか、
宿直の先生すらいる気配すらなく真っ暗闇の中で、人の気配すらありませんでした、
ただ、下駄箱で電気が…
ピカッ、ピカッ、っと、点いたり消えたりしていました…
それと…三階の…おそらく教室でしょうか、
そこに、紅いぼやけた光りが…存在していました、
…紅い、不気味なような、それでいて綺麗な光りを放ってました、
それは、非常灯なんかの類ではありません、
場所的に有り得ないし、階段のところには、はっきりとした光りで、非常灯が輝いているのが見えます、
明らかに、別の類のものです、
ただ、私は不気味だな、と思いました、
ですが、所詮、ただの小学校です、
昼間は小学生がおり、
おかしなものがあるはずがありません、
ましてや、霊的現象など、あるはずがありませをし、私は信じておりません、
ただ、少し、ぼーっと見ていたのがいけなかったのでしょう、
私はうっかり手に持っていた犬のロープを放してしまいました、
犬は私がぼーっと見ていたのに痺れを切らしていたのでしょう、直ぐさま走り去り、暗闇に溶け込んでいきました、
犬はあっという間に見えなくなり、私は闇の中に取り残されてしまいました、
私は慌てて、犬を追い掛けましたが、全く見つかりませんでした、
元々、私の愛犬は、猫のように気まぐれで、走り回るのが大好きな、犬です、
どこに行ったなど、皆目検討も付きません、
私は途方に暮れました、
ここは家からは大分離れており、家に帰ってくるか、自信がありませんでした、
なので、私は犬を探し始めました、
不気味だなどとはいってられません、私は暫く探しました、
…しかし、犬はいません、
気まぐれな犬のことだ、もう家に帰ってるかもしれない、と考え、私は家に帰ろうとしましたが、
小学校の玄関辺りで、何かが動いているのが見えました、
犬がいた、と思い、私は走って向かいましたが、着いた頃には犬らしきものはおらず、辺りも真っ暗で何だったのかはわかりませんでした、
ただ、不自然に小学校の玄関のドアが開いていました、
明らかに不自然でしたが、私は、もしかしたら犬がいるかもしれない、と言う考え四割と、懐かしさ五割、それと、なにか面白いことがあるかもしれないと言う期待一割で中に、入ってみることにしました、
中は、とても懐かしく、昔と、あまり、変わっていませんでした、
靴を脱ぎ、暗かったのでケータイのライトを使い、中に入っていきました、
この学校は、三階建てで、
一階が、一年、二年の教室に、職員室、保健室、
二階が、三年、四年の教室に、視聴覚室、
三階が、五年、六年の教室に図書室、
もう、通っていたのは十数年ほど前になりますが、
はっきりと覚えてみます、
…これも変わっていなければの話ですが、
しかし、見る限り内装が変わってません、
改築はされていないようですので、構造が同じなら、変わっているわけがありません、
そんなこんなで、私は小学校の中を歩いていきました、
この学校には、下駄箱が二カ所あります、
私が入ったのは東側、こちらから一年の教室、中央に職員室、保健室、二年の教室があります、
二階には同じように三年、視聴覚室、四年、
三階にも五年、図書室、六年と続いています、
そして、各玄関を少し行ったところに階段とトイレがあります、
理科室や音楽室等は別の校舎にあります、
そんな中、私はまず、一年の教室に向かっていきました、
ガラガラっと音を立ててドアが開きます、
そこには、一年生らしい小さな机と椅子、壁には一面に様々なの絵が飾ってありました、
ほほえましい光景が広がっておりましたが、長居する理由もないため、教室を後にして、職員室に向かいました、
職員室には流石に誰か教師が残っていると思いました、
しかし、よく考えれば電気がついていないのに、誰かがいるはずはありません、
しかし、とりあえず、私は校舎内を歩き出しました、
職員室内はひんやりと涼しく、勿論、人の気配はありませんでした、
私は誰かいませんか、と声をかけてみましたが、勿論、返事があるはずがありません、
私は、ホッとしたような、残念な気持ちになりながらも、少々悪戯心がわき、各部屋の鍵を借りようと思いましたが、そこに、鍵はありませんでした、
おかしいなと思いつつも、私は職員室を後にして、二年の教室に向かいました、
しかし、二年の教室には鍵がかかっていて、開きませんでした、
私は少しがっかりしながら、上の階に歩いていきました、
二年の教室の方から階段を上がったのですので、そこは四年の教室です、
四年の教室にも鍵がかかってました、
一年の教室だけは鍵を閉め忘れたのでしょうか、
とにかく、私は歩き出しました、
隣の視聴覚室はパソコン室と名前を変えていました、
私は少しの願望を込めて、ドアを引くと扉はガラッと音を立てて開きましたが、そこは、私がいたときとは見る影もなく、全く変わっており、無駄なほどに近代化しておりました、
やはり時代なのでしょう、
私は少し寂しくなりながら、視聴覚室をあとにして、三年の教室に向かいました、
歩いていましたが、前の階段に何か、白い影が見えました、明らかに犬くらいの大きさではなく、中学生か、或は小学生か、おそらく小学生くらいなのでしょう、
忘れ物でもしたのでしょうか、
私は不信になりながらも、白い影を追い掛けました、
白い影は階段を登って三階に向かっていきました、
私は走って階段を登っていきましたが、日頃の運動不足がたたり、すぐに息が切れました、
しかし、何とか階段を登り切ったところで、追い付くことが出来ました、
私は彼(と思う)に声をかけました、
彼はビクッとしてこちらを振り向きましたが、その表情はすぐに安堵に変わりました、
私は彼に質問しました、
どうしたのか、と、
彼は笑顔で忘れ物、と、
言って、鍵を見せました、
彼はついてくる、と聞きましたので、私はああ、と答えました、
彼を見ていると、私は何か懐かしい気持ちになりました、
それは、小学校が懐かしいからでしょうか、
それとも、ほかの理由からなのかはわかりません、
しかし、不思議と心地よかったです、
私は、彼と他愛もない話をしながら、歩いていきました、
そういえば、忘れていましたが、外から見た朱い光りは、見当たりませんでした、
私は彼にどこに忘れ物をしたのかと聞くと、彼は、六年三組と笑いながら答えました、
六年三組、私が六年の頃の教室です、
私が彼に、私も三組だったんだよと言うと、彼は目を伏せ、悲しそうにそうなんだ、と一言呟きました、
私は何か悪いことをいったのでしょうか、
なんだかいたたまれない気持ちになりましたが、
次の瞬間には彼は笑顔になっていたので、私は安心しました、
それから、私と彼はゆっくりと歩きながら他愛もない話をしていました、
五年の教室を過ぎ、図書室が過ぎ、六年一組が過ぎ、二組が過ぎ、三組に差し当りました、
そこは至って普通の教室で、特別変わったところはありません、
あの時…最後に見た光景とは何も変わっていない、ように思えました、彼がカチャカチャ音を立て、鍵を開けました、
カチャッと音を立てて鍵が開き、
ガラガラッと音を立てて扉が、開きました、
私は自分が最後に座っていた椅子に座り、昔のことを思い出していました、
その時、はっと思い出しました、
忘れ物をしたと言ってた、彼…いや、彼女の正体を、
黒板の隣の壁に彫った私と、彼女の名前を、
黒板のうえに隠した、二十歳になったら読もうと言っていた手紙を、
私は、教卓によじ登り、黒板のうえを探ると、そこには古ぼけ、黄ばんだ手紙が二つ、埃を被ってました、
それは、私宛と、彼女宛の二つの手紙が、
そして、私が振り返ると、そこには笑顔の彼女から、ありがとう、と聞こえました、
私は気付いたら校舎の裏道に立っていました、
手には犬のたずなと、私の名前の横に、ありがとうと書き加えられた黄ばんだ手紙が、しっかり握られていました、 |