ある晴れた休日、コウはジニアを連れて外に出た。
ジニアの服は相変わらずゴシック調のワンピースで、雨も降っていないのに傘をさしていた。
コウもいつも通り、動く度に鎖の音がする服を身に付けていた。両手首にワイヤーを仕込んだ
棘腕輪を装着しているが、さらに上腕にもかすかに血のこびり付いた鎖が巻きつけてあった。
快晴の空には温かい風が吹いていて、すでにやってきていた初夏を主張している。
コウが音もなく通りを歩き、ジニアがそれから2歩遅れて続く。
そんな風にして、二人は黙々と歩いていった。
到着したのは街はずれにある廃墟。
入口の扉さえ壊れているその建物は、簡単に屋上まで入る事が出来た。
「ここからはアルトの本社がよく見えるんです」
「…………本当」
それほど高い建物ではないが、外れにあるため周囲に高すぎる建物がなく、屋上から街が一望できた。
何より、目の前にアルトの本社ビルが他の建物から飛びぬけて立っている。
「……話って、何?」
ジニアは首を傾げてコウの真紅の瞳を見上げた。
その紫水晶ににこりと微笑んで、コウはジニアと共に床に直接腰を降ろした。
「そうですね、何から話しましょうか」
目を伏せたコウの横顔をじっと見て、ジニアはぽつりと呟いた。
「不思議…………貴方と二人でいるのに、まるであの人と3人でいるみたい」
「そうですか、それは非常に嬉しいですね」
表情が豊かになったコウを不思議に思いながらも、ジニアは違和感を覚えたりしなかった。むしろ、この方が彼本来の姿である気がする。
「これから話そうと思うのは、セイとボクとジニアとダリアの話です……聞きますか?」
こくりと頷くジニア。
「それでは、最初にお願いがあります。話を最後まで聞いても――ボクの事を嫌がったりしませんか?」
その問いに、ほんの少し首を傾げたジニアは小さな小さな声で返答した。
「…………たぶん、嫌がらない。私は貴方の事を知りたいと思っている。それに」
紫水晶が光を反射して綺羅らかな光を放つ。
「私は貴方の事――嫌いじゃない」
「そう……ありがとう」
もう一度微笑んだコウの向こうに、黒髪の少年が見えた気がした。
――了
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
天宮華月さまがコウのイラストを描いてくださいました><