楽の章<11〜16>
11
風と大地
風に服は着られまい。
ヒューヒュララ ヒュ―ラララ
地面に服をあげようか。
風がうらやむあの服を。
風に服は着られまい。
ヒューヒュララ ヒュ―ラララ
地面に服をあげようか。
あの、ととのった緑の服を。
風に服は着られまい。
ヒューヒュララ ヒュ―ラララ
地面に服を着せようか。
あったかい草を茂らせようか。
12
海
海に生きたい。
波にゆられてプカリプカリと生きたい。
波は いつか荒れるだろう。
ぐっと息をつめて、もぐるんだ。
エビやカニや貝と競走するんだ。
きっと勝てないだろう。
自分の無力を笑っていたい。
海に生きる!
波にゆられてコクリコクリと眠りたい!
大海原では いつか嵐にあうだろう?
遭難した船を助けるんだ!
気づかれないように
遠くの港の光を持ってくるんだ。
船は 海に 感謝するだろう?
13
ごにょ
生を語りたい。
ゆるしてくれるだろうか。
問題定義ばかりの詩を、
あの 時間という奴は、
美だとか 芸だとか、
すばらしい表現を、
そっと 脇に
しのばせて くれるだろうか。
14
くずれた愛
ただちに言わせて下さい。
くずれた愛の片方は
はみだした一方には
追いつかない。
どれを
つかんでも
間に合わない。
間に合わない。
15
ラストスパート(一)
最後の悪あがきをしてみたい。
手、足、頭、胴、
知恵の輪みたいに こんがらがっても、
最後のあがきをしてみたい。
ラストスパート(二)
なんだか力があまっているらしい。
手、足、頭、胴、
ぐるぐるまきに なっているのに、
なんだか力があまっているらしい。
ラストスパート(三)
どうやら 最後はないらしい。
手、足、頭、胴、心
離れ離れになっていたのは
体だけだった。
どうやら、最後はないらしい。
16
ごめんなさい
ついに言えなかった、
自分だけのしあわせのため
「ごめんなさい」
「ありがとう」
あなたのかわりに、
そういう理由で
「ごめんなさい」
「ありがとう」
なみだのない、
平坦な顔で
「ごめんなさい」
「ありがとう」
心は驚くほど泣いていたけれど
ほっとするくらいに。 |