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  秘密の行方 作者:藍流
伍:人在らざる者
同日

街から少し離れたところにある山小屋

昼前
暗い小屋の中で一人の男が座って器を作っていた
その後ろに黒い狐が丸まって眠っていた
そこに小さく細長い、毛がフサフサの生き物がフワフワと飛びながら入ってくる
男は背を向けたままそれに言葉をかける
「―――悪いが後にしてくれ」
スッと外に出て行く奇妙な生き物

数分後に小屋から出てきた男と黒狐
その男は紅い髪を乱雑に束ねた長身・細身、目は閉ざされていた
男の前にフワフワ漂う生き物
「――誰の使いで俺に?」
生き物が答える
「イズナ様ですに!至急、家まで来てくださいとの事ですに!」
げんなりする男
「―管狐を使って、しかも至急の用……まさか、街が襲われたとかじゃねぇよな?…いや……ありえねぇな…そんな事でおれを呼ぶ訳がない……」
管狐は男の周りをクルクル回る
「詳しいことは会って話すっとの事ですに!兎に角、早く行くですに!」
グシャグシャと頭を掻く男
「―――いや、あのクソジジィーが“至急”って時は“今日中に”だった気がすんな……一応ジジィを立てて、菓子時にでも行くか…」
「えぇ〜早く行くですに!」
手を前にかざすと管狐が手の近くに漂い、それをあやす様に撫でた
「――お前はジジィの家近くの社に俺を口寄せしてくれ。たぶん三時か四時くらいになると思うからそれまでは自由にしてていい」
「はいですに!三時か四時頃になったら口寄せしますに!」
と言うと管狐は“ポン”と音と煙でもって消えた
(――一応あの姿で行くか…目も見えるし…)

男は“ふぁぁあ”と欠伸をするとまた小屋に入っていった













「――――母親だ…」



静かに告げられたイズナの言葉を聞いたときナルトの鼓動は大きく刻んだ
「―――は…?な…何言って……」
困惑の中にあるナルトの手を静かに握るサクラ


静寂が包む


そんな中“ヒュン”という風切り音と共にクナイが四人の足元に刺さる
ヤマトとサイはクナイから数歩下がり、クナイが放たれたであろう屋根の上を見る

(―――クナイが投げられるまで気付かなかった…抜き足の技術はハンパじゃないな…
こいつ…かなり強い…だが、意図的に目の前の地面に刺したという事は…
 ―――威嚇…もしくは警告か…?)

屋根の上に居た者の姿がしっかり映ると、構えた手が止まった


―――頭には動物の尖った黒い耳…
 ―――肩の辺りから毛先に向かって紅から黒へ変化する腰ほどまである長い髪
   ―――赤と黒の浴衣に金地の帯
     ―――太く大きな黒い尻尾
       ―――手足に有した黒い毛と鋭い爪



               人在(ひとあ)らざる者


    だがその妖艶な姿は…紅く煌めく満月の如く―――美しく魅せた



一陣の風が疎の者の髪を揺らす

ヤマトはその者の姿を見て、感じるチャクラの印象は違ったが…

四本目の尾を出したナルトの姿が重なった

(――なるほど…あれが五代目の言っていた術か……
あの姿じゃ追放されるわけだ……あの感じ…普通の混合変化(コンビへんげ)とはまた違う術だな……
しかもそのパートナーが狐…当時、もし里の人間に広まれば混乱は避けられない)
視線をナルトに移す
(それに、ナルトの九尾のチャクラに対する耐性の訳…奴の様に完璧に力を操るに至っていないところを考えると…もう一つの封印に秘密があるってわけか…)

ナルトは、突然の来訪者の存在も意に介せず…イズナの元へ歩み始めた
そんな後姿を目に、サクラは“ナルト”と呟くことしかできなかった

イズナの肩に手を置き静かに
「…クシナは…クシナが…母親ってどういうことだってばよ……」
イズナが答えようとした時、訪問者が先に言葉を発した
『ジジィ…いいのか?言っちまって……』
その声から疎の者が男だと判断できた

男はいつの間にか屋根のてっ辺から縁に移動していた
男はかがんで空を見上げている

ナルトが上を見上げ叫ぶ
「テメェは黙ってろ!!俺はコイツと話をs…」
叫びの途中でナルトが後方へ吹っ飛び、仰向けに倒れる

三人には速すぎて見えなかったが男の体勢から“後ろ突き蹴り”で蹴り飛ばしたのだと推察した

サクラがナルトに駆け寄る
蹴られた腹ではなく吹っ飛んだ時に打ち付けた腰を押さえながら身を起こすナルト
「――ぃってぇ…何すんだってばよ!!!」
(何だ…?蹴られた腹は痛くねぇってばよ…)
男の方を見てあることに気付く
こちらに向けた男の足の裏に……肉球があることに

どうやら蹴りによるダメージは肉球が吸収し、蹴り足を伸ばした時に生じた推進力だけがナルトに伝わったようだ

見間違いかとナルトが目を擦る
その間に足を下ろしナルトを見る
『頭を冷やせ…テメェが詰め寄ったところで話の内容は変わらねぇよ』
ナルトが薄目で男を見る
(―――見間違い…だよな?)
「―止めなさい」
とイズナが男を制する

落ち着いてきたナルトが男の姿を見て目を丸くする
「こ、コスプレ!?なんつぅ格好してんだってばよ!!」
(―――さっきの肉球も見間違いじゃない!?)
『ウルセェ!コスプレの訳がねぇだろ!!こういう術なんだよ!術!!』
イズナも男を白い目で見ながら問う
「それで…何でわざわざその姿で来たんだ?」
フンッと鼻を鳴らす男
『念には念ってやつだ…それに、この姿なら目も見えるしな…』
ナルトがまた吼える
「んな事より、クシナの事だ!何でそんな突飛(とっぴ)な言葉が出てくんだってばよ!夢に出てきたアイツはヤマト隊長と変わらない歳っぽかったし…俺の母親のわけがねぇ!!」
ニッと笑う男
『へぇ〜、ってことはお前を産んだ歳の頃の姿だったわけだ』
「――なっ……」
ナルトは廻る考えの中で言葉に詰まった
イズナが男に聞こえるように嫌味っぽく
「―――もう少し上に居ればよかったのに…」
と言った
男がイズナの振り向き、憤慨する
『―ちょっと待て、ジジィ…呼んどいてその言い草はねぇんじゃねぇか?』
男の袖から細長い小さな奇妙な生き物が出て、イズナの周りをクルクル回る
「イズナさま!ちゃんとお連れしましたに!」
イズナはそれの頭を撫でながら“よしよし、ご苦労さん”と言うとそれはポンッという音と共に消える

男が改めてナルトを見る
『―――それにしても…よく忍になれたもんだな』
ナルトがムキッと怒る
「――テメェみてぇなコスプレ野朗に、んなこと言われる筋合いはねぇってばよ」
男はナルトの反応に溜め息をつく
『――あ?…何だ、褒めてやってんのに』
「それの何処が褒めてんだってばよ!!!」
と声を荒げる
男はナルトの目をまっすぐ見つめる…瞳に映る白黒の世界の少年を…
『―――その身に封印術が施されてんだ…しかもチャクラを練る中核の腹に…
大概は“中のモノ”に目が行きがちだが…封印術自体も体に大きく影響を及ぼすもんだ
――お前の場合、中のモノもデカイ分、封印術も強力…つまり、体に及ぼす影響もデカイ…

…バケモノは腹に入ってはいるが、封印術が施してあるからそう簡単には暴走はしない…
だが、その分封印術のせいで普段使うチャクラに支障が出ちまう
そんな状態でチャクラを使い、忍になれた現実…褒めたって罰は当らねぇだろ?』
ナルトが“暴走”と言う言葉にピクッと反応したのを男は見逃さなかった

サクラはアカデミィの頃のナルトを思い出す

  ドベ   の   落ちこぼれ   

アカデミィの頃のナルトに対する評価として使われた言葉
そんな頃のナルトを…今、目の前に居る男は…

  
ナルトはその意外な言葉に少し毒気を抜かれた
『ちょっとチャクラ練って見せろ』
その言葉に少し棘があった気がしたが素直にチャクラを練るナルト
男が大きく鼻で息を吸う
『―なるほど…チャクラに少し獣の匂いが混ざってる…チャクラが練りやすい様に…少しだけ封印が開いてるな…』
サクラが驚きの表情で
“―チャクラの匂いって…”
と呟く
サイが無表情だが感心する
「――へぇ…すごいですね。そんな事分かるんですか」
男はニッと笑う
『―まぁな、チャクラの匂いを嗅いで相手の使う忍術の系統を推察する…まぁ、相手を攻略するヒントの材料にするだけだ…例えば…』
と言ってヤマトを指差す
『―――アンタなら…ヒノキみたいな匂い…樹木?初めて嗅ぐチャクラの香りだな…』

男はサイとサクラのチャクラの香りも嗅いだ
サイは墨汁…サクラは薬の匂いということだった

サイは感心していたが、サクラはちょっと凹んでいた

『何か珍しい匂いの持ち主ばっかだな…まぁ、忍術でも雷遁や風遁は匂いとして表現しにくいし幻術使いも匂いは無性質のやつと変わらないから過信はできない』
“まぁあれだ…”と話を切り替え、またナルトに顔を向ける

『―――もし、力の暴走があるなら…それは依存心が(もたら)した結果だ…』

ナルトの鼓動が大きく脈打つ

九尾(ちから)が使えるから使う…だがそれは一線引かなければ…依存に繋がる訳だが
―――使わないのは宝の持ち腐れだ…』

ナルトは拳を握る
「――それでも…俺は…もう使わねぇ…俺は俺自身の力でアイツを取り戻す」
(―アイツ?)
男は少し想いに深け(ふけ)、フッと笑う
『―――いいんじゃねぇか…?それで…お前が強くなれば…いつかは…きっと…
自我を保ちつつ九尾(ちから)を使いこなせる日がきっと来る』


イズナが何故か拗ねている
「―――私が言おうと想ってたのに…」
男の動物耳がピクピクと動き、“アハハハハハ!!!”と馬鹿笑いした
『も、もしかして…ちょっと格好良く演出しようとか考えてたのか!?
―――久しぶりに会う可愛い孫にってか?
――プ…プァアハハハハハ!!!!』

笑いすぎて零れた涙を拭う男

サクラとナルトは同時に
「「――――孫!?」」
と言葉が出た
イズナがすまなそうに頭をボリボリと頭を掻く
「―――そうなんだ…私の姓は“うずまき”…うずまきイズナ」
ナルトは眉をひそめる
「―何でさっき…そう言わなかったんだってばよ…」
男が髪を掻き揚げる
『そう(いぶか)るなよ…自分がお前の祖父だと知れるとお前話に聞く耳持たねぇと想ったんだろな…』
ナルトは男に顔を向ける
「―――アンタは?」
男はニッと笑む
『――俺もうずまき一族だ。…まぁお前とは遠縁の親戚ってとこだな…
ジジィは俺の…いわゆる師匠ってやつだな』
フゥッと深く息を吐き、ナルトをまっすぐ見る
『―――で、どうだ?幼かった自分を置いていった人間を前にして……

              殺したいか?

俺は…そう想っても仕方ない境遇だと想うが…実際のところ…お前はどう想ってる?』

ナルトは何とも言えない表情をイズナに向ける
「………」

イズナもまた男と同じ様にナルトをまっすぐ見る
「―――もし、恨んでるのなら…私の命一つ…捧げる覚悟はできている…
それで気が済むのなら…私は…

         ナルト…お前に殺されても構わない

―――その代わり…クシナと此処で暮らしてやってくれ…」




           ――――チリンチリン―――――





言葉の後に訪れた沈黙に寂しげな風鈴の音が響いた



背景の色と文字色は“男”の髪と服をイメージしてます

鈍足更新者の言い訳
最初に、読んで下さってる方々…更新が遅くてすみません
ナルトの反応が厄介で、3パターンぐらいあるんです^^;(細かいと10…15くらい?)
「どれが、ナルトらしいか!」とか考えると煮詰まって…orz
3つは文に起こして、細かい直し的なものを入れて、見たいな事してたら訳が分からなくなっちゃって(;_;)
道筋や通過点が同じでも人の反応で空気感が変わると描き方がだいぶ変わるので…
でも、ちゃんと書いてみせます!が、がんばります。
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