ブラックサイドワルツ〜祭宴の契約〜(2/50)PDFで表示縦書き表示RDF


 #0・ブラックサイドにようこそを加筆修正しました。
ブラックサイドワルツ〜祭宴の契約〜
作:俺とキルマシーン



#2・天峰真九郎と大十字鉄


 私立神知学園(しりつかみちがくえん)
 天峰真九郎は、そこに通学していた。
 理由は簡単で、不良が少ないという定評があったからだ。
 真九郎は昔からイジメの対象にされていたため、不良が少ないと定評がある、ここ私立神知学園なら、そういう目に合わないで済むと思った。
 幸い、学力だけは中の上くらいはあるので、難無く合格することはできたのだが、
 バスッ、と駅のホームで人が倒れる音がした。
 どうやら倒れた人物は、真九郎のようだ。
 等間隔で設置された柱の一つ、それに背中を預ける形で倒れていた。
 その周りを数名の男女が囲んでいる。中には同学年の生徒・大十字鉄(だいじゅうじくろがね)が混じっている。
 ここ私立神知学園は規模が大きく世間的にも優秀な生徒が集まると認知されている。そのためかやはり、一般の施設より条件がいい。
 その一つがここ、学園直通の駅だ。
 駅を出て徒歩三分くらいで正門に着くため、睡眠時間も多少の余裕がある。
 だが、それゆえに遅刻した時は非常に厳しい。
 そういうわけで、この私立神知学園前の駅には学園に通う生徒が行き来しているのだ。
 淡いクリーム色のブレザーにズボン、ブレザーの左胸ポケットの上には金と黒の糸で刺繍された円型の校章がついている。
 ネクタイの着用は自由、本来は着用を義務付けられているのだが、あまりにも着用する生徒がいないため、教員も半ば諦めて黙認してしまっているのだ。
 真九郎はネクタイを着用している。ストライプ柄のネクタイでワイシャツのボタンもきっちりと閉められている。
 対して、鉄はネクタイなど着用せず、ブレザーおろかワイシャツのボタンも開けている状態だ。中にはインナーを着用していた。
 あまりにも対象的なこの二人、そう、真九郎の読みは甘かった。不良の少ないことで定評があるこの学園、誰一人として不良がいないなどと言ってないのだ。
 案の定、真九郎はその数少ない不良の一人、大十字鉄のイジメ(本人は友達付き合いと称しているが)の対象とされてしまった。
 鉄は常に人を睨みつけているような目をしている。その目を柱に背もたれするようにして倒れる、真九郎に向けた。否、真九郎が腹に抱え持つダッフルバッグにだ。
 規則正しい髪型をした真九郎、規則に反した髪型をした鉄、しかも黒髪ではなく茶髪ときている。
 眉毛にかからない、耳が隠れない。それが、この学園の言う規則正しい髪型だ。が、鉄の髪はワックスで逆立てられたアッパーカットだ。もはや規則もクソもない髪型と言えよう。
 鉄は顔と共に視線を下ろした。その目はまるで、麻薬でも使用しているのではと思うくらい、暗くて重い目をしている。
 下ろした視線の先には、真九郎のダッフルバッグが、購買部があるこの学園では財布の所持は当たり前だろう。
 つまりそれは、このダッフルバッグの中に財布がありますよ、と言っているようなもので、無かったら無かったで無理矢理にでも奪われるわけで。
 真九郎はバッグを奪われても何も言わなかった。言ったら言ったで暴力を振るわれるからだ。
 出来る限り無償で済みたい。いや、この場合は無傷で済みたいと言うべきか。
 真九郎は私立に通える身分であるため、お金には困らない環境で育っている。
 だから、金で解決できるならいくらでも渡す。そう思っているのだ。
 そして今日も――、
 鉄は悪びた様子などない浮かれた声で言った。

「悪いねー、いつも。今度倍にして返すからよ」

 返されるわけがない金を奪われて、無傷で終わる。
 ダッフルバッグが再び返された時、中には空っぽになった財布が入れられていた。
 周囲の生徒達は振り向きはするが助けはしない。理由は実に優等生らしい、品格を落としたくないからだ。
 関われば、品格が落とされる。絶対にではないだろうけど、真九郎や鉄のような厄介事を抱えているような人物と関わりを持てば、自然と自分に対する周囲の評価が変わってくる。
 だから、関わりたくない。
 考えとしては、真九郎と同じで無傷で終えたいという感じだ。
 ホームの喧騒、学生達の行き進める足音が噛み締めるように聞こえる。
 真っ暗闇の静寂に一人スポットを当てられ、取り残された気分だ。
 真九郎は、立ち上がった。
 置いてかれないように、必死に喰らい付こうという思いは、ない。
 ただ、いつも通りのことをしたまでだ。
 尻についた埃を払って、真九郎は校門へと足を進めた。
 足並みは、軽い。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう