ブラックサイドワルツ〜祭宴の契約〜(13/50)PDFで表示縦書き表示RDF


 #11・ハートは林檎ように赤くて、の誤字脱字を修正しました。
ブラックサイドワルツ〜祭宴の契約〜
作:俺とキルマシーン



#13・負傷者は彷徨い、戦死するだろう


 真九郎は教室の隅に座っていた。頬杖をつきながら呆然と外を眺めている。
 そう、これは真九郎にとっては当たり前の行動だ。
 けれど、それを見るクラスメート達の視線は違う。
 前までなら、視線すらも送られなかった真九郎だが、入院もせずに一日で教室に帰ってくるという、前代未聞とも言える復帰のおかげで今や校内一の注目の的だ。
 誰も知るはずがない。
 真九郎が悪魔と契約して復活した、なんてことは。
 魔王の姿は真九郎以外の者達には見えない。厳密に言えば真九郎自身にも見えていないのだが。
 魔王は真九郎の中に内在しているため、よほどのことがない限りは内在したままの状態となる。
 そのため、姿や形は見られないのだ。
 もっとも、真九郎自身が見たいと願えば、心の中に映し出されるのだが。

(何やら彼奴等、お主のことを気にしているようじゃが?)

 魔王がそう聞いてきた。
 真九郎はそれを脳で感じ取り、心の中に話すイメージで魔王に返答する。

(生存率が0に近い人間が復活して、しかも一日後に健康な状態で学校に登校してるんだ。そりゃ気にもなるさ)

 真九郎は上機嫌に話している。

(それにしてもお主、随分とご機嫌のようじゃな?)

 真九郎は『まあね』と口にし、教室全体を見渡し、再び満悦した表情を浮かべた。
 それは、周囲の視線に対しての悦びではなく、鉄が停学にされていたことに対しての悦びだ。
 教員達は零華から事情を聴取し、これまでの鉄の行いを知り、停学処分を下した。
 実際には、教員達は既に鉄の行いを耳にしていたのだが、学校の品位を下げることになりかねないので、わざと見過ごしていたのだ。
 しかし、今回の一件は全生徒に知れ渡ってしまったので、仕方なく停学処分にしたのである。
 むろん、今回のことは警察にも知らせてない。
 真九郎は卑屈な笑みを浮かべながら言う。

(まあ少々予定は狂っちゃったけど、鉄が停学解禁された時、その時が彼奴の命日になるからいいや)

「――真九郎君」

 真九郎元に零華がきた。
 魔王は面白半分でからかいながら、真九郎に言う。

(ほほう、此奴(こやつ)がお主が好意を抱く女子(おなご)なんじゃな?)

 と、真九郎は思わず、

「ち、違うよ!!」

 声を表に出してしまった。
 腑の抜けた表情をした零華、教室全体も静まる。
 真九郎がわざとらしく咳払いをし、再び時が動いた。

(必死なところを見ると、やはり此奴が本命じゃな)

(“御主人様の命令だっ!!“ 少し黙れ)

 真九郎は気を取り直して、再び零華と向き合う。
 向き合ったけど、話したいことが浮かばない。否、話したいことはあるが言葉が出ない。
 ぎこちない空気を断ち切ったのは、零華の方からだった。
 零華は、どこか不安気な声で言う。

「体、大丈夫?」

 真九郎もまた、どこか不安気な声で言った。

「……うん」

 再び沈黙が続く……、
 が、零華が何か言いたいのか、リップを唇全体に行き渡らせるような感じの動作をしている。

「あのね、真九ろ――」

 沈黙をぶち破るような努声が、

「天峰ぇェェっー!!!」

 停学処分をくらったはずの鉄の声が、廊下から響き渡る。
 そこには、鉄がいた。
 教室の出入口、廊下と教室の境目に立つ。
 野獣のように獰猛な瞳が、真九郎に向けられる。
 無言の間、二人の視線が噛み合う。
 真九郎は余裕ぶった眼差しを、冷めた眼差しを鉄に向け、
 瞬間、零華が真九郎の前に出て、大の字になって盾になった。
 鉄は零華を睨みつける。

「外野は引っ込んでろ」

 零華は首を横に振る。
 鉄が一歩、前に足を踏み出す。
 真九郎が静かに立ち上がる。
 零華の肩を優しく退けて、
 零華は声を上げた。

「真九郎君っ……!」

 けれど、真九郎は何も言わずに、ただ鉄に近づくばかりだ。

「真九郎君……?」

 自分の知らない真九郎を目の当たりにして、感情が凍結した。
 魔王は心底楽しそうな声で、真九郎に言う。

(御主人様)

(ああ)

 真九郎は“気弱な声“で鉄に告げる。

「ここじゃ迷惑だから、人目のつかない場所に移動にしようよ」

 鉄は、八重歯を剥き出しにして、笑う。
 真九郎は、不気味にほくそ笑む。
 悪魔の心が、うずく。












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