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正義も悪も関係ない 作者:アロハ座長
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序1-2 サイド:正義

 燃えるような真っ赤なボディースーツに先の戦闘で皹の入った赤のヘルメットを抱えた男が、更衣室の椅子に座り俯いている。
 彼は、先ほどの戦闘を思い出していたのだ。

 三つ首の化け物である外敵アウターズの強さは、ランクで言えばB+は確定だろう。それほどまでの強敵を仕留め損ねたことに自分自身に苛立ちを感じていた。
 しかし、それ以上に横槍を入れた黒の集団に対して、炎のような怒りを覚える。

「くそっ! 悪がっ!」

 苛立ちのまま自分の太ももに振り下ろした拳からは、炎が噴き出し、周囲の温度を一気に上げる。心なしか赤い彼の周りは、陽炎でも立ち込めたような空気の揺らぎが生まれ始め、戦闘の怪我を保護する頭の包帯がチリチリと燃え始めた。

 それも束の間で、更衣室には、極寒の吹雪が吹き荒れ、暑くなった彼の頭を冷やす。

「落ち着いてください、火車先輩。悪の介入なんて何時ものことです。今日は、敵が強く、自分たちが予想以上に消耗していた。ただそれだけでしょう」
「俺が苛立っているのは、それもある」
「それも?」
「ああ、自分自身にも苛立ってるんだ」

 先ほどのような物理的な熱さは、この場にはなくなった。しかし、炎の異能を身体に宿す火車は、その心にも炎のような燃える意思を持っていた。

「人々の平和を守るために、俺はヒーローになったんだ。なのに、何時までも悪を。悪の秘密結社の存在をのさばらせる現状。それを打開できない自分。いつも良い様にやられる自分に苛立っているんだ!」
「……火車先輩」

 彼と同じようにチームを組む氷の異能者である氷室は、先の戦隊のブルーだ。
 氷室も火車と同じようにヒーローになるための教育や訓練を積み重ねてきた。異能や今までの討伐実績から火車と同じランクA-で外敵や悪と戦う強い意志を持っている。
 しかし、一歩引いた冷静な考えを持つことの出来る氷室は、先ほどの戦闘で戦った悪の存在を冷静に分析していた。

 黒の集団。下っ端戦闘員は、数人集まることで自分たちA-のヒーローに匹敵する能力。そして、中心の黒い女性は、彼女と同じ色の真っ黒な闇を操る異能者。
 彼女の能力は不明だが、その実力は、手負いの火車と互角。いやそれ以上の実力を持っていることが分かる。
 今まで幾度となく因縁のように戦ってきた相手。他のヒーローも苦戦させられたと言われるが、決してこちらを殲滅するような意思を持たない余裕っぷり。
 もしも本気で奴らが襲ってきたら――

「――勝てるでしょうか。あの集団に」
「勝てるかじゃない。勝つんだ。目的がどうアレ。悪の存在は、民間人の不利益にしかならない。次に会った時は、刺し違えてでも――」

 火車の目には、燃えるような闘志が宿っている。氷室は、それを止める事ができないと悟ると、止めるのではなく。この勇猛なリーダーを支えることを決意する。

「火車先輩。今は、黄袁と風丸が異能者のデータベースを敵の正体を探っている。もうじき結果が来る。それから対策を決めよう」
「センパーイ! 資料持ってきたしたよ~」

 二人の中堅ヒーローである【貫く者】の異能者である黄袁と【風】の異能者である風丸が入室してきた。

「今は、金剛さんと灰影くんは医務室ですので僕たちだけで話し合いましょう」

 そう言う風丸。剛力で知られる金剛と影を操る灰影は、新人と中堅の境のヒーロー。今回の戦闘では、医務室にお世話になるレベルの怪我を負った。しかし、それも異能者の集まるヒーロー協会の医務室。そこに在住する医者も治療系の異能を扱う者で、心配するほどではない。

「では、火車先輩。今日の戦闘で現れた悪ですが――」

 火車と氷室が息を呑む。
 そして黄袁の口から出る言葉に二人は、言葉を無くす。

「――該当者は居ません。そして本部では例の女異能者をコードネーム【漆黒の戦乙女ダークネス・ヴァルキュリア】と命名し、討伐ランクをC+に設定したようです。能力も依然不明。攻撃、防御、転移、隠蔽。様々な闇を使うために正確な能力は把握できません」

 そう言って告げる言葉の中で、火車は、顔を上げる。
 その顔に浮かぶのは、誰が見ても獰猛な笑み。口から炎でも噴き出しそうなほどの凶悪な口から言葉が漏れる。

「上等だ。次あったら、あいつの全てを出し切ってやる!」

 ヒーローにも見えない好戦的な青年。しかし、彼の根底には確かに、守るべきものへの熱い思いと未然に危機を防ぐ使命を持っていた。

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