挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
正義も悪も関係ない 作者:アロハ座長
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

11/12

一章1-3 サイド:六華

「では、戦闘部署の訓練を行います。戦闘部署の最高責任者は、将軍なんだけど、現在不在のために、私こと六華が担当します」

 戦闘員用の真黒なボディースーツを来た戦闘員たちが整列する中、一番前の列に居るジャージ姿の少女に男性戦闘員の視線が集まっている。主に太腿当たりに……。

「と、いう事でベテラン戦闘員たちは、普段通り将軍とドクターの作ったトレーニングメニュー『これが戦闘員の生きる道・肉体改造プログラム・怪』を始めて頂戴」

 私は、うんざりと言った感じで殆どの戦闘員は、悲鳴を上げながらも素早く移動を始める。
 この統率力と恐怖政治のような精神支配は、流石ドクターと将軍と言うところだ。また、この肉体改造プログラムの怪の文字は、誤字では無く、怪人に匹敵する戦闘力を得るために、『怪』の文字を使われている。
 他、基礎訓練の無印を始め、一段上級の『改』、正義を倒す事に特化した『悪』、外敵アウターズを捕獲するために特化した『縛』、そして、怪人に匹敵する能力を得る『怪』が大体のトレーニングの記号だ。

「じゃあ、結城くんの残った経験の少ない戦闘員は、悪の秘密結社としての戦いについて座学しましょう」

 事前に集合した場所の隅に寄せてあったホワイトボードを取出し、でかでかと黒いマジックで『悪の戦い方』と書いた。

「じゃあ、悪の戦い方は、何があると思う?」
「はいっ!」

 結城くんが力強く手を上げた。私は彼女のその元気に応えて指名する。

「正義の味方。ヒーローは、変身前に仕留めます!」
「うーん。まぁ、勝つ事前提だとそうなんだけど……まぁ、それについて詳しく話そうか」

 結城くんのこの一週間の戦闘訓練を見てきたが、基礎体力はスポーツをやっていただけあって女子戦闘員に匹敵。異能の扱いは、まだ感覚すら掴めていないが、人によっては一生感覚が掴めない事もあるから気長に待つ。だから、結城くんには、悪の座学を中心に今後は学ばせることに決めていた。

「じゃあ、まずは、正義と悪との関係性を話そうか」

 ホワイトボードに正義と悪の二文字と対立を示す双方向の矢印を書く。

「このように正義と悪は、反目し合う関係ですが、共通の敵として外敵アウターズが存在します」

 ここは、世間の一般常識だが、ここに関わる商業的な話は、非常に重要だ。

「まずは、暗黙の了解として正義も悪も当初は、外敵を敵と認識していますが、自衛・防衛が可能になった現在では、資源や調査対象となっています」
「すみませーん。資源や調査対象ってどういうことですか?」
「正義側だったなら、正義と外敵の戦いを放映する映像コンテンツ。または、活躍するヒーローたちを取り上げてアイドル化する。居るでしょ? 十代から二十代に掛けて活躍するヒーローや魔法少女たちが」

 皆、ああっ。と納得いくように呟く座学を聞く戦闘員一同。全国各地でご当地ヒーローや魔法少女など見目の良い子ばかりを放映して、視聴率や芸能活動で活動資金を得ている。
 時折、誰も注目しないような実力派のマイナーヒーローの追っかけやドキュメンタリーとしての正義の味方の実態。という番組は、高視聴率を叩き出す番組である。

「と、まぁ放映する正義の味方は、全国で数十組が存在し、外敵との戦闘を記録する異能者が多角度から記録して、後日それを編集。チェックを入れて放映するんだけど……ここで結城くんの発言。『変身前に仕留める』が来るわけ」

 一度、言葉を止めて再び話し始める。

「正義側の思惑としては、ヒーローの活躍を記録し、放映する。そして、悪の思惑としては、外敵を奪取して資源として活用する。そのために、ヒーローの変身中に攻撃を入れることは、いわば、ドラマの撮影でNGシーンを作り出すことと同じなの。
 一応、外敵との戦闘は、一分一秒を争う激しい物。街の修復などを担当する異能者も居るけど、基本は取り直しは無し。だから、正義の変身中に攻撃をするとその戦闘映像自体が放送対象じゃなくなるの」
「それは、正義の活動資金を減らすことに繋がるんじゃないんですか?」
「まぁ、放送する番組が無くなれば、ヒーロー協会も維持が大変になるだろうけど、その前に執拗に変身前に攻撃する組織は、優先排除対象になって消えているわ。過去に同じようにした他の悪の秘密結社は、組織力の差で潰されたわ」

 私がこの組織に入った頃も同じ疑問を抱いたけど、リアルタイムでその様子を見たから印象深い。
 苛烈を極める正義の味方の殲滅戦は、どっちが悪か分からなくなるほどの徹底ぶりだった。

「だから、悪の側の暗黙の了解として『変身中は攻撃するべからず』。ってのがあるわ。それと正義側も同じように、『悪を深追いしない』ってのがある。これは、互いに禍根を残すような終わり方だと視聴者受けがしやすい。って側面があるわけ。だから、私たちは、それに乗っかって外敵の残骸を回収しているの」
「なんか、納得いかない」
「正義と悪の関係なんて、そう言うWin-Winで成り立っている部分もあるの。でも、最終目標は、正義の打倒と異能者と一般人の垣根をなくすことだから」

 そう言って一度話を締めくくる。途中で質問を受け付け、無ければ次に進むのだ。

「質問は無いようね。まぁ、とは言え。反目しているから時に苛烈な争いはするわ。テレビでは放送できない様な事も……どうして全国各地で発生している外敵の争いを怪我人は出しても、死者を出さないで追われると思う?」
「えっ? それは、外敵発生と共に、出動して暴れる前に鎮圧しているからでは?」
「ううん。発生と共に出動で間に合うケースは近年多くなっているけど、発生個所はランダムなの。だから、人の目の届かない範囲や警戒範囲外、または、海からやって来るとか、色々な特殊ケースで外敵が街中に侵入したり、ただ暴れるだけじゃなくて、人や動物に擬態してこちら側に溶け込もうとする奴らも居る。
 テレビで見るのは、破壊衝動に駆られた化け物が多く映されるからその印象が強いだろうけど、そうした特殊なケースも覚えておいて」

「「「……」」」

 明るい声から一転して少しトーンを下げてしまった。どの戦闘員も結城くんも顔つきが真剣になっている。だが、私たちの戦いを知って貰うには、この先を言わなければならない。

「そして、その特殊ケースでの被害者は、発見が遅れた場合、死者を出すことが多い。そしてその死者は隠蔽され、あたかも何の被害が無かったようにする。正義の後方支援に幻覚系や催眠系の異能者を使って死者の痕跡を消しているの」
「……それって」
「そう。人々を全て救っている。って幻想を掲げて、死者を冒涜し、死者の人生全てを否定しているの。だから、私たちは、そう言った特殊ケースをいち早く察知し、外敵を討伐。そして、社会に存在する盲目的な正義への信頼を打ち砕くことが、正義への最大の反撃となるの」

 皆が、沈黙する。まぁ、そうだろう。人は心のどこかで正義という助けてくれる存在を信じている。悪の戦闘員をやっていても、それにこの言葉は私一人の言葉だから、信じ込むには時間が必要だろう。

「と、まぁ、今回の話はこれくらいにして、みんな頭を使ったみたいだから、トレーニングを始めて。とりあえず、柔軟運動して、組手を三十分。その後は、基礎トレーニング!」

「「「は、はい!」」」

 皆、素直に掛けていく中、私は心の中で呟く。
 そう、私みたいな正義の影に埋められた人を一人でも拾い上げるために。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ