お地蔵さま
お地蔵さまは、村のはずれに立っている。
村に鬼が入ろうとすると追い払い、村を守る。
お地蔵さまは、晴れの日も雨の日も、雪の日も、村を守る。
お地蔵さまのもとへ、ひとりの男の子がやってきた。
男の子はお地蔵さまの前でうずくまり、しくしく泣いていた。
よく晴れた日、こんどは村のじいさまがやってきた。
じいさまは花と団子を置いて、手をあわせていった。
お地蔵さまは、じいさまがくれた団子を男の子にあげた。
雨が降った日も、じいさまはやってきた。
じいさまはお地蔵さまの頭に笠をかぶせて、手をあわせた。
お地蔵さまは、じいさまがくれた笠を男の子にかぶせた。
凍えるような吹雪の日も、じいさまはやってきた。
お地蔵さまに蓑を着せて、手をあわせて帰っていった。
お地蔵さまは、隣で震えている男の子に蓑を着せてやった。
それから、じいさまはやってこなくなった。
お地蔵さまは寂しくて日に日に弱り、鬼を追い払うのもやっとになった。
夜になると、こっそりなみだを流すようになった。
ある日、お地蔵さまは心配そうに見つめてくる男の子に言った。
「そろそろ家へ帰りなさい」
お地蔵さまは、男の子が忘れていた帰り道を、男の子に教えてやった。
それから、男の子はいなくなった。
暖かい春がきて、山桜がほころんだ。
お地蔵さまは人の声で目をさました。
じいさまと男の子が、花と団子を置いて手をあわせていた。
次の日も、その次の日も、じいさまと男の子は手をあわせにきた。
お地蔵さまは元気をとりもどして、鬼を追い払った。
お地蔵さまは、村のはずれに立っている。
村に鬼が入ろうとすると追い払い、村を守る。
お地蔵さまは、晴れの日も雨の日も、雪の日も、村を守る。