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ガラハムの夜の出来事です


「なんだ? 勇者の一行が来てたのか?」


 武闘大会を2日後に控えた日の夜、イリアスの町のギルドマスターの部屋で俺はこの後来るダンジョンコアの運搬を行う人材を待っていた。


「はい。なんでもアライエの町に向かうそうですよ」


「武闘大会か? 今朝最終便が出てたと思うんだが」


「はい。知らないようでした。まあ歩いて行ったんじゃないですか?」


「ずいぶんあっさりとしてるな。あいつはどうした? たしか勇者にかなり惚れ込んでたやつがいたろ?」


「そんなに騒いでいませんでしたよ。なんでも勇者一行が倒したキングアントが今現れているものよりも下位種だったようでして…。しかもそれをやけに自慢げに話しているようでしてね」


「それを聞いていて熱が冷めたってところか。ビッグなら現状のトップチームがこないだ数体狩ってきたところだしな。そいつらを担当したのもあいつだったろ?」


「ええ。あ、そろそろ来る頃じゃないですか?」


「そのはずだ」


 その時、コンコン、と扉をたたく音が聞こえた。ようやくやってきたらしいな。


「おう、入ってくれ」


「失礼する」


 扉の向こうから、王都より派遣された3人組のパーティがやってきた。本来ならこんな辺境に来ないような奴らだがな。

 入ってくるのを確認すると、さっきまで話していた俺の秘書兼受付嬢は部屋から出ていってもらった。これはいくらあいつでも聞いていていい話じゃないからな。


「パーティランクA+『レーザー』のリーダーをやっているS-ランク、ラムダだ」


「同じくーA+のーシャ-ナルフィアですー」


「我はA+、広兼と申す」


「よく来てくれた。ここのギルドマスターをやっているガラハム・ジェイクだ。今日は来てくれてありがとう」


「いえいえー。たまたまコロイドの町で仕事をしててー、キーンの町まで行ってー、王都から来た役人に引き渡したところだったんですよー」


「ついでに近くにいる我々に行ってくれと依頼が入ったわけです」


「休暇もなしに大変だな」


「我々はそもそも王都にて拠を構える冒険者。休暇も何も向こうに戻らねば始まらぬ」


「あなたはー、孤児院の子供たちを愛でたいだけでしょうにー」


「間違いではないな」


「それをするためにも、早く本題に入りましょうか」


「そうしようか。こいつがダンジョンコアだ。今はまだ封印してある」


 俺は魔法袋から結界に包まれたままのダンジョンコアを取り出す。


「では封印を外していただけるか? すぐに広兼の縛魔法(ばくまほう)で包みますので」


「この大きさならば2分もあれば我の魔法で封じることができよう」


 一応俺この封印に半日近くかかってるんだけどな…。しかも特殊な魔道具を使って。やっぱその道のプロは違うってことか。


「確認しとくがこれを王都まで運搬するのが今回の依頼だ。報酬はむこうでたんまりともらってくれ」


 俺はダンジョンコアを机の上に置くと呪文を唱え始める。


『すべてを止める時の結界よ、すべてを包む重の結界よ、すべてを払う拭の結界よ、彼の地に留めし大地の結界よ、今、すべての封を解き放ち、再び世界の一部と化せ』


 ダンジョンコアを覆っていた結界が1枚1枚消えていき、やがてすべての結界がなくなった。


「では我の魔法で封じる」


「それは少し待ってもらおうか」


「誰だ!!」


 突如として壁際から聞こえたその声に、その場にいた全員が臨戦態勢になる。当然ダンジョンコアを守るための布陣だ。

 その乱入者は鎧を着ていない、まるで普段着のような格好で、腰に刀をさしており、顔は頭を覆っているローブのせいで見えなかった。


「それがダンジョンコアだな。渡してもらおうか」


「それはできない相談ですね。あなたは何者ですか? 今の今まで気配を一切感じなかった」


「最初からいたのだがな。まあ渡さないのであれば力づくで奪うだけなのだが…」


 その言葉に全員腕に力がこもる。


「また封印されてしまっては困るのでな。とりあえずこちらの袋に入れさせてもらおう」


 奴がそう言って取り出した袋に()()()()()()()()入る。


「は?」


 その光景に一瞬ポカンとなったが、すぐに視線を机の上にずらす。そこには何も置かれていなかった。


「いったいなにをした!」


「ただとっただけだ。これはお主らではなく我らの王が管理すべきものだ」


「そうはいきませんよー」


 奴の背後にシャーナルフィアが移動していた。そしてすでにハリセンを振り始めている。広兼とラムダも攻撃のため動き出しており、俺も奴に1歩近づいた。


 次の瞬間だった。

 やつが腰にあった刀を抜いた。その瞬間、俺とシャーナルフィアは崩れ落ちた。2人が手に持っていた武器は細切れになっており、全身のあちこちから血が噴き出る。致命傷にはなりえないが、体から力が抜けるには十分すぎる出血だ。


「まずは2人」


 次に動いたのは広兼だった。鉢巻がまるで蛇のように奴めがけて飛んでいくがそれも全てはじかれてしまっていた。直接打撃はその刀で受け流されるも、数発が腕や体にあたり、うち1発が頭を覆っていたローブを吹き飛ばした。その瞬間に広兼も俺たちと同じように床に倒れる。

 その死角から切りかかっていたラムダの真っ赤な聖剣は、刀でがっちりと止められていた。

 何度も聖剣と刀をぶつけ合う。それでもどちらもかすかな傷がついていくだけだった。その攻防は俺の目にはまるで見えていなかったが、ほんの2,3秒の間に50を超える斬り合いがあったのだろう。ラムダの額には汗が滴っていた。


 しかし、それも長くは続かなかった。数秒間の斬り合いののち、ラムダは倒れた。持っていた聖剣は縦に2つになっており、体にまとう鎧はあちこちが断たれていた。


「く、くそ…」


「はぁはぁはぁはぁ。なかなかにやる人間だった。やはりまだ弱いな。鍛えなおさねば」


「ま…待て…」


「そう言われて待つ者はおらぬよ。まあ私も奴に倣っておこう」


 そう言ってやつは壁を切り裂いて外への出口を作った。

 攻防でぼろぼろになり、明かりの落ちた部屋で、空に浮かぶ月の光がやつを照らしていた。


「私は、魔王様直轄の魔将の1人憤怒(ラース)の――――だ」


 やつはそう言って闇夜の空に消えていった。

 俺たちの網膜には、やつの、片角の龍人(ドラゴニュート)の姿が焼き付いていた。




どうもコクトーです


第4章に入る前の閑話はこれで最後です



さて、第3回エリュシオンライトノベルコンテスト(なろうコン)

一次審査通過させていただきました!!!!

さあみなさんご唱和ください。


「正気か!!!?」


ほんとにありがたいです。はい。

ほんと私のこんな作品が入っていいものかと不安で仕方ありません。

コンテストの運営側がついつい消し忘れただけじゃないのかと怖いです


これを励みに今後もなんとか同じペースでガンバリマス


ではまた次回

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 900年前の仲間だったりして....
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