邪龍襲来です5
「死龍王ゾンビ・ダムドレアスって出てるんですが、龍王ってうちの子とあと1体とか言ってませんでした?」
完全に油断しきっていた先程とは違い、しっかりと体に力をいれている今、俺は『上級鑑定』で表示された結果から、気になった点を1つ聞いてみた。ゾンビってついてるし、アンデッド化してるみたいなのだが、あの名前の感じからして、アンデッド化する前の名前は死龍王ダムドレアスだったのだろうし。
「ダムドレアスだと?」
「聞き覚えはあるんだがな……。しかし、死んだはずではなかったのか?」
「あたしは少なくとも死んだって聞いてるよ。しかし、ダムドレアスはあくまで死龍だったはずだ。死龍王、しかもゾンビだって?」
「死後も力を貯めていたのか、それとも最近死んだのか」
「おそらく最近だろうね。前に、一度だけ闇龍の頼みで十年前の龍の死体を元にしたドラゴンゾンビを狩ったことがあるが、そうとう腐って肉が剥がれてた。それと比べてあれはきれいすぎるよ」
アンデッドに対してきれいという言葉が適切かはわからないが、たしかにその表面を見る限り、腐っているような様子はなく、傷らしい傷も右目に刺さった1本の角だけだ。鱗はその頑丈さを示すように堂々と生え揃い、翼も今はたたんでいるため若干見づらいが穴などは空いておらず、傷が残っているなどということもない。
俺はアンデッドと戦ったことがないからイメージでしかないが、毒かなにかで死んだのでもない限りアンデッドになっているのが信じられない。
「死龍ダムドレアスは、『万龍狩りの龍人』という『名も無き物語』でその龍人と最後まで戦った邪龍の長の名だ。もっとも、物語の中では出てくることはないし、その名を知っている者も我ら4体の龍を除いたら数人しかいない。知る必要もない、過去の存在だからな」
「あれがそんな有名な龍なのか、別物なのかはわかんないんですけど、確実に強いですよね?」
「ああ。全員あたしの背に乗りな。すぐに町に戻り、町を捨てる準備をする」
「え?」
「あたしたちのような龍はあいつにはまず勝つことができない。風龍もそうだし、たとえ土龍が本気で暴れても勝てない。ダムドレアスの龍殺しの前には歯が立たないんだ」
「龍殺しって龍種へのダメージが上昇するみたいな感じじゃないんですか?」
「それはドラゴンスレイヤーのような魔剣の効果だ。あいつの龍殺しはその名の通り龍殺しなのだ」
「あいつの攻撃で龍が受けた傷は二度と回復しない。上級の回復魔法であろうと意味がなく、呪いのように一生残る傷になってしまうのだ」
「物語に出てくる龍人が回復できた理由も、8体もの成龍がそのすべてを捧げたからだ。逆に言えば、龍人という、人の血が混じった龍でさえ回復するのに8体の成龍が犠牲にならねばならんのだ。成龍がうけた傷ともなればどうなるかわからん」
「だから町はあきらめる。ギルドと連携して人々を逃がし、Sランクの冒険者たちを集めてもらいやつを狩る。それしか手立てはない」
火龍様が言うことはもっともだ。そもそも、龍王クラスにまで上り詰めた存在に対して戦おうということが間違いなのだ。死龍王ゾンビ・ダムドレアスはランクエラーだと思う。ランクSを複数集めなければ倒せないという話だし、災害みたいなものと考えられてもおかしくないだろう。
「じゃあ、それをやるまでの足止めが必要ですよね」
「なに?」
「そんなに長くはないですけど、ある程度はがんばりますよ」
「何をバカなことを言っている。あれは先ほどまで襲ってきていた邪龍とは格が違う。言わせてもらうが、あの程度の邪龍の鱗を貫けない魔法しか使えないお前では話にならん!」
火龍様の言葉に同意するようにうなずく水龍様。そして火龍様は言い聞かせるように続けた。
「イフリートの時は下級の魔法の数で押し切っていたが、あんなものは意味がない。お前では無駄死にするだけだ。やめておけ」
「貴様、先ほどから言わせておけば」
「やめろコルク」
火龍様の言葉を黙って聞いていた俺だったが、コルクは我慢できなかったようだ。そんなに熱いやつだったか、お前?
「今のは聞かなかったことにしてやる。さっさと乗れ」
「すいません。マナとヒツギをお願いします」
「何度も言わせるなよ?」
火龍様の圧力が増す。
「だめですか?」
「あたしはお前を認めている。だからこそ、認めた冒険者をみすみす死なせたくはないんだよ」
「俺は『テレポート』を使えるので、いざとなったらそれで逃げます。それでもだめですか?」
「だめだ。お前は考えが甘すぎる。あれはそんなに甘いものではない!」
「ですけど、そんな簡単に見逃してくれるとも思えません。だったら、誰かが残って少しでも足止めをしないと、下手したらこの場で全滅して避難するどころの話じゃなくなってしまいます。この中だとまだ逃げる手段を持っている俺が一番適役です」
俺の指摘に火龍様は若干うろたえる。考えてなかったというよりは、無意識に考えないようにしていたのだろうな。
そもそも、ダムドレアスはゾンビとはいえ龍だ。間違いなくブレスを使ってくるだろう。それに、属性龍たちとは違い、死龍という龍の属性はいまいちわからないが、魔法を使えないということもないだろうし、遠距離攻撃の手段はいくつも持っているだろう。背中に怪我人を乗せて逃げて行く相手など的以外の何者でもない。
「しかし、やつは先ほど現れてからまったく動いていない。今のうちなら」
火龍様の視線がダムドレアスに向く。たしかに、今はダムドレアスは左目を閉じてじっとしている。まるで置物のようにもみえてしまう。しかし、俺たちの注意が自分に向くのを待っていたとばかりにダムドレアスは目を開いた。
「グァアアア!!!」
ダムドレアスの周囲にあった邪龍たちの死体が吹き飛んだ。
「偉大なる魔王様のクソ野郎のため、全部ぶっ壊してやらぁああ! 待ってやがれクソ龍人ォオオオ! 全員ぶっ殺す。てめえだけは俺が殺してやる!」
ダムドレアスが叫ぶが、その内容がかなりむちゃくちゃだ。偉大なるとか言ってるのにクソ野郎とか言ってるし、全員とか言ってるのに特定の誰かを殺したいとか言ってるし。ゾンビになった影響か?
「とまぁ、逃がす気はないみたいですけど……」
「……どれくらいの距離を転移できる?」
「今なら数km単位でできると思います」
まあ今は指定してあるのが家しかないから家まで飛んでしまうことになるけどな。ほんと、なんでミラの町についた時に指定しなかったんだろうな……。
「いいか、無理だと感じたら、いや、無理だと感じる前に逃げろ。1分でも、いや十秒でもかまわん。いいか、絶対死ぬな」
火龍様が至近距離で俺に話す。かかる息がかなり熱いがそれを忘れるほど真剣なのだろう。
「わかりました。二人をお願いします」
「任された」
二人は自分も残ると言いたげな感じだったが、有無を言わせずに火龍様の背に乗せた。『小規模テレポート』でささっとね。下手に残られると困るからな。これから起こすことを考えると、2人を巻き込んでしまうし。
「『火炎壁』『クエイク』『ダークネスウォール』」
飛び立とうとする火龍様と水龍様を見て、向かってきた魔法を足元に壁を作って防いだ。紫色の炎に包まれた槍で、かなり距離があるから勢いも威力も多少は落ちているはずなんだが、それを感じさせず壁2枚を突破された。咄嗟に考えて作った『ダークネスウォール』だったが、『ダークウォール』にしてたら突破されたかもしれないなこれ。
「よっと」
『スキル:紫炎槍Lv1を習得しました』
あきらかに壁を破壊できそうな威力を持ってそうな、一際大きな槍を壁に到着する前に『小規模ワープ』で移動して喰らった。ちょっと手を火傷してしまったな。まあすぐに治るけど。
攻撃がやんだのを確認して壁を解除する。火龍様と水龍様もさすがというかすでに遠くなっている。800mくらいは離れたかな?
「コルク、そろそろよさそうだぞ。手伝え」
「主よ、よいのか?」
「何が?」
「あの町に主がそこまでする理由があるのか?」
「んー、リュウマンジュウおいしかったし、せっかく火龍様とかと知り合えたしな。今後のことを考えたら後ろ盾に属性龍がいるって結構大きそうだろ? 下手に国の貴族とかに後ろ盾になってもらうより、変なことに巻き込まれなさそうだし、いくら天上院たちでも町の守護者の龍に手を出せばどうなるかくらいわかってるだろうし」
「それにしても、主が危険になるのは違う気が」
「甘いって怒られるかもしれないけど、なんとかなりそうだし、あの量の邪龍、喰らいつくせばかなりパワーアップできると思わないか?」
「主……それが本音では?」
「どうかな。それより、手を抜くなよ? 俺はまだ制御しきれてないからな。雨も降ってるし、喰らいすぎると体がもたなくなるかもしれん」
「そうはさせん。悪魔の力はすでに掌握している。俺がサポートする以上制御をミスすることはない」
「頼もしいな。やるぞ、コルク」
「はっ!」
俺とコルクの戦いが始まった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv98/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv13/??
狙撃主 Lv54/70
獣人 Lv19/20
狂人 Lv33/50
魔術師 Lv52/60
ローグ Lv22/70
重戦士 Lv23/70
剣闘士 Lv10/60
神官 Lv9/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
昨日は純粋に書ききれませんでした。
すいません。
今回は戦闘まで入れませんでした。
ではまた次回