生の草原です3
俺たちが家に帰ると、そこでは、アンナとみぃちゃんが庭の隅に穴を掘って何かを作っていた。
2人は先に中に入っていき、俺は2体のところに行き、アンナに問いかけた。
「アンナ、何をやってるんだ?」
『おかえりなさい主殿。これですか? いずれ出るだろうゴミを埋めるのに使うと思いまして』
「いや、ごみなんかほとんど出ないし。生ごみもそれを処理する魔道具があるしな」
台所の片隅に置かれているゴミ箱の形の魔道具がそれだ。中に生ごみを入れて魔力を流してやると完全に燃やし尽くして処理してくれる。中に溶岩でも入ってるんじゃないかってくらい跡形もなく消し去ってくれるのだ。どんな構造してるんだろう……。
『まあいずれわかると思います。気にしないでください』
「そうか。あんまり派手にはやらかすなよ?」
『森の一部を広場に変えてしまった主殿ほどではありませんよ』
「……それは内緒だ」
俺は逃げるように家の中に入った。
マナにインクと紙を渡して、休みの日に俺とキャラビーが鍛冶屋のガンダさんのところに通うことになったと伝えると、マナにも行った方がいいと言われてしまった。
マナが言うには、ドワーフが一介の冒険者に武器の手入れの方法とはいえ、自身の持つ技術を伝えるのは珍しいとのことだ。
ドワーフという種族は、力が強く、手先が器用でその技術は人族の鍛冶師では到底追いつけないと言われている。ドワーフ自体が他種族と友好的な種族なので、彼らは人族や獣人族、人によっては、巨人族や小人族なんかを弟子にとる者もいるそうだ。しかし、その全員が鍛冶師を生業としている者たちで、冒険者を弟子にとるなんてことはほとんどないらしい。「手入れの方法とはいえ、ドワーフから学べるのはチャンスだから、真剣にやってきなさいよ」と、念を押された。まあ言われなくてもわかってるけどね。
武器は己の生命線だということは重々承知している。しかし、俺はその手入れの方法なんか一切知らないからこれまでまったくやってこなかった。
しかし、それでも問題がなかった理由はちゃんとある。
それは、俺の武器が『魔剣』だったということだ。
俺の使う魔剣ステュラは、炎をまとったりとか、雷をまとったりとか、魔法の詠唱を引き継いでくれたりなんかはしない。もちろん、魔力を流しても何も起きない。ただ、硬く、切れ味が落ちないだけなのだ。
オリハルコン以上の硬度の物でなければ、何を切っても一切刃こぼれせず、曲がったり、折れたりもしない。それだけの能力だが、それゆえに手入れなどを一切必要としなかった。そのため、俺は手入れについて聞いたり、調べたりしてこなかったのだ。
しかし、普通の剣ならばそうはいかない。キャラビーに渡した呪いを解いた後の短剣だってそうだし、毎回のように変わるが、俺の持つ他の多くの武器もそうだ。俺は基本的にステュラと使い捨ての武器の二刀流で戦っている。しかし、このまま使い捨てにしていれば、いずれストックは尽きてしまう。今はオーガとオークから得た武器が大量にあるが、その数も少しずつ減っている。この町の周囲のダンジョンでは、西にある、『善の洞穴』にいるスケルトン系のモンスターが持つものでしか補充ができない。しかし、スケルトン系の持つ武器は、上位種の物でオークと同等かそれ以下のものでしかない。スケルトンソルジャーの剣を躱したら、風圧で折れた剣先が飛んできたなんて話もあるらしい。俺はそんなものを使いたくはない。
ならばどうすればいいか? それは、今使っているものを長く使えばいい。いずれなくなるにしても、それまでに稼いで、頑丈なものを買えばいい。そう考えると、手入れについて学べるのは大歓迎だ。どうせ頑丈なものを買ったとしてもその手入れはしないといけないわけだしな。
俺はいつになるかわからない新しい剣の入手を夢見て眠りにつくのだった。
次の日、俺たちはギルドに向かって歩いていた。
これから3,4日は今日のように朝にギルドに向かって依頼を受けて、それをこなして、夕方にはギルドに依頼の報告に行くという日程だ。もしその日のうちに依頼を達成できなければ、次の日はギルドに行かずにダンジョンに向かうが、1日1つくらいしか受けるつもりはないし、1層のころと違って、15層まで来ると人の数はだいぶ落ち着いている。獲物を探すのに数時間かかるなんてことはないだろう。
「これなんかいいんじゃないか?」
「それだと18層まで行かないといけないから却下。15層か16層でできるものを探して」
「わかった」
「マナ様、これなんかどうですか?」
「うーん……いいね。レッドベア5体の討伐。15層でできるし、5体ならそこまで時間もかからないで見つかるだろうし、今日中に終わりそう。ありがとねキャラビー」
「はい!」
多くの冒険者が見ている依頼板からなんとか見つけてきた依頼を即却下されて落ち込みながら紙を依頼板に戻して戻ってくると、すでに3人とも待っており、依頼も決まったようだった。俺の苦労はいったい……。
無事依頼を受けられたので俺たちは『生の草原』に向かった。
入り口の転移装置は結構混んでおり、ダンジョンの中に入るまでに10分ほど待たなくてはならなかった。1か所しかないからしょうがないとはいえ待たされるのはきついな。勧誘や雇ってくれっていう人たちが多くて大変だった。個人的には1層に入ろうとする初心者たちのほうが雇ってくれそうだと思うがな。
目的のレッドベアは、名前の通り全身が赤い毛におおわれた熊であることは間違いないが、それだけというわけではない。
もともと、ベアツールは手先が非常に器用で、その手を素材の一部に利用することで器用さが上がる手袋やアクセサリーを作れるらしく、そのために依頼が出されていた。しかし、レッドベアはベアツールの上位種であるが、その器用さは失われていた。その代わりというわけではないが、レッドベアは火魔法を扱うことができる。正確には火魔法に似た何かではあるが、気を抜いていると痛い目に遭う。赤い毛自体が既に熱を帯びていて、「森の中にいるのに周囲の樹が燃えないのはなぜか」というテーマで研究が盛んに行われているとも書いてあった。
このレッドベアは、『生の草原』では最初に魔法を使ってくるモンスターだ。そのため、ここで苦戦して先に進めなくなっている人も少なくないそうだ。それでも15層以降に人が多くないのはレッドベアさえ倒せるようになればここはすんなりと越えられるからだ。
ギルドに置いてあった資料によると、20層までに新しく出てくるモンスターは2種類だが、そのどちらも15層までに出てくるモンスターの上位種で、対処方法はかわらないらしい。力やスピードは確かに上がるが、対処しきれないほどではないと書いてあった。まあ実際に体験してみないとわからないよね。
「いた。8体の群れだね。どうする?」
15層に入って20分くらい森の中を探索していると、マナが本の中からあっさりと再現してみせた魔法の1つである『熱探知(弱)』でレッドベアの群れを見つけた。狭い範囲での温度の大きな違いを探知できるという、便利なのか便利でないのかわかりづらい魔法だ。
「8体か……。俺とヒツギとキャラビーで牽制しながらマナに狙ってもらうのがいいかな」
「りょーかい。隙があったら私も狙っていいよね?」
「ああ。俺もそのつもりだ。キャラビーは戦えるか? 魔法も使ってくる相手だが」
「大丈夫だと思います。ただ、時間がかかるかもしれません……」
「時間なら大丈夫だ。8体のうち5体倒せれば依頼達成だしな。マナ、7体仕留めたら残り1体は残しといてくれ。最後の1体は俺が引き付けるからキャラビーが攻撃してくれ。次があったらその時は俺抜きでいくから」
「がんばります!」
俺たちはレッドベアの群れの方に向かった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 Lv88/99
薬剤師 Lv42/60
聖???の勇者Lv12/??
狙撃主 Lv45/70
獣人 Lv16/20
狂人 Lv21/50
魔術師 Lv37/60
ローグ Lv21/70
重戦士 Lv21/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40
舞闘家 Lv1/70
大鬼人 Lv1/40 』
書いていたらキリまでに文字数が倍近くなったので次回に続きます。
ではまた次回