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朝日真也の魔導科学入門  作者: Dr.Cut
第一章:イクリプス-2『最初の敵』
22/91

22. アイアイ★こらむ② 超合金!! アダマス鉱!!

注)アイアイ★こらむは電波系楽屋落ちコーナーです。真面目な方、まともな方、あるいは毒電波に対する耐性が無い方などが読まれますと、精神とかに何らかの異常をきたす可能性がありますのでご注意下さい。


「アイアイーーーーーっ★

こらむーーーーーっ」



「…………」



「皆さんこんにちは!!

朝マガ唯一の読者目線キャラ、相川 愛です!!

皆さんの心の声を代弁するため、再び異界よりやって参りましたーーーー!!」



「……夢じゃなかったのか」



「いえ、ぶっちゃけて言うと、この空間は本編に対して夢みたいなモノです。踏み外した方々の夢の理想郷です。なんか色々なモノを崩壊させる、ルールブレイカーなリミッターなんです!!」



「夢は夢でも悪夢だろう。

キャラもそうだが、特に読者の精神崩壊は深刻だろうな。向こうは小説を読みに来てるっていうのに、開いたページが会話オンリーでは、何がなんだかサッパリ分からん」



「だ、ダメですよーっ!!

朝マガは魔導科学の入門書なんですから、コラムはスゴく大事なんです!! ただでさえ作者は理屈っぽい文章に慣れてなくて、本編は回りくどい言い回しにするのが限界なんですから、このコーナーだけが朝マガを似非教科書にする為の最後の砦なんですよ~っ!!」



「相変わらず言ってる事は何一つ分からんが……。

つまりは、粉末ソース掛けただけでタコ焼き味とかぬかすスナック菓子みたいなモノか」



「はぅ!! み、身も蓋もない言い方です……!!

た、確かに、他人事とは思えない親近感ですけど~……」



――――-



「はい、それじゃあ講義にイッてみましょう!!

教授!! 今回のお題は何でしょうか!?」



「……そうだな。

今回はどうやら、件のアダマス鉱に関する理論考証の様ではあるが……。

始める前に一つツッコミたい。

サブタイに“超合金”って入ってるんだが、アダマス鉱って“合金”だったのか?」



「……へ? あ、はい。

多分そう、なんじゃ……ないですか?」



「……“合金”とは、ステンレスの様に金属に複数種類の金属や非金属を混ぜ合わせた物を指す言葉だったな。“超合金”などと書いてあるが……。アダマス鉱は、何にナニを混ぜて作った合金なんだ?」



「えーと、その……。

それは、ですね、きっと。あ、アレですよ!!

なんか、それっぽい金属に適当な魔力とか混ぜるときっと出来るんですよ!!」



「……もう1つ。

“鉱”とは精錬前の金属を指す言葉の筈だ。つまりアダマス鉱とは、“掘り出したままの鉱石”の状態で既に“合金”だったということか?

――成る程、素晴らしいな。

それなら確かに“()合金”だ」



「…………」



「…………」



「……あぅ。

ご、ゴメンなさい!!

間違えました!! 調子に乗りました!!

本当はただカッコいいから、ついノリで書いちゃっただけなんですよ~っ!!」



「……直せば済む話だろう」



「こ、こっちにも色々都合があるんです!!

た、確かに、超合金って書いたのは悪ノリでしたけど、“アダマス鉱”っていう名前はもうどうしようもなかったんですよ~っ!!

……はい。ぶっちゃけ気付いたのは相方なんですけど、指摘された時には既に何度も何度も本編で使っちゃったあとで、合宿とか色々あって忙しかった所に全部直せとか言われて、ついついこっちもカチンときて……」



「……おい、待て。

なんか、誰か乗り移ってないか?」



「な、何でもないです!!

と、とにかくですね!!

アダマス鉱は、きっと一般に色々利用されてるから、鉱石の名称が材質の名称にまで使われるようになっちゃっただけなんです!! はい!! きっとそうです!! もう後には退けなくなっちゃったんで、朝マガではそういう事にしておいて下さ~い!!」



「……まあ、ツッコミ所は色々あるがそういう事にしておこうか。

さて、それではアダマス鉱? の性質とその原理について考察していこうと思う」



「き、教授!! 納得いかないのは分かりますけど、せめて疑問符は取ってくださ~いっ!!」



「仕方ないな。

さて。先ずは要点を纏める為に、例によってアダマス鉱の性質を列挙してみようと思う。


・金属である

(金属光沢有り。展性有り。電気伝導性は未検証)

・強度や硬度が極めて高い(青銅以上?)

・銀白色

・魔力を放出すると膨張する


まあ、こんな所だろうな」



「えーと。こうして見ると、最後のやつ以外は、地球とかにあっても意外と違和感無いですよね」



「実際、最後の性質以外が似た金属なら地球にもあるぞ。

ズバリ、タングステンだ。

というか、初見ではオレもそう思っていた」



「タングステン……?

なんか、あんまり聞かない金属ですけど」



「馴染みの薄い名前かもしれないが、見る事も出来ない程に特別というワケでも無い。

そうだな。身近な所で言うと、白熱電球のフィラメントがコレで出来ている」



「えーーーっ!?

フィ、フィラメントって、あの電球の中の光るヤツですよね!? あの、バネみたいにビヨヨヨ~ンってなってる細い金属ですよね!?」



「…………?

いや、まあそうだが。

何をそんなに驚く事がある?」



「あ、アレって……、“竹”じゃなかったんですか?」


「……は?」



「フィ、フィラメントって竹ですよね?

日本で採れた新鮮な竹を使ってるんですよね?

教授お願いですそうだって言ってくださ~いっ!!

エジソンさんは……。

エジソンさんは日本を選んだんだって、わたしの日本人としての自慢の1つだったんですから~っ!!」



「待て待て待て待て!!

一体何世紀頃の話をしているんだ!!

大体、君はさっき自分で何て言った!?」



「バネみたいにビヨヨヨ~ンってなってる細い金ぞ……あっ!!」



「……話を戻すぞ」



「うぅ……。小さな夢が壊れた気分ですよ~……。


……それで、教授。

そのタングステンっていうのは、具体的にはどんな金属なんですか?」



「そうだな。端的に表現するとすれば、

とにかく硬い。重い。そして高い。

これに尽きると言ってもいい」



「へ?

それって、金属なら普通じゃないんですか?」



「常識的な金属とはレベルが違う。

タングステンの硬さたるや対戦車砲弾に使われる程でな。その研磨や加工にはダイヤモンドドリルを使うのが一般的だ。それでも、ダイヤモンド製のドリルでさえも割とボロボロ欠けると聞くな。更にその比重は重金属である金に匹敵し、1m^3で20トンにもなる。そしてその値段たるや、アルミニウム材ならば数千円程度で済むパーツが数万円にまでなるという破格ぶりだ」



「きゃーっ!?

む、ムチャクチャじゃないですかぁ!?

というか教授!! そんな高級な材料で出来た塔壊したんですか!? そ、そりゃ怒られますよ~っ!!」



「……いや、流石にこれは無いだろう。

というかアダマス鉱=タングステンだとすると、あの街の防壁なんか天文学的な値段になるぞ? そもそも細かい加工に向かない金属なんだし、像や建物への使用など狂気の沙汰だ。

……まあ魔力量の調整によって自在に加工可能っていう話だし、あの国では街一つ作れる程の産出量があるワケだから、地球の基準を当て嵌めるのもどうかとは思うが」



「む~……。

つまり、結局は魔力に関する謎を解かないと分からないってコトなんですね?」



「まあ、そういう事だ。

さて、それでは魔力の放出に伴う膨張という現象を元に、アダマス鉱と魔力の関連性について探っていこう」



「ピコーン!! ピコーン!!

警戒令!! 警戒令!!

レーダーが毒電波の気配を感知です!!

スゴい電波が飛び出る前触れです!!」



「そう言うな。

コラムは重要なんだろう?」



「…………。

(ど、毒を食らわば皿まで。

毒を食らわば皿まで!!)」



「さて。それでは先ず、力と物質との関係性についての考察だが……。

ふむ、なるほど。アダマス鉱は魔力を“放出”すると“膨張”か。

これはまた……、中々に難儀だな」



「はい。実は、わたしもちょっと気になってたんですよ~。だって普通、ファンタジーとかの理論だと、魔力を使って剣創ったりとかしますよね? 魔力を“加えて”ナイフを伸ばしたり、アクセサリーを大剣にしたりするんですよね? なのに魔力を出した上に大きくなるなんて、なんだかちょっとインチキっぽいです」



「まあ、そうなんだよな。

確かに君が言う通り、魔力を加えると体積が増えるというものであれば話は簡単だ。相対性理論から導かれるエネルギーと質量の等価性を考慮すると、エネルギーは質量に変換可能だし、力とはそもそもエネルギーに変換可能な物理量だから、魔力を元にアダマス鉱の原子を創り出し、それによって体積を増やすというのは、まあ原理的には問題が無い」



「……へ?

エネルギーから原子って作れるんですか?」



「理論上はな。

現代の宇宙論ではエネルギーから素粒子が生まれ、それらが結合する事で核子、やがては原子を形作ったとされている。つまり我々の身体を作っている原子も、元々は宇宙誕生期にエネルギーから作られた物だという事だ。

……そうだな。本編に出た話を利用するのなら、オレが異世界に行く羽目になったあの加速器実験を引用してもいいだろう。素粒子研究の物理学者達は、ああいう“加速器”と呼ばれる装置で高エネルギー化した粒子をぶつけ、そのエネルギーを使って未知の粒子を生み出そうと日夜躍起になっている」



「へ~。

魔力から物を作るのって、実は意外と簡単なんですね」



「……まあ、理論上は可能だろうな。

E=mc^2とは世界一有名な方程式だが、これはエネルギーがあればそれを光速度の2乗で割った値の質量が生まれ得る事を示している。

つまり1gの物体を作りたければ、凡そ90000000000000Jのエネルギーを用意してやればいいんだ」



「なるほどなるほど。

なんかそう言われると、頑張ればわたしでも出来そうな気がしてきましたよ~。

――ところで教授。その9じゅっちょうジュールって、具体的にどの位のエネルギーなんでしょうか?」



「そうだな、具体例を上げるのは難しいが……。

一番分かりやすいところで言うと、広島に落とされた原子爆弾の火力と同じくらいだ。

ゾウ48万頭を富士山の天辺までぶん投げる為のエネルギーと大体等しい」



「全然簡単じゃないです!!」



「何を言っている。

エネルギーから質量を作るとはそういう事だぞ?

よくあるファンタジーに登場する連中は、魔力を変化させたり変換させたり結晶化させたりして剣だの鎧だの要塞だの反射装甲だの創っているじゃないか。

――連中に教えてやりたいもんだな。そんな事がホイホイ出来るだけのエネルギーがあるのなら、ソレを全部熱に変えてぶつけた方が遥かに強い。仮に5kgの剣を作れる人間なら、広島原爆50万発分の大爆発が起こせる筈だ。世界と戦争しても単騎で勝てる」



「か、勝ち負け以前に、星が吹っ飛びそうですよ~っ!! 良かったです、教授!! 教授にそんな特殊能力とか追加されてなくって本当に良かったです!! というか教授、なんか段々ファンタジーな世界観に馴染んで来てませんか?」



「……まあ、冗談はこのくらいにしておこう。

とにかく、件の魔法金属は魔力を加えると収縮、失うと膨張と言っているのだから、その変形の原理はエネルギーからの原子の生成ではあり得ない。事実、本編でもオレは違う仮説を取った」



「……へ?

ど、どういうコトなんでしょうか?」



「……あのな、考えてもみろ。

オレはアダマス鉱の膨張現象を用いて塔を破壊したのだぞ? 仮に膨張に伴って金属を構成する原子の数が増えていたとしたら、いくら膨張したところでその密度も強度も変わらんだろう。よって建物の自重を用いて押し潰すインプロージョンは不可能だ」



「あっ、そう言えばそうですよね?

確かに教授、アダマス鉱は膨張するとスカスカになるとか言ってました。アレって、結局どういうコトだったんでしょうか」



「そうだな。

オレはあの時、叩いた時に聞こえる音の違いから、アダマス鉱はその膨張率によって密度が変化すると考えた。つまり膨張前と後ではその総重量は変わらず、密度が下がる事で体積の増大を実現しているのだろう、と。

密度の変化……まあ物質がその変化に伴って密度を下げる場合、いくつかの可能性が考えられるが……。


例えば

1. 物質を構成する原子や分子の種類が変わった

例) 酸化還元反応。放射性元素の崩壊。

2. 物質の結晶構造が変わった

例) 一定質量の黒鉛が全てダイアモンドに変わった場合、体積は凡そ64%に減少する。

3. 物質の構造が変わった

例)内部に含まれる空気も材質の一部と考えると、スポンジや膨らんだ風船の様な構造になった場合、物質の密度は低下する。


まあ、こんなところが一般的だろうな。

もっとも、どれもアダマス鉱の膨張の原理を完全に説明し得る物ではないが」



「へ? そうなんですか?

なんか聞いてると、どれもけっこう上手くいきそうなんですけど」



「……まあ、あれだ。一つづつ検証してみよう。

先ず1. の可能性だが、これは殆ど例外だな。原子の種類が変わるには核融合か核崩壊が起きなくてはならないが、そんな現象が日常生活でホイホイ起こるのは、先の魔力変換理論と同レベルに非現実的だ。

一方、仮にアダマス鉱の体積の変化が化学反応によるものだったとした場合、あの世界にはアダマス鉱と反応可能な原子が大気中に溢れかえっていて、尚且つそれがアダマス鉱の内部にまで自在に浸透しなくてはならない。その上、アダマス鉱の体積増大の仕方は、常識的な金属の化学反応による体積増加と比べると明らかに異常だ。よって、あの現象は化学反応ではおそらく無い」



「えーと、はい。

確かに、鉄棒が錆びたからって槍が生えたりとかしませんもんね?」



「そういう事だ。

さて、それでは2. の可能性だが。まあオレには、この中ではこれが最も有望な仮説に思える。だが残念ながらこれも却下だ。何しろアダマス鉱は、先も述べた通りに膨張率の変化が大き過ぎる。ダイアモンドの例ですら、それが全て黒鉛になったとしても2倍にも膨張しないのだぞ? 結晶構造の変化だけで体積が4倍にも5倍にもなるなんていうのは、最早物質として無理がある」



「なるほどなるほど。

というコトは、つまり3. が正しいってコトですか? 膨張したアダマス鉱の中は、けっこうスポンジっぽい形になってて、なんか空気みたいなのが沢山入ってるってコトなんですか?」



「……じゃあ聞くが。あの強固なアダマス鉱に対して、何をどうすればそんなに都合良く空気を入れられるんだ?」



「へ……?」



「確かにアダマス鉱の構造が変化してスポンジ状になるのであれば、密度は下がった上に体積も増えるだろう。だがそもそもの前提として、アダマス鉱は恐ろしい程に硬く、そして強い金属なんだ。レーザー光線でも使えば穴くらいは開けられるかもしれないが、それでも内部構造までスポンジ状に加工なんていうのは、矢張りあの金属に対しては難しい。原理が上手く説明出来ない以上これも却下だ」



「だ、ダメじゃないですか!!

教授が言った可能性、結局教授が全滅させちゃいましたよ!?」



「安心しろ。

例の如く、我々は1つ重要な前提を見逃している。

何かはもう言うまでも無いな?」



「……魔力、ですか?」



「その通り。

この難物のアダマス鉱膨張への関与を考えない事には、我々は真の意味で原理を考証した事にはならないだろう。よって、ここではあえて、オレはこいつを使った第四の仮説を提唱したいと思う」



「お、お手柔らかにお願いします~……」



「――結構。

さて。時に唐突ではあるが、君は元素周期表という物を見た事があるか?」



「あ、はい。一応。

確か、化学の教科書に載ってるアレですよね?

水兵のリーベさんが、ボクのお舟をどうのこうのって覚えるアレですよね?」



「……丸暗記の必要性には疑問を感じるが、まあそれだ。さて、しかしここでは各原子の名前や性質では無く、原子半径の規則性に注目して欲しい」



「原子半径っていうと――、原子の大きさ、ですよね?

あれ? それって、普通に番号が大きくなる程大きくなるんじゃないんですか?」



「そう思うだろう?

だが、実はそうシンプルでは無いのだ。

確かに原子半径は、原子番号が大きくなる程に大きくなる傾向はある。まあ、原子を構成する殻の数が増えるのだから当然だろう。しかし不思議な事に、同じ周期同士の原子を比較すると、原子番号が大きいほどにその半径は小さくなるのだ」



「……へ?

臭気がどうしたんですか?」



「……周期表の横列に振られている番号の事だ。

まあここでは、電子が存在出来る場所には陸上競技のトラックみたいに何層かのレーンがあって、周期はその原子が持ってる一般的なレーンの数だとでも思っていてくれ。

つまりだな、原子番号が大きい程原子半径が長くなる傾向はあるが、同列の横に並んでいる原子同士を比べると、番号が大きくなるほどその原子半径は小さくなるという事だ」



「うぅ……。ちょっと混乱してきちゃいましたよ~。つまり、縦に見ると番号が大きい程原子も大きいけど、横に見ると番号が大きい程原子が小さいってコト……、ですよね?

――それで、教授。結局そのお話が、アダマス鉱の膨張とどう関係するんですか~?」



「どう関係するもなにも、もう殆ど結論だぞ?

いいか。イオンでない原子を考えた場合、原子番号と電子の数は一致する。だから、原子番号が大きくなる程、原子核を周る電子の数も増えて原子半径も大きくなる傾向がある。

じゃあ同じ周期同士を比べた場合、原子番号が大きくなる程に原子半径が小さくなるのは何故だと思う?」



「そ、それは……。

き、きっと、誰かが押してるんです!!

誰かがギュッと押して、固めてるから、そこだけちょっとおかしくなってるんです!!」



「……半分正解なのが腹立たしいな。

それではその誰かが誰なのかを教えてやろう。

ズバリ、陽子だ」



「へ? 陽子(ようこ)さん?

ホントに誰ですか? ソレ」



「……君は本当に理系学生か」



「……スミマセン、冗談です。

ちょこっと悪ふざけしてみちゃいました。

えーと、原子核の中のプラスの粒ですよね?」



「……分かっているようで安心した。

もう少しだけ掘り下げると、陽子とは中性子と共に原子核を作っているハドロンであり、電子の負電荷と同等の絶対値の正電荷を持つ、原子番号を決定する存在である。


さて。ここまで言えばもう分かっただろう。

陽子が持つのは正電荷(・・・)だ。

つまり負電荷を持つ電子とは電気的に引き合う。

そして原子中の陽子の数は、その原子の原子番号に一致する」



「えーと、陽子がプラスの電気を持ってて、電子がマイナスの電子を持ってるから引き合って、陽子の数は原子番号が大きくなる程増えるから――あっ!!」



「そういう事だ。

原子は、原子番号が大きくなる程に原子核が持つ正電荷も大きくなり、結果として電子を引き付ける力も強くなる。よって同一周期中では、原子番号が大きくなる程原子半径は小さくなるのだ」



「な、なるほど~。

なんか、ようやくちょっとは分かった気がします。


……あれ? でも教授。それで結局、それと例の膨張とどこが関係するんですか?」



「分からんか? 今オレは、原子核と電子が引き合う力が強い程、原子半径は小さくなると言ったんだぞ?

つまりだな、仮に陽子の数が同じ原子AとBがあったとしても、何らかの理由によってAの電子・陽子間の力がBのソレよりも大きくなった場合、Aの原子半径はBよりも小さくなる可能性があると言ったんだ」



「へ? でも引き合う力の強さって、陽子とか電子で決まってるんですよね? 確か、陽子の電荷は全部一定だって、何かで読んだ様な気がします。陽子の数が同じなのに、引き合う力が違うなんて、そんな魔法みたいなコトが……て、もしかして教授!!」



「そう。この世界には魔法があるのだ。

この際、遠慮無く使わせて貰おうじゃないか。


例えば今回のケースだと、魔力には電磁気力を強める作用があると考えてはどうだ?

アダマス鉱がどんな組成を持っているのかは知らないが、それでも魔力によって各原子内部の電磁気力が強まれば、やはり原子半径も小さくなってアダマス鉱の密度は上がるはずだ。その逆で、アダマス鉱に蓄えられている魔力が解放されれば、それまで原子内の電磁気力を強めていたブースターが無くなり、原子半径は増大してアダマス鉱は膨張するだろう。

――ここが1つ重要な点なのだが、一般的に物質とは、構造が同じなら密に詰まった物の方が強い。例えば炭素とケイ素、そしてその化合物の結晶を比べると、その原子間距離は一般にC<SiC<Siであり、硬度はこの順で低下する。これは先の定義を裏付ける資料と考えていいだろうし、つまりはアダマス鉱でも同様だろう」




「なるほど~。

確かに砂遊びとかしてても、フカフカな砂場よりもギュウギュウに固めた校庭の方が硬いですもんね」



「少々乱暴な例えだが、まあそういう事だな。

何にせよ、これならば物質として不可解にすぎるアダマス鉱の膨張率にもある程度の説明を付けるコトが出来るし、そして何よりも前回の講義の内容に矛盾しない。

前回の講義の結論として、我々は魔力を第五のゲージ粒子である霊子によって媒介される力であるとし、重力子というゲージ粒子のやり取りを阻害する力があるとした。今回はこれの逆で、魔力が光子のやり取りを補助したと考えるのだ。これによって前回仮定した霊子(ファントモン)の性質も拡張し、魔力の性質を一歩汎用的に定義し直せる」



「えーと、それじゃあ、今回の結論は……」



「うむ」



“魔力とは力を変化させる力である。霊子はゲージ粒子のやり取りを阻害、または促進する事によって物理現象に変化を生む性質を持つと考えられる。魔導科学においては、その中でも特に人為的に起こされた現象を魔術、または魔法と定義する。

アダマス鉱がその密度を変動させる現象おいては、魔力は電子・陽子間の光子の交換に作用する事でアダマス鉱原子の原子半径に影響を与え、これを膨張ないし収縮させる働きをしている考えられる。この際、原子半径が大きくなる程にアダマス鉱の密度は下がり、強度や硬度は低下する”



「まあ、こんなところだろうな。

この仮説が正しいとするのならば、体積の変動現象はアダマス鉱のみに留まらない可能性も高い。魔力とその他の力との関係性は、再び何らかの形で考証する必要がありそうだな」



「あぅ~……。

魔力の変換だったら一言で済んだのにぃ~……」



――――-



「はい!! それでは、本日のアイアイ★こらむはここまでです!! ムダに蛇足な電波文にここまで付き合ってくれた方、本当にありがとうございました!!」



「……漸く帰れるのか。

まあ第一回の混沌度を知っている人間なら、二度は足を踏み入れたく無いと感じる程の魔窟だからな。まともに読み込む物好きもいないだろうし、多少カオスでも文句は言われ……って待て。何故そんな、まるで獲物を頬袋に詰め込む直前のハムスターの様な目でオレを見る?」



「甘いですよ~、教授~。

このくらいで帰ろうなんて、ハチミツ漬けにした上生クリームとチョコをトッピングしたどら焼きくらいに激甘です!!」



「……それは確かに甘そうだな。

って、オレはまだ帰れないのか!?」



「はい、そうなんです!!

今回は色々事情が有りまして、そんなワケでもうちょっとだけお付き合い下さい!!」



「……これだけ好き勝手やらかした挙句、まだ読者を付き合わせるのか? 好い加減キレられてもおかしく無いぞ? ただでさえ寂しいコメント欄が、今度こそ本当に炎上するぞ?」



「あぅ。それを言われるとイタイですけど……。

で、でもとにかく、急ぎの事情がありますので、もう少々ご辛抱下さい!! 皆さん、分かっていただけますよね? ね!?」



「(分からないと言っても続けるんだろうな)

……サッサとしてくれ」



「はい!! ありがとうございます!!

えーと、その、問題になってるのはあの世界の地図なんですよ~。アルちゃんも言ってましたけど、その、あの世界の国境には虹の橋(ビフレスト)なんてシステムがあって、ちょっと作者の文章力じゃ説明不可能な感じになっちゃってるんです。それぞれの国の位置関係とかも結構重要だったりしますし、この辺りで整理しとかないと、ちょっとお話が混沌としそうなんです……」



「……既に十分混沌としてるだろう。

まあ、解決策があるならそれに越した事はないと思うが……。

でも残念だな。生憎とあの世界の地理には、オレもあまり詳しくは無い。そんな事なら、オレじゃなくて適当なあっちの世界の住人でも……」



「あ、それもそうですよね?

それじゃ、召喚しちゃいましょうか。

アルちゃんどうぞ!!」


――ボンッ!!


「……ナニ、ここ」



「新たなる犠牲者が……」



「はいはい!! 呆然としてないでテンション上げて下さいよ!! ここは何でもありな異界の楽屋なんですから!!

えーと。それじゃ、アルちゃん。

早速ですけど、あの世界の地理とか地形とか、結局どんな感じになってるんでしょうか?」



「……シン。

とりあえず、ココが何なのか説明してくれない?」



「……悪夢の理想郷だ。

帰りたければ、あの暴虐ハムスターに大人しく従ってくれ」



「はぁ……。面倒くさいな~……」



「や、やめて下さい!!

そんな、酢豚のパイナップルを見る様な目で見ないでくださ~い!!」



「……なんでもいいけどさ。

えーと、それでなんだっけ?

あたし達の世界の地図が知りたいの?

アレ、説明するのホントにキツいんだけど」



「はい。ぶっちゃけわたしもそう思ってました。

作者さん、合宿中に何人かに説明文を見せてみたらしいんですけど、誰一人文章だけじゃ分かってくれなくて膝抱えてました。ハッキリ言って、 朝マガ始まって以来の大ピンチです。

……と、いうワケで。相方に相談してみたところ、なんか挿絵とか使えるっぽいというお話を聞けたので、ちょこっと頼んでみたんですよ~。

そしたら、こんなの送ってきやがりました」



挿絵(By みてみん)



「……なんだコレ?」



「はい!! 現時点までに判明してる召喚主さん、及び守護魔さんの位置関係まで一目で分かる親切仕様!!

朝マガ世界のワールドマップです!!

って、相方は言ってたんですけど……」



「……分かりにくい事この上ないな。

縮尺やら気候やら植生やら、そもそも主要な街の立地も載ってない。

何が一体どうなってるんだ?」



「……というか、シン。まさかと思うけどさ。

あんたっぽい染みの隣にある、あの目つきが悪いのって、もしかしてあたし?」



「そ、そうなんですよーっ!!

ホント、聞いくださいっ!!

なんかムダにボコボコしてたり、砂漠とか川とか海とかちょくちょく入ってますし、国境とか国の広さとかマチマチですし、書いてる内に矛盾とかしたらどうしてくれるんですか~っ!!」



「待て待て待て待て!! ちょっと落ち着け!!

今日の君は、脳内にもう一つの人格を飼ってるとしか思えないぞ!?

一度お祓いにでも行ってこい!!」



「し、仕方ないじゃないですか~っ!!

だ、だって、ちょっとリンク先のサイト覗いてみたら、相方がモノスゴク勝手なコトしでかしてやがったんですよ? 一言の相談も無かったんですよ!? わたしだってたまには怒りますよ~っ!!


……って感じでメールしたら、その10分後、今度はこんな絵がUPされてました」



挿絵(By みてみん)




「……身も蓋もないな」



「……ねえ、シン。

このコ、さっきからナニ話してるの?」



「異世界言語だ。

あまり気にしないのが正解だろう」



「だ、だからそんな目で見ないで下さい!!

せめてキャラ○ルコーンのピーナッツを見る目にしてくださ~いっ!!

……そ、それでアルちゃん!!

結局、この世界ってどんな感じなんでしょうか!?」



「(……大丈夫なの? これ)

えーと、一応気候から簡単に説明すると、赤道が通ってるのがこの大陸の真ん中くらい。丁度、銀の国と武の国の国境から、天の国の北部を掠める所かな。そこから外れるごとに一気に気温は下がっていって、最北の氷の国と最南の死の国はもう殆ど極寒地帯ってわけ。

まあ最も、死の国は緯度とか地形の関係で、氷の国程ツンドラってわけじゃなさそうだけど」



「ちょっと待て。

赤道が通ってるのが大陸の真ん中だと?

その上大陸の北端と南端は寒帯に入るって、この大陸はどれだけ大きいんだ?

北アメリカ+南アメリカくらいの上下幅があるって、殆どパンゲア状態だぞ」



「そんなに大きい?

一応“魔犬(ガルム)”とか使うと、隣の国まで1日もかからないって話だし、そもそもあたし達の大陸、他の世界のに比べるとやたら小さいって言われるんだけど」



「は? それはどういう……、

――ああ、成る程。そういう事か」



「へ? どういうコトですか?」



「つまりあの世界は、星そのものが地球よりも遥かに小さいという事だろう。星の表面は地球に比べて遥かに急なカーブを描くから、当然そこまで巨大な大陸で無くとも全ての気候帯を内包する事は可能となる。

まあ。地球より小さいのに重力の差異を殆ど感じない原因が、果たしてあの星の重さ故なのか、或いは重力その物が我々の宇宙よりも強いのか、というのは気になる所ではあるが……」



「ほへー、なるほど~。

アルちゃん、そうなんですか?」



「……続けるね?

この地図で、取り分け重要なのが虹の橋(ビフレスト)

多分後で詳しく説明する事になるとは思うけど……、下の図を見てくれる?

この世界の国境は、通行出来るのはその虹色の部分だけなの」



「そうなのか?

なんか、上の図を見てるとどこでも通れそうなんだが……」



「通ろうと思えば、なんとか通れる所はあると思う。

でもそれは条約違反。虹の橋は“橋の番人(ヘイムダル)”って連中が管理してて、違反者とその国には重大な罰則が加えられる事になってるの。まあ、その辺りは後々詳しくって感じかな。

とりあえず、今は各国の位置と虹の橋の場所だけ分かってればいいんじゃない?」



「結局はそれも後で、か。

じゃあ下の図だけで良かったな。

上の図も、そもそも君を喚ぶ必要すらも無かったぞ?」



「好きで喚ばれたワケじゃないわよ!!

ていうか上の絵って、あんなの思い出したくもないってのよ!!」



「そうか? そうやって目を吊り上げてる所なんかそっくりだと……ヘブッ!?」



「ダレの!! どの目が!! 吊り上がってるって!!

いうのよっ!?」



「待ぺっ!? ちょっガッ!! 何故オ……ぶっ!?

殴ブの……止ぐはっ!!」



「…………。


……えーと、皆さん。

教授とアルちゃんがケンカを始めちゃいましたので、そろそろ戻してあげようかなって思います。


ここで広告!!

召喚編が漸く終り、次回からはいよいよ激闘の第二章突入です!! ドS陛下とかホームレス国王とか出て来ましたし、犬耳少年はいい感じにイジメられてましたし、バトロワムード更に加熱でゴーゴーです!! さあ、我らが教授は一体どうやって生き延びるのか!? こうご期待です!!」



「おい!! その前に助け……

待て待て待て待て!!

その関節はマジでヤバ……(ゴキッ)」

えーと、なんだか相方が余計なコトをしてくれてやがったみたいです。

具体的に言うと、リンク先のページで朝マガのキャラ絵(もどき)を産出してやがりました。下手とまでは言いませんけど……、ぶっちゃけ突っ込みどころ満載というか、アルちゃん髪の色違うというか、キャラのイメージが絵で決まっちゃうのがイヤなんですよー!! 皆さん、小説書いたコトがあるなら、ここら辺のビミョーな気持ち、わかりますよね? はい。アルちゃんじゃないですけど、マジで一発殴りたくなっちゃいました。


次回から第二章ですけど、そろそろ夏休みも終わっちゃうんで、ちょっぴり更新ペースが落ちるかもです。大体の大枠が固まったら続きを投下しますんで、これからも見捨てないでちょくちょくのぞいて戴けるとうれしいです。

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