二人暮らしはドキドキ−4−
ゆうかに出会ったのが初夏の頃で、それから二ヶ月。
もう夏だ。
高校生的にはもうすぐ待ちに待った夏休み。今年の夏はゆうかと一緒だから今からすごく楽しみだったりする。
しかも、今朝の出来事で横たわっていた問題も解消しそうな気がするしな。
だが、休み前の俺たちには一つの重大な試練が待ち構えている。
それはなにかというと……まあ、いわゆる定期考査なわけだが、そんでもって今日はその初日だったりするんだな、これが。
ここで遅刻しようもんならかなりやばい事になる。夏休みに追試なんて涙モンだろ?
だから俺たちは急いで朝の準備をして家を出た。しっかり朝食を食べ損ねたんだけど。
「ほんとにごめん、ゆうか」
「え、いえ、わたしこそ……」
通学路を二人で急ぎながら俺たちは互いに謝っていた。
「起こしに来てもらったのに、こんなに遅くなっちまって……」
「あ、でも、裕人さんお疲れのようだったから……」
確かに寝不足で今朝は起きれなかったんだが、それも昨日の一夜漬けの試験勉強のせいなわけで……我ながら情けない。
これでも普段はちゃんと一人で起きれるんだ。(まあ、一人暮らしが長いからな)
だから珍しく起きてこない俺を心配してゆうかは見に来てくれたわけだが、それがこの朝のあれやこれやの発端になったわけで……
「あの時、俺が寝ぼけてゆうかを引っ張ったのが悪かったんだよな……」
「いえ、あの、それは……大丈夫です」
ゆうかがパタパタと手を振って否定する。
「むしろわたしも……嬉しかったですし」
そう言ってからゆうかがはっとしたように目を見開いた。たちまち頬が赤く染まる。
「え? あ? ……そ、そうか?」
なにを確認してるんだろうね、俺は!
でも、ゆうかが俺の言葉に小さく頷くのを見て心臓が勝手に歓声を挙げた。こ、こら、静まれ!
「あー、それはともかく、せっかく作ってくれた朝飯も食べられなかったし、ほんと、わるい」
「冷蔵庫に入れてきましたから、夜にでも一緒に食べましょう」
「う、うん。わかった」
見つめる先でゆうかがまだ赤い顔で微笑んだ。
また胸がドキドキしてくる。頬が熱くなる。さっき触れ合ったゆうかの柔らかさが脳裏に蘇ってくる。
朝からあんなことしちまうなんて、ほんとに恥ずかしい。
でも、さっきのゆうかの言葉。ゆうかも待っていてくれたんだとしたら……これからはもっと自然に接すればいいのかな?
「行きましょうか?」
「ああ」
ゆうかがすっと俺の手を取った。二人の手が繋がる。
もう俺たちは固まったりしなかった。
それでも、俺はあいかわらずドキドキしながらゆうかとともに歩き出した。
「じゃあ、裕人さん、テスト頑張ってくださいね」
「あ、ああ……」
学校の昇降口で、俺に向かって小さくガッツボーズをしてから教室に向かうゆうかを半ば無意識に見とれながら見送った。か、かわいい……
ていうか、俺もちゃんとゆうかに頑張れとか声をかけたほうがいいんじゃないのか? 定期考査なんてゆうかにとっては初めての経験だもんな。
と後ろ姿を見ながら一瞬思ったが、天上の女神たるゆうかに、たいていのことはわからんはずがないなと思い至ってやめた。
それに比べて俺のほうはごく普通の高校生(ちょっとだけ昔の記憶も思い出しつつあるんだが)いつも成績は中の下。どうせ今回も一夜漬けだし……結構やばいかも知れないな。
「おっ! 矢上っちも今登校?」
「うわ!」
急に試験が不安になったところでいきなり声を掛けられて飛び上がりそうになった。
ったく。誰だよ!
振り返ると悪友の桜井がいつもの脳天気な顔で立っていた。
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