あらしの別れ−3−
火が飛んでいるような気がした。
三方から一斉に迫ってくる。ねらいは明らかに俺。
蒼井さんが俺の前で剣を構える。
一羽が突然火を噴いた。俺は身構える。蒼井さんが振るった剣は炎を吹き飛ばしている。
時間差をつけて反対側からもう一羽が火を噴く。剣が翻ってそれも弾けるように消える。
その隙に三羽目が俺に飛びかかってきた。蒼井さんの剣がその鈎づめを持った足をくい止める。
俺は、なんとか彼女の動きに合わせて、体を回り込ませていた。
だが、彼女の動きが早すぎてついていけない。
思わず少し離れたところで、目の前に怪鳥の爪があった。
うわあ!やばい。
とっさに腕を出してかばう。その時、右の手のひらが熱くなって、光った気がした。
あれっと思うより早く、目の前に人の影。俺は、それがゆうかだと直感した。
あぶない!
反射的に手で彼女を押しのけようとする。彼女をつかんだ俺の右手が発光した。その光が彼女の周りの光と融合する。手のひらが少し熱い。
あれ?前にも似たようなことがあったっけ?
頭の片隅に浮かんだ疑問はすぐ忘れる。
ゆうかの肩越しに、襲ってきた怪鳥が空中に固定されたように浮かんでいた。羽ばたきもしていない。
「おかえり」
ゆうかがそれだけを言った。
空気をふるわすような甲高い鳴き声。目の前で、煙が消えるように怪鳥が消えていった。
ゆうかがゆっくり振り返る。こんな時だというのに優しそうな笑顔。俺も落ち着く。
「裕人さん。今、あなたは……」
言いかけて、はっとした表情。
え?と思ったときには、ゆうかに突き飛ばされていた。
瞬間、目を開けられないほどのまぶしい光。
しりもちを付きながらゆうかの方をかろうじて見ると、光の中でゆうかが、透明な球体の中にいた。
「お姉さん!」
初めて聞く蒼井さんの悲鳴。
俺は、とっさにその声の方を振り返った。
彼女の剣が一閃していた。爪を見せて迫っていた怪鳥が両断され、消えていった。
すっとまぶしかった光が弱まった。
俺が振り返ったとき、球体はもはや鈍く光るだけで、しかし、空中をすっと男の方に向けて遠ざかっていく。
俺は立ち上がって追おうとした。その時、猛烈な風が再び吹き付けた。
「ゆうか!」
彼女は心配そうに俺を見ている。傍らに蒼井さんがやってきた。
「あれは?」
「結界です。しかも信じられないほど強力な。ゆうかさんをこの世界のつながりから引き離してしまうぐらいに……」
蒼井さんの深刻な顔に、改めて不安が拡がる。
「どうしたらいい?」
彼女が苦しそうに首を振る。
そんな!だめなのか?そんなことあるか!
どうしたら、ゆうかを取り戻せる?どうしたら助けられる?
その時、勝ち誇ったような男の声が聞こえた。
「はっはっは。こちらにも手はあると忠告したはず。我々とて総力を上げればこのようなこともできるのだ。姫よ、すでにあなたの守りもなく、従う者もただ一人。いかに武勇の娘とはいえ、あなたの想い人を守り通せますかな?」
男は、風の中で不自由に飛んでいた怪鳥を呼び寄せると、瞬く間に消し去り、再び両手を合わした。
さっきと同じだ。
男の手から今度は一つの影が飛んだ。
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