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  月の少年 作者:叶愛夢
第三話


月夜くんに出会ってから、七日の月日が流れた。

そして、裕次郎さんが居なくなって五日経った。

裕次郎さんに会えないのはすごくすごく淋しい。


でも、今は月夜くんが居るから淋しさが和らいだ。


「ねぇ、いつも何曲を弾いてるの?」

今夜も月明かり照らす海で月夜くんと過ごすつかの間の時間。あたしは階段に座ってその光景を見つめていた。
海を背にしてヴァイオリンを奏でる月夜くん。
透き通った音色は、心を揺さ振る様に胸を打つ。


「……この曲?」


一曲弾き終えた月夜くんはヴァイオリンを下ろしあたしに目を向けた。

「うん、すごく綺麗なんだけど切なくて、悲しい曲だよね?」

でも、悲しけど、どこか優しくて……まるで、波の音みたい。

「別れの曲……」

「えっ?」
ポツリと呟く月夜くんにあたしは、首を傾げた。


「ショパンの別れの曲だよ……」
月夜くんはそう言ってまたヴァイオリンを構え、弓を滑らせた。



響き渡る音色は月の光りを浴びてキラキラ輝いてる様……。

別れの曲。なんか波の音みたいに寄せては返るメロディ。なぜか、懐かしく感じる。

「……泣いてるの?」

演奏が終わって、沈黙が辺りを包む。

「えっ……? あ、ゴメン……」

自然と零れた涙は月夜くんに言われて気付いた。


「ありがとう。この曲は僕にとって、大切なんだ……」

月夜くんはしゃがんであたしの涙を指で拭ってくれた。

それが、すっごく恥ずかしくて、顔に火が付いたみたいに熱い。

「……あ、あの! 自分でできるから……」

きっと顔が真っ赤だ。あたし。月夜くんに触れられた所が熱い。


ねぇ、この気持ちってやっぱり……。


でも、あたしの考えが間違えじゃなければ月夜くんは……。

辿り着いた答えにあたしは俯いていると、月夜くんの優しい声が降ってきた。

「……実は、今日で最後なんだ。君と会えるの……」
「えっ?」


突然の告白に戸惑いを隠せないあたし。一気に身体の熱が下がった。


「……ウソ……な、なんで?」
裕次郎さんも居なくなって、次は月夜くん? ヤダ……。もう一人になるのヤダ
「うまく説明できないけど……行かなきゃいけない所があって……」

「…………て」

月夜くんに抱きついてあたしは泣きじゃくりながら呟いた。


「あたしも一緒に連れていって……前、言ってたじゃない! 月夜くん、“僕と一緒に行かないか?”って……あたし、全然構わないよ! 一緒に行きたい、お願い、連れていって」

ヒステリックに泣き叫ぶあたし。そんなあたしの肩をゆっくり押して月夜くんはニコッと笑った。


「最初は、そう思った。一人で行くのが怖いから、同じ痛みを持っている優季を連れていこうかと……」


そう言って、言葉を切った。海の音が沈黙を和らげてくれた。けど、あたしの瞳からはとめどなく涙が溢れてくる。


「けど、優季と一緒に過ごしていくうちに優季が好きになった。表情がくるくる変わる素直で優しい君が好きになった……。だから、連れて行かない」 

きっぱり言い切った月夜くんの表情はすごく優しくて……。でも、瞳に涙が溢れてて……。

「意味が分からないよ! あたし、あたしだって月夜くんが好き! もっと一緒に居たいよ……あたしの事が好きなら連れていってよ……」
月夜くんの胸にしがみついて泣き喚いた。

「ありがとう。けど、優季ならちゃんと幸せ掴めるから。諦めないで生きて欲しい。今が辛くても……」


そう言って、月夜くんはあたしの前髪をあげて、おでこにキスをしてくれた。


「僕なんかを好きになってくれてありがとう、優季。君に会えて本当によかった……また、必ず会いに来るから……」

それ涙のせいで月夜くんが滲んで見える。そして、少しずつ霞んでゆく。

「待ってる……月夜くんにまた会えるのずっと待ってる。生きる諦めないで……」
そう告げると月夜くんはニコッと微笑んで、スゥーっと消えていった。



高校初めての夏休み。あたしは初めて恋をした。
好きになった相手は幽霊だったけど……。誰よりもあったかい心を持った人だった。

ありがとう、月夜くん。

君は、まるで月の様でした。
優しくて、綺麗で……。


会いたくなったら空を見るね? だから、空からあたしを見ていてね……

月を映す海はキラキラ輝いて……

寄せては返る水音が静かに響いていた。



Fin
……まず、謝らせて下さい。締め切り守れず、ゴメンなさい。文字数、守れずゴメンなさい。……と、まあ今回の企画小説、色々と守れていません。それでも、読んで下さりありがとうございます(≧▼≦)今回、クラシックを使わせていただきました。クラシック大好きです。別れの曲は私の大好きな曲のひとつです。執筆中ずっと聞いていました。長くなってしまいましたが最後までお付き合い下さりありがとうございました(^-^)
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