私は今日、旅に出る。
彼に今日中に町を出ると言われ、私は家族に、最後の別れを言いに来た。
2度とここに戻って来れないかもしれない。
でも、私は彼と一緒に旅に出る。
夕方色に染まる空はいつもよりとても愛しい。
いつも通り、お母さんに頼まれた仕事、洗濯物を取り入れ、そして私の部屋で寝ている弟、陸を見る。
「あれ、あっきー。どうしたの?」
あきっーとは陸が私を呼ぶ時の名前だ。
私の名前は難しいから、そう呼ぶようにしたのだ。
私は陸を抱きしめて、ひたすらポカンとする陸の頭を撫でた。
「久しぶりだね。こうやって抱っこするの。」
生意気ですぐ調子に乗る陸。
いつも喧嘩してばかりだった。いい歳して止めなさい、ってお母さんに何度も言われた。
私は泣きそうになったけど、何とか堪える。
「じゃあね。」
最後にそう言って弟を放すと今度は妹の初の所へ向かった。
初は中学生の癖に小生意気で、私よりも何というか・・・ギャルっけが入っている。
大人の言うことなんか聞かないし、自分の道を歩いている子だった。
私は密かに羨んでいたけれど。
「初。」
「あ、何?今忙しいんだけど。」
一生懸命洗面台の鏡の前で髪を直している初。
「どこ行くの?」
「渋谷。友達とね!お土産にお姉ちゃんの好きなチーズケーキ買ってきてあげるし。」
私の好きなチーズケーキを買って来るのはいつものことだった。
普段は私のことをお姉としか呼ばないのに、今は昔のようにお姉ちゃんと呼んでくれた。
「そっか。楽しんで来て。じゃあね。」
「んー。」
お母さんとお父さんは仕事。
会えないことがとても悔やまれる。
私は手紙に想いを綴ることにした。
お母さんは厳しくていつも優しかった。必ず私達のことを考えてくれる、私が世界で1番尊敬する人。お父さんははっきり言うと変な人。冗談は十八番で、いつも頑張りやだった。
「お婆ちゃん。」
私のお婆ちゃんは痴呆が始まっているらしく、私の事を近所に住む娘としか思っていない。
それでも私はお婆ちゃんに最後の別れの言葉を捧げる。
「お婆ちゃん。私・・・明日からいなくなるよ。」
「今日は良い天気だねぇ。」
今日は曇りである。
「ばいばい。」
私はそう言うと今度は部屋に戻り、携帯を触った。私の相棒。
彼との旅にも持って行く予定である。でもその前にメモリに入っているアドレスを全て消さなければ。
私は友達1人ひとりに丁寧に最後のメールを送信する。
中学校時代の親友の心、美紀、真由。
高校の親友の秋帆、可奈、静華。
親しかった先生。
そして全てのアドレスを消去し終わると、こっそりと詰めるだけの荷物を鞄に入れる。
最後に私が拾ってきた仔猫のミミコがじっと私を大きな目で見つめていた。
じっと私を見て口をあけると、かすかににゃあ、と鳴いた。
私はたっぷりとミミコにおやつを残して家を出た。
「さよなら・・・私の育ったお家。」
そう言って私は彼の所へ向かう。
彼は空き地にいた。初めて私が彼と出会った思い出の場所である。
「行くぞ。」
「うん。」
彼は私にそう言葉を投げかけると夕日の中に溶け込んだ。
私も溶け込む前に、最後、私の大切な町を振り返ると、夕日に溶けた。
これから私達はある奴の所へ向かう。
そう、あいつを倒すために!
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