FILE.7大阪という場所
プルルルル
志保の携帯電話の通常着信音が、午後10時に鳴り響いた。
電話番号の羅列を見てみると、一人の人間につながる。
工藤新一━・・・。
バカだと思う。
もう自分に電話なんて、かけてくる分けないのだ。
そう志保は自分に言い聞かせた。
服部君に電話番号を渡した自分が、記憶によみがえる。
服部君が番号を教えたことくらいすぐにわかった。
無視してやり過ごそうとしたが、一向に着信音はなり続ける。
おい、逃げるなよ志保・・・。いつまで逃げているつもりだ・・・。
工藤君の声がした・・・気がした。
そう読み取るとゆっくりと志保は息をはいた。
乱暴に会話ボタンを押し、もしもしというと彼の声が聞こえた。
「よう志保!」
想像していたよりずっと弾んだ声だった。
怒るというよりあきれてしまった。
「あら・・東の高校生探偵さんもずいぶんと暇になったものね。それとも何?また小さくなったから解毒剤でも請求してきたのかしら?」
「おめー相変わらずかわいくねーな・・・。」
灰原哀のときでも散々、言われ続けていた言葉だった。
あの時は笑いながらも痛い言葉だった。
あの時は。
もう彼の言葉など痛くない。
自分の彼への想いを、打ち切ったのだから。
「別にかわいくなくても結構よ?私にケチ付けに来たのなら今すぐ切るけど。」
「バーッ!!ちょっと待てよ!俺はお前に話があるんだ・・・。」
「・・・何?」
話と聞いて志保の心臓がドクンと波打つ。
バカね私・・。何言われてもかまわないはずじゃなかったかしら?
「なぁお前・・・。今大阪にいるんだよな?しかも友達もいないで・・・辛くないか?
言えよ・・・本当の事、もう組織は全滅したんだぜ?逃げる必要なんて・・・。」
下手な説明・・・。
静かに笑ってしまう。
「あら・・・逃げているつもりなんてないわよ?ただ大阪は便利だし、資料も結構楽に手に入るわ。医者の勉強にもってこいじゃない?」
「おめー医者になるつもりのか・・・?」
「ええそうよ。あなた言ったわよね?組織壊滅後・・・。『自分自身のやり方で罪を償っていけばいいんだ・・。法律ではおめーは犯罪者じゃねーからな』って・・・。
私は人々を助けるという形で罪を償って生きたいの。」
「そうか・・・。ま、志保の勝手だからな。でも悪いことしたな。ごめん・・・。」
志保は何に対して謝っているのかすぐに分かった。
組織壊滅後の志保の態度からして、新一は志保の想いにわずかに感づいていたのだ。
それをちゃんと伝えないで、蘭に告白してしまったから・・・。
彼女が痛く傷ついたのだと思ったのだろう。しばらく黙り込んだ。
「別に全然かまわないわよ?大阪に来たのは私の勝手だし・・・。」
わざとはぐらかした。
最後まで・・・彼には自分の想いがあったことを気づかれたくなかった。
「なぁお前さ、服部に会って言ったんだろ?逃げるなって・・・。服部だいぶ影響受けたみたいだぜ?お前の言葉に・・・。
おめーもさ・・・自分の勝手だと思うけど、東京に戻ったらどうだ?」
答えは簡単だった。
「戻るつもりは無いわ。」
そう、大阪に来て自分はずいぶん変わった。
19歳という年齢らしくある程度明るくなったし、何よりも接してくれた人々が親切にしてくれた。
関西の方言は最初はおかしいと思ったけど、聞いていくうちに温かみを感じるようになった。
私はこの都市が好き・・・。
知らぬ間にそう感じるようになったのだ。
「そうか・・・。ま、頑張れよ・・・応援してるからな。」
「あらありがとう。そっちこそ推理ばっかり熱中して彼女に心配かけさせないようにしなさいよ。」
そう言って返事を待たずに電話を切った。
そういえば服部君、和葉と仲直りできたのかしら?
それより・・・
服部君が、自分の和葉への想いに気づいたのかどうかが気になる。
まるで面倒をついつい見たくなってしまう、弟のような存在だ。
「くすっ」
考えてみておかしかった。
今度また、会ってみようかな。
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