FILE.5正午の東都カフェ
日曜日の昼。
私と園子は和葉ちゃんと
東都タワーのカフェで、待ち合わせしていた。
何のことかは分からないけど・・何か悩みがあるみたいだったな・・。
人ごみの中で、ひときわ目立ったポニーテールの女の子がいた。
「和葉ちゃーん!!」
大声で呼んでみる。
振り向いた和葉ちゃんは寂しげな笑顔をつくって言った。
「蘭ちゃんに園子ちゃん・・ごめんな。アタシの勝手で誘っちゃって・・」
突然、誤る和葉ちゃんを見て、私はとてもびっくりした。
え?どうして?
いつも明るく振る舞う和葉ちゃんとは・・少し
違っていた。
「う、ううん!全然いいよ。じゃああそこの席に座ろうか!」
園子がわざと明るい声を出して、近くの席を指差した。
私も一生懸命、椅子を引いたりして明るく振る舞う。
「せやね・・ハァ・・」
和葉ちゃんはため息混じりに答えていた。
一通り注文したあと、本題に入った。
「・・で?どうしたのよ和葉ちゃん!悩みがあるなら言ってよ!
友達なんだからさ♪」
園子が笑って聞いている。
人を元気にさせられるのが、園子の抜群の長所だった。
ちょっとうらやましいと思ってみたりする。
和葉ちゃんは紅茶を軽く口に付けながら、遠慮深くいい始めた。
「うっうん・・。アタシ、この頃平次の様子が変で、ちょっと気になってたんや。
それで聞いてみたんよ・・平次、今好きな人とかおる?って」
「ええー!!」
私と園子はいっせいに声を上げる。
あまりにも大きな声だったので、後ろにいた子連れの女の人が振り返った。
赤面して謝る。
「それでそれで?もしかして服部君は『そうや、お前のことが好きなんや』
とか言っちゃたの?」
顔が思わずほてってしまう。
いかにも園子らしい考えかただった。
和葉ちゃんはいかにもあわてた感じで、真っ赤になりながら反論した。
「そっそんなわけないやん!それで平次な、もちろん居るわけがないって・・
アタシに言うたんや。でも平次の顔は赤くなってて・・・。」
びっくりした。
驚いて聞き返してみる。
「あの服部君が・・?本当に顔が赤くなってたの?」
「うっうん・・。」
そう、和葉ちゃんは確かに、服部君の顔が赤くなっていたと言った。
怒っているわけでもない、興奮してるわけでもない・・
あの・・恋心の赤みだったと・・。
新一の顔の赤らみが、ふと頭の中によぎる。
「・・それでな、いるかと思ったらなんか悔しゅうて・・気づいたら逆上してたんや・・」
和葉ちゃんは俯いてそう言った。
私はうんうんと頷いてみる。
コーヒーを手にとって本音を呟いてみた。
「そっかぁ・・やっぱりいるかと思うと悔しいもんね・・。
私も一時的にそんな気持ちになったこと、あるなぁ・・。」
園子と和葉ちゃんが驚愕したように、私をじっと見てきた。
そう、それは本当だった。
新一が事件から帰ってきたあと・・
私に告白したあと・・
誰かを一生懸命に、探していたのを覚えている。
ただの人探し依頼では無いかのように・・
本当に一生懸命に・・
半年たっても、結局その人は見つからなかったようだった。
今はこうして、仲良くしているけどあの時はすごく、不安だった。
「どうしたの、蘭?」
園子がパフェを食べながら、心配そうに聞いてきた。
和葉ちゃんも心配そうに覗き込んでいる。
「ううん、何でもないよ!それで和葉ちゃん、その後どうなったの?」
和葉ちゃんはこくりとうなずいてから、椅子を座りなおして言った。
「もちろん・・ここまでアタシが悪いんや!勘違いかもしれへんし・・でも・・でも・」
息を大きく吸い込んでから、解き放つように和葉ちゃんは言葉を口にした。
「平次を探しに、町の方へ行って見たんや・・。そうしたら・・や
レストランの中に平次がおって、呼んであやまろかと思ったら、女の人も一緒にいたんねん!」
「・・・!」
「それで・・それでやその女の人がただの女の人やったら・・まだいいんや・・。
その人、赤みがかかった茶髪だったから、ハーフだと思うんよ。
すっごく美人で、なんか分からんけど・・泣いてたんや!!」
「ええー!!!」
思わずコーヒーカップを落っことしそうになった。
・・泣かせた・・泣かせた・・なっ何のためによ!!
思わず自分のことのように、激しく怒りともいえる感情が湧き起こる。
汗がにじみ出て、押さえきれない気がする。
落ち着け・・落ち着け・・
自分を自分で落ち着かせることが、どうにも難しい。
息を吸い込んでみた。
園子は、居ても立ってもいられないという感じで、その場から立ち上がった。
「はっ服部君、どういうつもりかしら?このままでいいわけないわ!」
「うっうん・・。そうやけど・・」
遠慮がちに園子を見上げる和葉ちゃんに向かって、手を肩にそえた。
「大丈夫だよ、和葉ちゃん。きっと服部君も和葉ちゃんと喧嘩して後悔してるって!
仲直りできるよ!服部君だって・・きっと・・きっと・・」
和葉ちゃんのことが好きなのかもしれないよ?
その一言を飲み込んだ.
きっと・・なんてただの予想に過ぎない。
絶対・・といえない限り、未来は変わっていかないのだ。
服部君が・・『絶対』和葉ちゃんのことが好きになるまで・・応援するから・・。
「きっと・・?」
「あ・・なっ何でもないよ!じゃあ、せっかく東都タワーに来たんだから景色でも見ようか!」
園子と和葉ちゃんの手を引っぱって、私は青い空が見える展望台へ向かった。
日曜日の青空の反対側には・・なぜか黒い雲が潜んでいた。 |