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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 1 今、そこにある危機

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stage 8 雑兵との戦い 目覚めた力は

「よし、これで瞬にも属性付与の効果が乗ることは判明したな!」
「意外な落とし穴もあったものね。武器用の魔法を盾にも使うだなんて」

 いや、この結果は瞬のユニークスキルあっての事だと思う。
 だがそれでも俺の中に一つだけ確かな考えが生まれた。
 ゲームの内部処理的な問題か、それとも魔法の効果の適用範囲が広かったからなのか。
 科学による恩恵か、幻想の恩恵かは分からないが、要は思考を狭めてはいけないという事だ。
 可能性を探る、REGAIN HEROESの本質はきっとそこにある。
 そもそも瞬は突然突拍子も無く妙なスキルも取得している。ゲームでのプレイはあくまで取得したスキルの訓練時間を短縮する目的なのだろうが、こうしてソウルフォームでの訓練や戦いは自由な発想を試し、己の中に新たな力を獲得する為の場であると認識すべき――

「って、思考をまとめてる間に、瞬が囲まれている!?」
「……戦いぶりを見ても決して雑兵に対して技量が劣っているわけではないのだけれど……対複数戦闘は大技なしには無理そうね、彼」
「冷静に分析してないで助けろよ!?」

 すまん、瞬。少しだけ自分の考えに浸っていた。今、助ける。

「敵兵は沢木さんの読み通り雷属性への耐性は低いですー!」
「サンキュ、和奈!」

 和奈の見立てもあるのなら間違いない。
 なら、もともと攻撃力の足りてない俺に必要な魔法はこれだ。

「ゲインストレングス!」

 本来は味方に与えるべき魔力を自身の内側に作用させ筋力を上昇させる。
 意識せずとも、悩まずとも、魔法の使い方と扱い方が分かる。知らなかったはずなのに、知っているかのようないつの間にか身についている知識と技術。
 これもREGAIN HEROESの恩恵の一つなんだろう。さも当然と言わんばかりに俺は習得した魔法を使いこなす――いや、この言い方は正しくない。
 強いて言えば各種マスタリースキルの効果でもあるのだろう。数値的な意味合いだけではなく、本当の意味での習熟度。争いとは無縁に生きてきた平々凡々なひ弱な自分に、真っ当に戦う為の力を無意識レベルで与える効果。
 REGAIN HEROESには実に多彩なスキルがあるが、その大半のスキルツリーの始点はマスタリースキルから始まっている。ゲーム的に考えれば当たり前のようにも思えたが、こうしてソウルフォームで当然のように剣を振ったり魔法を使えたりする事から分かる。あのマスタリースキルは各スキルの効果を引き上げるだけではなく、素人を本当に短時間で戦士に変える為に必要不可欠な要素だったのだと。
 扱えるからこそ仕組みが分かる。仕組みが分かればイメージ一つで身体が勝手に動く。
 身体が動けばこそ――相手の動きもまた読めるというもの。

「このっ!」

 迫る剣戟を的確に受け流し、こちらの間合いを外さない程度に距離を取る。
 動作は緩やかでも兵士の姿をしたモブの動きはきちんと訓練を受けた者のそれだ。
 素人が武器を振り回しているのとは訳が違う。かの尖兵が振るうのは殺しの術理。敵を切り伏せ、敵を打倒し、敵を仕留める為に生み出された武芸の技の一端。
 心身を高め、求道とも呼び現代になおも伝わる武芸や武道とはまた違うが、その修練の果てに道を見出す為に体系化された技術に通ずる根底は一緒。
 外敵に向けて振るわれる凶器を操る技術であるか、相手を倒すのではなく制す為の技術であるかの違いのみ。
 現代社会では目にすることすらないであろうそれを――俺は一目で看破している。
 相手の腕の動き、身体の捻り、足運び、様々な要素が攻撃を先読みさせている。相手の攻撃を予測させてくれている。
 だからこそ成立する防御。
 思考するよりも先に身体が知っている受け流しの技術で兵士の剣戟を逸らし、あまつさえがら空きの胴体に返す刃を逆に打ち付けるなどという反撃が可能なのだ!

 片手剣マスタリーのレベル2でも、一端の剣は振るえる。
 そして相手が本当に雑魚だからこそ、もっとも攻撃力の低い俺の剣戟でも通用する。それを証明するように、兵士の鎧の隙間から黒いものがまるで煙の様にモクモクと天へと昇っていくと、やがてガラガラと音を立てて散らばった。残るのは彼らが持ち、身につけていた装備のみ。
 それもやがて粒子状になって何処とも知れぬ場所へ飛んでいく。いや、正確には和奈の組織が管理する廃ホテルのストレージにだが。
 こちらの世界の物質を現実世界に変質させて持ち込む事も可能なのだが、それは組織運用上に必要な資源としての場合で、俺達の武器や防具に加工するのならばゲームの世界同様に廃ホテルにある施設の一つである工房で加工する必要があるという。
 和奈のように戦闘能力は無くとも、ソウルフォームで職人としての技を振るう専用の職人がいるそうで、細かな調整や装備の強化の方向性もゲーム同様に可能だという。
 ならば自身の強化の為にも敵はガンガン倒していかねばならない。主に経験値と装備と金の為に!

「って、あぶな! っと! こっちもか!」

 とは言うものの俺は現状もっとも中途半端スペックを誇るスペルナイト。
 カウンター気味の反撃による一撃を狙わなければろくに雑魚も倒せない攻撃力で、二体、三体と囲まれては対処できるはずが無かった。徐々に数に押され防戦一方になる俺。くそ、こんなところでまでRPGっぽくならなくてもいいだろうに!

「はああああっ!!」

 轟、と凄まじいまでの剣風と共に横薙ぎの一閃を放ち複数体の兵士をまとめて薙ぎ払っている高峰や、

「これでどうだぁ!」

 カイトシールドで盾スキルの「パワーチャージ」で相手を何体かまとめて硬直させる体当たりを行い、そこから大きく跳躍。
 空中でカイトシールドから身を隠すほどの大盾であるタワーシールドにに持ち替えると、重量に任せて急降下し周囲に衝撃波を撒き散らすほどの勢いで盾を叩きつける「ヘビースタンプ」に繋いでいる瞬。
 彼らのような広範囲や対複数に有効な攻撃スキルが俺には無い。数に押されがちなのは絶対的な攻撃力の不足なのは自覚しているのだ。
 よって、最初の訓練以降、俺は思考をしつつも周囲への反応に敏感になりやたらと回避と防御だけは向上している。身に迫る危険に敏感というか、少ないチャンスをものにする為に生存本能が研ぎ澄まされたというか。
 派手な活躍をしている二人に対して、俺のレベルアップはとにかく地味だ、地味だった。
 特に高峰の殲滅力は半端じゃない。両手で刀を振るっているが攻撃速度が俺と比べても段違いに速い。
 相手が斬りかかろうとする前に高峰が二度斬りつけられるくらいに差がある。というか実際に斬り捨てている。その蹂躪する様はまさしく女剣士の無双。範囲攻撃魔法いらないだろう、あれ。

『ふ、二人とも! 沢木さんに敵が集まって割とピンチですぅ! フォローしてあげてくださいぃ!』

 ああ、焦ったような和奈の声に申し訳なく思う。でも、大丈夫。多少の動揺はしたが、これくらいなら意外とどうにかなるんだよ。
 この辺はゲームでも似たような経験をしたからだろう。下手に焦らず、足を使って避ける、捌くに集中し、反撃する機会を厳選し下手に手を出さなければ、いくら囲まれていようともこの程度の雑兵相手から生き残る事は難しくは無い。
 そして打開する方法はいくつかある。
 高峰と瞬はそれぞれの相手にまだ若干手間取っている。数だけは多いからな、半端に救援に向かうと逆に二人揃って大ピンチという事態も招きかねない。だから二人の判断は正しい。
 俺は俺で、この状況を切り抜けなければならない。当然だ。一方的に仲間に負担を強いるだけならば、それこそ――自分の流儀を貫くなどという行為は許されない。今からでも剣か魔法か、どちらかに特化させた方にシフトするべきなのだから。
 バックステップやサイドステップなど、とにかく足を使い相手をかき回す。
 そうして出来た僅かな隙。大きく開けた距離を兵士達がガチャガチャと鎧の音を立てて走らねばならぬほどの間隔がようやく取れたその瞬間。

「サンダーウェポン!」

 瞬によって有用性が高いことが認められた雷属性を付与させる魔法を発動させる。
 付与魔法のカテゴリの中でも武器への属性を付与する魔法は発動にも集中にもさほど時間を必要としない。ちょっとした合間に使うことは決して難しくは無かった。

「アクセラレーション!」

 足りない威力を――攻撃速度と回数を増加させる事で補う。
 どちらか一方ではまだ足りない。それだけの殲滅力を俺は持っていない。
 だからこその付与魔法や強化魔法。バフ(強化)デバフ(弱体化)を使いこなすこの手法こそが、俺の流儀(スタイル)
 自慢できるような拘りじゃないけども、専用(ユニーク)スキル獲得の為、早々に役立たずの烙印を押されないためにも、今は俺自身の拘りを貫くしかないと決めた。
 覚えたてのエアムーブマスタリー、その最初の一歩でもあるエアジャンプで敵陣の上を取り、落下の勢いと同時に剣を振り下ろす。
 地面にまで叩き付けた雷撃をまとった斬撃はまさしく落雷。
 迸る衝撃は兵士達の足を止めて硬直させ、その僅かな隙を突くように俺は戦場を駆ける。
 アクセラレーション(加速の魔法)で高速化した動きに置いていかれる事無くついてゆける感覚に任せるように俺はジグザグに敵陣を駆け抜けながら雷の剣を払い抜く。
 一撃で足りないと感じれば即座に二撃目を重ねられる反応速度。
 普段ならば間に合わないと感じるタイミングでもギリギリ避けられる回避力。
 相手が振り向くよりも先に背後を取る敏捷性。
 効果時間がさほど長くないという欠点こそあれど、アクセラレーションは強化魔法マスタリーのカテゴリーの中で序盤で使えるスキルとしては格段に利便性が高い……と思っている魔法だ。
 ゲーム内ではあらゆる行動速度を上げる魔法だったので習得したのだが、それはこのソウルフォームでも変わらない。ただ、ゲームと違うのは速くなった身体の動きにちゃんと自分の感覚で反応できているという点が違う。
 普段の自分ではまるで出せないであろう速度での身のこなし、流れるように過ぎ去っていく風景に混じる敵の姿、自分のやろうとする事に思考と身体がしっかりついてくるこの世界が広がった感じもまたこの魔法の恩恵だろう。そうでなければ、強化された自分の力に振り回されてもおかしくない。無免許で大型四輪を転がすような無茶をしているはずなのに、使い慣れた道具を扱うように身体が使えるのも自分の知らない魔法の効果の一つなのだろう。
 無駄な動作を行う事無く、最短の動きで確実に敵を減らし囲まれないように位置取りながら着実に俺は戦果を挙げていく。
 同時に魔法の効果が切れる時間もしっかり数えておく。
 今の俺の強化魔法マスタリーのレベルと、魔法のスキルレベルを考慮しても一度の魔法の効果時間はそう長くは無い。長期戦になれば当然かけ直しも考慮せねばならないし、敵の中にもこちらの付与魔法や強化魔法を消去してくる敵もいるだろう。
 うーん、その辺を視覚情報で得られないものだろうか。この辺りはゲームではない事の弊害だが。

『和奈、俺達の状態をゲームみたいに視覚情報でサポートって出来ないか?』
『視覚情報……というと、沢木さん達だけに見えるようなものでよろしいです?』
『そうだな、敵にも見えるような方法だと状態が丸分かりだから』

 声に出さずとも和奈とこうして意思疎通が出来るのは大きな強みなのだが、ゲームと同じようなHPゲージや相手のバフ、デバフなどの状態が目でも確認できると大分違うのだが。
 もっとも、そういうのは簡単に相手にバレそうでもある。
 魔力の反応が違う、とか。気の流れがどうとか、知性がある生命体の相手だろうと、獣のような相手であってもそういうのは勘付かれそうだが、それはそれ用心はしておくに越した事はないし。

『そういうのは少々難しいので……あっ! そ、そうです! それこそわたしのお仕事です! わたしは常に沢木さん達をモニタリングしてますので、必要な情報はわたしが伝えますよ!』
『あ、そうか。和奈に頼めばよかったのか』

 よくよく考えればそういうサポートは和奈に一任してしまった方が圧倒的に楽だ。
 自分達だけではなく、敵の状態も彼女はきっと把握できているのだろうから尚更だ。

『はい、お任せください!』
『それじゃ、とりあえず俺がかけた強化魔法や付与魔法の効果が切れるタイミングは教えてくれ! かけ直す機会を考えないといけないからな!』
『わかりましたっ』

 よし、これで問題は無い。
 近寄ってきた兵士のモブの脳天に斬撃を振り下ろし退ける頃には俺はもう危機を脱していた。
 やはり耐性のない属性を突いた攻撃の威力は大きい。迫る戦いの日には、瞬と高峰に少なくとも属性付与の魔法をかけられるように動くべきだと悟った。

「素材の方も結構集まったな」
「武器の調整は明日にしましょうか。和奈、全員レベルは上がったかしら?」
「えーと……はいっ、三人ともレベル12になってますね。敵も残ってないようです」
「なら、一度ホテルに戻りましょう。敵のいなくなった領域は放置すれば消えてしまうから」

 高峰の話では、こうして敵の侵攻を食い止めつつも自身の強化を行うのが昔からの方法らしい。
 俺達はレベル、という形で実感しているが数十年前の世代では自身の成長をしっかり感じ取る事まで出来たらしい。能力や技術の継承とは難しいものだと改めて思う。
 結局、この日は他に侵攻してきた敵はいなかったようなので、訓練用の世界で俺達は修行に勤しんだが、残念ながらレベルは12以上には上がらなかった。それでもそれなりのスキルポイントは稼げたし、幾つかのスキルのレベルを上げる事も可能だろう。

 そして――意気揚々と現実の世界に帰った俺を待っていたのは。

「なんじゃこのスキルはぁぁぁぁぁ!?」

 思わず絶叫しかねない――俺だけの固有スキルの覚醒だった。

 
とりあえずコーヒーを噴き出したり、血を流しながら
死んだりはしていません(ぇ
+注意+
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