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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 1 今、そこにある危機

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stage 4 REGAIN HEROESの可能性

※ 連続更新中ですのでご確認の上、お読みください。
 仕事で忙しいらしく両親共に戻ってこなかった食卓で夕食を済ませて俺は部屋に戻ってきた。
 ありえない体験を重ねた一日だったがそれでも普通に腹が減り、熱い風呂を堪能できた俺の神経は自分で思っていた以上に図太いのだろう。

 漫画と小説が半々の本棚。
 ゲームソフトのパッケージが並んだラック。
 少々型落ち気味のパソコンと申し訳程度に置いてある勉強道具が並ぶ机。
 ベッドで寝転がりながらやるのに絶妙な位置に配置したテレビ。

 見慣れた自室の景色を遠く感じるようなセンチな感慨が――湧く事も無く、俺はゴロリとベッドの上に転がった。

「REGAIN HEROESにあんな秘密が隠れてたとはねえ……」

 スマホの時計表示を見ると時刻は午後八時ちょい。
 夕方からこの部屋でREGAIN HEROESでの訓練はおおよそ三時間ほどで終了した。
 もっともこっちの世界――現実の世界においては数秒にも満たぬ時間だったが。
 話を聞くと実際にこれから行うであろう戦闘も含めて、あのソウルフォームでの戦いは現実とは異なる時間が流れるらしい。これは訓練時や小規模な戦闘の時にはソウルフォームの安全面と引き換えに、現実での時間を確保できるようにシステムを調整した結果なのだとか。
 なので、あちらで戦っている間に空っぽの肉体を攻撃されたりだとかそういった心配がない。逆に言えばあちらの世界での時間の猶予と現実世界での時間の猶予はまるきり別物である、という考え方もしなければならない。
 他にもスマホにインストールされているこのキャラクターアバターを確認できるアプリは俺達がソウルフォームへと移行するための補助機能も備えているらしく、和奈のバックアップさえあれば、二十四時間何処からでも臨戦態勢に移れるらしい。戦闘開始時には戦闘用の部屋に集まって全員でログイン! みたいなのを想像していたのでそこだけはちょっと拍子抜けだったのだが、小規模な戦闘ならば簡易的なシステムでソウルフォームへの移行を行うが、世界の命運を左右しかねない重要な一戦に限っては、万全の態勢を敷くべく専用の施設への集合を行うと言っていたので、そっちはそっちで別に期待することにしよう。

 そんなどうでもいい俺の拘りはともかく。

 俺達が立ち向かわねばならぬ災厄とはどうやら俺達がこうして認識する時間と世界とは別の次元からこちらに影響を及ぼすらしい。
 詳しい理屈は頭が沸騰しそうなので簡略してもらったが、その異次元での侵略行為を行う者をインベーダーと呼び、俺達はそれを阻止するべく向こう側の世界に「ソウルフォーム」で乗り込むことが必須とされているようだ。
 REGAIN HEROESはその世界を一時的に切り取り、こちらにとって都合のいい訓練用のフィールドを作り出して実戦経験を積む事を可能としているのだとか。だから、あちらの世界での拾得物なども利用して装備の強化などに役立てているらしい。
 その一方で、安全面はどうしてもギリギリになってしまっているそうだ。REGAIN HEROESでの訓練中ならば万全のバックアップ体制が整っているし、緊急時には即座に離脱する事も可能だが、ソウルフォームでのダメージは現実の肉体にも即座にフィードバックされるため、ダメージを積み重ねたり、致死に達する重傷を負えば死亡する事は避けられない。
 なので、訓練だゲームだ、と気を抜くことの無いようにと高峰はやや厳しい口調で注意してくれた。
 スマホの画面の中にはレベル11になった俺のキャラクターデータ、いや、今は「ソウルフォーム」のステータスでもあるか、それが表示されていた。

 最初のキャラメイクの際に適性のある職業(クラス)のデータは、そのままソウルフォーム時に於ける能力上の適性であったらしい。瞬は戦士系クラスの中でも典型的なクラスであるウォリアー以外には適性が無かったと聞いている。盾を使うなんて妙な発想をしたにも関わらず防御系スキルに秀でたガーダーの適性が無かったのは根本的に攻めの姿勢を好むアイツの嗜好ゆえにだろう。少なくとも、キャラ作成時におけるシステムの基準は総じてそいつ自身の個性を形成する要素となっているのは間違いない。
 とはいえ、俺も瞬を笑えるほど多彩な適性があったわけではない。何故なら器用貧乏系クラスであるスペルナイトの他には、搦め手系のスキル適性が多めなシーフしかなかったのだ。他にも一つくらい魔法職の適性があってもよさそうなものだが、生憎と純魔法職のクラスには全く適性が無かった。
 幸い適性のあるクラスを選んだ場合、ステータスの面でボーナスがあり、クラスに応じたスキルの成長にもプラス補正がかかるので、適性のないヤツがスペルナイトをやるよりは基本ステータスは高かったのだが、それでもレベルが6を超えるまでは育成に苦労した覚えがある。そして瞬は瞬でリーチと言う概念で語るのもおこがましい盾で殴る戦士。いくら協力プレイを解禁されていたとはいっても相応の苦労を重ねた事は言うまでもない。

「我ながら何とも凄まじく幅広いスキルばっかりだ……高峰が呆れるのも無理はないよなー」

 おまけに俺は寄り道に次ぐ寄り道を重ね、まあ取ってみたいスキルにあれこれ手を出した。
 スキルを成長させるには使用に伴う経験値の他に、様々な行動によって手に入る自由に割り振り可能なボーナスポイントを振り分ける事でも可能だ。
 スマホの万歩計のシステムで手に入るのもこのボーナスである。俺はそれをいい事にクラス毎にデフォルトで習得できるスキル以外にも、あれやこれやとカスタムスキルを習得していた。お陰で特化型の高峰や瞬との戦闘能力の差は歴然だったのだが。
 同じ戦士系ではあるが、高峰のクラスであるブレイダーはいわゆるサムライ的なクラスで力よりも器用さと敏捷に高いボーナスがあり、スキル構成も手数重視の剣戟系の攻撃スキルが揃っていた。
 だが、高峰はそれだけにとどまらず俺達が習得を後回しにしていた「空中移動系」のパッシブスキルを幾つか揃えており、空中での二段ジャンプ、エアダッシュなどを組み合わせた高速戦闘を既にモノにしていたのだ。
 今日の訓練フィールドでは普通に人間サイズの魔物から始まって、最後には夕方にでくわしたミノタウロスのようなデカブツとの戦闘までこなしたが、俺達には届かない頭部へと絶え間なく斬撃を叩き込む高峰の姿はまさしく剣姫とか姫侍とかそういう類の勇ましい姿だった。

 個人的にはスカートの下にしっかりとスパッツ着用だったのはいただけないが。男のロマンを返して欲しい。もっとも馬鹿正直に言おうものなら俺の胴体と下半身はすっぱり綺麗に分かれるだろう。ロマンは捨てられないが、その為に命は捨てられない。俺にだってそのくらいの分別はある。
 少し話をしてみて感じたのは高峰はジョークだと理解しながらも静かに怒るタイプだという事だ。真面目すぎて融通が利かない委員長タイプとは違う意味で真面目な人間のように思えた。だからこそ躊躇無く綺麗過ぎる笑顔であの恐ろしい切れ味の日本刀を振りぬき、鋭い刃が俺の身体を通り抜けるに違いない。

 うん、我ながらとんでもない事態に首突っ込んだのに思考がいつも通り過ぎておかしいな。

 真の恐怖を味わってないからなのか、何処までもゲームが絡んでいるから現実味が無いのか。
 いや、現実味がありすぎるからこそパニックにならないのか。それとも、ありふれたフィクションのような事態だからこそ、その言葉の重みを理解できないのか。

「まあ……緊張と恐怖でガッチガチになって何も出来ないまま死ぬ、なんてよりはよっぽどいいか」

 誰に聞かせるでもなく俺はひとりごちた。
 或いはそう言い聞かせる事でこれから胸の内を染めるかもしれない恐怖に抗おうとしていたのか。
 ……やめやめ。こうやって何もしないで考えてばっかいるから方向性が暗くなるんだよ。
 俺はいそいそと立ち上がるとSP5の電源を入れた。コードレスのコントローラーを引っつかみ迷わずREGAIN HEROESのアイコンを選択してゲームを起動する。
 アバターを選んでまずはステータスチェック、と。

「ゲームでのプレイ用のアバターの外見には変化無いんだな」

 まあ俺のいかにも特徴の無い外見を取り込んだアバターに変化されてても困る。
 そんなに手の込んだキャラメイクをしたアバターでもないけど、それでも自分そっくりのアバターがゲームの中とはいえ無残に死ぬというのは、嫌なイメージが植えつけられかねないので遠慮したい。
 とりあえずレベルはしっかり上がってる。よく覚えてはいないが一部のスキルの経験値も増加しているので、何らかの形で「実戦訓練」とゲームでの「仮想訓練」のデータは相互でやりとりされているようだ。
 ざっと眺めてみるとコンセプトというか方向性がしっかりまとまっている瞬や高峰に比べて、一言で言うなら俺のスキルは雑多。とっちらかったと表現してもいいくらい色んなスキルを幅広く備えている。

「ただスキルボーナスのお陰でステータスは伸びてるんだよな……」

 このゲーム、クラス毎にスキルの適性が定められているがぶっちゃけ取得するだけなら大半のスキルを取得できる。
 代わりに適性の無いクラスはスキルレベルの上限が低かったり、レベル上げるのにも経験値が多かったりとデメリットも大きい。それは恐らくスキルレベルが上昇すると同時に、ステータスにボーナスが入ったりするスキルも多々あるからだろう。
 俺は付与魔法の他に最近攻撃魔法のマスタリーも取得した。このゲーム、魔法のカテゴリー毎にもっとも基本的な位置づけに当たるマスタリーと呼ばれるスキルがあるのだ。
 よくあるカテゴリーに属するスキルを微量ながら強化する効果のあるスキルだが、武器の場合は攻撃力向上や装備武器の要求ステータスの緩和などが主な効果だが、魔法の場合は威力向上、習得可能魔法の増加、効果範囲の拡大などと魔法の使い勝手に関わる要素が多い。
 俺はマスタリー系にスキルポイントを振らずに使用に応じてはいる経験値に任せてレベルを上げ、まずは魔法や身を守るのに必須のスキルを優先的に上げていた。マスタリー系は効果が多いからか、レベルが上がってもステータスに入るボーナスがないのだ。
 片手剣スキルのスマッシュと付与魔法を幾つか上げた段階で筋力と魔力と精神に幾つかのボーナスが入っている。これもまた育成を悩ませる要素の一つだったのだが、ここに来てこの性能次第で自分のリアル命運がかかってくるとなると、余ったポイントの使い道にますます悩みそうだ。

「……アタッカーは高峰、一応瞬もあれでタンク的な仕事はやれる、そうなると俺はやはり後方支援を兼ねた遊撃を担うべきか……?」

 そうなると取得すべきは現在の付与魔法マスタリーのレベルでも取得できる中でまだ習得していない魔法――ディフェンサー、だろうか。
 単純な防御力アップの魔法だが、果たしてボス級の相手に対しても効果を体感できるだろうかとイマイチ信用できずにスルーしてきた魔法だ。避ければ問題ない、そう思って行動速度向上の魔法であるアクセラレーションを取得したのだから。
 だが高峰はともかく瞬は盾でガードするのが前提だ。保険としてこの魔法をかけておくのも悪くは無いかもしれない。あいつ、自分がピーキーなキャラしてる自覚があるから体力にもステータスを振ってるし、防御性能の高い防具(といっても俺たちを守るのは腕輪から発するバリアなので外見上は制服のままだが)も装備してるし。
 それとも遠距離攻撃の手段に乏しいから攻撃魔法をもう少し習得するかレベルを上げるか。
 炎はフレイムエンチャントがあるからって理由で、確かサンダーボルトの魔法を習得したんだよな。
 どうしても雷撃の発生点にエフェクト(これもまたソウルフォームでは魔力の反応らしく同じ現象が起こった)が発生するから避けられる可能性も高くてよく狙わないと当てられないんだよなー。
 くう、ただでさえ色々と悩むスキルの取得なのに、自分の命がかかってるとなったらお試しで取得して無駄にスキルポイントを使うわけにも行かない。いや、稼ごうと思えばいくらでも稼げるが、今回はそれほど時間が無い。二人がしっかり戦えるだけのレベルに達しているだけに、俺が足を引っ張るわけにはいかないというプレッシャーもあって、俺は今後の育成先を見極められないでいた。
 そうこう悩んでいるうちにフレンドのサインインを告げる音が鳴った。どうやら瞬もログインしてきたらし――

 【メッセージが届いています】

 などと思っていたらプレイログにそんな表示が出てきた。
 アイツ、ログインと同時にインスタントメッセージとかどうしたんだろう。
 怪訝に思いつつも俺は瞬からのメッセージを開くと、中にはこんな内容が書かれていた。

『なんか俺の盾マスタリーの名前が変な名前に変わってるんだけど。後、取得した覚えの無いパッシブスキルが増えてる』

 何の事だ?
 俺は自分のスキル欄をチェックしてみるが、俺の方はおかしなところはない。
 瞬はスクリーンショットも添付していたようなので、瞬が撮ったらしい画面のイメージを見ると、

「……なんじゃこりゃ」

 と思わず呟きかねない画面が映っていた。
 スキル欄自体に変な所は無い。俺と一緒のキャラクターステータスを確認するためのものと一緒だ。
 だが、そこに並んでいるスキルの一部は確かに見慣れない名で表示されている。

 戦人の数奇な盾術(盾マスタリー専用化)と、白文字ではなく黄色文字で表示され、普通の盾マスタリーの効果に加えて何故か盾の防御力が()()()として加算されるという効果が追加されていた。
 それだけでも驚きだが、もう一つのスキルが極めつけだ。
 酔狂なる傾奇者、と名付けられたそのパッシブスキルの効果は――右手に武器を持たない間は全ステータスに補正が入る、というありえないほどに強力かつ使い何処の難しい効果だった。


※ 本日16時に五話を更新します。
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