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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 1 今、そこにある危機

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stage 3 育成の基礎

※ 三話まで同時公開しています。閲覧順にご注意ください。
 高峰達と別れた後、俺は家のゲームマシン「SP5」を立ち上げてゲームを起動させた。
 どうやって強くなるための訓練をするのかと尋ねると、竜鳳院さん改め和奈はこう言った。
 何で名前呼びかと言うと、年下だしあまり改まって欲しくないって言うからね? 最初に呼ぶ時、妙に緊張して噛んでしまい、高峰と瞬に笑われたが。

『REGAIN HEROESを起動して、拠点のクエストカウンターのNPCに話しかけて、覚醒の言葉という項目を選んでください。入力するキーワードは……』

 スマホに転送されたメールに記されたキーワードがそのままREGAIN HEROESを俺達のような戦士訓練用に切り替えるためのモードの解除を行うパスワードになっているのだと。
 これは渡されたディスクによってそれぞれ用意されている専用のワードなので、他人のキーワードを入力しても反応しないのだとか。徹底してるなあ。
 俺はキャラを操作して言われたとおりの行動を行うと同時にまるで身体が何かに引っ張られるような浮遊感と落下感を同時に感じるような奇妙な感覚と共に目の前が暗転した。

「な、なんじゃこりゃあっ!?」

 そして声を出してみて驚く。
 周りの風景が一転していた。しかし見覚えがないわけではない。
 NPCこそいないが、崩れた古いホテルのエントランスを拠点にしたような風景に、崩れた長階段。
 ここは――REGAIN HEROESのプレイヤーの拠点となっている廃ホテルだった。
 そして即座に思い当たり自分の姿を見てみると、格好がREGAIN HEROESで装備しているものそのものだった。とは言っても、REGAIN HEROESは学生や一般人が魂の形を具現化した武器ソウルウェポンを使うだけで防具という概念がないので、学生服にちょっとメカメカしいデザインの武具を持っているというだけなのだが。

「おお、タケ。お前もどうやら上手い事こっちに来れたみたいだな」

 当たり前の様に後ろから声をかけてきたのは見慣れた友人の姿だった。馴染みすぎだろ、お前。少しは動揺しろよ。

「そうやってあっさり適応してるお前は凄いよ、瞬」

 ゲームの中に入ったのか、それともゲームのキャラの中に入っているのかその差が分からなかったが、目の前の瞬の顔はリアルの顔と全く一緒だった。REGAIN HEROESで見たときのキャラの顔はもっとゴツイおっさん顔だったので、どうやら「俺達」の方がゲームの中に入ったのは間違いないみたいだ。
 え、リアルデスゲームで訓練するの? これ? 今更ビビりはしないけどドキドキはするよ? どう違うんだよって話だけど。

「これがREGAIN HEROESの隠しモード……ってところか」
「ゲームを通して成長し力を得るだけじゃなくて、実際に身体を動かす事で実戦経験も積む。わっかりやすいシステムだな」
「その通りなんだけど、そうも理解が早すぎるのも馴染むのが早いのも最近の人達の特徴なのかしら? もう少し驚くと思ったんだけど」

 後ろから声をかけられて振り向くと、そこにはつい先程別れたばかりの高峰が凛とした顔で立っていた。
 さっき会った時は私服だったがこっちでは制服を着ているようだ。けど、気になるのはそのデザイン。

「高峰ってもしかして隣町のお嬢様学校に通ってんの? その制服、確か如月女学園のセーラー服じゃないか?」
「……そうだけど、何? 沢木君、貴方もしかして制服フェチとかそういう特殊嗜好の持ち主?」
「ちょっと知ってる学校の制服を当てただけでえらい言われようだな!? ちょっと過剰反応すぎやしませんかねぇ!?」
「ふふっ、冗談よ。ただ、世の中にはそういう男がいるから気をつけろと、特に父から言われているからちょっと探りを入れてみただけ」

 何て頼もしい女傑なのだろうか。あったばかりで軽くあしらわれるとか、いや俺の性格が分かりすぎただけなのか……なんにしてもフランクに接してくれるのはありがたい。
 そしてそんなあっけらかんとした彼女の性格なのか、高峰の装備は日本刀一振りだけという中々に男らしいチョイスだ。俺と一緒で複数のスキルを扱うのか、それとも両手で武器を扱うのか。確か、両手持ちによる攻撃力増加系パッシブスキルがあったと思ったが……。
 とはいえ、セーラー服に日本刀とは。何て分かっている組み合わせなのだろうか。さりげなくさっきとは違って髪がポニテなのもポイント高い。その筋の男共が歓喜しそうな格好である。
 強いて言うならば、もうちょっと鞘のデザインが和装よりだったらなおベストだったのだが、このゲームも含めて超科学の産物だろうし、そこは仕方あるまい。

「さて、時間も限られているから早速実戦訓練よ。ついてきて、今日の訓練場所に着くまでに簡単に説明だけはしてあげるから」

 すたすたとホテルの外に向かって歩き始めた高峰の隣に並ぶようにして俺達は歩く。

「この身体の状態は私達の魂をREGAIN HEROESで作ったキャラクターを元に実体化したもの――迫り来る危機に対抗する為の力は私達自身の魂を具現化して作られているの。私達はこれをソウルフォームと呼んでいるわ。そしてソウルフォームの能力を分かりやすく視覚化したものが、REGAIN HEROESでの貴方達のキャラクターのステータスね」
「つまり、俺達は現実のようで現実ではない世界で戦うための器をゲームでせっせと作っていたと」
「そういう事。貴方達がこれから戦うであろう異形の者達が存在する世界は、私達の現実とは少しズレている。昔は、己の肉体のままそっちの世界に渡って戦う事も可能だったみたいだけど……」
「長い間にそうした技術は失われちまった、と。よくある話だな」

 瞬の言う事に俺も同意した。割と漫画やラノベでよくあるパターンだが、現実にも伝統技術や過去の文化ってやつは実際に恐ろしい速さで失われている。継ぐ者がいなければそういうのはあっさり衰退していくものなのだという分かりやすい例は現実にだって溢れている。
 つまり、あの時のボスモンスターとの戦いでも俺たちは実際の肉体のようでそうではない魂を実体化させて戦っていたという事か。

「REGAIN HEROESは、その位相の違う世界を擬似的に作り出し、私達の手で起こり得るであろう様々な状況を仮定して訓練するための装置よ。そしてその結果をREGAIN HEROES内でも分かりやすく確認できるし、ある程度成長の方向性を的確に操作できるという利点もあるわ」
「レベルアップ時のボーナスポイントの振り分けによるステータスの成長と、スキルの取得か」
「ええ、過去に私達より前の世代の人達が残した技術を簡単に継承し取得できる画期的なシステム、だったんだけど……」
「高峰達の仲間の中だけじゃなくて何も知らない外の人間にも適性があるやつを探さなきゃならんほど、使えるヤツは限られてたと」
「……そうなのよね……まだ試作段階だから色々改良を試してはいるのだけど、少なくとも近日中に簡単に戦力を増強できそうな状態ではないのよ」

 世の中は何でこうも上手くいかないものか。本当なら、もっと手早くかつお手軽に戦力を増強するためのシステムを見越して開発されていたんじゃないだろうか? 訓練って言われるより遊びと言われた方が人間覚えるのも理解も早いもんだからな。まあ、戦闘に対する覚悟のようなものは別の形で身につけなけりゃならんだろうけど。
 そんな事を考えながら、俺たちはホテルの外に出る。ゲームをプレイした時とは違い見慣れない崩壊した街並みがそこには延々と続いていた。
 そもそもREGAIN HEROESをプレイ中はホテルの入り口から外には出ないので見慣れないのは当然だ。
 拠点となっている廃ホテルの奥の方に用意されている「転送機」とやらで、ミッションやクエストが発生した地域を指定してスタート地点に転送され、そこからゴールを目指すという一種のステージクリア型のゲームだったからだ。

「貴方達の基礎性能でもあるステータスを伸ばすためのレベルは、今後この状態――ソウルボディでの訓練で得られた経験値しか適用されないわ。そして、この状態でいられる時間は限られている」
「つまり――効率重視の経験値稼ぎが必要という事だな!」
「うーん、稼ぎ重視のプレイか。俺は苦手だなー」

 割と好き放題やりながら育成を楽しむタイプなので、時間単位での効率を考えてのレベル上げは苦手だったりするのだ。
 などと返答した俺達に対し、高峰は若干呆れたような目でこちらを見ていた。

「……何というか、あまりにも貴方達の適応力が高すぎて私の認識の方が変なんじゃないかって気になるわ」
「仕方ないぜ、高峰。男は皆、心の奥底でこんな事が起こるかもしれない、って妄想を少しはしてしまうものなんだ」
「ついでにそういうのを具現化したようなフィクションも世に溢れてるしな。覚悟さえ決めてしまえば、後は順応するだけよ!」

 俺と瞬は拳を握って力説する。そりゃ命の危険とかを忘れたわけじゃないし、お気楽に考えちゃいけない事態だってのも分かってるけどね。けど、だからって萎縮する程に真剣に受け止めすぎるのもそれは違うってもんだと思う。
 高峰も、俺たちが単なる虚勢を張っているわけでも、お気楽に考えているわけでもないというのを理解したのか、それとも俺たちという存在が諦められたのか苦笑しつつも刀を抜いた。

「この状態でのスキル取得時の経験値効率は高いわ。キャラクターレベルは上げられないけど、スキルのレベル上げや取得は今まで通りゲーム内の仕様を利用しても可能だけど……」
「効率考えたら、戦闘系スキルはこの訓練時間の間に上げた方が早いな」

 現実世界での戦いには刻限がある。それまでにいかに効率よくスキルを鍛え取得するかというのも課題になるだろう。ふむ、今まで以上にゲームに割く時間が必要だな。

「言っておくけど、睡眠時間を削ったり普段の生活に支障が出るような手段でレベルを上げたりはしないでね」
「え、ダメなの!? 世界の危機なのに!?」

 瞬、お前本気で言ってるんだろうけど、多分それは色々な意味で問題になる。

「……あのね、柏谷君? まず前者の問題点だけど現実世界での体調不良はそのままソウルフォームでのステータスに影響を及ぼすわ。そして後者の方は、何日もそんな生活が続いたらそれだけで問題行動になるでしょう?」

 そう、まさしくそれ。引きこもって日がな一日ゲームやってますが許されるのは学校にも行かず、無職でも暮らせる一部の特権階級だけである。
 そんな生活、親元で生活している俺も、寮生活の瞬も数日も続けたら即バレる。そして最悪の場合、SP5を取り上げられてレベルアップの機会すら失われるだろう。
 人知れず世のため人の為に戦う者には日常をしっかりと演じるという役割もくっついてくるのだ。世界のためと言えば何しても許されるわけではない。

「くそー……大義め……め……なんでもいいや、真っ当な理由でゲーム三昧の生活が出来ると思ったのによ!」
「瞬、大義名分くらいはちゃんと覚えておこうな? それとその発言よーく考えてみろよ? ソウルフォームでの訓練以外でもゲームしかしちゃだめなんだぞ? 和奈が良識派だからいいようなものの、平和の為ならなんでもするみたいな組織だったら俺たち今頃監禁されて飯と風呂以外全部ゲームって生活を強要されたかもしれないんだぞ?」
「オレはそれでも構わない! REGAIN HEROESは奥深すぎるゲームだからな!」

 いやいや、冷静になろうぜマイフレンド。
 俺はやだよ? ゲームは強要されてやるもんじゃない、楽しんでやるものだ。
 このソウルフォームでのプレイだって、痛かったり辛かったり苦しかったりするだろうけど、レベルアップの為とか、死なないための訓練とか、色んなモチベがあるからやれるんだぜ?

「後、貴方達はキャラクターデータをスマホに転送してたかしら? 歩数と連動してスキルポイントを得られる外部システムなんだけど」
「おう、当然だ。オレなんかは家に居る間も無駄に身につけてるぜ」
「俺は流石にそこまでは……一応持ち歩く癖はつけてたけど」
「あれで得られるスキルポイントは、貴方達の日常生活での行動によって鍛えられた部分を参照して生まれるポイントなの。万歩計のアプリに偽装してあるだけだから常にスマホを持ち歩く必要は無いけれど、日常での行動もしっかりと成長に役立つから、REGAIN HEROESをプレイするばかりじゃなくて普段の生活も大事にしてちょうだい」

 なるほど、平和の為に人間的な生活を止めろとまで言われないのはそういう理由もあるのか。

「そっか、無駄にスマホをぶん回したりしなくてもよかったんだな。けどよ、それでも普通のゲームとしてもプレイする分も無駄にはならないだろ? ならば、オレは出来る限り生活の中にREGAIN HEROESを組み込んで強くなってやるぜ!」

 だから、そうしなくてもいいようにって言う配慮だろうが、瞬。お前はそこまで人生を世界の平穏を守る為に捧げるつもりか。いや、楽しんでるから厳密には苦行でも何でもないんだろうけども。

「悪い、高峰。ちょっとうちの瞬は問題に気づくまでが遅すぎて」
「そうみたいね。いずれ自分の発言の重さに気づいてくれる事を願うわ」

 疲れたような顔で同意してくれた高峰は左腕の腕輪? バングル? のようなもののボタンを操作すると、

「和奈? バトルフィールドに着いたわ。訓練用のクエストを開始してちょうだい」
『分かりました。それでは、トレーニング用モンスターを出現させます』

 おお? 頭の中に和奈の声がした。
 瞬も驚いたようで目を丸くしていると、高峰が少しだけ微笑みながら説明してくれた。

「あの子は私達の戦いのバックアップも担当しているのよ。私達は目の前の視覚情報が頼りだけど、あの子はゲーム画面をモニターから見るような視点で私達のフォローを担当してくれるの」
「あんな可愛い子がナビゲーターや支援を担当してくれるのか……」
「タケ、気合入ってるな」
「入らないわけが無いだろう! ちょっといじましい系の可愛い女の子が色々サポートしてくれるとか最高じゃないか! ビバ、美少女ナビゲーター! これで気合の入らない男なんていないってね!」

 そりゃ、剣を持つ手にも力が入りますって。実にやってやろうじゃんってシチュエーションだもんな。
 ん? そんな事を考えて一人ニヤニヤしていたら、何かいい笑顔をした高峰に肩を叩かれた。

「ちなみに、意識してもしなくてもあの子には貴方が発言した内容は聞かれているわ。流石に心の中までは読めないから、本人に聞かれて困るような事は口にしないようにすることね」

 俺の尊厳は戦う前に死んだ。
 この後、必死にアタフタしながら和奈に弁明する俺を、二人が実に嫌な笑顔で見守っていたのだから。


※ 本日15時に四話を更新します。
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