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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 1 今、そこにある危機

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stage 2 取るべき選択肢

※ 三話まで同時公開しています。閲覧順にご注意ください。
 俺達の住む日守市は数年前に再開発指定を受けた都市で利便性や機能性が重視した街作りを優先した、と聞いている。昔から住んでいるし、あまり旅行とかで他の街に出た事もないのであまり差が分からないから実感はしていないけど。
 環境保全だか、緑の多い街作りを、とかそんな方針の一つとしてこの街は結構公園だのなんだのが多かったりする。この市民公園もそんな一つで、学校が昼で終わる時なんかは近くの店で弁当やらパンやら買ってここら辺で食べるのもオツだったりする。
 木々に囲まれた公園、並木道のように舗装された散歩道の途中にある休憩所に活動的な印象を受ける少女が目についた。その側には見慣れない制服を着た一人の少女が立っているのを見て、俺は思わず呟いてしまった。

「……美少女が説明役のパターンか……隣の子は下手したら中学生くらいに見えるけど、瞬はどう思う?」
「オレとしてはロリババアなのか、それとも重い責務を背負わされた特殊な家系か、どっちかが問題だ」
「そんな心配も感想も聞いてねえよ」

 俺としてはあまり下手に出られると無茶難題だとしても断りにくくないか、という相談だったのだが、瞬はその辺をあまり意識してないようだ。
 あまり警戒心を表に出さないようにしつつも、俺達はゆっくりと相手の正面に立った。
 一人は黒髪のロングヘアで少しふわっと広がった柔らかそうなヘアスタイルに加え、凄く幼い印象を受ける顔つきの子だった。相乗効果もあるだろうが、一言で言うなら可愛い。黒いセーラー服を着ているからこそ中学生くらいという印象を持ったが、ちょっと背の高い小学生でも通じそうだ。保護欲をそそる不安そうな表情もそれを手伝ったのかもしれない。
 だが、それは顔つきが幼いというだけで、直で見てみると遠目では分かり難かった彼女のボディラインは小柄な割りにむしろふくよかと言っても過言ではないほどに発達しているように見えた。
 ロリ巨乳、それが俺が彼女に抱いた第一印象だ。我ながら最低最悪の感想である。間違っても口にしてはいかんだろう。だが、見た目に反した成長をしている身体つきだけに最初に感じた中学生という見立ては間違っているかもしれない。もしかしたら一個下かそれくらいの可能性も浮上してきたな。
 その子の隣に立っているのは護衛という印象を受ける少しきりりとした凛とした雰囲気をまとう俺たちと同年代くらいの美少女だった。少し内側に癖っ毛のあるセミロングと真面目な表情をしつつも、全体的に見るとちょっと可愛い系の顔立ちが背伸びしている女の子、という印象を抱かせた。
 失礼だが、服の上から見た判断では隣の小さい子よりも肉付きは控えめな印象だ。スレンダーかつモデル体型と称すべきで、魅力的という意味合いではどちらも甲乙付けがたい美少女なのは事実だけども。
 俺はスマホを操作すると例のメールを表示した。指定の場所は間違いないし、十中八九この二人が待ち人で間違いないのだろうが、新手のナンパかと勘違いされても困るのでここは自分から動いて先手を打とう。

「このメールを出したの、アンタ達で間違いないかな?」

 声をかけられて小動物系の方の少女がはっとしたように顔を上げて俺のスマホを覗き込む。そんなに真剣に考え事をしていたのか不意を突かれた様な驚きようだったが、すぐに真剣な面持ちになると静かに頷いた。

「はい、その通りです。貴方が沢木武彦さんで、そちらの方が柏谷瞬さんでいらっしゃいますね?」
「おう、その通りだ。オレもほら、この通りメールをもらってる」

 瞬も俺に倣ってメールの画面を見せると、目の前の小さい方の女の子は深々と頭を下げた。

「わたしは、竜鳳院和奈と申します。まずは、お二人の命をこちらの勝手な都合で危険に晒すような真似を致しました事を深くお詫び申し上げます」
「い、いやいや、ちょっと待った竜鳳院さん! いきなり詫びから入る気持ちは分かるけど、それは色々と大袈裟すぎる!」

 俺は慌てて竜鳳院さんを止めた。本音でもあるが、どちらかというと罪悪感の方がが半端無い。少し涙声にも聞こえたし立場的にもそうしなきゃいけなかったのかもしれないが、少なくとも今は実害がないのにそんなに平身低頭に構えられてもどうしていいか困る。
 命の危険云々も今更だ。どうにかとはいえ無事に乗り越えてしまった今となっては、文句を言うのも違うだろう。普通ならあれこれギャーギャーと罵詈雑言を浴びせられても文句を言えない立場である彼女を責める気持ちは俺には微塵も無かった。

「ともかく終わっちまった事よりも、どういう事なのか説明してもらった方がオレ達はありがたいぜ?」
「そ、そうそう、瞬の言うとおり。この通り五体満足で無事だったから別に文句を言いたかったわけでもないし、事情を聞かせて欲しいだけだからさ!」
「……お二人の配慮に感謝いたします。それではまず、何からご説明いたしましょうか?」
「んー、そうだな……あんまり長々と色々聞かされても頭が追いつかないだろうし……まずは単刀直入に聞こう。さっきの現象は何なんだ? REGAIN HEROES……あのゲームで育てたキャラと同じような力を俺たちは使えた。それとこれとは偶然じゃないんだろ?」

 色々と順序だてて聞く必要があるだろうが、まずはそこからだ。
 俺と瞬が相手の言葉を待っていると予想外の発言が飛び出した。

「REGAIN HEROESについては、世界の危機に立ち向かえる戦士を見出し、育成する為に私達が作り出した訓練の為の設備……というのが一番近い表現かと思われます」
「……世界の危機か。予想の範疇だけど、結構デカイ話が飛び出したな、タケ」

 瞬が疑いもせずそんな事を言ったが俺も同意見だ。伊達や酔狂であんな危険な世界に放り込んだわけではないだろうし、かといってあれを新しいゲームのプレゼンと言うにはさっきのボス戦もどきはあまりにもリアルすぎた。あの肌で感じた恐怖、エンターテイメントの一環と呼ぶにはいささか危険が過ぎる。彼女の言葉を疑う余地はない。

「本来であれば数年はかかるであろう力を得るための過程を大幅に短縮する為に私達の一族の秘儀によって生み出したものなのですが、それ故に扱える方は極めて限定的になってしまいましたが……」
「誰にでも扱えるもんじゃない、と」
「はい、それ故に普通のゲームのテストを装って資質のある方にディスクを配布するという形を取らせていただきました」
「へえ……ってちょっと待った。てことはREGAIN HEROESの販売元の会社って……」
「私共の組織の表の会社の一つでもあります」

 マジかよ。世界平和の為に活動している組織の会社のゲームを楽しんでいたのか俺らは。
 そして、資金面という形で今の今まで貢献していたという事か。

「このゲームの目的は戦士の育成と同時に適性を持つ方を探し出すという二つの意味がありました」
「その危機とやらは、その……ゲームよろしくいずれやってくるであろうラスボスに皆で立ち向かいましょう、ってな形でどうにかできるもんなの?」
「はい、その通りです」

 実に分かりやすいな。それだけにこの後の流れも大体予測できる。
 瞬も一緒らしく、大体把握したような顔をしていた。コイツもこういう話結構好きだからな。人知れず悪と戦う高校生! みたいなノリ。

「んじゃあ、竜鳳院さんはオレらにそのラスボスと戦う仲間になって欲しい、って事で間違いないか?」
「結論はそういう事になります。真に身勝手な願いではありますが……」
「仮に断ったらどうなる?」
「残念ですが、その場合はREGAIN HEROESを含めた記憶を消去した上でディスクを回収させてもらいます。そして、貴方達は何も知らないまま以前と同じ日常を送ることが出来るかと」
「んー、そっちは大体予想通りか。んじゃもう一つ聞きたいんだけど、もしもその危機とやらが防げなかったらどうなるんだ?」

 あ、瞬のこの目は割とマジに物事を考えてる時の目だ。
 竜鳳院さんはその真剣さに気づいているのかいないのかは分からないが、少し躊躇いがちに口を開いた。

「……早くて数年、遅くとも十年以内には世界は滅亡するのでは、と予想されています」
「そっか、それじゃ仕方ねえな。死ぬのが早いか遅いかの違いじゃやるしかねえよな、タケ?」

 やっぱり出遅れたよ。もう断るつもりは微塵も無かったのに、瞬に同意したみたいでかっこつかなくなるってのに。

「お前、そうやって俺が断りにくい雰囲気作ってから言うなよ。俺がまるでお前に強要されて仕方なく引き受けた、みたいに見えるじゃんかよ」

 もうちょっと格好良く引き受けてあげたかったのに台無しだ。
 突然の俺達の申し出に竜鳳院さんもそうだが、後ろの女の子も驚いているようだ。そりゃそうだわな、あまりにも軽すぎだもん。

「え? え? あの、お二方はそれでよろしい、のですか?」
「おう、勿論よ」
「えっと、その……私達の組織でも可能な限りバックアップは致しますがそれでも命の保証はないのですよ?」
「そう言われてもな。命の危険ってやつはさ生きてる限りゼロじゃないじゃん? そりゃ危険に近づけば近づくほど死ぬ可能性は増えるけど、それだって大きいか小さいかの違いでしかない。死ぬかも知れないんだぞ? って言われりゃ怖いけどさ、それって生きてりゃ当たり前の事だろ? 事故、病気、その他諸々、何処にだって危険は転がってる」

 極論ではあるが生きているのだから死ぬのは当たり前だ。
 さっきの化物との戦いだって、ゲームみたいだって思いながら何時死ぬか分からない恐怖も同時に感じた。あんなのを何度も何度も繰り返すって言うのは正直勘弁願いたい。それは本音だ。
 けど、この危機に果たして本当に他の誰かが挑むのか?
 竜鳳院さんの組織とやらでどうにかなるならそもそも外部の人間に頼んだりしないし、こういうのは既に地球が大ピンチってのがフィクションのお約束。
 ぶっちゃけ、後数年で世界終了のお知らせとか言われちゃうと、何とかして生き延びられないかなって思っちゃうわけだ。やりたい事が山程あるし。
 別に正義の味方なんて格好つけるわけじゃない。そもそも俺一人でどうにかしてくれって話じゃないし。ただ、知った以上、そして条件を満たしているのならやるっきゃないか、な気持ちになるのは――おかしくはないんじゃないかと思うのだ。

「俺は正直な話を言うと、失敗したらその場で死ぬのも、放っておいたら後何年かで死ぬのもリスクとしては変わんないと思う」
「オレもそんなことで死にたくないしなーとは思うわ。それにじゃあ他のヤツがなんとかしてくれんだろ、とまで無責任には考えられねーしな」
「ということで、俺達二人は竜鳳院さんに協力するってことで一つ」
「あ、あの……」

 まるでバイトでも引き受けるかのように気楽に言う俺達に対し、竜鳳院さんは目元に薄っすらと涙を溜めて何度も何度も頭を下げた。
 いかん、こんな年下の少女を泣かせて喜ぶ趣味はないんですけど。

「あ、ありがとうございます……! で、出来る限りのサポートや保障は致しますのでこちらこそどうぞよろしくお願いします……!」
「い、いや、そこまで大袈裟な話じゃ……! 俺らだってただ何も知らずに死にたくないってだけだしさ!」
「そういう風におっしゃってくれる方はいなかったもので……適性があってもその……人格面でどうしても信頼しきれない方が多くて……」

 人格面……というと内面の問題か。
 ひょっとしてと思い当たる事を口にする前に、後ろに立っていた少女がその重い口を開いた。

「……要求する褒賞が法外だったり、あまり褒められたものではない思考の持ち主も多くてね。特に和奈はそういう人を見分けるための力を持っているから……」
「その、心が読めたりするわけではないのですが、その方の思考や思想などを色で判断できる能力があります……お二方は今までの方々の中でも極めて綺麗でしたので少しだけ期待していた部分はあります」
「おおう、どうしようタケ。心が綺麗だって褒められたぞ。ピュア? ピュアなのオレ?」
「いや、そういう意味じゃないだろ、多分」

 悪意が少ないとか、邪な考えが薄いとかそういうのじゃないかと思う。
 人並に歳相応の欲望は俺も瞬も持っているはずだし。

「なあ、あー……えっと」

 俺は質問を重ねようとして後ろの少女の名を聞いていない事に気づいた。
 その俺の意図を察してくれたのか、少女は少し静かに微笑んで、

「高峰八千代よ。肩書きとしては和奈の護衛でもあり貴方達と同じ力を持つ戦士の一人でもあるわ」
「サンキュ、高峰。話を戻すけど、今までの奴らには『選ばれた』って表現に勘違いしてた奴らが多かったんじゃないのか?」
「……ええ、その通りよ。テスターとしてディスクを配布できるほどの資質自体を持っている人は少なくないのだけどね。貴方達と違って都合のよすぎるフィクションの様に考えている人が多くて。中には和奈や私に不快な視線や思考を向けてくる人や恥ずかしげも無く下衆な要求を口にしてくる人もいたから。こうなる事は分かっていたから、私はもう少し慎重に人選をすべきだと主張したんだけど……」

 やっぱりな。どうせ俺はゲームでチート無双して世界を救う! とか俺つえー! が出来ると勘違いするような奴らばっかりだったんだろうな。恐らくは俺達と同じようにあの化物と戦うのも経験しただろうに、どうしてそんな思い違いが出来るのか理解に苦しむけど。

 現実はゲームみたいに簡単じゃない。そしてあの戦いは現実だった。

 つまり、戦えば俺らが絶対勝つと決まってるわけじゃない。それを理解してもらう意図もあったんだろうからあんな手段で試されただろうに、何故にチートで最強、ましてやハーレムが出来ると思えるのか。ここは現代日本だぞ。一夫多妻制はとっくに廃れたっちゅーの。

「時間が無かった事もあり、とにかくまずは可能性のありそうな人を捜し当てるしかなかったのです。最初の戦いはもう間近に迫っているのですが、今の私達にはその戦いに立ち向かえるのが八千代一人しかいないものですから」
「滅茶苦茶人手ないんだな」
「柏谷君の言う事はもっともだけど、こちらにも色々と厄介な事情があるのよ。それはおいおい説明するけれど、一言で言うならこの件は文字通り『世界規模』だという事と『同時進行』であるという事なのよ。日本でも問題となる街や場所は一つではない。人員を均等に割いた結果、どうしても人手は足りなくなっている」

 何という人手不足。世界を救うという一大大仕事を背負った組織だというのにこの裏事情。
 ブラック企業も真っ青のお仕事である。

「オレらが加わって三人になったところで勝算って上がるのか?」

 瞬の疑問はもっともだ。それこそMMORPGの大規模ボス戦みたいな内容だったらお手上げじゃなかろうか。しばし高峰は考える仕草を見せていたが、問題はないと言いたげに頷いた。

「貴方達の動きは見させてもらったけれど、残り少ない時間とはいえREGAIN HEROESで訓練を重ねてレベルを上げれば、決して無理じゃないと私は判断しているわ。幸い今回は相手の情報も『起こるであろう』戦闘の規模も把握できている。少なくとも少数では勝ち目が無いという類の物ではないわ」
「けどそんくらいの戦いでも相手を倒せなけりゃ……」
「一気に世界滅亡へと近づくわね。私達はこうして小さい災厄を潰しながら大元を叩き潰さなければならない。相手の侵攻を許せば不利になり、相手の侵攻を退ければこちらが有利になる勢力争いに勝利する。それが世界を破滅から守るたった一つの方法なのよ」
「そういう事情なら、これ以上仲間探しに時間を割くよりも、俺らがレベルアップした方が可能性高そうだな」
「だな、細かい話は後で聞いてくとして、まずは強くなる事から始めっか」

 我ながら軽すぎるとは思ったが、俺は瞬の発言に乗る事にした。
 あまりにも深刻すぎる事態を聞いたからかもしれないが、マイナスの方向に考えてばかりいたってしょうがない。

 要はREGAIN HEROESというゲームで――本当に世界を守るしかないってことだ。
 まだ彼女も出来てないし、遊びたいゲームもあるし、死にたくない理由はいくらでもある。
 きっと痛かったり苦しかったり辛かったりするだろうが――逃げたくは無い。
 やせ我慢的な動機ではあるが、それでもそんな負けたくない、という気持ちの方が俺は強かったのだ。

 ――なら、一つ気合を入れて戦うとしよう。破滅に導く災厄とやらに。

 
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