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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 2 願いは きっとそこに

24/110

stage 22 戦士、水篠 藍 爆誕

 場所を変えて話しましょう、という和奈の案内によって先輩の勧誘談話はいつもの作戦室へと場所を移された。先輩は既に協力する気のようだし隠す必要もないのだろうが、時折和奈のこの思い切りの良さには恐れ入る。いや、この決断力があればこそ同意を得られなかった場合、記憶操作も止む無しという判断も下せるのか。

「坂本、判明しているデータの開示とモニターへの表示を」
「畏まりました」

 坂本さんが作戦室の奥の方にある端末を操作するとモニターに地図が表示された。
 これは……日守市の地図だな。その間に俺達もいつものようにコネクト用のコンソールが導入されたシートへと座る。ハイテクの塊のようなものだが、コネクトに使わないのであれば上質な椅子と変わらない。

「わ、ふっかふか」

 うん、先輩、感動するポイントそこじゃないです。

「わたし達と領域の者……インベーダーとの戦いは敵が送り込んだ侵略者達との防衛戦の他に小規模な部隊との遭遇戦があることは沢木さん達には説明しましたね?」
「ああ、訓練を兼ねた実戦は何度かやったがそれのことだろう?」
「そうです。しかし、インベーダーたちの魔の手はそれだけに留まらないのです。わたし達とは違い戦う力の持たない者にすらその手はひっそりと影から忍び寄る。彼らにとってわたし達人間そのものが持つ生命の力は良質なエネルギーであるからです」

 食糧……的な意味ではないんだろうなあ。
 吸血鬼にとっての血液だったり、悪魔にとっての魂とかだったり。
 時に、自身の存在としての強さを高めるためのモノ、そういう意味合いでのエネルギーという事だろう。

「こちらをご覧下さい。今回の事件は非常に広範囲に渡って犠牲者が出ています」

 和奈の言葉に従いモニターに目を向けると、日守市のあちこちに赤い点が表示され、そのどれもに規則性が無い。その代わり日守市の端から端までしっかりとカバーしているんじゃないかと言うくらいに分布しており、敵の手が予想以上に広い事がこの図からも分かる。

「被害者の年齢層、性別といったものもバラバラ、共通項はほぼ無いに等しいです。その為、この事件の陰に潜んでいるインベーダーの足取りが中々つかみにくいのが現状です」
「もしかして、この中に理穂ちゃんも?」
「はい、水篠さんには残念なお知らせですが……既に木塚さんの身体に継続的にインベーダーによる接触が行われている形跡を組織のスタッフが発見しています。現在は他の被害者の方々も含めて特殊な点滴によって奪われている生命力を維持する形で何とか命を取り留めてはいますが……」

 いつまでもそれで無事でいられる、という訳ではないのだろう。
 にしてもこういう形で俺達の世界への侵攻を果たしてくるインベーダーもいるのか。これってちょっとした怪奇事件みたいなもんだぞ。

「ですので、交換条件としては不成立に近いのですが、もしも水篠さんが協力してくれるというのであれば、それだけ沢木さん達がインベーダーに勝てる勝率が上がりますので結果として木塚さんも助かる、という形になります」
「そういう事だったのね。うん、いいよ、それで。さすがにこれだけの事を見せられたら、後はヨロシク~っていうのもなんだしね」
「オレらもあんまり気負いしないで即答した口だけど、それでいいのか、センパイ? さっきも見たと思うけど、ガチの殺し合いだぜ?」
「柏谷クンの心配もありがたいけど、もしも私が知らん顔して君達が負けちゃったりしたら私もこんな事件に巻き込まれてぽっくりぽーん、って可能性はゼロじゃないっしょ? それに私はもう従姉妹が巻き込まれちゃってるもの。そんな状況で後は任せた! とは言えないよね」

 うーん、口調こそ軽いのに有無を言わさぬ説得力。そこには頼もしさしか感じられない。高峰もそうだが、何で仲間になる人はこうも女傑っぽい人が多く集まるんだ。

「さ、和奈ちゃん? それで私は何をすればいいのかな? 何かと契約するの? それとも変なアプリでもスマホにインストールする? あ、もしかしてゲーム機を使って変身とか」
「先輩、先輩、色々混じってる混じってる」

 この人も色んなジャンルに触れてるからなあ。
 何か押せ押せな先輩のノリに和奈も少しタジタジになってるぞ、おい。

「と、とりあえず、REGAIN HEROESを使って水篠さんのアバターを作りましょうか。そこからは開発者権限を使って虚界接続(コネクト)モードの開放を行います」
「お、じゃあ、センパイはレベル10にしなくてもいいのか」
「はい、こうして後から仲間になった方に即座に戦力になってもらうには実戦経験を積む方が早いと判断しまして」
「つまり、俺達三人で先輩をパワーレベリングすればいいと」
「あんまり楽してレベル上げると実力が伴わないから好きじゃないけど、この際は仕方ないよねー」

 そう、先輩は俺達に教わっていた時もレベリングに関しては妥協を許さなかった。
 ある程度ゲーム慣れしていたからこその拘りだが、本人曰く苦労してない経験は実力として身に付かない、との事。だから狩りゲーの装備の素材集めなんかも、効率だけ考えるなら俺らがクエストを請けてそれについてくれば早い段階で高レベルの装備が作れただろうに、先輩はきちんと自分で順々にクエストを攻略していく、という考えの人だったのだ。

「水篠さんはSP5はお持ちですか?」
「持ってるよー。沢木クンや柏谷クンとフレンド登録もしてるしね」
「では、帰りにディスクをお渡ししますね。今はこっちのモニターでアバターだけ作成してください。データの方も後でそちらの本体でダウンロードできるようにしておきますので」
「はーい、お、色々細かくキャラクター作れるね。噂には聞いてたけど、和奈ちゃんところのメーカーってどうしてこんな細部にまで拘るの?」
「その……グラフィック担当のスタッフに凝り性の方が数人いまして……このREGAIN HEROESの雛形になったゲームの時に余った予算と技術力を全てこのシステムに注力したのが始まりです」

 それが巡り巡ってシリーズ全体の評価の一因になってるからな。
 何がきっかけで売れるか分からないもんである。俺がそんな事に頷いていると、先輩は手馴れた風味で――あっさりと自分にそっくりのアバターを作り上げた。

「うんうん、とりあえず時間もないし自分に似せとけばいいよね」
「……ツールが充実しているとはいえ何でこんなに簡単に作れるんだ、この人」
「ん? 慣れだよ慣れー。このゲームほどじゃないけど、理穂ちゃんに頼まれてキャラメイクだけは手伝ったゲームとかあるしねー」

 オープンワールド系のRPGとかだろうか。先輩、マジぱねぇ。
 そうこうしている内に、次はいよいよクラス選択の画面に移行した。そういえばこの時は画面の表示に従ってただボタンを押すだけでクラスが選択されたけど。

「和奈、このクラス選択の時って一体何を参照にしてるんだ? SP5は至って普通のだろう?」
「このシステムはREGAIN HEROESのディスクの一つ一つに搭載されていますし……というか沢木さん、それを言ったらこのディスクが入っているだけでコネクトが出来るようになっているのも疑問に思っていただきませんと」
「言われてみればそうだな」

 などと間抜けな会話をしている内に結果が出たようだ。
 えーっと……どのクラスのカードも見た事が無いな。一つは……ウィザード、魔術師か。簡単なスキル適性の説明とステータスボーナスを見るに間違いなく後衛火力職だ。筋力、技芸、体力、敏捷の初期値が軒並み低く設定され、代わりに精神、魔力、反応が高く、HPは最低値、SPは最高値と分かりやすいクラスが表示されている。

「おっ、先輩やったじゃん。丁度オレら魔法系の後衛が欲しいって話してたんスよ」
「あ、そうなんだー。ってそうだよね、沢木クンが万能型を目指してて、柏谷クンは盾で戦う前衛で、八千代ちゃんがサムライだもんねぇ。でも、それならもう一つのほうがよくないかな?」
「もう一つ? あ、ほんとだ、先輩も二つ適性のあるクラスがあるんだな」
「……何でオレだけウォリアーだけだったんだ?」
「言うな、瞬。お前はきっとそういう運命だったんだよ」

 余談だが、高峰はブレイダーの他にはアーチャーのクラス適性があったそうな。刀と弓とはまた両極端な。適性があるなら弓スキルを伸ばしてもよさそうだが、ゲームならいざ知らず実戦で近接武器と遠距離武器を使い分けるのは中々困難だろう。……刀と弓に変形するような武器ならワンチャンあるか?
 などと馬鹿な考えを捨てて先輩が言うようにもう一つのクラスの方に目を向けると……セージ? いわゆる賢者?

「け、賢者だと……賢者って修行しなくてもなれるもんなのか……」
「古い国民的RPGのお約束は捨て置け、瞬。元々幅広い魔法を扱える職業ってのはダンジョンRPGとかじゃ初期の候補にいたりするぞ」

 その代わりどの魔法も使える魔法が中級くらいまで、みたいな制約があったりするが、REGAIN HEROESにはスキル強化のレベル制限はないので、どのスキルも10まで育てられる。
 それを踏まえた上でセージの内容を見てみると……へえ、ステータス面は若干物理よりのステータスがウィザードより高い代わりに魔法系のステが若干低い。各種魔法の適性も攻撃魔法のみ極めて高かったウィザードに比べて満遍なく扱える代わりにウィザードよりも成長に時間がかかりそうだ。
 だが、この場合注目すべきは攻撃魔法と回復魔法の適性の高さだろう。補助魔法や付与魔法の適性は俺のスペルナイトの方が高い、というより補助魔法や強化魔法への適性は無いようだ。
 この事から判断するに完全にどんな魔法でも使える魔法職、というよりは、魔法職の標準的な役割、すなわち固定砲台かパーティの治療師かという二つの役割を両方こなす事を前提にした職業に見える。
 ウィザード、ヒーラーなどが特化型ならセージは万能型になるんだろう。

「パーティの強化や敵の弱体なんかは沢木クンに任せればいいみたいだし、わたしは足りない所を補う役割の方がよくないかな?」
「そうね、それに水篠さんは視野も広いようだし後衛を任せるにはうってつけじゃないかしら」
「オレはそもそも自分が好き放題やってっから、センパイのやりたい事に意見を言える立場じゃねえ!」

 威張るな瞬。
 とは思うものの、俺も二人の意見に賛成だ。先輩の機転の良さも含めるならば後衛の役割を二つ任せても十二分にこなしてくれるのではないか。特に狩りゲーで一緒にプレイした経験からもそう思えるのだ。この人、初心者だったのに器用に色んな事を覚えては実践してくれたからなあ。

「よし、それじゃ私はセージにするね! それじゃ初期のスキルポイントで色々やってー、と」

 これまた慣れた感じで先輩は手早くスキルを選択していく。
 攻撃魔法マスタリー、回復魔法マスタリー、SPリジェネなど、魔法職として必要なものを取得していく先輩。セオリー通りのスキル選択だが、それだけに先輩もこの手のキャラメイク型のRPGに慣れているのがよくわかる。つくづく勉強家だな、先輩。

「あ、和奈ちゃん、このゲーム……というかREGAIN HEROESで魔法を使うのに決められた触媒みたいなのっているの?」
「いいえ、基本的には素手でも使えますよ。ただ、沢木さんは魔法効果を促進させる装備を選んで使っていますし、触媒による魔法の強化は決して無視できる程低くはありません」
「え、タケ、そんな事してたの?」
「してたんですよ、瞬。君の様にただ固くて強い装備を選ぶだけじゃなくて色々とね」

 魔法剣士、という役割があるからか片手剣や短剣などのカテゴリには魔法職の能力を底上げする追加効果があるものも幾つかあるのだ。無論、そのカテゴリーは武器としての威力は若干下がるが、近接の攻撃力と魔法攻撃力を両立させたり、魔法の効果そのものを高めたりと馬鹿に出来ない性能を秘めている。
 そして魔法効果の強化のみを目的とするなら当然杖系が一番高い。
 俺はそもそも近接攻撃力は他の二人に任せているので、魔法効率の高いものを選んで使っているのだ。
 しかも作る時にある程度のカスタマイズも職人さんの方で引き受けてくれるので、俺は基本的に魔法を強化する方向で装備品をランクアップしているのだ。その分、ステータス制限に引っかかりやすくて、相変わらずパーティ内じゃ装備品に関しては出遅れてるけどな!

「ふんふん、そういうのもあるんだねぇ。じゃあ、私は杖マスタリーじゃなくて短剣マスタリーにしておこっと」
「短剣? 何で短剣にするんスか、センパイ」
「瞬、短剣は割と魔法使いの触媒としてはメジャーだぞ。ゲームなんかでも護符だったりするし、確か……霊的な意味も含んだ短剣もあったはずだ。でも先輩なら別に杖でもいいとは思いますけど?」

 波打った刃のクリスとかがそうじゃなかっただろうか。何かで調べた覚えがあるんだけど。
 でも何でまた先輩はそっちを選んだんだろう。杖マスタリーでいいような気がするんだが。

「ここら辺はさっき、沢木クンたちが見せてくれた戦いをみて感じた事かな。ただの魔法職じゃ三人の中に埋もれそうな気がするから」

 そう言って先輩はさらに攻撃魔法カテゴリーの中から幾つかの魔法を選んで習得し……え、それ? それ使うの? 先輩が?

「……大丈夫なんですか、それ」
「うん、説明とイメージ図で大体の効果は分かったから。きっと必要になると思うよ、こういう魔法も」

 心配そうな俺をよそに先輩は何故か自信を持ってその魔法を習得した事を断言する。
 こうして新たに四人目の仲間となる水篠先輩が加わったわけだが、一体どうなることやら。
 この後のフィールドでの戦いで色々と見極めないといけないな。
まあすっかりある界隈で有名になったアーチャーは
剣も弓も使ってますがね(しろめ
+注意+
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