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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

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stage 21 偶然か運命か

 水篠(みずしの) (あい)
 朗らかな性格と面倒見の良さに加え整った容姿から学内でも人気のある先輩だ。
 特に男なら一度は眼を奪われるであろうグラビアアイドル顔負けのスタイルに付随するあの圧倒的な胸だ。ブレザーとブラウスという組み合わせの女子の制服を、大きめのサイズでありながらも押し上げてますと言わんばかりの存在感は圧巻の一言に尽きる。
 下級生はのみならず、同級生においても彼女に太刀打ちできるような生徒は少なくともこの学校では俺は知らない。そもそもそんなに女子の知り合いいないけど、少なくとも先輩を超える胸部装甲を持った女子を俺は見た事は無かった。
 そんなどうでもいい評価はさておき。
 放課後、秘密基地のあるビルの喫茶店に集まって俺達は今日の出来事を話すついでに水篠先輩についても和奈たちに説明していた。ビルの三階で喫茶店って客入りが微妙なんじゃないかと思ったが、どちらかというとここに詰めるスタッフ専用の施設同然だそうで、マスターも俺達に飲み物を提供すると黙って奥に引っ込んでしまっていた。

「話だけ聞いていると何で沢木君達がそんな先輩と知り合っているのかが不思議なんだけど」
「高峰の疑問はもっともだけど、これもまた偶然の重なり合いっていうか、なあ……瞬?」
「んだなあ、オレらも最初は正直センパイが学校で噂に聞く人だとは思わなかったし」

 先輩との出会いはちょうど一年前に遡る。
 新作のゲームを買おうと瞬と二人でショップに行った時のことだ。俺達は通販も利用するが、通っている店のオッちゃんが気のいい人で、偶に日雇いのバイトとして倉庫整理の仕事などを斡旋してくれた事もあってメジャーなタイトルや新作はその店で買うようにしていたのだ。
 雨のせいで客入りもまばらだったその日、買い物を済ませて店を出ようとした俺達に突然声をかけてきたのだ。

『ねえねえ、その制服おんなじ学校の子だよね!? ちょっと教えてほしい事があるんだけど!』

 美人の問いに俺は多少戸惑ったものの、確かに同じ学校の女子の制服だという事は分かったので話を聞いてみたのだ。曰く、従姉妹に頼まれたゲームソフトを買いに来たそうなのだが二種類あるようでどっちが正しいのかを教えて欲しいと。
 店員に聞いた方が早いのではと思いつつも、その二つのパッケージを見比べた俺達は、

『ああ、これはこっちのがいいっすよ。こっちの方が後になって出たバージョンですから』
『あ、そうなの? 何か従姉妹から聞いたタイトルはどっちにもついてるんだけど、こっちの後半の方は聞かなかったから分からなくて』

 そう、そのタイトルは発売後一年経ってからマイナーチェンジとネット配信の追加データを全部収録した後期バージョンがあるタイトルだったんだ。
 従姉妹の人は入院生活が長かったのでそこら辺を知らなかったらしい。

「んで、その事の礼にって俺達に手作りの菓子まで振る舞ってくれてさ」
「その後も、ちょくちょく相談に乗ったよな。今じゃセンパイもすっかり慣れたゲーマーだけど」

 入院した従姉妹と遊ぶ為にとわざわざゲーム機を揃えてソフトまで買い、人に教えを請うて上達しようとする先輩の人柄が気に入った俺達は遊びがてら先輩に様々なテクを伝授した。
 従姉妹の子はどうやら協力プレイのゲームが好みらしく、有名な狩りゲーのクリーチャーハンターシリーズや、それらのジャンルの中ではかなりハイスピードなアクションを要求されるゴッデスイレイサーシリーズに、対戦要素のあるRPGの代表作であるミニチュアモンスターの基本なんかも教えたりした。
 そんな中で個人的にも色々ゲームに手を出すようになった先輩からは度々攻略法やプレイの感想なんかを話し合ったりする仲だ。自慢するわけじゃないが、一応友人、と言っても差し支えないと思う。アドレスの交換なんかもしてるし、SP5のフレンド登録もしてるしな。

「先輩の好みのジャンルからは外れてるからREGAIN HEROES系のゲームはやってなくてもおかしくないな。あの人、アクション系はもっぱら狩りゲーだけでよさそうな感じだったし」
「今までも和奈ちゃんところのゲームの名前が出てきたことはないしな」
「そうですか……そういう人にも是非手にとってもらいた――あ、いえ、今は営業の話ではなかったですね」

 えへん、とわざとらしく咳をして空気を変えようとする和奈。うむ、今日も可愛い。
 じゃなくて。

「幸い、コネクトの条件であるレベル10になるにはそれほど高い腕前が必要なわけではないですし、場合によってはコネクトから先に入ってそこから事情を説明しても問題はないのですが……沢木さん達から見てどうですか? その水篠さんという方は協力してもらえそうでしょうか?」
「それなり程度の付き合いでしかないが……良い人か悪い人かってなら少なくともあの人は善人なのは間違いないよ。ちょっと天然入ってるし、裏表があんまりありそうなタイプじゃない」
「オレも問題はないと思うけど、命懸けで戦ってくれるかどうかは別じゃねーかな」

 瞬の言うとおりだ。俺達は酔狂な人間だという自覚はある。善人である事がそのままイコール仲間になってくれる人かどうかは分かるまい。命は誰だって惜しいのだし、ほぼ見返りの無い状況で化物相手に戦ってくれというのはそうそう引き受けようなんて考えるヤツはいないだろう。

「……そうですね、では沢木さん達の立会いの下でコネクトを行います。本来であればREGAIN HEROESをプレイしてもらい、レベルが10に達してからという形を取りたいのですが相変わらず時間がありませんので」
「そういやメールでも言ってたな。何か問題が起こってるって」
「はい、どうやらインベーダー達による工作が行われているようなのです。防衛戦の前に、まずはこの工作を行っているインベーダーを倒してしまいたいのですが……まだ所在が掴めていなくて」

 和奈がやや消沈したように俯いた。インベーダーはそんな姑息な手も使ってくるのか。いや、普通か。こっちの世界ごと滅ぼそうってんだから打てる手はどんな手でも使ってくるだろう。坂本さんも言ってたたしな。

「幸いにして被害にあった方たちは今日明日にどうこうなるという深刻なものではないのですが、被害者の分布が日守市全域に及ぶほどなのが問題でして。わたし達の組織でもまずは所在が確認できた被害者を組織の傘下の病院に収納するだけでも一手間なのです」
「うっそだろ、市全体かよ……一体何が起こってるんだよ、和奈ちゃん?」
「実は……」

 和奈の話から例え防衛戦がまだ先であっても事件が起こらないとは限らない事を、俺達はその日改めて知る事になった。
 ……水篠先輩、力になってくれるかな。気心も知れてるし頼りにはなるんだけど、どうなるか。


 ◆


 翌日の放課後。

「先輩、ちょっと頼みごとがあるんですけど」
「いいよー、何かなー?」
「それに関連して会って欲しい人がいるんですけど、今日って都合大丈夫です?」
「問題ないよー?」

 うん、この一言だけでわざわざご同行してくださる先輩。顔見知りとはいえもうちょっと警戒して欲しいと思った。いや、隙が多いって訳ではないのは知ってるんだけどさ。前に瞬と一緒に街中でナンパされてる先輩を見て助けようと思ったらのらりくらりとあっさりかわしてたし。さらにトドメとばかりに俺達をダシにした機転には驚かされた。咄嗟に話を合わせるのも大変だった程に。
 そんな肝も据わっている先輩でも――つい先程まで目の前で起こった光景には言葉を失ったようだった。
 例の秘密基地への案内、和奈の説明、半信半疑の先輩と共に訓練用のフィールドへの虚界接続(コネクト)、次いで起こる非現実的な戦闘の数々。
 流石に先輩にいきなり実戦を経験してもらうような事はなかったが、俺達がしっかりと実体を持っていること、この光景が夢ではない事、そして和奈の話が事実である事を理解してもらうには十分なデモンストレーションにはなったようだ。
 現実世界に戻り、簡素な応接間に通された後も先輩はただ黙ったままで何事かを考えているようだった。正直、パニックになってないだけでも大したものだと思う。是非とも仲間になってくれれば精神的には心強いのだが……。

「……あー、えっと、とりあえず和奈ちゃんの言ってる事と、沢木クン達のやってることは理解できた、かな。正直、まだちょっと頭が追いついてないんだけど」
「無理ないっすよ。オレらも突然でしたから」
「いきなりミノタウロスと大立ち回りだったもんなあ」

 まだ一ヶ月しか経ってないのに、随分と昔の様に感じる。
 使い古されたフレーズだが、実際に体験すると本当に時間の流れってのは不思議なもんだ。

「それで……そのREGAIN HEROES? だっけ。そのゲームをプレイすれば私にも皆みたいな飛んだり跳ねたり雷をドバーって出したり出来るようになるのかな?」
「本人の適性に合わせたクラスに拘ると、一概にどうなるかは断言できないかな」
「オレみたいにキワモノになる可能性もあるんスよ」
「本人の適性と嗜好により最適な能力を自動で選出する……けど、それはあくまで成長効率と取得できる能力の制限の問題で、かなり本人の選択による余地も残してる、と。うん、確かにこれは理想的なトレーナーシステムを搭載した画期的なゲームではあるね」

 ふむふむと納得したように頷いている先輩だが、俺は逆にその冷静さに舌を巻いた。
 目の前の出来事に対し、非現実的だ、理解不能だと考える事を放棄せず、口調こそ穏やかながら得た情報を整理する姿は合理的だ。こんな理知的な一面もあったのかと驚く反面、先輩にゲームの手ほどきをした時も、そういえばこんな風にじっくりと噛み砕いて理解しようとしていた節がある。
 何と言うか……物事を考えるのに常識だとか自分の知識の範囲外だからとか、分からない理由は捨てて、分かるためにはどう見るべきか、どう考えるべきか、そういう取捨選択を自然と行える女性だというか。

「うーん……これだけのモノを見せられると我が身可愛さだけに断れるって話ではないね。もしかしたら、私がここで頑張らなかった事でいつの間にか沢木クン達があっさり死んじゃって学校からもいなくなるかもしれないんだもの」
「先輩、リスク的には事実だけどそこははっきり言わんで欲しい」

 正直、いっぱいいっぱいの戦いしてるんで、いつ死亡フラグが立つか微妙なんですよ。

「ごめんごめん、でも三人ともそれを覚悟の上で戦ってるわけでしょ? 私も一緒に並ぼうと思ったらその怖さを忘れちゃいけないな、とは思うの」
「……意外と落ち着いた考えを持ってるんですね」

 高峰はいつもの口調のようだったが、少しだけ驚きが混じっているような声だった。

「ふふ、底抜けに明るいからあんまり物事を深く考えるタイプじゃないのかなって思ったでしょう。そうでもないんだなー、これが」

 すいません、実は俺も初対面では結構思ってました。

「正直協力するのはやぶさかでもないと思ってる。でも、和奈ちゃん、交換条件としてはちょっとズルイのかもしれないけど、一つだけ私の頼みを聞いてくれないかな?」
「何でしょう? どんな事でも……とは言えませんが可能な範囲でしたら」
「うん、和奈ちゃんの組織の力で――私の従姉妹を助けられないかな?」

 ん? 従姉妹って話に聞いてた例の子だよな。
 おかしいな、確か今年に入って会った時に先輩は確か……。

「センパイ、従姉妹さんまた何かあったんスか? だって今年しっかり退院できてちゃんと高校に入学できたって言ってたじゃないスか」
「うん、だけど連休の間に突然また入院する事になったの。それも……今度は原因不明の衰弱とかで」

 瞬の問い掛けに先輩は少し気落ちした風で答えた。にしても原因不明とは穏やかじゃ無いぞ。一体、先輩の従姉妹に何があったんだ?
 そんな心配そうな俺達に対して、先輩はぽつりぽつりと状況を語り始めた。

「何の前触れも無く家で突然倒れて……伯父さん達も例の病気が完治したばっかりだったから、すぐに救急車を呼んだんだけど……意識が戻らないまま、ただゆっくりと衰弱する症状だけが進行するっていう病気らしいの。治療の目処も立ってないらしくて……」

 なるほど、そりゃ和奈の力を頼るわけだ。
 この組織の技術力は現代世界の一歩先を行っている。今はまだ世話になってないが、俺達が重傷を負いそれがそのまま肉体にフィードバックされた場合の緊急用の治療施設なんかもこの基地内には併設されているしな。

「私の身内だけが公に存在しない技術に頼るっていうのはちょっとだけズルイかもだけど、でも……」

 この組織がそういった技術を公的にしない理由も聡明な先輩は理解しているのだろう。だからこそ、都合よく頼る事に後ろめたい気持ちがあるようで、やや俯きがちに先輩は尋ねたのだが。

「待ってください、水篠さん。その件、もしかするとそんな後ろめたい気持ちを抱かずともよいかもしれません。従姉妹の方のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「名前? 木塚(きづか) 理穂(りほ)……だけど」
「坂本」
「はい、お嬢様。しばしお待ちを」

 和奈の後ろに控えていた坂本さんは詳しく聞かずとも和奈の命令を理解したようで、スマホを取り出すと何やら連絡を取り、先程の先輩の従姉妹の名前を出し、何やら確認をさせている。

「お嬢様、被害者のリストの中に名前がございました。同名の方もいらっしゃらないようですので、間違いないでしょう」
「やはりそうですか……水篠さん。貴方の従姉妹は――どうやらインベーダーの魔の手に落ちているようです」

 
ほわほわ系のゆるふわ巨乳属性の、しかし中々にキレる頭もお持ちの先輩登場。
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