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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 2 願いは きっとそこに

22/145

stage 20 仲間を求めて(別に荒野ではないけど)

 連休明けの学校での教室。
 すっかりと春の爽やかな雰囲気が満ちてきたにもかかわらず周囲には数多の屍が満ちていた。

「あー、学校だりぃー」
「もうすぐ中間なのもかったりぃー」
「今日の現国もかったりぃー」
「午後の体育もかったりぃー」
「お前ら他に言う事無いのかよ」

 まるで示し合わせたように机に突っ伏してだらけるクラスメイトたちに突っ込む俺だったが気持ちは分かる。
 連休明けの初日はねぇ……かったるいしだるいよね、よく分かる。
 だが、誰かが言ったようにもうすぐ二年最初の中間テストもあるのだ。主要五教科だけだけど、それだけにどれも落とすと期末がキツい事になる。主に追試や夏休みの補習を食らうかどうかのボーダー判定的に。
 ウチの学校は二つのテストでの成績を加味して追試や補習の判定が行われる。中間でそこそこの点数を稼いでおけば期末で多少落としてもペナルティは避けられるが、逆に言うと内容的に比較的楽な中間で落としてしまうと期末テストの要求点が上がってしまうので、賢い学生は中間テストで出来るだけ点数を稼ぐのが常だ。

 まあ、追試や補習を避ける為に悪知恵を働かせる学生を果たして賢いというかはおいておいて。

 俺としても色んな理由からテストの点数は落とせない。
 追試や補習など受ける時間がもったいないというのもあるが、成績を落とすような事になれば和奈に怒られるか心配されるかのどちらかである。或いは両方か。どっちにしても胸が痛むことになりかねないので、普段の生活はちゃんとやってるぞー、という証明の為にも出来る限りテストは頑張らねばならんのだ。

「それはそうと沢木ー、お前こないだファミレスでデートしてたって?」
「柏谷も一緒にいたらしいな? 何だよダブルデートかおい? ええ、おい?」

 む、例の祝勝会の時の事だろうか。あれから音沙汰無かったから目撃されてないと思ってたのに。
 というか肩を組みつつも無駄に力が篭もってて痛い。顔は笑っているが吐くなら今の内だぞ? みたいな脅しが目に見える。
 ふ、しかし甘いなクラスメイト達よ。あれは単なる職場での打ち上げのようなものに近い。ましてやデートのような甘酸っぱい代物ではないのだ。今はまだな!

「ちげぇよ。ちょっとバイト先で大きな仕事が終わったからそこで一緒に働いてる子と打ち上げしたってだけだ」
「何だよつまんねー。でも、それなら一緒にいた子を紹介とかしてくんねえ?」
「残念、一人は既に彼氏持ちだし、もう一人の方は色々と厳しそうだからオススメできない」

 彼氏通り越して婚約者持ちに紹介なんぞ出来るわけ無いし。
 というかあの婚約者は一介の学生が太刀打ちするには難度が高すぎる。容姿、年収、職業、どれを取っても一級品ですよ。
 もう一人の方はわざわざライバルを増やすような真似をするわけがない。

「そっか、それじゃしゃーねーな」
「ったくよー、どいつもこいつも二年になった途端にカノジョとか作りやがってよー。知ってっか沢木? バスケ部の大田も最近彼女できたんだぜ。三年のマネージャーとだってよ」
「マジか。アイツ年下趣味じゃなかったっけ」
「いやあ、それがそのマネージャーさん結構童顔だしぶっちゃけ先輩に見えないんだよな。だからオッケーだったんじゃねーの?」
「うらやまけしからんな。実にうらやまけしからん」
「サッカー部の新田もテニス部の新入生とイチャイチャしてるしって噂だし……沢木も気をつけろよ。モテない男同盟はいつでも裏切り者に制裁を加える用意がある」
「俺に限ってそんな心配は要らないよ」

 同じ学校の子が相手じゃないからな。いくらでもごまかしようがあるってもんだ。
 うん、まだ付き合う段階にすら行ってないけどな! そんな心配するだけ無駄なんだけどね!
 だが仕方ないのだ。いずれは、とか、そのうち、とかね。こう、ちょっとずつ距離を詰めていけばもしかしたらワンチャンあるんじゃないか、とか考えちゃうのは男の子のサガなのだ。
 我ながら女々しい考えだが仕方ないのだ。俺はイケメンではないのだから。外見も精神も。よって地道な努力を続けるしかない。ソウルフォームのレベルアップもいいが、男レベルも上げたいな。坂本さんに教えを請うべきだろうか……いや、高峰に色々とバレたらそれはそれで後が怖い。
 くっそぉ……考えるべき事、やるべき事山積みじゃないかよぉ。仲間探しの問題もあるし、兼業ヒーローは辛いぜ。ああ、休み明けのテンションも相まってやる気が出てこない。
 あー、だるいなあもう。
 っと、スマホがブルってる。誰かからメールかな?

『おはようございます、沢木さん。連休明けであまり気持ちが上向きにならないかもしれませんが、ちょっとだけ頑張って乗り切ってくださいね。わたしも目の前の書類の山から逃げたいですけど、お仕事ですので頑張ります。実はインベーダーが関係していると思わしき案件が一件入って来ていますので、そちらについて是非ご助力願えればと思います』

 あ、やっばいこれ。何だろ、このほんわかした気持ち。
 多分、和奈も後半の仕事の件のついでに自分に言い聞かせるつもりでこのメールを打ったんだろうけど、一緒に頑張ろうぜ、な気持ちが湧きあがるのが止められない。
 事務的なメールでいいだろうに、こういう気づかいが出来るとは何て天使。
 そうだよ、和奈に比べればただ勉強だけすればいい俺の環境なんざ甘えもいいところだ。和奈は仕事してんだぞ、立派な社会人だよ。このくらいでウダウダやってたら和奈に顔向けできないじゃないか。
 俺は即座にメールの返事を打つ。こういうのは思いついたときの勢いでやってしまえ。

『メールありがとな。やる気出ないなーって思ってたけど、和奈のお陰でやる気出たわ。インベーダーの件は任せとけ。お兄さん張り切っちゃうぞー』

 流石に今日も可愛いなとかキザな文面は入れる勇気が無かったが、これで俺の言いたい事が伝わってくれたならいいが。よし、和奈に負けないよう俺も気合を入れるとしよう。

「……あのニヤケ顔でのメール……どう思うよ?」
「証拠が無いからこれ以上は問い詰められんが……要注意かもしれんとリーダーには伝えておけ。ああいうフツメンからこそ裏切り者は出る」
「イエッサー、全ては我らがモテない同盟の為に」

 そんな不穏な会話をクラスメイトがしていることを浮かれていた俺は知らなかった。


 ◆


「あー、それオレも昨日試してみたけど見つからんかった」
「やっぱりか、中々厳しそうだよな」
「わざわざ駅前から終点のバスに乗って探したんだけどなぁ」
「それはやりすぎだ。和奈もそこまでやってほしいとは言ってないだろ」

 そして終点から逆方向のバスに乗って帰ってくるときも反応がなかったらしい。よりにもよってぐるっと市内を回る路線のバスじゃないか。サーチアプリの索敵範囲がそこまで広くないとはいえ、日守市の目ぼしい場所はそれだけでほぼ探したようなもんだぞ。
 ずるるー、と物凄い勢いでラーメンをすすりながら暢気に返す瞬。二人揃って午後に体育があるというのにガッツリ食べているが、まあラストの時間割だし大丈夫だろう。種目も球技だし。
 うちの学校の食堂はそこそこ広い上に待ち時間も短い。席数も多めな上に、購買もあるから利用客が分散するので座れない事も滅多に無いので利用しやすい。
 両親の仕事の時間が不定期で弁当を作る余裕が無い俺や寮生活の瞬は度々お世話になっていた。ボリュームもあるし味も良い。俺のカツ丼も下手な店で食うよりカツはジューシー、卵はクリーミー、タマネギがよく煮えていてメシが美味い。

「そういや、今月から通う予定だった短期バイトキャンセルしたわ。和奈ちゃんのお陰で金には困んねーし、アレとかの関係で仕事先に迷惑かけてもなんだしさ」
「それがいいかもな。俺も今月から仕事探そうかと思ったけどやめといた」

 そう、和奈は俺達にあくまで「REGAIN HEROESのテスター」として学生が手にしても問題の無い程度の金額を報酬として振り込んでくれたのだ。

『本当はお金で沢木さん達の戦いを評価しているみたいな事はしたくはないんですが……』

 と、落ち込んだ表情で零す和奈をなんとか宥めたのを思い出して苦笑する。
 そもそも無償で引き受けるって言ったのに金まで出るんならこっちは万歳三唱モノなのだが、和奈からするとあの命懸けの戦いをこんなはした金で、という気持ちが強いらしい。
 気持ちは嬉しいが、何の変哲もない高校生が突然大金を手にしても問題だし親の説明にも困る。和奈がちゃんと評価してくれてるのが何よりで、後はおまけみたいなもんだから気にするなと言ったら、仕事上で使ったお金はちゃんと経費にしますから、と力強く言ったもんだから全員で思わず爆笑したほどだ。
 まあそんなこんなで、俺も瞬も下手にバイトを探さなくても十分すぎるほどの金額が入ってくるようになったのである。両親にもきちんと説明したし、こうして食堂でメシを食う回数を増やすくらいの贅沢が出来る事はありがたいものだ。その辺を力説しても和奈は信じないかもしれないが。

「けど、仲間探しは本当に難航しそうだな。どうしたもんか……」
「俺らくらいの年代が一番適性があるんだろ?」
「坂本さんの話じゃもともと『そっち』がらみの資質を持っていた人でも二十代半ばを過ぎた辺りからめっきり無くなるらしい。んでもって資質を持ったヤツが生まれる率も極めて低くなっちまったって話だったな」

 和奈達の組織でも領域体――ソウルフォームへの適性は遺伝するのかしないのかがはっきりしていないという。ただ、文明の発達に伴い減少傾向にあるという記録だけはある事から、やはり自然に接しない生活が人間から神秘的な力を徐々に衰退させたのでは、という推測はあるそうだ。
 フィクションでは有名な陰陽道も、実は表の歴史に記されているのはフェイクであり実際には俺らの知るファンタジーな陰陽術も実在したそうな。そんな名門陰陽師の血族も現代に生きているそうだが、今ではかなり的中率の高い占いを行えるくらいが精々で、領域体となってインベーダーと戦う力を持っている人はいないのだ。
 一体どんな要因で受け継がれるのか、或いは突然生まれるのか。千年以上にも及ぶ戦いの歴史を紐解いても、こうして戦える人間の力の秘密の全貌すら明らかになってないのだからリアルってのは本当に厄介なもんだ。
 なお、その陰陽師の一族は東京の繁華街で千里眼の魔女などというあだ名を持った有名な占い師であることは余談である。

 仲間探しで思い出したが、そういえばこのアプリ、学校では起動してなかったな。

「そういや、学校で起動するのは忘れてた」 
「一応ガッコでもアプリは起動しておくか?」
「常時つけてなくても、とりあえず今一回やってみればいいだろ」

 この探索範囲なら学校全体を余裕でカバーできる。一度サーチしてみて反応が無ければウチの生徒には適性のある者はいないと思って構うまい。
 スマホを操作し件のアプリを起動すると、即座に学校の詳細な地図が映し出され――俺達の近くで一つの光点が明滅した。

「「いたーーーーーーーーっ!?」」

 ガタン、と思わず立ち上がってしまう俺と瞬。
 そして膝を思い切りテーブルに強打しその場で飛び跳ねて悶絶する。ぐおお、いってえええええええ!
 周囲の生徒もチラチラとこちらに視線を向けているが、俺達の様子を見て何事か察したようで興味を無くしたように視線を戻す。うん、ぶつけたのが後なんですけどね。まあ、勘違いしてくれるんならいいか。
 いや、よくねえ! こんな近くにいるってすぐ目の前にいるってことだぞ、一体誰――?

「ありゃりゃ? 何か騒いでる子達がいるなーって思ったら沢木クンに柏谷クンじゃん。だめだぞー、食堂で騒いだらー」

 あまり手入れしてないかのように見える癖っ毛のおおいセミロング。
 母性の象徴たる双丘は制服を押し上げてなお窮屈そうなほどに豊穣に満ち。
 明るい顔だちに全体的に柔らかな顔つきはまさしく「近所のお姉さん」を思わせる気さくさも相まって愛嬌があるその人は。

「水篠センパイ……チーッス……いてーっす」
「はーい、チーッス。って騒いだんじゃなくてぶつけたんだ? 大丈夫ー柏谷クン?」

 割と本気で痛がっている瞬に心配そうに話しかけるその三年生の先輩は俺達のよく知る――ゲーマーの先輩だった。


あの曲は本当フィールド曲としてはシリーズでも上位に
食い込む。

それはさておきモブズの安定感。すっかりこの手のキャラに
書き慣れてしまった感があります。
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