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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 2 願いは きっとそこに

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stage 19 仲間探しは前途多難

 連休の中日。
 ああ、もうすぐ学校が(会社でも可)始まるなー、でもまだ半分だから忘れようー、と多くの人々が現実から目を背けるであろう一日。
 朝起きたら両親は居らず、冷蔵庫の中も見事に空っぽだったので簡素な朝食を済ませたが昼食はそうもいかないので財布片手に街に出てきた俺。
 やろうと思えば簡単な料理は出来るけど材料が無くちゃなあ。そもそもレパートリーがそんなにないので、滅多に自炊はしないし。母さんはともかく父さんも結構な料理上手なのに、子の俺には何故にセンスが遺伝しなかったのか。いや、両親が上手だから上達しようとする気が起きないのか?
 そんなこんなで多少の疲れはあるものの肉体的には元気だったので外食をしようと駅前まで歩いてきた。
 正直、昨日の訓練では疲労困憊を通り越すレベルまで疲れたと思うのだがソウルフォームから現実の身体に戻った後は、ちょっと疲れたな、と感じるくらいだった。これが訓練専用のフィールドだったからいいが、実際の戦闘領域で精も根も使い果たすレベルまで酷使すると翌日は休んだ方がいいくらいバテるらしいけど。
 折角の休みを寝て潰すのもゲームだけで潰すのも勿体無いと思い、元気なのをいいことに晴天の駅前まで出向いてきたが、うーむ、いまいちピンと来る店がない。
 結構な人で賑わっているけど不快なほど人ごみという訳でもないし、行こうと思えば何処にでも行けるのだが、これだという店が決まらないな。まだ昼飯にはちょっと早いけど、着く頃には何か思いつくだろうと思って早々に出てきたけど失敗だったかな。

「お、そうだ。折角だし貰ったアプリでちょっと街中に仲間候補がいないかチェックしてみるか」

 和奈経由で送られてきたサーチアプリ「ソウルトレジャー」を起動してみる。
 画面上では単なる立体視の地図アプリなのだが、俺達のようにソウルフォームへの適性がある人間には同類の居場所が光点となって表示されるというアプリだった。しかも無駄に詳細な地図を衛星から転送してくる他、建物の中ですら本来は公開されないようなレベルでの詳細な案内図を作り出すというとんでもないアプリである。
 ……偽装用の為に地図アプリにしたはずなのに高性能過ぎたら意味無いんじゃないだろうか。まあ、俺達が人前で使わなければ問題ないのだが。
 早速画面下部のサーチボタンをタップしてみる。まるでソナーを思わせる円形の波紋が画面中央から広がっていき、周囲を探索することしばし。

 反応、ゼロ。

「……探知範囲がそれほど広くないとは聞いていたが、これだけ人がいる中でも反応が無いとなると前途多難すぎるな……」

 なおソウルフォームへの適性そのものの反応と個人が持つ波動は違うらしく、適性だけで探していると以前に和奈達がダメ出しした連中が引っかかるからと、サーチ時には和奈の組織のデータベースから排除した連中の波動を参照してそいつらはサーチに引っかからないように弾いているらしい。
 しかし、それを含めてもこの反応の無さは困りものだ。そりゃ和奈たちも人員確保に頭を抱えるわけである。
 能力の次世代への継承が上手くいかず組織内での構成員の減少。
 やむなく外部への協力者を求めるも、適性者の少なさ、人格面の問題によるスカウト不成立。
 バックアップは積み重ねた歴史と技術の進歩によって充実しているのに、肝心の現場で戦う人間がいないという問題は事の他大きいのだな、とこの結果から改めて感じるな。
 ビジネスライクな形で戦力を確保している国や支部もあるそうだが、日本だと中々難しいだろうな。大金積まれていざ引き受けても、最後にはどうしたって命と秤にかけて命を取るやつが多いだろうしそれが普通だ。
 傭兵である以上、引き受けたら最後までやりとおす、みたいなプロ根性を持ってるヤツがそうそう転がってるとは思えないし。まあ、それ以上に俺らみたいに少なからず善意から協力するってヤツの方がもっと少ないだろうけど。
 とはいえ土壇場で及び腰になるようなヤツを無理に引き入れてもなあ。いや、及び腰になるなって言う方が難しい案件なのは理解してるけど。多少なりとも責任感が無いと安心して背中を任せられないってのはあるな。
 そこら辺はアルバイトと似たようなもんだよなー。やる気ないやつと組んでも時間ばっかりかかって仕事が終わらない終わらない。協力してさっさと手際よく終わらせて、後は程々に頑張れば楽に稼げるってのに、何でダラダラと無駄に働いてそういうヤツに限ってあー疲れるわーとか言うんだか。
 効率って大事なんだぞ、何事も。ただ時間をかければいいわけじゃないんだ。

 何か頭使ってたら腹減ったな。

「お、あそこのラーメン屋、祝日サービスなんてやってる」

 ラーメン頼めばチャーハンか餃子をサービスか。そりゃお得だ。前に瞬と食べに来た事のある店で美味かった覚えのある店だからもうここでいいや。
 まだ昼にはちょっと早い時間だったが、サービスの影響なのかそこそこ人が入っていた。

「……らっしゃい」
「いらっしゃいませー、お一人様ですかー?」
「そうです」
「カウンターがよろしいですか? そちらのテーブルでも大丈夫ですけど」
「あ、んじゃテーブルで」

 壁際の二人掛けの小さなテーブルに店員のお姉さんに案内してもらって座る。
 ここの店長、すげぇ強面だし無愛想なんだけど何故か店は繁盛してるんだよな。まあ料理を出す店ならこれくらいドスが利いてた方がインパクトあるかもだけど。職人肌っぽいのを外見から感じるというか。もっとも近くで見るとガチで怖いので俺はカウンターは遠慮したのだが。
 醤油ラーメンと小盛りチャーハンを頼んで俺はいつものアバターチェック用のアプリを起動した。
 表示されているレベルは14。流石にポンポンと簡単に上がるレベルではなくなってきたが、昨日の訓練での成果はどちらかというと汎用スキルポイントの取得量と使った戦闘スキルの成長度合いの高さの方が効果が高い。
 どうやらインベーダーを倒す方がプレイヤーレベルを上げる経験値の取得量は多いようだ。一方で高い技量を持つ相手との模擬戦闘の場合、スキルの成長度合いの方にボーナスがかかっているらしい。
 明確な違いが分かった事は今後の訓練内容のバランスと、小規模な領域発生時における討伐の優先度を決める指針になる。特に、防衛戦に相当する戦いを乗り越えると自然と相手側の領域の深い所にもコネクトが可能になる為、戦う相手、領域の規模、手に入る素材など扱う情報量は増えていく。
 特に一度ワンランク上の装備を作るためにも新しく侵入可能になった領域には積極的に攻め込むべきだと坂本さんも忠告してくれた。ただの訓練もいいが、積極的にインベーダーを撃退する方が戦況はこちらには傾くとの事だ。
 さて、どうするかな。色々とやれることはあるんだが……ん?
 これはテキストチャットの受信だな。誰だろ、俺は並行してチャット用のアプリを起動させた。

『沢木さん、今お時間大丈夫ですか?』

 このアイコンは和奈だ。
 おお、愛しのマイエンジェルからのチャットだと!? あ、いや、今の無しでうん。流石にマイエンジェルは自分でも寒いと思った。舞い上がる気持ちを抑えつつ無難な返事を返す。こういうところでチャレンジできるほど、俺はモテ男ではないのだ。

『今丁度外食中で待ち時間を持て余してた。ナイスタイミングだぞ』
『あ、よかったです。実はちょっと嬉しい報告がありまして』

 ほほう、そんな報告をいの一番に伝えてくれるとは。どこまでも可愛い小動物系だな和奈。許されるなら抱きしめて寝てみたい。
 ……よく考えたら一番じゃないかもしれないけど。

『実はわたしのクラススキルも成長する事がわかりましたっ』
『……和奈のクラス?』
『あれ? 言ってませんでしたっけ。わたしの数々のバックアップ能力、あれも全部沢木さん達と同じでクラススキルの一つなんですよー。わたし自身にはレベルが無いので気にしてなかったのですが、先程自分のステータスをチェックしていたらスキルのレベルが上がってましたっ』

 何か文字から嬉しくて仕方ない感じが伝わってくるな。なるほど、プレイヤーキャラとしてのステータスは持たない和奈にもちゃんとREGAIN HEROESの恩恵はあったという事なのか。

『和奈のクラスってそういえば何なんだ?』
『特殊支援系のカテゴリーに属し、プレイヤーアバターのキャラメイク時には一切出現しないクラスカテゴリの中の一つでストラテジストと言います』
『ストラテジスト……えっと軍師か? なるほど、和奈にはある意味ぴったりだな』
『そうでしょうかっ。現場での戦闘の方針は沢木さん達に任せきりなので名前負けしてると思っていますが』

 いやいや、軍師にも色々いるさ。類稀な知恵や戦術で戦況を導くばかりが軍師じゃない。いるだけで場を盛り上げ、士気を高め、この娘の力になろう、そう思わせるのもある意味軍師だと思いますよ。
 まあ、そんな恥ずかしいセリフ返せないけどな! とりあえず、喜びに水を差さないうちにどんなスキルが成長したのか聞いてみよう。

『それで、どんな風にスキルが成長したんだ?』
『はい、敵情報の分析をする『アナライズ』の精度が成長しましたっ。今までの分析情報に加えてインベーダーの大まかなHPを色で判別できるようになりましたよっ』
『おお、そりゃ凄い!』

 実際の所、俺達の戦闘は狩りゲーのような大型モンスターのハントと似たようなところがあるからな。
 相手の状態や挙動から弱ってるか元気なのかを判断せざるを得ない。それが、明確に段階を踏んで理解できるというのは大きな強みだろう。また、弱っている振りなどの仕草で隙を突かれる事もない。実に有用な成長だと断言できると同時に和奈にとっても自信になるだろう。
 例え前線に出なくとも、和奈も共に戦う仲間であり俺達がその戦場を見通す眼を頼もしく思っている事を。

『その成長って俺達と一緒に戦うだけで起こるのか?』
『皆さんのソウルフォームの状態はこちらのシステムでもログを取っているのですが、微量ながら成長の反応がわたしのソウルフォームにも起こっていたらしいです。過去にもわたしと同じような役割を果たしていた方が、共に戦っているだけでも能力の成長は起こると記録を残していたので前例が無いわけではないんですが……』
『今まで何も起こらなかったから半信半疑だったのか?』

 和奈ならありそうな話である。
 他の人はそうでも自分がそうとは限らない。そんな風に思い詰めそうな子だから。

『はい、沢木さんの仰るとおりです。ログを見ても今一つ信じられませんでした』
『和奈は真面目だからな』
『でも、わたしも頑張ればちゃんと結果として反映されるって分かりましたっ。これからももっともっと頑張ってサポートしますので期待しててくださいねっ』
『俺は最初から和奈のことは頼もしく思ってるよ。和奈が後ろで見守ってくれてると思えばこそ戦う気力が湧いてくるってもんだ』
『えっ』

 何せ補助魔法にしろ付与魔法にしろ、敵の情報や勢力がわかってナンボのところがある。
 味方への強化(バフ)だって、単純な能力値の強化以外の魔法は、敵によって的確に使い分けないといけないからな。
 敵の属性は? 攻撃傾向は? 有効な属性は?
 考慮しなきゃならない情報は多いのに、それらの多くは俺の目からは確信を得られない不確かな推測ばかりなのだ。その辺をしっかりと確定情報で即座にくれる和奈の存在のなんとありがたいことよ。
 これらの理由を端的にまとめて説明したのだが、何故かその後のチャットが続かない。
 あれ? 通信切れた? ラグったか?
 そんな事を考えているうちに、店員さんが俺の頼んだものを盆に載せてやってくるのが見えた。
 食事中にスマホをいじるのは行儀が悪い。和奈の事は気になるが、

『すまん、頼んでいた料理が来ちまった。和奈の成長についてはまた後で聞かせてくれ』

 と、これだけ送信して一端スマホをポケットに仕舞――おうとして、ほぼ送信と同時に和奈がようやく出したらしい返信が俺の目に映る。

『ありがとうございます。沢木さんといるだけで、わたしもすごい勇気が湧いてきます。これからも一緒にがんばりばしょうめ』

 何か後半の一部の文字が誤字っていたが、よほどテンパったのだろうか、和奈。
 そういうところも可愛いなぁ、と思いながら緩む口元が抑えきれない俺。
 くそ、傍から見たらキモイ男に見えるんだろうな。さっさとメシ食って誤魔化そう。


 
休日の午後のランチって何故か美味く感じる不思議。
+注意+
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