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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 2 願いは きっとそこに

19/86

stage 17 驚愕のセカンドコンタクト

「……このご時勢だからきちんとした立場にしておかないと、恭二さんに迷惑がかかるでしょう」
「私も彼女の想いを受け入れた時に、世間からあれこれ言われるのは承知の上だったのですが。こうしてきちんと親も認めた婚約者である事を証明できれば問題はありませんからな」

 疑問が解消されないと訓練にならないと思って、少しだけ高峰達の身の上話を聞いてみた。
 年の差婚、その差、実に十八。恭二さんは今年三十五になるそうだ。
 流石に二人の馴れ初めまでは聞く時間がなかったが、婚約者と言う中々に馴染みの無い関係を結んでいる理由については概ね察する事が出来たので良しとする。高峰が大人っぽいこともあり、二人で並んでいても違和感は感じないが、事実関係があやふやだと弁明するだけでも面倒になりそうだしなあ。

「正直、色々聞いてみたい話はあるけどそういうのはまた今度だな」
「訓練の時間がなくなるしな」
「……そうね、恭二さんが『こっち』での力を見せてくれるっていうなら、この程度の事で驚いてばかりもいられないものね」
「……現実の世界でも強いのか」
「指導を受けて五年になるけど、一太刀も浴びせられた事はないわ」

 マジかよ。高峰って現実の世界じゃスーパー女子高生のはずなんだけど。

「八千代と同じく私も和奈お嬢様の護衛も兼ねておりますゆえ、この程度は嗜みですよ」
「そんな謙遜する事はありませんよ、坂本。八千代は口を開けばそれはもう――」
「和奈、これ以上調子に乗るようなら沢木君に貴女の面白おかしいエピソードを全部リークしてもいいのよ?」
「え、えとえと! そうですね、早いところ訓練を始めなければいけませんね! で、でもですね、八千代! 勘違いしないで欲しいのは坂本はこの訓練の相手にはうってつけですし、顔を合わせる機会が増えるのなら、今の内に沢木さん達に二人の関係は知っておいて欲しかったからですね!」
「ええ、そうね。その配慮までなら感謝するけれど、ここぞとばかりに私に反撃したい気持ちが無かった訳ではないのでしょう?」
「あ、あうう……」

 高峰の声には静かな怒りが含まれており、さしもの和奈もこの声にはビビったようだ。
 いや、うん、からかうのもいいけど程々が一番だよ? まあ普段の様子を見るに高峰も高峰で和奈をおちょくる事があるようだから手痛い反撃を食らったわけだが。

「うーん、でもよ、タケ?」
「なんだよ?」
「ぶっちゃけ、違和感ねーよな、高峰と坂本さん。なんつーか実際の歳を聞いても別に気にならなくね?」
「それは俺も思った」

 普通に考えれば三十過ぎた男が女子高生と付き合っている、なんて話だけ聞けば一歩間違ったら犯罪臭までしかねないのだが、美男美女の組み合わせってのもあるが恭二さんの落ち着いた態度と高峰の雰囲気とが上手くマッチしているというか。やはりこういうのもただしイケメンに限る、というやつなのだろうか。
 そんな会話をしつつも準備を整えた俺達三人は坂本さんと対峙する。

「昨日の戦いは記録映像にて拝見いたしました。沢木様達は初陣にも関わらず臆する事無く立ち向かっておられた。私の時でもあそこまで動けた者はそうおりません。賞賛に値する戦いぶりでございました」
「そ、それはどうも……」
「しかし、あの戦いではインベーダー達は多少強い尖兵を送ってきたに過ぎません。私が刃を交えたものの中には我々と変わらぬ姿を持ち、知性があり、はっきりとした邪悪を感じられる者達が混じっておりました」

 気がつけばいつの間にか坂本さんは構えたレイピアの切っ先をこちらに向けていた。
 ……いつ抜いた? いつ構えた?
 まるで瞬きの間にはもう抜き放っていたかのように前動作をまるで感じられなかったが……。
 これが、俺達とかつての戦いを生き抜いた過去の戦士との違いだとでも言うのか。圧倒されて息を飲む俺達を前に坂本さんは淡々と告げる。

「言葉を操り、策を弄し、翻弄す。インベーダーの中にはそうした手腕に長けた者も居るでしょう。事実、彼らの中には現実の世界でも活動が可能な者が居りました。もっとも……並の人間以下の身体能力しか持ち合わせていなかったり、実体がなく干渉できる行動が制限されるなど、脅威としては大きくはありませんでしたが……積極的にこちらに混乱を起こそうとあれこれ策を弄してきた姿は不愉快極まりなかった。私自身、そうした彼らの手段に翻弄された事も少なくは無く、防げた悲劇が防げなかった事もございました」

 僅かな間だけ坂本さんの表情に苦渋の色が滲んだように見えた。
 力の無いヤツラが現実世界で起こすであろう妨害、か。
 人質を取る、洗脳する、或いは俺達の周囲の人間への何らかの接触など。
 いくらでも許しがたい方法は思いつく。そうした被害を彼は目の当たりにした事があるのだろうか。

「幸い、今の時代ではそういった干渉にも対抗する手段が数多くありますが……それでも、命があり言葉が理解できる相手と武器を交える感触というものは中々理解する機会が無い」

 言葉を切った坂本さんの雰囲気が変わる。
 周囲に変化は無い。だが、まるで彼の周りだけとてつもなく低温になったかのような寒気が放たれているような――いや、それも違う。これは……殺気、なのか。

「それを理解するには――やはり刃を交えるのが早い。悪意に負けず、殺気に怯えぬ戦士となるには実戦のその先に自ら飛び込むより他はない」

 静かにその剣先が動く。それだけで、俺達は過剰なまでにビクリ、と反応した。
 気がつけば喉が完全に渇いていた。既に喉元を掴まれているような、そんな息苦しささえ感じる。

「――先手は譲ろう。同じ人の姿をした者と戦うという事を理解する為にまずは、私に向かって一歩を踏み込みたまえ」

 厳かに、しかし甘えを許さぬという徹底した威厳を含ませて坂本さんは言った。
 簡単に言ってくれる。こちとら人に剣を向けるのなんて初めての人間だ。まして、立ってるだけでも震えが来るような相手から先攻を譲られてもどうしろって言うんだ。
 この緊張感、この間のナイトパペットとの戦いすら上回る。喉の次は心臓が握りつぶされそうなほど息苦しいというのに、動悸ばかりが激しくなっていく。
 現実の世界で稽古をつけてもらっていたらしい高峰ですら厳しい表情で刀を静かに構えたままだ。能天気に勢い任せの瞬もどう動いたものかと躊躇っている。俺だって片手剣を握る手に余計な力が入ったままだ。このザマじゃろくな剣戟も放てまい。元から大したスキルレベルでも腕でもないが。
 これが――今後戦う上で俺達が乗り越えねばならない壁、か。
 仲間同士で訓練し切磋琢磨するなんて生温いものではなかった。限りなく死闘に近い環境の中で生を掴み取る、その感覚を磨くためのまさしく戦場の再現。
 ならば、試す。今、ここで、俺達の力がどの程度のものなのかを。

「アクセラレーション!」

 まずは自身の速度を強化。強化魔法は他者にかけるのとは違い、対象が自分である場合ほぼ即時発動が可能だ。速さを得ておけば、他の二人に魔法を使うチャンスも生み出せるだろう。そして、先手を譲ると言った以上、一度だけならばこちらが何をしようとも坂本さんは動かない。
 だからこそ、次には――これを使う!

 目の前に剣の切っ先が迫っていた。

 灰色の沈思黙考(シャープタクティック)の発動と、坂本さんが動いたのはほぼ同時だったらしい。
 本当に音も無く動くとか、達人なんて簡単な言葉で片付けられる強さじゃない。
 動くタイミングが分かっていたからこそ間に合っただけだ。
 向こうが後手に回ると保障してくれたからこそのこの状況だ。故に――この後俺が取るべき行動はただ一つだけ。
 如何にしてこの必殺の刺突を回避するか、それだけである。
 無数のフローチャートの様に俺の脳裏はここから起こりうる状況と取った行動による結果をはじき出す。俺の額を坂本さんの剣が穿つという結果を示す中、たった一つだけ今のこの状況の中でもっともマシな手段が見つかった。
 間に合うかは微妙。解除と同時に身体が動いてもなお、僅かなズレが失敗を招く。
 だが、そもそも迷う事自体が無意味。予測していた姿()()からではその方法しかないのは分かっていた事。こうしてユニークスキルを発動した事で見抜けてしまった。坂本さんは――俺の速さがどこまで強化されたのかを()()した上で俺がギリギリ避けるか避けられないかの速さの刺突を放ってきたのだと。
 恐ろしい。
 何が恐ろしいって坂本さんが放った攻撃に対する穴、すなわち俺が避けるにはどうすればよいかという回答が一つしかない点だ。
 相手の逃げ道を塞ぎ、たった一つだけ抜け穴を用意することで相手の動きを限定しそこでトドメを刺す。バトル漫画やラノベなんかではよくある手法だが現実に出来る人間がいるなどとは到底思えなかった。
 動け、動くしかない。これ以上は思考し続けてもTPの無駄使い。後々の手札を失うだけだ。
 解除と同時に――用意されている正解に向かって飛び出すしかない。そこから後の行動は()()灰色の沈思黙考(シャープタクティック)でどうにかするしかない。

 世界が色づき、凍りついた時は流れを取り戻す。

 スキルの解除と同時に動けたのは我ながら完璧だった。
 紙一重の回避――と見せかけた大掛かりな動きで回り込み直線の動きである刺突の死角側に抜け出す。
 アクセラレーションによる補強もあって、俺程度の敏捷でもそこまではしっかりと再現でき――

「理解した上で踏み込みましたか。覚悟は上出来です、しかし――」

 衝撃と共に世界が回転した。
 何だ、何が起こった!? いや、それよりも灰色の沈思黙考(シャープタクティック)が発動……しなかった?

「私が貴方方の能力を知らないというその前提は……いささか甘いと言えましょうな」

 頭がまるで殴られ続けているかのように痛み、目の前が回り平衡感覚を失って立てない。
 意識を失うほどではないが……この効果……! まさか体術スキルの……!

「生物の気脈を乱し様々な不調を起こす毒手。モンスター相手にも通ずる気功の技が、人間相手に通じぬ道理はありますまい。加えて、沢木様は忘れておられる。強力なスキルにはどのスキルにも『クールタイム』が存在する。大技は得てして連発出来るものではありませんぞ?」

 そうだ……初級クラスの魔法や技しか使ってなかったから意識してなかったが、坂本さんの言うとおりだ。ゲーム的システムでもあり、そのまま現実にも適応されるだろう大技発動に伴うリスクの一つ。

 使うまでの間のチャージタイム。
 使った後の反動によるデメリット。
 再使用できるまでのクールタイム。

 そんなのは存在して当たり前だ。パッシブスキルならばともかくアクション系のスキルにその手のデメリットが無いはずがない。失念していたにも程がある……!
 くっそ……! まんまと坂本さんの手の内じゃないかよ……!
 そこにしか逃げ道が無いと分かっていれば応手はすぐに決まる。俺はそこをさらに灰色の沈思黙考(シャープタクティック)で先読みして対応策を考えるはずが、スキルが発動しない事が分かっている坂本さんにとっちゃいいカモネギだったわけだ。
 俺のこの状態も坂本さんのスキルが生み出した効果の一つだろう。

 体術スキルの一つに「浸透打」というものがあったはずだ。

 読んで字の如く、相手の体表を通して打撃の衝撃を砕くためではなく揺さぶる為に打ち込み、さらに同時に人間の持つ生の波動たる「闘気」を利用し相手の気脈を乱すという特殊な打法で拳を放つスキル。
 攻撃力の倍率を下げる代わりに相手のスキルの大半を封じるという搦め手の一つだ。
 判明している一部のスキルはREGAIN HEROESの中でも確認できたから有用性は理解していたが、状態異常ってのは自分の身体で体感するとここまでキツイのか……! これが毒とか麻痺ならどうなるんだ、一体。

「そして動けぬ獲物を前に――躊躇する獣はおりませぬ。お覚悟を」

 あまりにも容赦が無く、あまりにも冷徹に告げられたその言葉は何よりも戦場というものを明確に再現していた。
 悪意ある者との戦いの苛烈さ、そして熾烈さ。
 指一本動かせぬ状況で、迫る刃を見るしか出来ぬ絶望。
 足掻け、動けと命じるのにそんな意に反して膝を突いたままの自分。
 高峰が割り込む隙もなく、瞬が真っ先に動くよりも先に――スローモーションのように迫る刃だけをやけに強く印象に残したまま。

 坂本さんの細剣は正確に俺の心臓を貫き――そこで俺の意識は暗転した。
ゲーム的にもイベント戦闘は本当これくらい
サクっと終わらせて、プレイヤーにイベント戦闘なのか
そうでないのかの判断を簡潔にさせて欲しいものです(切実
+注意+
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