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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 1 今、そこにある危機

15/110

stage 14 祝勝会


新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
REGAIN HEROESもよろしくね!(ダイマ
 四月某休日。
 俺は朝から慌しくそこそこの広さのリビングと家の中を掃除しながら駆け回っていた。いや、忙しい合間を縫って母さんが適度に掃除してるからさほど汚れてたり散らかってるわけではないのだけど念の為。
 いつもの訓練も皆で朝の内に済ませた後、まだまだ時間もあるからと何故にこんなに気合を入れているのかと言えば、訓練終了後のチャットでの打ち合わせの時の和奈の一言である。

『わたし、同年代の人と集まって遊ぶのって初めてなので凄く楽しみですっ』

 よもやそんな漫画の中のヒロインのような生活をリアルでしている子が身近にいようとは。
 気になって高峰に当たり障りの無い範囲で和奈について尋ねたところ、どうやら和奈は組織の支部長を務めるにあたって留学していた時期もあるそうだ。向こうの大学を飛び級で卒業したため日本に戻って来ても学生としての生活を送ることは無く、彼女にとっての日常とは既に組織の表の仕事の一つである企業運営に携わる事であったらしい。
 不自由を感じるほど仕事を任されているわけでもないし、そもそも和奈は他に類を見ないインベーダーの領域においてバックアップを担当できるソウルフォームになれるという力の持ち主である為、表向きの役職は殆ど飾りのようなものだ。それでも実務が有能であり本人も出来うる限り関わろうとあの小さな身体で頑張っているためか、周りの人も無闇やたらにお姫様扱いをしないそうだがそれはそれで彼女から極当たり前の少女としての日常を奪った。
 元々あまり外向的ではない性格もあってか、前に聞いたとおり一人で過ごす時間が多かった和奈は同世代の友人というのにはとんと恵まれなかったという訳だ。高峰とて常日頃から彼女の側に控えている訳ではない為尚更だろう。
 そしてそんな事情を聞いて――俺達バカコンビの二人が気合を入れないはずが無かった。

 無かったのだが。

「何で瞬はこんな早くからウチに来てんの?」
「寮の部屋で待ってても暇だし、それならタケの手伝いする方が時間も早く過ぎるだろ?」

 いや、とりあえず暇つぶしって言ったらゲームの俺にとってはその発想が少し変わってると思う。
 そして、随分と手際よく掃除をするな、瞬。本当こいつはつくづく何をやらせてもこなしてしまう男である。何故にこれで成績だけは良くならないのか。
 お陰で午前中を使って終わらせるつもりだった掃除が早々に片付いたのはありがたいんだけども。

「予定じゃ13時に集まる話なのに、昼前に来てどうすんだよお前」
「あ、別に気使わなくていいぞ。来る途中で飯は買ってきたから」
「その心配はしてねーよ」

 まあ、母さんも父さんも出かけてて一人だし適当に済ませるかと思っていた飯時が静かにならないのはそれはそれでいいとしよう。

「おじさんとおばさんは相変わらず仲いいのな」
「万年新婚夫婦だからな。俺に手がかからなくなってからは余計に酷くなったように思える」
「いいじゃん、家ん中がギスギスしてるより。ウチだって親が再婚したばっかりの頃はちょっと微妙だったぜ?」
「まあ確かにそういうのよりはいいだろうけどさ」

 俺は唐突に言葉を濁す。それほど深い事情は聞いていないが、瞬の家庭環境は中々に複雑だ。
 というのも、中学二年の時に父親が再婚したらしくその新しい母親にも連れ子がおり、当時の瞬はその新しい家庭の空気に中々馴染めなかった。
 その所為で若干家庭内がギクシャクしていた時期もあり、俺の家に度々来るようになったのもその頃だ。
 別に疎外感を感じるわけではないし、新しい母親や弟にも非はなかったのだがどうにも居辛さの方が強かった瞬は中々折り合いがつけられなかった。それもしばらくの間のことで高校受験が終わる頃にはどうにか落ち着いたのだが。
 そんな中学時代を過ごしたためウチの両親は揃いも揃って瞬を歓迎するのだ。両親揃ってゲーム好きだし、瞬が来ると俺も含めて四人対戦のゲームとかも出来たしなあ。それはそれでこいつもすっかり気軽に来るようになって、今ではこの有様である。
 さほど実家が離れていないのに寮生活を送っているのも、適度な距離感を保つことで逆に家庭内での不和を避けたのだろう。ウチの学校の寮ってそんなに規則厳しくないし、届出さえすれば外泊も可。問題行動だけは起こすなよ、というところさえ守れば悠々と過ごせるからか逆に寮生が何かをやらかしたという話はとんと聞かない。
 とはいえそんな瞬の近況よりも今はもっと大事な事がある。

「それよりも瞬、俺としては和奈を楽しませてやりたいと思う一方で――ゲーマーとして負けられない戦いでもあると思っているんだ」
「お? やっちゃう? 二人が来る前にウォーミングアップやっちゃうのか?」
「当然。いくら女の子と遊ぶとはいえそれはそれ、ゲーマーとして接待プレイなど言語道断。初めてコントローラー握る初心者相手でもあるまいに手加減プレイなど愚の骨頂だと思うわけよ」
「てか、むしろ和奈ちゃんの腕がわかんねーから絶好調の状態に仕上げたいだけなんじゃねーの、タケ?」
「それを言うな」

 そう、むしろゲーム歴はそこそこ長そうな和奈相手にどのジャンルのゲームであっても手加減などするつもりはないのだが、そこはそれ匙加減という物がある。
 圧倒的腕前でもって俺スゲエエエエエ! なプレイをしたところでボッコボコに負かされた相手に良い感情を抱くかと問われれば難しいところである。かといって、あからさまな接待プレイで、わーすごーい、と相手を持ち上げるのもいかがなものだろうか。
 ゲームとは終わった後のすっきり感というものが大事だ。ようするに勝とうが負けようが、参加した全員が、あれやこれやと感想を交わしつつ楽しかったね、という爽やかな空気が自然と生み出されるような終わり方こそがベストではなかろうかと。
 そんな状況を生み出すためには俺が圧勝しても大敗してもよろしくなかろう。特に和奈あたりは間違いなく気遣うに違いない。思い切り笑い飛ばせるような終わり方、それこそが大人数でのゲームでの理想であると俺は主張する。

「折角だから気持ちよく遊びたいだろ。最近、ずっとREGAIN HEROESにかかりっきりだったし、他のゲームの勘くらい取り戻しておきたいんだよ」
「へいへい、つっても格ゲーはいいだろ? パズル系もどっちかってーと二人対戦系だし……やっぱこれか?」
「そうだな……これは外せないだろうな。後、ボードゲーム系は大丈夫だろ。これはもうプレイの腕がどうこうというより本人のセンスと運次第だし」
「真剣に選ぶねえ。そんなに和奈ちゃんにいいところ見せたいか」
「ぶん殴るぞ」

 人間、本音を突かれると痛いのだ。


 ◆


 そんなこんなで緊張気味に我が家の門をくぐった和奈と、興味深げに視線をあちこちに向ける高峰とを予定通りに招き入れた。白のプリーツロングキャミに明るめの色のシャツを合わせた和奈に、スキニージーンズにゆったりめのトップスでまとめた高峰と対照的ながらどちらも圧倒的美少女オーラを放つ二人を玄関に通しただけで、俺はガラにも無く緊張していた。声を震わせなかったことを褒めて欲しいくらいだ。笑わば笑え、これが所詮モテない男子の精神力の限界である。
 運転手つきの車で現れるのは何とく予想はしていたが、運転していたらしいナイスミドルな紳士に見送られる二人の姿が板についてのが印象的だった。やはり彼女らの世界と俺達の世界とが交わったのは本当に奇跡に近い偶然のようなものだったのだと。

「きょ、今日はお日柄もよくっ」
「いやいや、和奈。そんな仰々しい挨拶いらないから」

 どんだけ緊張してるんだこの娘。だが、可愛い。逆に俺の緊張がほんわかとした気分によって解された。今日は楽しんでもらえるといいが。いや、楽しませねば、うん。
 だが、そんな感慨も決意も、

「これで柏谷さんはしばらくの間このエリアからは抜けられません。ふふふ、わたしの関所をグルグル回って通行料を上げてくださいね」
「げ、外道だ! 外道がここにいるぞ、タケぇー!?」
「沢木君、そこの土地は貰うわよ。ふふふ、独占のためなら五倍買いなんてどうってことないわよね――貴方のお金ですもの」
「お、俺から巻き上げた金で俺が妨害用に買った土地を奪い取るだとぉー!?」

 この美少女ゲーマー二人に翻弄される頃には吹き飛んでいた。
 何この娘ら、強い、強すぎる。
 手土産にと二人が持参してきた菓子類の高級感に驚くのも束の間、俺達は紆余曲折の末、有名なボードゲームである「がっつりストリート」を始めたのだが、三十分後の今、俺達はまさに夜叉二人と相対していたのだと気づいた。
 このゲーム、すごろくのように様々なイベントの起こるマスと、このゲームの基本である「土地」で構成されたエリアを回り、土地を買って建物を立て、他のプレイヤーからは自分の土地に止まった際の通行料を奪い、それらを繰り返して最終的に目標金額を達成したプレイヤーが優勝というタイプのゲームだ。
 立てる建物にも種類があり、物によっては単に通行料を奪うだけではない機能を備えていたりと戦略的にも重要なのだが、今回選んだマップは特定のマスに止まらないと延々とぐるぐる回り続けるだけの本筋から外れて独立したエリアが複数あるマップなのだ。
 そこの土地を買い占めていた和奈は瞬がそのエリアに飛ぶや否や、自分の土地に「関所」を建てたのである。この関所、通行料は微々たるものだがこのゲームの基本ルールである土地に「止まったら」ではなく、「通行しても」通行料を取られるという特殊な建物なのである。
 そう、お気づきだろう。瞬は和奈の作り出した恐るべき罠にハマってしまったのである。こうなるとこのエリアから移動するマスに止まるまで、瞬はジワジワと資金を奪われるのだ。

「関所の向こうにはまたすぐ関所が見えていた……割とスタンダードな手法だがこうも手際よくやれるとは……」
「沢木君は人の心配をしている場合かしら? これだと2以外の数字だと手痛い通行料を支払うハメになりそうだけど?」
「くそ……こうなる前にこのゾーンは抜けたかったのに高峰め……!」

 そして俺の目の前は見渡す限りの高額通行料ゾーン。どのマスに止まっても手持ちの現金が尽き、土地を売り払わなければ逃れられぬ窮地。頼りになるのはサイコロ運だけ、という状況に持ち込んだのは、高峰の運もあるだろうが、建物を建てたタイミングにもよるだろう。
 こんな感じで終始二人のペースでボードゲームは進み、俺達は惨敗。はっきり言ってイチャモンをつけられないレベルで二人は上手かった。その後もメーカーのキャラが総登場するというお祭りアクションゲーで挑むも、

「な、ちょ!? 和奈、そこで攻めてくるのか!? ていうか俺だけが吹っ飛ばされる!?」
「高峰に全然攻撃あたんねえんだけど」
「あ、八千代! さっきから回復アイテムを独り占めしてずるいですよ!」
「三人ともそんなところで固まってるとまとめて吹き飛ばすわよ」
「やってから言うな!」

 うん、何ていうか、もうね。
 この二人、普通に上手いんですわ。というか、一定以上の腕前の四人が集まったら、そりゃ手加減とか考える余地もないわけで。
 特に和奈は普段の大人しさがなりを潜めたかのようにはしゃいでいるので、ついついほっこりしてしまい、そんな油断を高峰が容赦なく突いて来るのだ。俺じゃなくてゲーム画面見ろよ。何でそんな僅かな隙を的確に突ける。
 などと思っていたら高峰と目が合った。まるで俺の心境を見透かしたかのような笑みだった。それはそう、からかうようでいて親しい友人に向けるそんな眼差しで怒りも湧いてこないそんな笑顔だ。

「柏谷さんの動きはパターンがないので読みにくいですぅー!」
「ふぅーはっはっは! 何せプレイ中に俺はあんまり考えないからな!」
「リアルの戦闘中はやめてくれよそれ」
「沢木君の意見に同意見ね」

 リアル戦闘の時は死に直結するからな。いや、多分、それでも言う程深くは考えて戦わないだろうけど。アイツは直感だけで闘い、直感だけで正解に辿り着き、直感だけでそれを手繰り寄せる男だから。
 そうこうして大騒ぎをしている間に時間はあっという間に過ぎ、ぼちぼち夕方かという時に俺のスマホが着信を告げた。
 母さんからのメールで、あっちも夫婦揃って盛り上がっているらしいが、何でも父さんの方の仕事の予定がズレたとかで二人揃って時間のある休日が明日も出来たらしく、もう少しデートをしてくるから夕飯は好きなものを食べなさい、というありがたくも呆れてしまうメールだった。
 その事情を告げると、瞬は名案を閃いた、という顔で、

「じゃあよ、折角だから二人を送りがてらこのままファミレスにでも行ってもう少しダベろうぜ」
「またお前は二人の予定も聞かずにそんな事を……」

 迎えが来たくらいだから、高峰はともかく和奈はそんなに夜遅くまで引っ張れないんじゃ――

「もしもし、和奈です。はい、迎えの方は改めてわたしから後で連絡しますので待機でお願いします」
「行動早いな和奈!?」

 電話を終えて、少しだけ困ったような、それでいて少し悪戯に成功したときのような笑顔で、

「えっと、友達同士でそういうところでご飯を食べるというのも興味がありますから」
「……和奈って引っ込み思案なのか、行動的なのか時々分からないよな……」

 そうでしょうか、と首を傾げる和奈の仕草に俺は苦笑する。
 壁を感じなくなったのはきっと、仲間として友達として歩み寄れた証拠なのだろう。
 この小さな肩で大きな、とてつもなく大きな物を背負った少女が歳相応の顔で今を楽しんでいるのならば、そう、それは――

「でも、これはいい事だよな。初めて会った時よりもずっと可愛く見え――」
「えっ」

 思わず失言してしまうくらいの可愛さに溢れていたのだから。
 もっともその笑顔も、俺の発言によって真っ赤な照れ顔に変わってしまったのはご愛嬌である。
 そしてそれ以上にこの居た堪れなさ、やっちまった感溢れる空気をどうしたらいいの!?

「お、俺出かける支度してくるわ!」

 出来る事は逃げる事のみ。敵前逃亡言うな。振り返らずとも分かる他の二人の視線が優しすぎて俺はもうダメなんだ。


 
対戦ゲームって性格出ますよね(しみじみ
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