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REGAIN HEROES ―本当に世界を救うRPG― 作者:本堂ゆうき

AREA 1 今、そこにある危機

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stage 11 Defensive war Ⅰ ~がらんどうの騎士人形~

 ――四月二十日 第一次防衛戦、開始。
































 予定通りに学校が終わった放課後。待ち合わせ場所であった公園に向かった俺と瞬は高峰と和奈の案内の元、とあるビルに通された。
 一見すると普通の雑居ビル。一階は本屋、二階はゲームショップ、三階には喫茶店と少々洒落た外観である以外はこの辺に並ぶ商店やビルの中に良く溶け込んでいる変哲の無い建物。
 和奈が一言二言店員と話し、それが自然であるかのようにスタッフルームと看板の書かれた部屋の先、鉄製のキャビネット――に見えたハリボテの後ろにあったのは地下への階段。

「おー、すげー秘密基地的!」
「いや、『的』はいらんだろ、瞬。隠し通路に隠し階段の組み合わせってどう見ても秘密基地だよ」
「そうですね、楔を打ち込んだわたし達の拠点へ繋ぐのと違い、インベーダーが侵食し作り上げつつある『どちらの側にも属さない領域』へは、通常のコネクトだけでは危険ですので」

 階段を降りながら説明する和奈によれば、俺達の持つスマホのアプリだけであちら側の世界へ接触するのは訓練時だけに留めているとの事。
 あちらの世界で実体化するソウルフォームは現実世界に残している肉体と密接に繋がっている以上、時間圧縮を行っている訓練時はともかく、侵攻領域での防衛戦においては安全面を確保する為に専用の設備を用意した部屋から挑む事を前提に作戦が組み込まれているらしい。
 これは前回の侵略者を退けた経験者達の総意であるという。
 かつての侵攻においては生身に特殊な力を宿した戦士達が挑んだが、そんな彼らも今は現役を退いている。ソウルフォームを使用する事も可能だそうだが、全盛期の力を再現するには至らず緊急時の現状においても戦力として数えるのは難しいそうだ。
 そんな説明を聞きながら俺達が辿り着いたのは、仰々しい革張りの椅子並び、正面にはモニターと教壇のような机があるシンプルな部屋だった。椅子の数は八つはあるだろうか、だが肘掛にはボタンや液晶などが配置されており何処と無く椅子と言うよりはコックピットのような印象を受ける。

「どれでも構いませんので席についてください。これより第一次防衛戦のブリーフィングを開始します」

 可愛らしくも凛とした芯の強さを感じさせる声で和奈が宣言してスクリーンの前に立つ。
 いよいよか、そんな緊張感が身を引き締めさせる。はしゃいでいた瞬も空気を読んで大人しく席についている。自然と俺、高峰、瞬という並びで前の方の席に座った俺たちはスクリーンに表示された地図や光点に目を向けた。

「事前調査によれば接近時から収集していた情報との差異は殆どないようです。インベーダー達が形成している侵攻領域の属性は通常、領域の長であり核であるボスのデータはこちらになります」

 上空図のような地図の隣に3Dモデルのような形でボスの姿が映し出された。
 西洋風の甲冑に片手で扱うカイトシールド、そしてやや体格よりも大きめの印象を与えるあの両手剣は……刀身の形からするとクレイモアと呼ばれる大剣だろう。

「ナイトパペット――過去の戦いのデータから人型のインベーダーの中に類似したモンスターがいましたのでそこから命名しました。甲冑を身に纏った騎士のような姿をしていますが、この中身はからっぽです」
「へ? 鎧だけで勝手に動いてんのこれ?」
「いえ、柏谷さん、そうではないのです。わたし達が便宜上『瘴気』と呼んでいる黒いガス状の物がこの中に詰まっているのです。その為、外傷は無意味、身体を構成する各種パーツも瞬く間に再生するという無機物に相当するモンスターなんですよ」
「んー、てことは例えばオレのシールドブーメランでコイツの兜を吹っ飛ばしたりしても?」
「はい、兜が自律飛行して身体に戻るようになっています。もっともその攻撃そのものが決して無意味ではありませんが」

 どういう事だろう、と首を傾げる瞬をよそに俺は和奈の言わんとする理由に何となく見当が付いた。
 兜が吹っ飛ぶ、それはあのモンスターを構成する全身に大きな穴が開くという事だ。あの鎧自体完全に隙間が無い作りではないが、俺達の攻撃によって生み出された隙間はきっとモンスターにとっての『怪我』に相当するんじゃないだろうか。
 人間が怪我をすれば血を流す。痛覚は無くともあのモンスターにとっての血とは――

「わたし達の攻撃によって損傷した鎧や兜ではあのモンスターは自らを形作る瘴気を維持できないのです。そして漏れていった瘴気は再び集まる事は出来ない。そして、あのモンスターが自身を維持できなくなるほど瘴気を失えば――」
「晴れてボス撃破、って訳か。なるほどなるほど」

 俺の予想通りであったらしい。
 疑問も解消されたらしい瞬は黙って頷いている。それを見て和奈はさらに表示する情報を増やし説明を続けた。

「全長は皆さんよりやや大きい……2m程でしょうか。体格の差による有利不利は殆ど無いかと。むしろ、ボスを守ろうとする雑兵の数が、こちらが予想していた数より多い事の方が問題かもしれません」
「ただでさえ人手が足りないってのに向こうは数頼みかよー」
「ボスを倒す前に消耗させられるのも痛手だな……領域の地形は円形……障害物になるような建物も少ないから実質正面からぶつかり合うしかないのかこれ?」
「沢木君の言うとおりでしょうね。私達はそもそも打てる手が限られている。増援も救援も見込めない以上はボスを狙う速攻が有効なのだけれど……」

 高峰の表情も決して明るくは無い。
 表示されている戦力や雑魚のステータスを見るに、俺達なら余裕であしらえるレベルの雑魚なのは間違いないのだが、この場合数が問題なのと――ウチのメンバーの火力が複数戦に対してはあまり有効ではないという事が問題だ。
 高峰の刀術マスタリーから派生する各種攻撃スキルは単体特化――一対一での戦いでこそ効力を発揮する多段技や一撃系の技が多い。それこそ複数に対して攻撃するようなスキルは闘気による刀身の延長を用いての薙ぎ払いである「破刃・一閃」のスキルしかない。
 瞬は言わずもがなだ。そもそもリーチという概念すら怪しい盾スキルは威力こそ他の武器スキルに勝るとも劣らないスキルが揃っているが、範囲攻撃と言えば衝撃波を撒き散らす「ヘビースタンプ」くらいだが、あれは消費TPが多く乱発できるものではないのだ。
 もっとも、他の二人よりもさらに攻撃能力に劣るのが俺なのだが。そもそも攻撃スキルの幅が一番狭いので種類が少ないとか以前の問題である。

「けれどこの点についてはそもそも定石ともいえる人数を揃えて事に当たるという事を私達が為せなかったからだから悩んでも仕方がないわ」
「定石の人数ってーと……」
「基本は五人、多くて六人くらいかしら。領域の広さにもよるけど、大人数を送り込んでの戦闘の記録は残ってないわね――領域単位での話になるけれど」
「領域単位じゃない話になると?」
「イギリス、アメリカ、ロシアの三カ国では数時間前に防衛戦が既に開始されているわ。多少の時間や日数のズレはあるけれど、相手側の侵攻の兆しが見えた場合には大抵は世界でほぼ同時に始まるのが常。それらの参加人数を全て合計したら前線で戦っている人とバックアップのメンバーを含めれば四桁にもなるかもしれないわね」

 マジか。インベーダーの侵攻ってそんなに手広くやってんの?
 電撃作戦なんてもんじゃない、それでいてどっか一つの場所でも守りきれなければ一気に世界の守りは崩され情勢はインベーダー側に大きく傾くって事だろ?

「……今更ながらに責任重大なんだな」

 ぽつりと呟いた俺の言葉に和奈と高峰が重々しく頷いた。

「同じ国内の組織同士ですら増援を求められない理由がこれなんです。ほぼ同時に近い形で防衛地点を攻められるので、お互いに戦力をカバーし合う時間がないから……」
「日本だけで数えても、他に侵攻点となっている都市はこの日守市を含めて三つある。けれど、何処も十分な戦力を揃えられてはいないそうよ」
「情報の共有や技術提携は出来ても貴重な戦力の貸し出しはどこも出来ませんよってか」

 長いスパンの間に戦士として戦える者が少なくなったとはいえ、人類側のバランス厳しすぎませんかね? こりゃ、今回の戦いを凌げたら本格的に仲間を探さないと絶対に後が続かないぞ。

「とりあえず問題だらけなのはわかったけどよ、和奈ちゃん。結局オレら今回はどう戦えばいいんだ?」
「正直なところを言えば出たとこ勝負を仕掛けるしかないかと……」

 申し訳無さそうに言う和奈だったが、正直俺も同意見だ。これ作戦でどうこうカバーできる状況じゃない。強いて言うならば、出来る限りボスに攻撃するチャンスを作って速攻で仕留めてしまう事は最重要だというくらいか。
 そもそも人数差を考えると長期戦も持久戦も悪手なんてもんじゃない。下手をすると撤退の時間すら稼げずゲームオーバーを通り越して俺達のデッドエンドが確定する。和奈たちの分析による戦力比を信じるなら、雑魚一体一体は物の数にはならないが数で押し込まれたところにボスのラッシュでも入ろうものならなすすべも無く死ぬ未来が見えるもん。

「一番攻撃力の高い高峰が出来る限り刀術スキルを叩き込めるチャンスを作るしかないだろうな。瞬は攻防の判断は状況に応じて切り替え、俺は二人への補助魔法を切らさないように立ち回る」
「魔法効果の残り時間の把握はわたしに任せてくださいっ」
「現状打てる最善手はそうなるでしょうね。沢木君、柏谷君、背中は任せるわよ」
「おう、任せとけ。これでもタケに付き合ってパーティプレイもそれなりにやってっからな。ある程度の基本は分かってるつもりだからよ」

 よし、方針は決まった。後は、実際の戦場にて判断するしかない。

「それでは、皆さん準備はいいですね? カウントダウンを開始します。9……8……」

 ゴクリ、と唾を飲んだ音は果たして俺か、それとも他の誰かか。
 背もたれにもたれかかるようにして、自然と目を閉じてしまう。

「3……2……1……虚界接続(コネクト)開始します!」

 何度も体験したソウルフォームへの変異、そして別の世界への顕現。
 もしもワープ装置とやらがあるのならこんな感じだろうかと言う浮遊感も束の間、俺達は敵の侵攻部隊が作り上げた侵攻領域とやらに虚装転現(リゲイン)していた。
 二車線のひび割れた道路の中央、十字路の交差点にそいつはいた。

「あれがボスの……ナイトパペットってやつか」
「取り巻きの兵士は小さいな。オレらと大して変わんねーな」

 まあボスの引き連れている雑魚と言うのはそんなものだ。だが、数十体の武装した兵士のような雑魚は今まで戦ってきたモンスターに比べて非常に統率が取れている。どこかたどたどしかった動きは微塵も感じさせず、能力差は歴然であろうとも油断をしてはならないと俺の危機感は告げていた。

「二人とも一気にバフかけるからな。俺も一応雑魚を殴ってTPを維持するつもりだから、効果が切れそうになったらチャンスを作ってくれ」
「りょーかい」
「分かったわ」

 幸い、ある程度踏み込まなければ相手側が動く様子は無かった。或いはこの補助魔法を使う事を敵対行動と認識して動くかもしれないが、その時はその時だ。
 ゲインストレングス、アクセラレーションを自分も含めて全員に。瞬にはこの間レベル2に上げたシールドブレッシングをかけ、高峰の刀にサンダーウェポンをかける。属性に対する防御力を持っていないようだから、純粋に相手に与えるダメージを底上げしてくれるはずだ。
 特にシールドブレッシングは盾自身の性能を強化する、という付与魔法だからか瞬のユニークマスタリーの効果が乗る事も判明済みだ。まさしくこいつにとっては攻防を同時に強化できる魔法という事になっている。代わりに付与魔法は一つの装備品に対して一つのみ、という制限がかかっているので、属性付与の魔法とは両立しないという難点もあるが。
 一通りの強化魔法をかけ終わっても敵に動きは見られない。
 余裕のつもりか、それとも先手を打つような命令は受けていないのか。
 いずれにせよ、これが本当の初陣。インベーダーの「尖兵」ではなく「本隊」の一部との激戦の幕開け。
 周囲には瓦礫が積み重なり、かつてはビルや建物であったであろうモノが散らばり、ひび割れたアスファルトにはかすかに横断歩道であった名残が見られる。
 崩壊した現実の風景にはあまりにも似つかわしくない中世時代の甲冑の軍団。これが――守れなかった世界の成れの果て。俺達の戦いの先に待つかもしれない未来。
 こうして目の当たりにすると強く感じる。こんな未来は――ゴメンだ。
 緊張を吹き飛ばすように、その光景が現実にならぬように、と俺は声の限りに叫んだ。

「行くぞ!」

実際のRPG的には火力前衛の八千代、攻防一体の瞬、各種補助の武彦と
回復アイテムさえあればボス戦には対応出来る構成ではありますが果たして?
+注意+
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